借入金の否定=資本主義の否定(信用創造機能とは何か?)

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     今日は、銀行の役割で大きな機能の一つ「信用創造」について論説します。

     

     皆さんは、銀行というと国民から預金を受け入れて、その預金に利ザヤを乗せて貸し出すのが銀行だと思っていないでしょうか?いわば、株式市場やその他の金融仲介業者と変わらず、預金者から投資家へお金を受け渡しをしているだけのように思っていませんでしょうか?

     実際には、銀行は同一の預金を複数回にわたって融資として貸し出すことができます。

     

     下図は、預金3000万円を2回貸し出しに回した場合の信用創造の仕組みのイメージです。

     

    <信用創造の仕組み>

     

     

     上図は、XYZ銀行が、預金3000万円をもとに、個人Aさんに貸し出し、法人C社に貸し出しているというシミュレーション図です。個人Aさんは住宅を建築し、B建設に3000万円を支払います。

     結果、B建設はXYZ銀行にあるB建設の口座に3000万円預金して、3000万円がXYZ銀行に戻ってきます。

     次に、戻ってきた3000万円をC社に貸し出しします。C社はD社に3000万円の物・サービスを購入し、D社に3000万円支払います。D社は支払いを受けた3000万円を、XYZ銀行のD社の口座に預金します。

     

     この結果、XYZ銀行は預金が9000万円に増えます。元手は3000万円でしたが、9000万円に増えるのです。こうした仕組みが信用創造機能です。資本主義の仕組みとは、借入金を増やしていって経済のパイを拡大していくというものなのです。

     

     バンクとノンバンクという言葉が使われることがありますが、バンクとは正にこの信用創造の仕組みを持つからこそバンクです。ノンバンクは、信用創造の仕組みを持ちません。

     

     例えば、消費者金融でいえば、銀行から借り入れる、社債で投資家からお金を集める、株式発行で投資家からお金を集めるなどして、集まったお金に利息を乗せてお金を貸し付けます。

     

     生命保険会社や損害保険会社の貸し付けも同様です。保険料という名目でお金を集める、銀行から借り入れる、社債で投資家からお金を集める、株式会社の場合は株式発行、相互会社の場合は基金の名目でお金を集めるなどして、集まったお金に利息を乗せて貸し付けます。

     

     よくある誤解なのですが、銀行は外部からお金を調達して、調達したお金に利ザヤを乗せて貸し出しているという誤解です。上図でいえば6000万円のお金を調達してから3000万円ずつ個人Aさん、法人C社に貸し出していると思いがちです。

     

     XYZが、消費者金融や保険会社であれば、何らかの名目で6000万円集めない限り、個人Aさん、法人C社に貸し出すことはできません。XYZは銀行ですので、信用創造機能によって無からお金を作り出すことができるのです。

     

     このように、バンクとノンバンクの違いとは、信用創造機能を持つか持たないか?ということです。

     

     バンクは信用創造機能を持つため、3000万円を貸付金と記帳するだけで無からお金を生み出して貸し出すことができます。一方で、もし準備預金という規制がない場合、XYZ銀行は記帳するだけで貸し出せるとなると、無限にお金を貸すことができます。

     

     そこで法定準備預金という規制をかけて、貸付金の一部を日銀当座預金に預け入れなければならないように義務付けています。上図では準備預金率1%とし、貸付金の1%を日銀当座預金に預け入れなければならないというシミュレーションになっています。

     

     上図は、日銀当座預金の預金準備率が1%であるため、XYZ銀行は、信用創造機能によって預金が9000万円に増えたので、日銀当座預金に90万円預けたということを示しています。

     

     銀行はお金を手に入れなくても、無からお金を作り出すことができます。銀行以外のノンバンクは無からお金を作り出すことはできません。

     

     多くの人は3000万円を銀行が貸すためには、預金準備率1%だとすれば、日銀当座預金に預けるための30万円と、貸し出すための原資3000万円で、合計3030万円資金調達してから、やっと3000万円貸し出すことができると思われる人が多いでしょう。

     

     とはいえ一般人だけでなく、経済学者やアナリスト、エコノミストであっても、このことを知らない人は多いのではないでしょうか?

     

     家計簿発想で国家の財政運営を考えることは大変愚かなのですが、資本主義というものが借入金を増やしていって、経済のパイを拡大させる、それは即ち銀行の信用創造機能そのものであるということを、経済学者、アナリスト、エコノミスト、国会議員らでさえ知らない人は多いと思われます。

     

     そうでなければ、借金=悪と考えて「政府の負債を増やすなんてとんでもない!」という発想は出てこないはずです。資本主義は負債を増やして経済のパイを拡大し、経済成長していくものであり、借金=悪と考えることは、資本主義の否定に他なりません。

     

     今の日本はデフレであるため、民間企業は負債を増やしにくい環境です。なぜならば、デフレで物・サービスの値段を下げないと売れない状態ですので、銀行から借り入れて負債を増やして投資しようにも、儲かりにくく、借入金の返済に窮してしまう可能性があるからです。

     

     このように民間企業はデフレで負債を拡大しにくくても、政府は負債を拡大することは可能です。なぜならば通貨発行権を持つからです。地方自治体は通貨発行権を持たないため、プライマリーバランス黒字化の発想があってもやむを得ません。それとて地方自治体の首長や都道府県の知事や地方選出の国会議員らが、地方交付税交付金の分配を多く配分するよう要求し、財源は国債発行で何ら問題がありません。

     

     何が言いたいかといえば、景気が悪いときは政府が負債を拡大し、デフレ脱却して民間が負債を拡大しやすい環境になって、実際に民間企業が負債を拡大し始めたら、政府は負債の拡大を抑制すればいいのです。デフレのときは、デフレ脱却のために政府が国債増刷するということで何ら問題ありません。

     

     

     

     というわけで、今日は銀行が持つ「信用創造」について論説しました。何が何でも「借金=悪」というのは、デフレ化における家計簿の発想、企業経営の発想です。デフレ化の場合は、借金の元本は相対的に価値が高くなりますし、家計は負債を相続しますので、ある意味で合理的です。とはいえ何が何でも「借金=悪」とすることは資本主義の否定であり、通貨発行権を持つ政府は自国通貨建ての負債を増やしても財政破綻することはありません。

     家計は相続します。企業は倒産します。国家は破綻しません。利益追求不要のNPO法人であり、通貨発行権を持つのが政府です。デフレ下では、政府しか負債を拡大することができません。

     また民間であろうと政府であろうと、負債を拡大すれば、経済成長していくということをご理解いただきたく、「借金をひたすら増やすことは無責任だ!バラマキだ!」という考えこそ、資本主義の否定であって間違っているということを、多くの人々に気付いていただきたいと思うのです。

     

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    「GDP3面等価の原則」を理解していない政治家の携帯電話料金・端末機価格批判!

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       今日は、時事通信の「携帯電話会社が儲けすぎ」という記事について取り上げます。

       

       時事通信の記事を2つ紹介します。

      『時事通信 2018/08/27 携帯電話「OECDの倍」 菅長官

       菅義偉官房長官は27日午前の記者会見で、携帯電話料金の4割引き下げを提唱する理由について、「わが国の料金は経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の2倍程度で、高い水準だ」と指摘した。

       菅氏は、新規参入する楽天が既存事業者の半額程度に料金を設定する方針を公表していることに触れ、「競争をしっかり行えば下げられる余地がある」と強調。「利用者にとって分かりやすく、納得できる料金サービスの実現にしっかり取り組んでいく」との考えを重ねて示した。』

       

      『時事通信 2018/08/24 携帯料金下げ、取り組む余地=端末価格も「高い」−野田総務相

       野田聖子総務相は24日、情報通信審議会(総務相の諮問機関)で携帯電話料金の引き下げなどに関する議論が始まったことについて、「料金の低廉化はわれわれが命令することではないが、まだ取り組む余地はある」と述べ、値下げの実現に期待感を示した。盛岡市内で記者団の取材に応じた。

       総務相は「通信費は家計の中でも大きな部分を占めている」と指摘。その上で「専門家が知恵を絞り、企業が気づかなかったことをどんどん出していただきたい」と語り、審議会での活発な議論を求めた。また、携帯電話の端末価格も高いとの認識を示し、「中古市場の拡大などを通じ低廉化したい」と述べた。

       

       

       上記の通り、携帯電話料金が高い、携帯電話の端末機器が高い、ということで、携帯電話会社(NTTドコモ、AU、ソフトバンク)と、携帯電話を製造している会社に対して、批判している記事です。

       

       菅官房長官も野田総務相にしろ、当選回数が多い著名な国会議員ですが、こうした記事を見ると、「だから日本は、いつまで経ってもデフレ脱却ができないんだ!」と思わざるを得ません。

       

       「国債増刷」「財政支出増」で普通に需要創出すれば、「需要>供給」のインフレギャップを生じさせます。このインフレギャップを生産性向上で埋めるべく、民間企業が設備投資をすれば、一人当たり生産性向上によって実質賃金UPの原資が生み出されます。労働分配率の問題で、インフレギャップを埋めた分のすべてが労働者の賃金UPになるわけではないものの、実質賃金UPの原資が生み出されれば、企業は賃金UPすることができるのです。

       実質賃金がUPすれば消費が増え、その結果「需要>供給」のインフレギャップが生じます。これをまた生産性向上でギャップを埋めれば、また実質賃金UPの原資が生み出されます。こうして循環的に経済成長することが可能です。

       

       にもかかわらず、菅官房長官にしても、野田総務相にしても、携帯電話料金が高い、携帯端末機が高いと批判しています。デフレ脱却を標榜して登場した安倍政権ですが、結局、マクロ経済を理解していないため、料金を下げさせるとか、携帯端末機の中古市場を整備するなどという発言になるのです。

       

       携帯電話料金を下げれば、携帯電話会社の売上、利益が減少します。その結果、携帯電話会社の社員は賃金の上昇率が抑制され、消費を減らす可能性があるのです。携帯端末機の中古市場を拡大して携帯端末機そのものの値段も下げさせるというのも、携帯電話の端末機を製造している富士通や京セラなどの会社の売上、利益が減少します。

       

       ●GDP=個人消費+政府支出+設備投資+純輸出(※)

       ※純輸出=輸出−輸入

       ●税収=名目GDP×税率×税収弾性値

       

       何が言いたいかと言えば、携帯電話料金の引き下げ推奨、携帯端末機の価格引き下げ推奨、いずれもインフレ対策です。名目需要を削減する政策であるため、どちらも税収を減収させます。デフレを促進させます。

       

       なんでこんな発言が出るのか?溜息しか出ません。

       

