今日は「”景気は底堅い”と嘘八百を言い続けて失政により貧困化している事実に目を背ける安倍政権」と題して論説します。
私は数年前から、日本が貧困化しているのでは?と思った事象があるのですが、それは若者が車を乗らなくなったこと、電車の車中や街中でディスプレイが割れたスマートフォーンを使っている若者をよく見かけること、この2つです。これらを見るたびに、日本の貧困化が進んでいるのでは?と思うようになりました。
皆さんはどう思われるでしょうか?
よく有識者とか呼ばれている人ら、「最近の若者はゲームばかりで車に興味を持たない」と偉そうに発言をする人がいます。若者は車に興味を持たないのではなく、お金がないから車が買えないということを、彼らは微塵にも思ったことはないのではないでしょうか?
特に都内に住む学生らからみれば、地下鉄や鉄道網のインフラが世界で比較してもずば抜けて整っていることもあり、別に車を必要と感じないと思う学生が多いということもあるかもしれません。
しかしながら、そこにはお金の問題が絡んでいることは明白ではないでしょうか。
免許証を取得するには20万円以上かかり、さらに車を持とうと思えば、駐車場代や税金や保険など、相当の出費が発生します。
バブルを経験した世代や、バブル崩壊後も1997年の構造改革基本法制定による緊縮財政が始まるまで、日本が経済成長していた時代に社会人経験をし始めた人ら、貧困化した日本という事実を知らない人も多いのではと私は思います。
下記の表とグラフは、平成13年度末と平成29年度末で、免許証の取得者数の推移を示したものです。
<年齢区分別 運転免許証取得者数の推移>
(出典:警察庁の免許証取得者数と、総務省の人口統計から引用)
上記折れ線グラフを見ていただきたいのですが、若年層の人口減少という状況はあるものの、取得者数の割合が減少している点に注目していただきたく思います。
20歳〜24歳 82.9%→75.8%
25歳〜29歳 92.1%→87.9%
20代の数字を見てわかることは、人口減少のスピード以上に免許証取得者数減少のスピードの方が多いため、割合が減少しているのです。
他にも実際に貧困化を示す指標は、いくつもあります。
下記はカオナビというサイトから数字を引用したものです。
企業が労働者に支払った給与総額
1999年:217兆円 → 2009年:192兆円(▲25兆円)
労働者の平均年収
1999年:461万円 → 2009年:406万円(▲55万円)
正社員採用数
2000年:74.0% → 2010年:65.6%(▲14.4%)
また国士舘大学の小浜逸郎教授によれば、2015年度のOECD加盟国34か国中、日本の相対的貧困率は29位であることに加え、1995年には世帯収入の中央値が550万円のところが、2017年には423万円にまで減少。金融資産ゼロの世帯は3割を超えています。
<貯蓄ゼロ世帯割合(%)>
(出典:山本太郎事務所から引用)
上記の通り、貯蓄ゼロ世帯の割合も2012年→2017年で、大幅に増加しています。
決して安倍政権だけが悪いとはいいませんが、1997年の構造改革基本法以降、デフレを放置してきたのは事実であり、特に安倍政権になって以降は、2013年度を除いて、緊縮財政による実質賃金と実質消費の下落により、貯蓄ゼロ世帯の割合の増加したと言えるのではないでしょうか?
<2015年の実質賃金を100として指数化した実質賃金指数の推移>
(出典:厚労省のホームページの毎月勤労統計の資料の数値を引用)
少なくても安倍政権が目標に掲げる物価目標2%は達成されず、デフレが続いているということは、消費者物価指数の推移(下記グラフ)を見ても明らかです
<消費者物価指数(コアCPI、コアコアCPI)の推移>
(出典:総務省のホームページ「e-slat」から引用)
またデフレ放置に加え、労働市場の流動化と称して非正規雇用を増やすことができる、経営的には損益分岐点を左下にシフトできる規制緩和が、派遣業法改正以降ずっと続けられてきたこともあり、職を失う人、職に就けない日本人が続出。仮に職に就いたとしても低年収の人、あるいは非正規社員という雇用が不安定な人が増加していて、今もなお現在進行中の状況です。
非正規雇用では、雇用期間が最長でも1年と不安定なうえに、社会保険が不十分であったりします。2018年4月に規制が強化されて、無期転換ルールが開始されたものの、無期転換ルール開始前に企業から労働契約を打ち切られる「雇い止め」が増加して、生活に困窮している労働者も増加しました。
<年収200万円以下のワーキングプアと呼ばれる層の推移>
(出典:国税庁の民間給与実態統計調査の1年を通じて勤務した給与所得者について集計したもの)
ワーキングプアと呼ばれる層は、安倍政権になってからも1,100万人超を推移し続けています。