       携帯電話の端末機が高いというのも余計なお世話です。私は通信業界で働いているわけではありません。ですが、マクロ経済的に間違っているこうした発言を見聞きすると、政治家の人々が経済を理解していなさすぎといわざるを得ないのです。

       

       以前も説明したことがありますが、下図は付加価値の積み上げイメージです。

       

      <スマートフォンが小売価格3000円で販売される場合の付加価値の積み上げイメージ>

       

       

      <付加価値の金額の積み上げイメージ>

       

       

       小売価格3000円のスマートフォンを消費者が3000円払った場合、輸入分の付加価値200円は控除されて、2800円がGDPとなります。

       

       ●GDP=個人消費+政府支出+設備投資+純輸出(※)

       ※純輸出=輸出−輸入

       ●税収=名目GDP×税率×税収弾性値

       

       野田総務相は、携帯電話の端末機が高いので、中古市場を拡大して端末機の価格を下げさせると述べています。中古品の流通市場を拡大して競争を激化させるということですが、これは「供給増」の政策であり、インフレ対策です。

       

       例えば、輸入はGDPにカウントされないため、原材料の輸入を引き下げる努力を求めるとか、レアアースなどの原料に変わる新素材の開発に期待するということであれば、まだ理解できます。

       野田総務相の発言は、そういうことではなく、単に3000円のスマートフォンを値下げしなさいといっているだけでしょう。

       

       であるならば、仮に3000円のスマートフォンが2000円になったとして、A社〜G社の付加価値2800円→1800円とすれば、生産金額が1000円減少することになります。

       

       生産金額が1000円減少した場合、GDP3面等価の原則で、生産金額=消費金額(支出)=分配金額(所得)ですから、A社〜G社で1000円分の所得が減るのです。

       

       結局、携帯端末機が高いとか、携帯電話料金が高いなどと批判して、引下げ努力を求めるというのは、デフレ促進化させることに気付いていないのではないでしょうか?

       

       デフレ脱却を標榜して誕生した安倍政権ですが、菅官房長官にしろ、野田総務相にしろ、マクロ経済の基本であるGDP3面等価の原則を理解していないから、こうした発言が出てくるのでしょう。

       

       いかにも家計にやさしいと思わせる発言ですが、携帯電話引下げの政策は、デフレ脱却とは真逆のインフレ対策です。家計簿の発想が抜けきれないので、コスト削減という発想しか出ないわけです。普通にインフラ整備のために国債を増刷して、政府支出拡大をすれば、デフレ脱却できるのに、大変残念な発言としかいえません。

       

       

       

       というわけで、今日は「GDP3面等価の原則を理解していない政治家の携帯電話料金・端末機価格批判!」と題して、論説しました。


      国土強靭化・地方創生どころか、国土脆弱化・地方衰弱化が進む日本

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         今日は「国土強靭化・地方創生どころか、国土脆弱化・地方衰弱化が進む日本」と題して論説します。

         

         首都直下型地震や東京湾巨大洪水など、被害を大きくさせないためにも、東京一極集中の緩和の必要性が叫ばれています。しかしながら現状は一極集中の緩和どころか、むしろ悪化しているといえます。

         

        1.人口増減率の分析から見えてくること

        2.地方創生がうまくいかない理由とは?

        3.大地震に備えるためのインフラ耐震化への投資効果は大きい!

         

         今日は上記の順に論説し、日本の国土脆弱化・地方衰退化が進む現状認識と、政府の取り組みについて取り上げ、課題・問題点と解決策をお話ししたいと思います。

         

         

         

        1.人口増減率の分析から見えてくること

         

         下記は総務省のホームページに掲載されている2016年度の都道府県別の対前年人口増減率の一覧です。

         

        <表1:2016年度 推計人口>

        (出典:総務省ホームページの人口推計資料)

         

         

         

         表1のうち、全国平均と白抜き数字を拾ってみました。

         

        <表2:全国と3大都市圏など主な都府県の2016年度対前年人口増減率>

        都府県2016年総人口
        (千人)
        2016年度対前年
        人口増減率(%)
        全国126,933▲1.3
        埼玉7,289△3.2
        千葉6,236△2.1
        東京13,624△8.0
        神奈川9,145△2.0
        愛知7,507△3.2
        大阪8,833▲0.8
        福岡5,104△0.6
        沖縄1,439△4.0

         

         表2の通り、東京への人口増減率は8.0%増加で、圧倒的に人口流入しているということがわかります。

         

         

         

         一応、日本政府は地方創生行政をやり、国土強靭化政策をやっています。目的はいずれも東京一極集中の緩和解消と思われます。ところが、実態は一極集中解消どころか、緩和すらされていないというのが、総務省の人口推計から読み取れるのではないでしょうか。

         

         一極集中緩和というのであれば、少なくても東京への人口流入がゼロもしくはマイナスになっていなければならないでしょう。

         

         また表2で取り上げた都府県以外は、すべて人口は流出です。3大都市圏以外の流出量を、まずゼロにするという取り組みも必要であると考えます。

         

         東京は、13,624千人×8%≒11万人 で約11万人が人口流入しています。11万人の人口が流入する一方、表2で取り上げた都府県以外の道県は、すべてマイナスです。

         

         下表の表3は2010年〜2015年の数値ですが、この東京の人口流入増のトレンドは、ここ数年続いています。

         

        <表3:全国と3大都市圏など主な都府県の2010年〜2015年の人口増減率>

        都府県2010年総人口
        (千人)
        2010年〜2015年の
        人口増減率(%)
        全国128,057▲0.8
        埼玉7,195△1.0
        千葉6,216△0.1
        東京13,159△2.7
        神奈川9,048△0.9
        愛知7,411△1.0
        大阪8,865▲0.3
        福岡5,072△0.6
        沖縄1,393△2.9

         

         3大都市のうちの大阪圏、名古屋圏が、ほぼ人口がプラスマイナスゼロで、11万人超の人口が東京圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)に流入しているということがわかります。これは、11万人が東京圏に流入する一方、地方から11万人が流出しているともいえます。

         そしてこれは、首都直下型地震の想定被害者数が増加することを意味し、その増加の対象者が毎年11万人ずつ増えているともいえます。

         

         国土強靭化どころか国土脆弱化が進み、地方創生どころか地方衰弱化が進んでいるという実態が、総務省の人口総計から読み取れます。データをみる限り、国土弱体化・地方衰弱化が進んでいるとしかいえません。

         

         政府は地方創生の政策を進めてきたといっていますが、どのような政策を進めていたのでしょうか?

         

         「ふるさと納税」などの政策は、クソの役にも立ちません。インフラ整備という政府支出を行わず、ふるさと納税と称して地方自治体に税収確保を競争させている点で、むしろ「ふるさと納税」は地方衰弱化を促進している可能性もあります。インフレならまだしも、デフレで競争激化させれば普通に経済は停滞するからです。

         

         また地方創生行政の中で、政府は東京への流入人口をゼロにするという目標を立て、本社を東京都以外に移転した場合の補助、税制優遇などの政策メニューを出していました。

         

         今から3〜4年前は東京への人口流入は10万人程度だったので、これをゼロにするという目標だったわけですが、ゼロになるどころか11万人に増えているわけですから、政府が用意した政策メニューは何の成果も出ていないと言われても仕方がありません。

         

         

         

        2.地方創生がうまくいかない理由とは?

         

         なぜ、政府が行う地方創生政策は、うまくいかないのでしょうか?

         

         こういう問いかけをすると、民間の活力を活かしていないからという人がいるかもしれません。「どんどん民営化させれば地方創生がうまくいく!」と。

         

         日本が好景気でインフレの状態であれば、無駄削減や民営化は、マクロ経済的に正しいですが、今はデフレ状態ですので民営化させれば普通に経済は悪化します。今いる公務員を非公務員にすることは、雇用が安定しているのに安定されなくなるとなれば、間違いなくその公務員だった人は消費を抑えるでしょう。民営化して利益追求となれば、消費や投資を厳選せざるを得ず、消費と投資を厳選するということは消費・投資の抑制に他なりません。GDP3面等価の原則で、消費=生産=分配 ですので消費が減れば分配(誰かの所得)が減るのは、誰でも理解できるかと思います。

         

         政府の地方創生行政が成果を出せずにいる理由は簡単でインフラ対策をやらないからです。本来は地方のインフラ整備をすべきところ、地方創生行政では議論すらされず、地方を競わせる「ふるさと納税」などをやっているわけです。

         

         ある会社がつぶれそうなときに、その会社は設備投資の議論をせず、工夫だけで会社を盛り上げると言っているのに等しい。ライバル社はITやAIなどの新しい設備を入れてガンガン新しい新設備を導入して、単位当たり労働コストの削減に取り組んでいるのに、その会社は工夫だけで乗り切ろうとしている。これではライバル社に勝てるはずがありません。

         

         インフラ整備をせずして、地方分散化など、絶対にできません。

         

         例えば、全国の新幹線整備でいえば、北陸新幹線ができて以来、金沢の周辺や富山では工場の立地が進み、オフィスができたりしています。インフラ整備をすれば、地方分散化が進むのは、明々白々です。

         

         ところが今の政府はインフラ整備をやらず、工夫だけで頑張ろうということであるため、地方分散化ができないのです。

         政府が地方分散化を謳っても、本気か?と疑われても仕方ないといえます。

         

         新幹線だけではありません。高速道路整備や都市開発など、政府が地方に投資をすることで民間の投資を誘発し、ようやく人口の流れが変わっていくのです。

         

         今の日本は何をやっているかといえば、地方にインフラを作るのはもったいない。人が多い東京に作ったほうが効果的だからとして、道路を立派にし、東京オリンピックを控えて地下鉄を作っています。

         

         国交省の関東運輸局が「運輸政策審議会答申第18号」ということで、東京圏における高速鉄道に関する基本計画というものを打ち立て、混雑緩和などを目的に、高速鉄道を中心に、地下鉄、モノレール、新交通システム、路面電車を含む鉄道の整備計画を立てています。

         

         この「運輸政策審議会答申第18号」は、2000年1月27日に打ち出された計画ですが、22路線の公共交通の鉄道を作ると計画して20路線着手する一方、関西では「運輸政策審議会答申第10号(1988年5月31日)」で13路線作ると計画したのに着工したのは1路線だけであり、関西という第二の都市圏ですら、東京圏とこれだけの格差がある状態。

         となれば、鳥取や島根や新潟などの山陰地方や東北、四国、九州などは、もっとやっていないということが明白です。

         

         当然、東京に人が集まるに決まっているのです。

         

         

         

        3.大地震に備えるためのインフラ耐震化への投資効果は大きい!

         

         少し古いですが、日本経済新聞の記事を紹介します。

        『日本経済新聞 2018/06/07 南海トラフ被害、20年間で最悪1410兆円 土木学会が推計 インフラ耐震化で3〜4割減

         土木学会は7日、南海トラフ巨大地震が発生した際に20年間の経済的な被害が最悪1410兆円に上るとの推計を発表した。建物の被害のほか、交通インフラが寸断されて工場が長期間止まる影響なども考慮した損害額1240兆円を盛り込んだ。首都直下地震は778兆円とした。インフラの耐震化などに南海トラフ地震は約40兆円、首都直下地震は約10兆円投じれば、被害額は3〜4割減るという。

         政府の地震調査委員会は南海トラフ地震の発生確率を今後30年で70〜80%、首都直下地震を70%程度と推定している。

         巨大地震の被害推計は内閣府も公表している。南海トラフ地震については地震や津波で受ける建物の被害を最大約170兆円、首都直下地震で同約47兆円と見積もった。だが、20年間という長期に及ぶ経済活動の被害額は盛り込んでいない。

         阪神大震災で神戸市が受けた経済活動の被害などを考慮し、20年という期間を定めた。交通インフラの寸断や生産活動の停止などに伴う経済的な被害額を新たに推計し、南海トラフ地震は1240兆円、首都直下地震は731兆円とした。地震や津波で壊れる建物や工場などの直接被害は内閣府の試算を活用した。

         道路や港湾、堤防といったインフラの耐震工事などの対策で、被害がどの程度減らせるかも試算した。南海トラフ地震では約40兆円の投資で509兆円、首都直下地震では約10兆円で247兆円減るという。

         土木学会はいずれの地震による被害を「国難」級だと指摘。特に首都直下地震については、道路や河川など公共インフラの対策投資だけでは不十分で、抜本的に東京一極集中を緩和し、地方への機能分散を進める必要があると強調した。首都圏の経済活動の3割を地方に分散できれば、首都直下地震による被害額は219兆円軽減できると試算している。

         地震のほかに、高潮や洪水による14カ月間累計の被害推計も公表した。東京湾で巨大高潮が起きれば最悪110兆円、東京荒川巨大洪水で62兆円と見積もった。』

         

         上記記事の通り、土木学会の試算で南海トラフ地震の被害は20年で1,410兆円、首都直下型地震でも778兆円と推定されています。

         

         その一方でインフラの耐震化工事などの対策を打てば、交通インフラが寸断されずに済み、工場が長期間止まるといった影響が緩和される旨を指摘しています。

         

         具体的には、南海トラフ地震のインフラ耐震化対策で40兆円投ずれば、被害額は3割〜4割(420兆円〜560兆円)程度減るということです。首都直下型地震に備えてインフラ耐震化対策で10兆円投ずれば、やはり被害額は3割〜4割(230兆円〜311兆円)程度減るのです。

         

         さらにいえば、東京一極集中を緩和して首都圏の経済活動の3割を地方に分散化すれば、首都直下型地震の被害額は219兆円軽減できるとも指摘しています。

         

         これ、人口減少のトレンドが続こうと続かなかろうと、地震などの自然災害は明日起きるかもしれないわけであり、インフラ耐震化対策は、間違いなく需要です。この需要は短期的に利益が出るものではありません。明日起きなければ、1年以内に地震が起きなければ、10年以内に起きなければ・・・というわけで、利益追求の株式会社組織では投資するのは困難です。

         

         こうした利益がすぐに出ない投資こそ、政府の出番でしょう。何しろ通貨発行権を持ちますので、財源はいくらでもあります。加えてマイナス金利でタダに近い金利で国債増刷ができますので、これはもうやるしかないと、マクロ経済を理解している人であれば、理解ができるでしょう。

         

         ところが、プライマリーバランス黒字化があると、お金を使ったらダメという家計簿の考え方となり、上述の発想は出てこないのです。

         

         ありもしない財政問題を気にして、とにかく今年の政府支出を削減する、これが政府の行政の一番重要な基準としてやってきました。その結果、日本は国土脆弱化、地方衰弱化が進んでしまっているのです。

         

         まさにプライマリーバランス黒字化が日本を壊し、今もなお壊し続けていると言っても過言ではありません。

         

         

         

         というわけで「国土強靭化・地方創生どころか、国土脆弱化・地方衰弱化が進む日本」と題して論説しました。私はマスコミなどが報じる悪質なウソの一つに「公共事業は無駄だ!インフラ整備は無駄だ!」というのがあるとよく主張します。インフラ整備こそが日本の将来繁栄につながり、「公共事業は無駄だ!」といった論説がウソ・デタラメであることを、皆様にご理解いただきたいと切に思うのです。

         

         

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        小池知事の豊洲市場の安全宣言とは、いったい何なのか?

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          JUGEMテーマ:豊洲市場移転問題

           

           東京都の小池知事は、2018/7/31に、今月10月に築地市場から移転する豊洲市場について安全宣言をしました。今日はこの問題について取り上げたいと思います。

           

           

           毎日新聞の記事を紹介します。

          『毎日新聞 2018/07/31 20:22 豊洲市場 小池知事が安全宣言 10月開場へ申請

           築地市場(東京都中央区)の移転に伴い開場する豊洲市場(江東区)について、小池百合子都知事は31日、専門家が安全性を認めたことなどを踏まえ「安全、安心な市場として開場する条件を整えることができた」と表明した。市場業者が風評被害払拭(ふっしょく)のために求めていた「安全宣言」にあたる。都は10月11日の開場に向け、近く農相に市場開設の認可を申請する。

           豊洲市場を巡っては2016年8月、小池知事が「安全性に疑問がある」と移転延期を表明。翌月、建物地下に土壌汚染対策の盛り土がないことが発覚し、17年1月には地下水から環境基準の最大79倍のベンゼンなどの有害物質が検出された。

           このため、都は建物の地下空間にコンクリートを敷いて有害物質侵入を防ぐなどの対策工事を進め、7月30日には都の専門家会議が「安全性が確保された」との結論を示した。

           現在も地下水から基準値の170倍のベンゼンが検出されている地点があるが、地上部の空気に含まれる有害物質は基準値を下回っている。【森健太郎】』

           

           

           

           上述の通り、都が建物の地下空間にコンクリートを敷いて有害物質侵入を防ぐなどの対策工事を進めて安全性が確保されたとしています。

           

           朝日新聞の記事で問題と思うのは、「建物の地下に土壌汚染対策の盛り土がない」「地下水から環境基準の最大79倍のベンゼンなどの有害物質が検出」と報じていることです。

           

           土木工学的には、盛り土はない方がいいのです。

           

           上図の通り、盛り土があると表面張力によって毛管現象を引き起こして、杭伝いに汚染水が地下から上昇してコンクリートに到着します。そのコンクリートの目地などから水が染み込んで、汚染水が地表に出てくる可能性があるのです。

           左図のように盛り土がない方が、地下水を遮断できますので安全です。この空間をピットというのですが、今回は重機が入るくらいの広さのピットということなので、極めて安全性が高いといえます。

           そもそも地下水を使うわけではないため、ベンゼンが検出されようが、ヒ素や六価クロムが検出されようが、関係ありません。むしろ盛り土にしていた方が危険と無関係ではなくなります。

           

           逆に築地市場は、周りがオープンになっているため、ねずみや害虫が入り放題であり、その上、築地市場からもベンゼンなどの有害物質が検出されています。

           有害物質が検出された背景としては、築地市場が戦後、敷地内にあった米軍のドライクリーニング工場で有害な有機溶剤が使用されていた疑義があり、土壌汚染されている可能性があるのです。

           

           また耐震性の観点からも盛り土よりも地下空間でピットにした方が、耐震性が強化されます。

           

           「豊洲は危ない!」という当初の発言は、明らかに小池知事の誤りです。2年が経過して予定通り豊洲移転するとしても、2年という期間を空けて移転が遅れたことについては、断罪すべきであると考えます。

           

           なぜならば、小池知事の今回の安全宣言は、今までは安全ではなかったが、自分(=小池知事)のおかげで安全になったということになるわけですが、もともと豊洲市場のほうがはるかに安全だったのです。

           

           当時の小池知事は、築地市場はコンクリートで地表を覆っているから安全だと言っていましたが、豊洲市場もコンクリートで覆われています。

           

           築地市場は安全で、豊洲市場は危険であると言った過去の発言を、小池知事は忘れているのでしょうか?

           

           小池知事の安全宣言とは一体何なんでしょうか?

           

           当時地下水から高濃度のヒ素、ベンゼン、シアンが出て危ないと言っておきながら、その後で築地からも有害物質が検出されたのです。

           

           こうしたことについて、マスコミは口を噤んだまま。豊洲市場で有害物質が検出された時の報道に比べ、築地市場で有害物質が検出された時の報道は、より静かに報道されました。

           

           小池知事の嘘について、本来ならマスコミは厳しく指摘するべきなのですが、マスコミは存在価値がないマスごみであるがゆえに叩かないのでしょうか?

           

           それとも小池知事はグローバリズムを推奨する人物だから、肩入れして築地市場での有害物質の検出について静かに報じたのでしょうか?

           

           今回、東京都は2017年12月から、地下空間の床にコンクリートを打ち、換気設備とか揚水ポンプを設置する追加工事を行って、これが完成したので安全宣言をしたとのこと。

           

           一方でその豊洲新市場は2年遅れでようやく2018年10月に開場の見通しになったわけで、2年も遅れているのです。

           

           築地市場のマグロの仲卸業を営む男性によれば、

          『駐車場不足の懸念から顧客に正式な店舗の移転が出せないでいる。そのため2年間、都の準備が凍結して準備が全く進んでいない。今回の騒動は時間と税金の無駄だったのでは?この2年間はいったい何だったんだ?』

          という声が出ているのです。

           

           私たちが改めて理解すべきことは、公共事業が遅れるということは、巨大な損害を出しているということです。よくマスコミは「維持費で〇〇億円も余計にかかった」などと報じることがありますが、維持費などはどうでもよく、完成されていれば普通に便益が発生します。

           

           2年間便益が発生すべきところ、便益が発生していないという意味で、発生していたであろう便益×2年分の利益が、東京都民、日本国民は得ることができなかったということです。

           

           西日本豪雨で、本来治水事業・治山事業が早く着手されていれば、自然災害から守られて命を落とさずに済むという便益を得られたであろうにもかかわらず、ありもしない財政問題を理由に着工が遅れて、岡山県の小田川が決壊し、広島では砂防ダムがないところで土砂災害が発生して、多くの人の命が失われるということが、現実的に起きています。

           

           公共事業は本当は国民の生命・財産を守り、将来の生産性向上や科学技術振興によって国民を豊かにするなど、巨大な意味があるにもかかわらず、それが遅れるというのは、大変にダメなことです。

           