私は公務員を増やすべきだ!という立場で論説することも多いのですが、実は公務員にも非正規雇用が増えています。小浜逸郎氏(前述)によれば、地方公務員では11年間で非正規雇用の公務員が4割増加し、全体の3分の1を占めるとのこと。しかも正規雇用の地方公務員の平均年収が660万円のところ、非正規雇用の地方公務員は207万円程度ということで、ワーキングプアすれすれの状況で彼らにはボーナスもなければ昇給もないとのこと。それだけにとどまらず、産休や看護休暇や交通費すら認めないとする自治体もあるようです。
これでは地方経済が疲弊するのは、もはや当然の帰結と言えるでしょう。その象徴として、今年10月1日の消費増税を目前の9/30までに閉店した百貨店は10店舗以上あります。
こうした中、国内の子どもの6人〜7人に1人が貧困状態にあるとされ、2012年から子ども食堂というのが全国で開設されています。
下記は日本経済新聞の記事です。
『日本経済新聞 2019/06/27 10:14 子ども食堂1.6倍に 3700カ所、6校に1つ
子供に無料か低額で食事を提供する「子ども食堂」が全国で3700カ所を超え、昨年比で1.6倍に増えたとの調査結果を支援団体が26日、公表した。どれだけ普及しているかを表す指標として、小学校数に対する食堂数の割合(充足率)も算出。都道府県平均は17.3%で、小学校6校に食堂が1カ所ある計算となった。最も高い沖縄(60.5%)と最も低い秋田(5.5%)では大きな開きがあり、地域差も明らかになった。
子ども食堂は地域のボランティアらが運営。低所得や親の帰宅が遅い家庭の子供向けに2012年ごろ始まり、全国に広がったとされる。住民の交流拠点としての役割を果たすことも多い。
調査はNPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」(東京)と全国のこども食堂地域ネットワークが実施。都道府県ごとに今年5月までの状況を集計した。
食堂数は3718カ所を確認。秋田を除く46都道府県で、昨年の調査から計1400カ所以上増えた。最も多かったのは東京の488カ所で、大阪336カ所、神奈川253カ所が続いた。最も少なかったのは秋田の11カ所。全国の年間利用者数は推計で延べ約160万人。
全ての子供が利用しやすくするには、小学校区単位で食堂があることが望ましいとして、小学校数に対する充足率も算出。高い順に沖縄60.5%、滋賀52.5%、東京36.6%だった。低かったのは秋田5.5%、青森5.6%、長崎7.0%の順だった。
むすびえの湯浅誠理事長は「子ども食堂には貧困家庭の子供だけが食事する場所との誤解があるが、交流拠点としても機能している。地域の女性を中心に関心は高く、取り組みやすい雰囲気が出てきたことで、増えたと思う」としている。』
これだけ貧困化が進んでいる指標や記事が出回っているにもかかわらず、内閣府は「景気は底堅い」などと発表をしていて、マスコミも”いざなぎ越え”と好景気であることを報じています。
<主要国のGDP伸び率>
(出典:世界経済のネタ帳から引用)
1996年と2016年のGDP成長率でみれば、ケチケチのドイツですら1.4倍になっているにもかかわらず、日本だけが1.0倍と10年間足踏み状態。先進国の米国ですら2.3倍で、トランプ政権になってからは経済はさらに絶好調で、実質賃金は年率換算で2.8%増です。
1995年には、世界のGDPに占める日本のシェアは17%に達していたのですが、現在は2018年には6%以下に落ち込んでいます。
内閣府に限らず政府関係者や、経済学者やエコノミストやアナリストら、国会議員らも含め、これらの指標は誰でも見ることができます。
にもかかわらず、そうした有識者と呼ばれる連中は、東京の場合は「銀座は人が大勢いる」とか「渋谷は活気がある」など、沖縄でいえば「国際通りは人が大勢溢れている」、大阪でいえば「インバウンドが絶好調」などといって「日本は景気が良い」という認識でいるので、あまりにもアホらしくなるのです。
私は都内に住みますが、今年ゴールデンウィークに訪れた欧州視察で、ロンドンの物価、パリの物価が高かったことに驚きました。何しろ屋台で売っているホットドッグは、3.5英国ポンド(日本円で約500円)、500㎖ペットボトルのペプシコーラが3.4€(日本円で約419円)と物価が高く、私は日本が経済成長していないということを実感しました。
日本国内の一部の都市だけをみて、あるいは都内に住む人は、日本の貧困化というのがピンと来ないかもしれませんが、恐るべきスピードで貧困化が進んでいるという実態は、誰もがいろんな指標を通じて知ることができるのです。
というわけで今日は「”景気は底堅い”と嘘八百を言い続けて失政により貧困化している事実に目を背ける安倍政権」と題して論説しました。
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