           本当は公共事業は全て速やかに着手されるべきです。豊洲市場の開場が2年遅れたことについて何とも思わないというのは、公共事業の巨大な意味を理解していないという感性と同じであり、本当は国民は2年遅れたことについて、もっと激怒するべきです。

           

           

           

           というわけで今日は「小池知事の豊洲市場の安全宣言とは、いったい何なのか?」と題し、論説しました。

           

           

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          悔しいですが、あまりにも正しすぎる中国の鉄道建設を中心とした内需拡大政策

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             今日は、「悔しいですが、あまりにも正しすぎる中国の鉄道建設を中心とした内需拡大政策」と題し、中国が鉄道投資を1兆円上積みしたというニュースについてご紹介します。

             

             下記は日本経済新聞の記事です。

            『日本経済新聞 2018/08/14 18:00 中国、鉄道投資1兆円上積み 貿易戦争受け内需創出  

            【北京=多部田俊輔】中国政府は2018年の鉄道建設投資を1兆円超上積みする方針だ。計画している四川省とチベット自治区を結ぶ鉄道路線などの建設工事を増やす。地下鉄の新規建設の認可も再開した。鉄道建設は08年の景気対策の柱だった。米中貿易戦争で鉄鋼などの需要低迷の恐れがあるため、鉄道建設で国内需要を創出し、国内経済を下支えする。

             中国国有の鉄道会社、中国鉄路総公司がこのほど中国の経済政策をかじ取りする国家発展改革委員会との共同会議で決めた。鉄道建設投資は18年は年初計画の7320億元(約12兆円)から1割増に相当する680億元超を上積みし、8000億元超にする。

             中国の鉄道建設計画を巡っては、李克強(リー・クォーチャン)首相が7月下旬にチベット自治区の鉄道建設現場を視察し「内陸部のインフラの不足を速やかに補う必要がある」と発言。中国鉄路総公司は省ごとの子会社に追加投資の候補を挙げるよう通達を出していた。

             上積みする投資は20年以降に着工する予定だった鉄道建設の前倒しに充てるのが柱で、李首相が指摘した四川省とチベット自治区を結ぶ鉄道など内陸部の鉄道整備などが対象となる見通し。米中貿易戦争の影響を受けている山東省や江蘇省などの鉄道整備を優先する案も浮上している。

             地下鉄の新規建設計画の承認も再開する。地下鉄は地方政府が投資主体となる仕組みで、地方財政健全化を目的に、許認可権を握る国家発展改革委員会は17年に新規承認を凍結した。このほど吉林省長春市の地下鉄の新規計画に承認を出した。

            中国の鉄道関係者によると、高速鉄道の投資1億元につき、橋梁や線路などに鋼材3300トン使うことが多い。今回の投資上積みで鋼材の需要は200万トン以上増える見通し。17年の中国から米国への輸出量118万トンを上回っており、貿易戦争で減少する輸出カバーを狙うとみられる。

             一方、鉄道事業を運営する中国鉄路総公司の経営実態は厳しい。17年の総収入は1兆元を超え、税引き後利益も18億元で過去最高を更新したが、負債総額は約5兆元で、支払った利息は760億元にのぼる。18年は当初、投資減で財務改善をめざしていたが、政府の要請に応えて後回しになった格好だ。(後略)』

             

             

             上述の日本経済新聞の記事の通り、中国政府は、2018年の鉄道建設投資を1兆円上積みするとのニュースです。

             四川省とチベット自治区を結ぶ鉄道路線や地下鉄の新規建設の認可を再開するそうです。背景としては、米中貿易戦争で鉄鋼などの需要低迷の恐れがあるために、鉄道建設で国内需要を創出して国内経済を下支えするとのこと。

             

             私は、高校時代に中国武術の南拳を学び、大学で第二外国語を中国語を学び、社会人になって2002年に中国株を買い(江蘇高速道路有限公司:HK0177 で今も保有継続しています。)、2010年には上海万博にも行きました。そして2011年にはハノイから国境を越えて中国入りする観光に行き、2017年9月には湖北省の武漢を往訪、十堰市の武当山に登山しました。

             

             かつては中国が好きだったのですが、歴史を調べていくうちに、仮想敵国であることを知り、2010年9月7日の尖閣諸島中国漁船衝突事件が発生して以来、嫌中となりました。

             

             日本のマスコミは北京に支局を置くため、中国のネガティブな記事が書けません。実際は国際法違反であるエスニッククレンジング(民族洗国)を公然とやっており、とんでもない国家なのですが、そのことを記事にすることができないのです。

             

             日本は中国の属国になったことはありませんが、朝鮮半島は常に属国の歴史です。日本がデフレを放置して、自国の発展途上国化を進めていくと、やがて中国とGDPで10倍程度の差が付き、軍事費で20倍程度の差がつくことでしょう。

             

             そういう意味では日本は早くデフレ脱却をするべきなのですが、中国の鉄道建設投資1兆円上積みするというこの政策は、大変悔しいのですが、極めて正しい政策です。中国政府は正しすぎます。

             

             もともと経済成長するためには需要がなければいけません。

             

             では、需要とは何でしょうか?人口でしょうか?

             

             経済成長の言葉の定義は、GDP拡大なのです。

             

             GDP拡大のためには、GDPの算出式を理解する必要があります。

             

             GDP=個人消費+政府支出+設備投資+純輸出(※)

             ※純輸出=輸出−輸入

             税収=名目GDP×税率

             

             上記式の通り、個人消費といえば人口かもしれませんが、何も経済成長は個人消費でなくても政府支出で拡大することが可能なのです。

             

             本来は外需依存ではなく、内需中心に経済成長していくと、これは強靭な経済になります。何しろ、他国の影響を受けにくくするからです。

             

             内需中心の経済成長であれば、米国とトルコの貿易戦争のように「何かあれば関税を引き上げるぞ!」と外交カードを持たれて脅される心配がなくなります。自力の力で他力本願とならずに経済成長することができるという点で、本来は内需主導で経済成長するのが望ましいわけです。

             

             とはいえ、現実的には内需だけでなく外需も合わせて経済成長していくわけですが、外需がダメなら内需を増やさなければならないというのは、当たり前の話です。

             

             これから貿易戦争が起きるという状況下では、中国は内需シフトを強めていくことでしょう。しかも鉄道を作るというのが今回のニュースです。

             

             鉄道を作るということは、単に内需拡大するだけでなく、完成した鉄道インフラが生産性を高め、さらなる成長を促します。このことをストック効果といいます。

             

             もし、中国政府が単に中国人民にお金を配るだけなら、需要が増えるだけでストック効果が発生しません。中国はストック効果が生まれる鉄道インフラ投資をやるということなので、単に内需主導で需要拡大のフロー効果を享受するのみならず、ストック効果の拡大をもたらすという意味で、あまりにも正しすぎる政策です。

             

             ではなぜ、中国が正しい政策をやる一方で、日本にはそれができないのでしょうか?

             

             原因は、プライマリーバランス黒字化目標を是とする緊縮財政です。

             

             プライマリーバランス黒字化目標があって、政府は支出を増やせないのです。

             

             特にこの過去3年間は、社会保障費以外は年間300億円しか増やしておらず、中国政府が1兆円鉄道投資をやるという報道があっても、おそらく日本で鉄道投資を1兆円増やすという発想は出てこないでしょう。

             

             中国の新幹線投資はもともと年6〜7兆円程度投資しているのに比べ、日本の新幹線投資は年間750億円程度なのです。日本の新幹線投資額年間750億円は、今回の中国政府の鉄道投資上積み分1兆円の7.5%程度にしかなりません。

             

             日本は消費増税をして個人消費を削減し、代わりに外需を増やして埋め合わせをしているという状況。これはこれで経済成長していたとしても、強靭な経済成長とはいえません。むしろ外需依存という国力弱体化の最悪な方向に向かっているといえます。

             

             仮想敵国の中国ですが、経済政策は正しすぎます。日本の政治家は見習って欲しい、そう思うのであります。

             

            <中国湖北省の十堰駅から出発して終点の漢口駅に到着した特急列車>

            (2017/09/17に杉っ子が漢口駅で撮影)

             

            <杉っ子が漢口から乗車した特急列車(右)と上海・広州から来た寝台特急列車(左)>

            (2017/09/16に杉っ子が十堰駅で撮影)

             

             

             

             というわけで今日は「悔しいですが、あまりにも正しすぎる中国の鉄道建設を中心とした内需拡大政策」と題して論説しました。

            外需よりも内需シフトすること、日本も同じことが求められているのに、全くそうした声が出ないことに、私は危機感を覚えるのです。

             このままですとインフラ整備で後れを取り、中国に後塵を拝し、中国の属国化する可能性が極めて高いです。中国人に日本人が使われるなどということを、私たちの先祖は望んでいたでしょうか?

             存在しない財政問題や公共事業は無駄という間違った論説に加え、日本は小国だったなどという自虐的な歴史観が原因で、現代人は正しい知見を持つことができないでいることが、解決を困難にしているとしかいいようがありません。

             我が国が未来をもってさらに発展するのか、発展途上国化に気付かず凋落して中国の属国になるのか?私たちの現在の世代の人々が真剣に考え、知見を高めて正しい政策を議論していく必要があるものと、私は考えます。

             

             

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              JUGEMテーマ:銀行

               

               今日は、「日銀が保有する国債は、地球が崩壊して滅亡するまで放置でOK!」と題し、産経新聞の記事を紹介したうえで、下記1〜5の順で論説したいと思います。

               

               

              1.マイナス金利導入の意味とは?

              2.マネタリーベースを増やせばマネーストックが増えるのは本当か?

              3.「日銀当座預金の意味」と「バンクとノンバンクの違い」について

              4.法定準備預金制度について

              5.産経新聞記事に対する私見

               

               

               

               まずは産経新聞の記事を紹介します。

               

              『産経新聞 2018/08/18 21:58 「出口」戦略の障害の懸念も 利上げで債務超過… 日銀資産、戦後初のGDP超え

               日銀の総資産が膨張したことで、将来的に大規模金融緩和を手じまいする「出口」戦略を開始した際に財務体質が悪化する懸念が強まっている。日銀が国債購入で放出したお金は金融機関が日銀に預ける当座預金に入る仕組みで、金利水準を引き上げればその利払い費が増加するからだ。最悪の場合、日銀の自己資本8兆円が消失して債務超過に陥る恐れもあり、出口を検討する際の障害になる。
               三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは「もし総資産の規模を保ったまま利上げに踏み切れば、債務超過もあり得る」と指摘する。
               問題は日銀の収入となる保有国債の利息と、支出となる当座預金の利払い費の差額だ。平成29年度末の国債保有額は448兆円で、利息は1兆2211億円に上る。対する当座預金は378兆円で、利払い費は1836億円。差額の1兆円余りが日銀の収益となる。
               当座預金の金利はマイナス金利政策下で0.1〜マイナス0.1%に抑えられている。ただ、出口戦略で金利を引き上げれば保有国債の金利(29年度は0.28%)を超え、利息の受け取り分を支払い分が上回る“逆ざや”になりかねない。仮に1%利上げすれば単純計算で3兆7千億円規模の利払い費が追加発生するため、数年で日銀の自己資本を食い潰してしまう。
               日銀も出口での損失に備え27年から国債の利息収入の一部を年数千億円規模で引き当てており、国債の購入規模も減額している。また、実際の出口戦略では、まず資産規模を減らしてから利上げに移るといった手法も考えられるため、「逆ざやに陥らないよう工夫して対策を取るだろう」(市川氏)との見方が強い。
               ただ、資産規模ばかり膨らみ、対策のハードルを上げているのは事実だ。日銀は先月の金融政策決定会合で欧米の中央銀行にならいフォワードガイダンスと呼ばれる指針を導入し、超低金利を当面続ける姿勢を明確にした。市場では2%の物価上昇目標達成は難しいとの見方が強まっており、終わりの見えない金融緩和をいつまで続けるのか改めて問われている。(田辺裕晶)』

               

               

               上記の記事は、日銀の金融緩和が継続していることについての懸念をしている旨のニュースです。どのような懸念があるかといえば、2013年以降、アベノミクスの金融緩和で、コアCPI(生鮮食品の価格変動を除く消費者物価指数)で2%上昇の目標を立てていましたが、未だ日本はデフレのため、2%の物価目標達成は難しいと言われています。

               

               デフレ脱却には財政出動が必要ですが、謂れのない借金問題が原因で、国債増刷すらせず、財政出動は無駄遣いとして財政出動をしていません。政府の積極的な財政出動によって需要創出をしない限り、2%の物価目標達成は未来永劫できないでしょう。

               

               物価目標率に関していえば、私はもともと日銀の物価目標はコアCPIではなくコアコアCPI(エネルギー価格と生鮮食品の価格変動を除く消費者物価指数)で、2%目標を設定すべきと思っております。なぜならば原油価格が上昇するだけでコアCPIは上昇するからです。

               日本は原油輸入国ですから、原油価格が上昇しても日本人の所得増にはつながらず、カタールなど中東諸国の所得が増えるだけであり、日銀の物価目標がデフレ脱却だとするならば、輸入価格の物価上昇が主な原因でコアCPIが2%達成できたとしても、GDPは輸入は控除するため、GDP拡大どころか、むしろ伸びを抑制してしまうのです。

               

               

               

              1.マイナス金利導入の意味とは?

               

               日銀の物価目標がコアCPIかコアコアCPIかどちらがふさわしいかという話題はさておき、日銀は2016年1月29日からマイナス金利を導入しました。

               

               理由は金融緩和で、日銀が市中(三菱東京銀行、三井住友銀行、みずほ銀行などメガバンクほか、地銀や信金・信組といった金融機関)から国債を買い取って、銀行の日銀当座預金を増やしていますが、資金需要がなく貸し出しが伸び悩んでいるからです。

               

              <日銀当座預金とマイナス金利のイメージ>

               

               

               上図はマイナス金利のイメージ図です。上図を見れば一目で明らかですが、日銀当座預金全額にマイナス金利をかけるわけではありません。基礎的残高とマクロ加算残高を除く日銀当座預金部分のことを政策金利残高と呼んでいますが、この部分にマイナス金利をかけるのです。

               

               ではマイナス金利導入の意図は何でしょうか?

               

               それは「新規に日銀当座預金に積まないで貸し出しを増やしなさい!」という意図です。

               

               とはいえ、物・サービスの価格を下げないと売れないというデフレ環境下では、資金需要が伸び悩むのは当たり前です。デフレでお金を借りてビジネスをしても儲からないため、銀行への借金の返済が滞る可能性を恐れて、お金を借りてまでしてビジネスをしようとはしないのです。

               

               

               

              2.マネタリーベースを増やせばマネーストックが増えるのは本当か?

               

               「市中に出回っているお金」のことをマネーストックといい、「市中に出回っているお金+日銀当座預金」のことをマネタリーベースといったりもしますが、リフレ派と呼ばれる人々が、「マネタリーベースを増やせば、マネーストックが増える」と考え、財政支出をせず金融緩和だけで景気が良くなると主張してきました。

               

               これは1976年にノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマン氏が唱えたマネタリーベースを操作することでマネーストックを増減できるという考え方に基づくものです。私は、この意見には全く賛同できず反対の立場です。

               

               なぜならば需要がない限り、日銀当座預金の残高をどれだけ増やしても、貸し出しが増えることはありません。理由は企業が借入して投資しても、物・サービスの値段を下げないと売れないデフレ化では儲かりにくいため、借入金の返済が滞る可能性が高いからです。つまりマネーストックを増やすことを目的に、マネタリーベースを増やすべく日銀当座預金をどれだけ増やしても、残念ながらマネーストックが増えることはないのです。

               

               事実、現在の日本は日銀が国債を買い取って日銀当座預金を増やす形で、マネタリーベースが増やしていますが、物価上昇率2%目標は達成できていません。

               

               

               

              3.「日銀当座預金の意味」と「バンクとノンバンクの違い」について

               

               もともと日銀当座預金は「お金」であることには間違いありません。ただし一般の支払い(資材などの代金の支払い、従業員などの給料の支払いなど)に使うことができません。物・サービスを買うお金ではないのです。

               

               もちろん銀行は日銀当座預金を取り崩して現金に換えることは可能です。とはいえ、譲渡性という点で日銀当座預金は、現金紙幣、銀行預金、小切手、約束手形などに比べて劣っています。

               

               また日銀当座預金は、私たち家計分野や企業が口座を持つことができず、法定準備預金ということで銀行が保有します。銀行は記帳するだけでお金を貸すことができます。信じられないかもしれませんが銀行は、資金を調達して利ザヤを載せて貸すのではなく、記帳するだけでお金を貸し出すことができます。

               

               例えば皆さんが住宅ローンを3000万借り入れるとして、3000万円の現金をみたことがあるでしょうか?おそらくないでしょう。銀行は預金が集まるのを3000万円待つことなく、貸付金3000万円、お金を借りる人に借入金3000万円とするだけで、お金を貸すことができます。この3000万円借りた個人は、住宅建設会社に建設代金を3000万円支払います。現金で払った場合は、建設会社は受け取った3000万円を銀行に預けるでしょう。もしくは振込払いの場合は、建設会社の預金残高が3000万円増えるでしょう。

               

               こうして裏付けなく3000万円貸し出したお金は、銀行に預金という形で戻ってきます。このとき、経済のパイが3000万円増えることとなりますが、このことを信用創造といいます。バンクと呼ばれる銀行は信用創造の機能を持ちます。経済のパイを拡大する機能を持ちます。ところが、ノンバンクの場合は信用創造の機能がないため、有償無償問わず他から何らかの名目(借入金、社債、新株発行、保険料などの何らかの名目)で調達した上で、利息を付して貸し出します。

               

               消費者金融、商工ローン会社であれば、銀行から有償で借りて、さらに金利を乗せて貸したり、株式を発行・社債を発行・銀行から借り入れなどで調達したお金に金利を乗せて貸す。生命保険会社であれば保険料を集めて、そのお金に金利を乗せて住宅ローンとして貸し出す。などなど。

               

               上述の通り、銀行というバンクはお金を貸し付ける際に資金調達などしなくても、自身のバランスシートに「貸付金」、借主の通帳に「借入金」と記帳するだけでお金を貸すことができて、経済のパイを拡大する信用創造機能を持ちますが、ノンバンクは資金を調達して貸し出すビジネスモデルであるため、信用創造の機能はありません。これがバンクとノンバンクの決定的な違いです。

               

               

               

              4.法定準備預金制度について

               

               銀行などのバンクは、記帳するだけでお金を貸せるため、規制がないと制限なく貸し出しができてしまいます。そこで法定準備預金という制度で、日銀当座預金に日銀が定めた利率の分の現金を預けなければならないと規制しています。

               例えば、法定準備預金の利率が1%だった場合、3000万の住宅ローンを個人に貸し付けたとすれば、その銀行は1%に相当する30万円を日銀当座預金に預ける必要があるのです。

               

               この日銀当座預金には通常は利息が付きません。もともと利息が付かない日銀当座預金でしたが、リーマンショックで世界的に金融危機が訪れた2008年10月から、日銀は日銀当座預金の残高に0.1%の金利をつけることにしたのです。それが先ほどの図の基礎的残高に対する△0.1%です。

               

               とはいえ、日銀は政府が55%の株式を持つ株式会社組織です。日銀と政府は親子関係にあるため、日銀が買い取った国債の金利は国庫納付金として、一般会計に入ります。

               

               本来であれば、利息が付かない日銀当座預金に対して、各銀行の残高の0.1%相当の利息を日銀が銀行に払うということは、一般会計に入るお金の一部が民間の銀行に渡されていることを意味します。

               

               

               

              5.産経新聞記事に対する私見

               

               こうしたことを踏まえますと、産経新聞の記事は、明確に間違っていると断言できます。

               

               産経新聞の記事によれば、日銀の2017年度の決算資料から、日銀当座預金残高が378兆円あり、日銀が銀行に払う利息は1836億円にも上るとのことです。この利息は、上述の「4.法定準備預金制度について」の後段で述べている通り、本来一般会計に入るべきお金を、銀行の経営の補助のごとく銀行に渡しているものです。

               

               もともと日銀当座預金は利息は付きません。ブタ積預金といって金利が付かない口座が日銀当座預金です。

               

               そのため、本来銀行は資金を効率よく運用するため、できるだけ不要な資金を日銀当座預金に預けないで最小限の残高に留めるということをします。

               

               例えば、今日の定期預金は普通預金と金利が同じ水準なので意識しないかもしれません。皆さんの家計では、金利の低い普通預金の残高はなるべく少なくして、残りは少しでも金利が高い定期預金に預けるということをするはずです。

               

               そうした発想と同様に銀行は、日銀当座預金は法定で定められた利率以上に預けないようにするというのが、本来の姿です。

               

               ではなぜ今、銀行は日銀当座預金の準備利率を超えてお金を預けるのでしょうか?

               

               お金を借りてくれる人がいないからです。銀行といえば聞こえはいいですが、消費者金融と比べれば、信用創造の機能があるだけであり、預ける人しかおらず、借りてくれる人がいなければ銀行の経営は破綻します。何しろ銀行の貸借対照表上では、預金は負債だからです。

               

               とすれば産経新聞の記事の「(準備預金の利率を)仮に1%に利上げすれば・・・」というくだりは、何のために1%利上げするの?ということになりませんでしょうか?まさかマイナス金利環境で貸し出しが伸び悩む環境の中、経営が悪化する銀行の補助金を増やすために1%利上げするのでしょうか?これは、もう意味不明としかいいようがありません。真の意味で正常化というのであれば、日銀当座預金の利息0.1%付与を、0.0%に戻すことこそ、正常化です。

               

               だいたい「出口戦略」を語る人の論説の中に、肥大した日銀のバランスシートとして、日銀の金融緩和政策は将来の日銀の経営破綻リスクが高まるなどと、ウソをまき散らす人が多い。「出口戦略」というそれっぽいことを語る人は、なぜか日銀のバランスシートの拡大(=日銀の負債と資産の両方が増えること)を問題視します。

               

               日銀といえども、負債だけ増えるというファンタジーなことはありません。反対側で必ず資産も増えます。簿記が少しわかる人なら理解できるはず。負債が増えて資産が増えるわけですから、日銀の総資産が増えることはあってバランスシートは拡大しても、純資産が減るわけではないのです。仮に日銀のバランスシートが拡大・肥大化して何か問題あるのでしょうか?真に問題にすべきことは、国債を増刷せず市中の国債を買い取り続けた場合、市中の国債が尽きてしまうことではありませんか?

               

               日銀が保有する国債が増えること自体は極端な話どうでもよく、地球が崩壊して滅亡するまで放置でOK!なのです。

               

               日銀の当座預金の金利が上昇して日銀の純資産を食いつぶすという論説は、全くをもってデタラメです。記者クラブで財務省職員からそうした説明があったのか?記事を書いた真相は不明ですが、産経新聞の記事には残念に思います。

               

               

               

               というわけで、今日は「日銀が保有する国債は、地球が崩壊して滅亡するまで放置でOK!」と題して論説しました。日銀の金融緩和は、財政出動とセットになってこそ、景気浮揚策として十二分に寄与しますが、財政出動をしなければ貸し出しは増えず、景気浮揚効果はありません。

               とはいえ、市中の国債(民間の銀行や信金・信組が保有する国債)を、日銀が買い取ることで、実質的な政府の負債が減少し、新規の国債発行を容易に消化できる環境を作り出していることに意義があります。つまり国債増刷の環境を整えているということです。であるからこそ、「新規に国債増刷」「積極的な財政出動」という政策が打てます。

               にもかかわらず、謂れのない借金問題や、公共事業が無駄であるとか、税金の無駄遣いなどとして、「積極的な財政出動」をしないから、いつまでたっても景気が良くならないのです。

               一刻も早く多くの国民が「積極的な財政出動」こそ、早急に行うべき政策であることに気付いていただくため、私はこの言論活動を続けていきたいと思うのであります。

               

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              小さな政府論は正しいのか?(厚労省の分割問題について)

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                JUGEMテーマ:省庁の情報

                JUGEMテーマ:行政

                 

                 皆さんはよく、”日本は人口が減少するから、「小さな政府」を目指すべきだ!”という論説を目にすることがあるでしょうか?

                 「小さな政府」は、1976年にノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマンが主張していたのですが、彼こそ新古典派経済学の元祖であり、規制緩和で民営化を推進することを唱えていた学者です。彼は「小さな政府」論を支持すると同時に、マネタリストともいわれ、マネタリーベースを増やせば、マネーストックをコントロールして増やせるという主張もしていまして、私は正直、あまり評価していません。

                 

                 そこで今日は「小さな政府論は正しいのか?」と題し、日本経済新聞の記事をご紹介したいと思います。

                 

                『日本経済新聞 2018/08/02 厚労省の分割検討 政府・自民、20年にも 生産性向上へ政策強化  

                 自民党は今月にも厚生労働省(総合2面きょうのことば)の分割を念頭に置いた提言を安倍晋三首相に渡す。これを受け、政府は分割への検討を本格化する。2001年に誕生した厚労省は働き方改革など新たな政策需要に対応しきれていないと判断した。政策立案を強化し、生産性を高める。20年を目標に旧厚生省と旧労働省の業務の2分割による新体制を発足させる計画だ。

                 党行政改革推進本部(甘利明本部長)は01年の1府12省庁の中央省庁再編を検証し、月内にも首相に提言する。20年近くが経過して浮かび上がった問題点を洗い出し、課題を列挙する。

                 厚労省は07年に旧社会保険庁の年金記録を巡り、年金記録の持ち主が分からなくなった「消えた年金」問題が発覚。その後も年金の個人情報流出や支給漏れなどの不祥事が相次いだ。行革本部幹部は提言について「厚労省の現体制は限界に来ている」とのメッセージを送るのが主眼と説明する。

                 労働行政はかつては労働組合を意識した賃上げなど労働環境の改善に傾斜していた。今は働き方改革に象徴されるように日本全体に目配りした政策が求められる。厚労省分割構想の底流には生産性向上への期待がある。

                 国会の要因もある。厚労省が国会に法案を提出しても審議する委員会は衆参厚生労働委員会だけ。答弁にあたる閣僚も1人しかいない。厚労省を分割すれば、閣僚も2人になり、委員会も2つになるので、法案審議を加速できる。

                 自民党内には総務省、経済産業省など複数の省にまたがる現在の情報通信行政の統合や総合的な通商戦略を担う「日本版通商代表部」を創設する案もある。政府内は厚労省に加え、内閣府や総務省、国土交通省などを創設した01年のような大がかりな再々編には否定的な意見が多い。

                 抜本的な省庁再々編に慎重なのは憲法改正や経済再生など看板政策と並行させるのは時間的に厳しいとの認識がある。

                 首相が9月の党総裁選で3選したとしても任期は21年9月までだからだ。厚労省分割などに限定した小幅な再編にとどまる公算が大きい。

                 政府は01年に厚生省と労働省を統合した際、その理由を「社会保障政策と労働政策を一体的に推進する」と主張した。

                 日本のように年金や医療、労働を一つの省で扱う国は世界では珍しい。米国は社会保障、年金、労働政策を複数の省庁で分担。英国やフランス、ドイツも複数に分けている。

                 政策研究大学院大学の竹中治堅教授は「厚労省は閣僚の守備範囲があまりに広く、分割すれば意思決定が早くなる利点がある」と評価する。半面「社会福祉問題と労働問題は密接に関連しており、単に省庁を切り離せば解決するというわけではない。国会改革も同時に進める必要がある」と話す。』

                 

                 

                 

                 上記記事の通り、厚労省の分割を検討するというニュースです。厚生労働省といえば、今から11年前の2007年に、旧社会保険庁の年金記録を巡り、消えた年金などといわれ、年金記録の所有者がわからなくなったという問題が発生しました。

                 

                 その後も、年金の個人情報流出、支給漏れなど、不祥事が相次ぎました。

                 

                 この厚生労働省の分割は、2020年を目標に旧厚生省と旧労働省を2分割するというものですが、記事の詳細を読めば、誰でも納得ができるものと思われます。

                 

                 とすれば、2001年1月6日に再編統合した省庁再編は、いったい何だったのか?ということになります。

                 

                 例えば国交省でいえば、運輸省、建設省、北海道開発庁、国土庁の4つを全部1つにしました。全部一つに再編したときの議論は、「効率化する」ことが狙いでした。

                 

                 国交省の場合は、大臣が4人いたのが1人になった結果、4つあった委員会は1つになりました。当時は「効率化」が大義名分で1つにしたものの、今回の見直し議論では、大臣が1人しかいないから「非効率」であるとし、委員会が1つだと審議が遅いから2つの委員会に分けるとしています。

                 

                 これは当時の省庁再編の議論と、全く完全に正反対の逆の話です。

                 

                 当時省庁再編の目的としては、縦割り行政による弊害をなくし、内閣機能の強化、事務および事業の減量、効率化などが謳われていました。1つに集中した結果が「非効率」であるとするならば、当時の再編前のままでよかったのでは?という話になります。

                 

                 しかも、今回の議論はなぜか厚労省の分割だけが対象です。とするならば、建設省と運輸省、文部省と科学技術庁は、”ゆっくりのまま非効率でいい”と主張しているのと同じです。

                 

                 ついでにいえば、委員会が1つだと審議のスピードが遅くなるため2つに分けるというのは、速度という点では遅いとしても、権限に関しても議論すべきと思います。

                 

                 例えば財務省は、収入と支出が一体化して権限が集中しており、世論操作や政治家やマスコミへの影響力が集中しているので解体するか分割するべきという議論もあります。

                 

                 そうした議論も含め、省庁再編とは何だったのか?小さな政府を目指すというのは、本当に正しかったのか?改めて議論する必要があるのではないでしょうか。

                 

                 特に財務省については組織の在り方を見直す議論があってしかるべきで、公文書偽装作成を平気で行い、緊縮財政を主導して日本を亡国に追いやる組織といえます。財務省の人事制度が、GDPを拡大することが目標ではなく、増税をすることと出ていくものを抑制する緊縮財政をした人が評価されるという人事制度であるために、政府支出が思うようにできず、他国と国力でどんどん差を付けられ、日本が発展途上国化しているということを認識すべきです。

                 

                 そのため財務省の組織の在り方を含め、省庁再編についてもう一回見直すという声があってもいいと思います。ところが日本経済新聞の記事では、それをせず、なぜか小幅な改革に留まると報道されています。

                 

                 できることならば、財務省の人事制度の見直しや組織の在り方にまで踏み込み、全体的な見直しをしてもいいはずであると私は思うのです。

                 

                 

                 

                 というわけで今日は「小さな政府論は正しいのか?(厚労省の分割問題について)」と題し、論説しました。

                 現在、厚労省が国会法案提出している審議する委員会について、衆参厚生労働委員会だけ答弁に参加する閣僚が1人しかいないので、分割して2人にするとするならば、閣僚が2人、委員会が2つとなって法案審議を加速できるとしています。

                 もし、それが本当ならば、2001年1月6日に行った省庁再編によって、様々な法案の審議を減速せしめたといっているのと同じであり、失敗だったのでは?ということにならないでしょうか?

                 失敗か否か?という評価は横に置いたとしても、プライマリーバランス黒字化を是とする財務省については、この際、人事評価制度、組織の在り方を見直すべきではないかと思っておりまして、今回の報道の行方を見守りたいと思います。

                 

                 

                 

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                   トルコリラが急落しましたが、今日はトルコの米国に対する報復関税について取り上げます。

                   

                   下記はロイター通信の記事です。

                  『ロイター通信 2018/08/16 04:48 米政府、トルコの報復関税を批判 米国人牧師解放でも関税緩和せず

                   [ワシントン 15日 ロイター] - 米ホワイトハウスは15日、トルコ政府が米輸入品に報復関税を課す方針を打ち出したことについて「誤った方向に向けた措置」として批判した。トルコによる米国人牧師拘束やその他の外交問題を背景に、両国の関係は悪化。

                   トルコ政府はこの日、乗用車やアルコール、たばこなど一部の米国製品に対する関税を2倍に引き上げた。トランプ大統領が前週、トルコから輸入するアルミニウムと鉄鋼の関税を引き上げることを承認したと発表したことを受けた動き。

                   サンダース報道官は記者団に対し「トルコが関税措置を導入したことは実に遺憾であり、間違った方向に向けたステップだ。米国がトルコに課した関税は国家安全保障上の利益を踏まえた決定だったが、トルコの措置は報復に過ぎない」と語った。

                   その上で、米政府はトルコの経済情勢とリラ相場の動向を注視しているとした。また、トルコが直面する問題は長期トレンドの一環であり、米国の講じた措置によるものではないと強調した。

                   サンダース報道官はまた、トルコが身柄を拘束している米国人牧師のアンドリュー・ブランソン氏を解放したとしても、米国の関税措置の緩和にはつながらないと言明。ただ制裁措置の緩和にはつながる可能性があるとの認識を示した。

                   同報道官は「ブランソン氏が解放されても関税措置は解除されない。関税措置は国家安全保障に絡んでいる。ただ制裁措置はブランソン氏を含む、米国が不当に身柄を拘束されていると認識する人々の解放に関連して導入されており、(解放された時点で)解除を検討する」と述べた。』

                   

                   

                   上記の通り、トルコ政府が乗用車やアルコール類などの米国産品に追加関税を課すと発表しました。

                   

                   トランプ大統領がトルコから輸入するアルミニウム・鉄鋼の関税を倍に引き上げ、トルコの通貨のリラ急落の一因となりましたが、トルコ政府の米国産品追加関税を課す動きは、このトランプ政権の対応に対する報復措置です。

                   

                   また、米国ホワイトハウスの当局者は、トルコ国内で軟禁状態にある米国人牧師について、一週間以内に何らかの対応を取らない場合は、米国はさらなる行動に出るとして、牧師を解放するまで圧力をかけ続けることを示しています。

                   

                   もともと今回の米国の対応は、トルコ産のアルミニウム・鉄鋼の関税引き上げは、トルコで軟禁状態にある米国人牧師のアンドリュー・ブランソン氏が拘束されているというのがきっかけの一つとされています。

                   

                   トルコの通貨リラの急落で世界経済に混乱を引き起こした両国関係が一段と悪化して、対立が泥沼化していく可能性もあるでしょう。

                   

                   米国はトルコ産のアルミニウム・鉄鋼の関税引き上げに対し、トルコ政府は、乗用車120%、アルコール類140%、タバコ60%などなど、様々なものを追加関税の対象にしています。

                   

                   こうした両国の動きは、必然的ともいえます。

                   

                   大きな背景として、グローバリズムが世界中を席巻していたからです。

                   

                   もし、グローバリズムの進み具合が弱ければ、報復するとかしないとか、貿易戦争などと言われていますが、何されても関係がありません。したがって、報復関税が大きく影響をもたらすということは、米国とトルコの関係が深く結びすぎているからに他なりません。

                   

                   もともと国家のガバナンス、即ち政治的なコントロール内にグローバリズムを進めていく分には、安定的にグローバリズムの環境が保たれることもあり得ます。

                   

                   ところが、政治的なコントロール以上に自由貿易を進めてしまった場合、こうした格好で急に引き締めるということが起きて、リスクが大きくなるのです。

                   

                   グローバリズムで関税を引き下げ、他国と関係を深くしていくと、政権が代わって方針が変わるなど、このようなリスクは普通に存在します。その意味で、今回の両国の対応は、政府の政治的なコントロール以上に自由貿易を進めてしまったことによる当然の結果といえるでしょう。

                   

                   

                   

                   というわけで、今日は「米国とトルコの貿易戦争」と題し、ロイター通信の記事を紹介しました。今回の米国とトルコ間のお互いに関税強化する動きは、ある意味で第一次世界大戦や第二次世界大戦が引き起こされた状況と似ています。

                   グローバリズムは自国で考えた場合、輸出は射撃であり、相手国に失業増という傷を残す一方、輸入は味方の損害です。グローバリズムは、結果は自己責任としていますが、自己責任となった業種の供給力が崩壊すれば、その業種について他国依存となります。これが何かをきっかけに関税引き上げという形で、外交カードになってしまうのです。外交カードを持たれると、その分言いたいこと、やりたいことができなくなります。即ち国力の弱体化、安全保障の弱体化です。

                   この米国とトルコのやり取りを見ていますと、グローバリズムが戦争や紛争を導くきっかけになっていることの一例であり、グローバリズムを過度に推進することは危険であるということが、よく理解できるのでは?と考えます。


                  トランプ大統領が米国証券取引委員会(SEC)に対して、企業の四半期決算を半期へ変更提案!

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                     今日は、トランプ大統領が企業の決算について、現状四半期決算を義務付けているものを、半期へ変更提案したというニュースを取り上げ、日本における株式市場に与える影響や上場企業の決算業務について、私見を述べさせていただきます。

                     

                     下記はロイター通信の記事です。

                     

                    『ロイター通信 2018/08/18(土)00:02配信 米大統領、四半期決算の半期への変更提案 SECに調査要請

                     [ワシントン/ニューヨーク 17日 ロイター] - トランプ米大統領は17日、 米証券取引委員会(SEC)に対し企業に決算を四半期ごとでなく半期に一度発表することを許容した場合の影響を調査するよう要請したことを明らかにした。米企業幹部との話し合いを経てこうした要請を行ったとした。
                     米国では現在、公開企業は3カ月ごとに年4回決算を発表しているが、トランプ大統領の提案では決算発表は年2回に軽減され、欧州連合(EU)、および英国と歩調を合わせることになる。
                     トランプ大統領はツイッターで「これにより柔軟性が増し、資金の節約もできる」との考えを示した。そのうえで、多くの財界首脳との協議を経てSECに変更について検討するよう要請したと表明。ある企業幹部は決算発表を半期に一度とすることはビジネス強化に向けた1つの方策となると語ったとした。ただ具体的にどの企業の幹部がこうした見解を示したかについては明らかにしなかった。
                     トランプ氏はこのほど、休暇先のニュージャージー州のゴルフクラブに多くの大手企業の幹部を招いている。
                     トランプ大統領はその後、記者団に対し「(企業決算発表を)年2回とすることを望んでいるが、どうなるか見たい」と述べ、退任が決まっているペプシコ<PEP.O>のヌーイ最高経営責任者(CEO)からこの件を提起されたと明らかにした。
                     これについてヌーイCEOは、ロイター宛ての電子メールで「市場参加者の多くやわれわれビジネス・ラウンドテーブル(財界ロビー)会員は、より長期的な視点に立った企業のあり方について議論を重ねている。わたしの発言にはこうしたより広範な事情が背景としてあるほか、米国と欧州で異なる決算方式の調和を目指そうという意図も含まれている」と述べた。
                     四半期ごとの決算発表を廃止するにはSEC委員による採決が必要となり、独立機関であるSECに大統領が変更を命じることはできない。また、SECはトランプ氏が任命したクレイトン委員長の下で規制緩和に向けた措置を取ってきたが、公表された資料によると、四半期決算発表の廃止は現在は議題に挙がっていない。
                     SECのクレイトン委員長は午後に入り発表した声明で、決算発表の頻度について検討し続けるとの立場を表明。トランプ大統領は「米企業を巡る主要な検討事項」にあらためて焦点を当てたとした。
                     マサチューセッツ工科大(MIT)のスローン・スクール・オブ・マネジメントの上級講師、ロバート・ポーゼン氏は「企業決算の発表が四半期ごとから半期ごとに変更されれば、投資家はタイムリーな情報を得ることができなくなり、インサイダー取引が行なわれる恐れが著しく高まる」と指摘。企業が短期的に市場に監査されることを避けたいなら、次四半期の業績見通し公表をやめることで解決できるとの考えを示した。
                     また、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏とJPモルガン<JPM.N>のダイモンCEOは今年6月、米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙への寄稿で、採用、投資、研究・開発に向けた支出が抑制されているため、四半期ごとのガイダンス公表をやめるよう呼び掛けた。ただ四半期決算発表の廃止は提案していない。

                     

                     

                     上記記事の通り、トランプ大統領が、企業に義務付けている四半期決算について、半期決算への変更を提案したというニュースです。このニュースは米国のニュースではありますが、日本の上場企業の決算開示ルールについても影響が出るかもしれません。

                     

                     米国における四半期開示の状況は下表のとおりです。

                    (出典:金融庁の「金融審議会金融分科会第一部会」の資料の「諸外国における四半期開示の状況」から抜粋)

                     

                     

                     上表の通り、米国の四半期開示の状況は1934年から開始され、現在の四半期報告書制度は1970年から導入されていました。

                     一方で、日本では遅れて2000年代に入ってから整備され、日本の企業の決算開示ルールについては、次のような流れで今日に至っています。

                     

                    <2003年4月:証券取引所が上場企業に四半期開示を義務付け>

                    四半期業績の概況として、売上高の開示を義務付ける

                     

                    <2004年4月:証券取引所が四半期開示の拡充>

                    四半期財務・業績の概況として、連結決算ベース(連結財務諸表を作成していない場合は個別決算ベース)の「売上高」「営業利益」「経常利益」「四半期(当期)純利益、純資産」及び「株主資本の額」のほか、要約された「貸借対照表」「損益計算書」を開示することを義務付ける

                     

                    <2009年11月:金融商品取引法上の制度として義務付け>

                    金融商品取引法上の制度として、上場企業などを対象に「四半期報告書制度」の導入する

                     

                     

                     上記の流れで注視すべきは2009年11月の金融商品取引法上の制度としての義務付けです。もともと2003年4月から始まった四半期開示義務は、証券取引所の自主ルールという位置づけであり、いいかえれば法律(有価証券取引法、金融商品取引法などの法律)によってオーソライズされたものではありませんでした。

                     

                     そのため、2003年4月以降の開示義務付けが始まったものの、仮に開示情報に虚偽記載があっても、証券取引法などの法律に基づくものではないため、罰則の対象になりませんでした。結果、投資家が虚偽記載された情報を信じて株式を買って損害を被ったとしても、証券取引法に基づく民事責任を求めることはできなかったのです。

                     

                     法律にお詳しい方であれば、民法の不法行為責任709条で損害賠償請求ができるのでは?とお思いの方もおられるかと思います。とはいえ、一般的な話でいえば、民法の不法行為責任709条で、投資家が経営者に虚偽記載の過失責任を問うのを立証することは、極めて難しいということも想像できるでしょう。

                     

                     そのため、投資家保護という観点から、四半期決算の開示ルールについて金融商品取引法上の制度とすれば罰則の対象にできるということで、2009年11月から制度改定したのです。

                     

                     記事では、米国の著名投資家のウォーレン・バフェットらが、採用、投資、研究開発の支出が抑制されるので、四半期ガイダンス公表をやめるよう呼びかけたが、廃止までは提案していないとしてトランプ大統領の提案に対して、完全に賛同したわけではないとしています。

                     

                     私はウォーレン・バフェットの四半期ガイダンス公表の中止については賛成ですし、トランプ大統領の提案の通りさらに踏み込んで半期決算に変更するというのは、大賛成の立場です。

                     

                     ネガティブな意見として、もし四半期決算を半期決算に変更されると、企業の負担が減る一方で、投資家にとっては年4回決算状況の把握できたのが年2回となる点の悪影響を指摘する意見もあります。

                     

                     しかしながら、私は、企業の負担で将来のためにねん出すべき投資・研究開発費が、決算業務で費消される、もしくは十分な投資・研究開発費が費やせないというのであれば、トランプ大統領の提案は最適解であると考えます。

                     

                     企業の負担もさることながら、株式市場も年4回の決算で株価が右往左往することによるボラティリティ(=価格変動)も抑制できる効果があると思います。

                     

                     株価のボラティリティ抑制効果は横に置き、投資・研究開発費が十分に捻出できるということは、GDP拡大に寄与します。

                     

                     GDP=個人消費+政府支出+設備投資+純輸出(※)

                     ※純輸出=輸出−輸入

                     

                     ウォーレン・バフェットが指摘する投資・研究開発費の捻出抑制が、半期決算によって払しょくされるならば、上記式の設備投資が増えやすくなり、GDPが拡大しやすくなるということになります。GDP3面等価の原則により、設備投資が増えれば、投資(=消費)=生産=所得 ですので、米国国民の所得が増えるということになるわけです。

                     

                     つまり四半期決算を半期決算に変えることで、米国経済は、より力強く経済成長できるというわけです。

                     

                     もし、日本も半期決算になれば同じ経済効果が期待できるでしょう。

                     

                     

                     

                     というわけで、今日はロイター通信の「トランプ大統領が米国証券取引委員会(SEC)に対して、企業の四半期決算を半期へ変更提案!」を取り上げて論説しました。

                     米国は言うまでもなく日本のマスコミにも不人気なトランプ大統領ですが、1兆ドル(≒110兆円)のインフラ投資、NAFTA見直しによる関税強化、他国との関税の見直しなど、米国民ファーストを着実に実行に移しています。

                     また金融危機の引き金になりかねない銀証ファイアーウォール撤廃を見直すためのグラス・スティーガル法の復活なども注目すべき経済政策です。

                     上述の政策は、いずれも米国経済を強化し、米国国民の所得を増やし、国力強化につながる政策ばかりであり、日本もトランプ大統領の政策を見習うべきであると思います。


                    治水事業費を削減したのは民主党政権だが、安倍政権も治水事業費を増やしていない!という事実

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                      JUGEMテーマ:安全保障

                       

                       今日は、相次ぐ異常気象で、国家としてはどういう対策が必要なのか?検証しながら、「治水事業費を削減したのは民主党政権だが、安倍政権も治水事業費を増やしていない!という事実」と題して論説します。

                       

                       世界的な異常気象の話題が絶えない今年の夏ですが、日本では海水温の異常な上昇により、西日本豪雨に象徴されるような災害が頻するようになりました。

                       

                       そこで今日は

                      1.災害対策費を政府は増やしているのか?

                      2.民主党政権が治水事業費を削減したのは事実だが、安倍政権も治水事業費は増やしていないという事実

                      3.今後対応すべき課題

                      の順に論説したいと思います。

                       

                       

                       

                       

                      1.災害対策費を政府は増やしているのか?

                       

                       そもそも政府は災害対策費を増やしているのでしょうか?

                       

                       豪雨は、30年前比で1.7倍にまで発生頻度が増えているため、普通に考えるならば単純に災害対策費も1.7倍以上に増やさなければならないでしょう。

                       

                       ところが日本は災害対策費を減らしています。

                       

                       それはなぜか?プライマリーバランス黒字化目標があるからです。1997年に構造改革基本法が制定されて以来、公共事業の削減を始めました。そこに竹中平蔵氏がプライマリーバランス黒字化目標というコンセプトを、国家の財政運営に持ち込み、日本はデフレ対策ができないどころか、安全保障のための十分な支出ができなくなってしまったのです。

                       

                       これだけ豪雨が激甚化しても、予算は削減され続け、対策は一向に進みません。

                       

                       作るべき砂防ダムは作られないため、今もなお、土砂災害で大勢の人が命を失う危険にさらされているのです。

                       

                       今回の西日本豪雨もまた、作るべき砂防ダムの設置計画はあったものの、財政問題を理由に作ることを留保、または着工開始が遅れました。その結果、西日本豪雨では岡山県の小田川が決壊したり、古い砂防ダムが決壊したりするなどして、大勢の人々が亡くなりました。岡山県の小田川の堤防決壊では50人近くの人が亡くなったのが、象徴的です。

                       

                       もし堤防強化などの治水事業に予算が付けられ、対策を早期に着手していれば、今回の事故で命を落とした人々が助かった可能性は濃厚です。

                       

                       実は、計画された治水対策はたくさんありました。それらに予算をつけて早期着手していれば、死者は普通に半分以下になっていたことが想像できます。

                       

                       

                       

                       

                      2.民主党政権が治水事業費を削減したのは事実だが、安倍政権も治水事業費は増やしていないという事実

                       

                       下記は、公共事業費と治水事業費の推移のグラフです。

                       

                      (出典:財務省の予算資料、国交省の予算資料、内閣府のホームページなど)

                       

                       

                       上記グラフを作ってみますと、下記の通り分析ができます。

                      ●総じて公共事業費は1998年をピークに減少傾向にある

                      ●治水対策費も1998年をピークに減少傾向にあり、2008年に40%近く削減されて、それ以降2016年まで横ばい

                      ●現在の治水対策費の水準はピークの約半分程度である

                      ●金融危機が発生した1998年は小渕恵三政権が第二次補正予算で公共事業費を増額した

                      ●小泉純一郎政権は支持率が高かったが、公共事業費を毎年削減してきた

                      ●リーマンショックが発生した2009年に麻生太郎政権が、一時的にプライマリーバランス黒字化目標を棚上げし、公共事業費を増やした

                      ●民主党政権になって2010年、公共事業を削減し、治水事業も削減した

                      ●民主党政権は、2011年においても3.11の東日本大震災が発生したにもかかわらず、公共事業を削減している

                      ※2011年度は菅直人内閣は、第4次補正予算(第1次補正予算2011/05/02成立、第2次補正予算2011/07/25成立、第3次補正予算2011/11/21、第4次補正予算2012/02/08)まで組んだが、実額にしてわずか0.3兆円と低い水準の支出に留まっている

                      ●2012年度は補正予算が前年比2.1兆円増加の2.4兆円を組んだが、これは安倍政権が誕生して2013/02/26に成立したもの

                      ●2013年度以降の第2次安倍政権下においても、治水事業はピークの半分程度のトレンドを踏襲している

                       

                       

                       治水事業費だけでグラフを見てみると下記のとおりです。

                      (出典:国交省のホームページに掲載の公表数値)

                       

                       

                       上記の通り、2009年の麻生政権で1兆3,192億円の治水事業費が、2010年の民主党政権で8,073億円にまで減少しています。確かに民主党政権で激減させたことは事実です。

                       

                       とはいえ、2002年〜2009年にかけて、少しずつ右肩下がりで治水事業費が削減されており、2013年度以降においても低水準の8,000億円前後で安倍政権も治水事業を増やしていません。

                       

                       もし、安倍政権が治水事業を1兆5,000億円〜2兆円程度の予算をつけているならば、批判を免れると考えてもいいと思いますが、安倍政権ですら8,000億円前後で治水事業を増やしていないのです。

                       

                       

                       

                      3.今後対応すべき課題

                       

                       異常気象に対して、どういう対策をとればいいか?といえば、治水事業を徹底的に実施するしかありません。多くの人々が、次の台風で洪水などで命を落とすかもしれないからです。そしてその台風は、来週来るかもしれないですし、来月来るかもしれない、何しろ日本は、海外の他国と比べて、屈指の自然災害のオンパレード国であり、災害安全保障のための需要は無限です。

                       

                       2年前の2016年、台風がこないとされていた北海道でさえ、4つの台風(7号、11号、9号、10号)が来ました。特に2016年8月29日〜8月31日北海道に接近した台風10号では、上陸こそしなかったものの、爆風と爆雨をもたらし、南富良野町で空知川の堤防が決壊、帯広市でも札内川の堤防が決壊、そして芽室町でも芽室川が氾濫して道路や住宅が浸水、JR線や道路も壊滅状態になっただけでなく、道東の十勝総合振興局で新得町と大樹町で二人が死亡、清水町でも行方不明者が出ました。

                       

                       この2016年8月の北海道で大被害をもたらした台風10号は、複雑な動きをした台風ということで1951年(昭和26年)に気象庁が統計を取り始めて以来、初めて東北地方の太平洋側に上陸した珍しい進路ということで取り上げられました。

                       

                       この夏の酷暑に限らず、”気象庁が統計を取り始めて以来”が増えつつあり、過去のトレンドとは異なるトレンドになっている点で注意が必要です。何しろ北海道でも台風が4つも襲来して、人が亡くなってしまうということが起きる時代です。

                       

                       異常気象の緊急対応をすべきということが、誰が見ても明らかです。

                       

                       では具体的には何をすべきでしょうか?

                       

                       短期的な視点と、長期的な視点での対策の両方が必要と考えます。

                       

                       短期的な対策でいえば、今年から2年くらいのスパンでみて、小田川の堤防のような治水事業は、可及的に速やかにすべて着手・実行に移すべきです。合わせて砂防ダムの治山事業も同様に行うことが必要です。

                       

                       その際、国債が発行できないから予備費の範囲内とか、余っている財源を充当するとか、そういう家計簿発想、企業経営の発想ではなく、必要なお金はいくらなのか?必要額を開示させ、不足する財源は、躊躇なく国債発行する、これが最大のポイントであり、最適の解決策です。

                       

                       国債を発行したら借金が増えると思われる方、おられるかもしれませんが、円建て国債でマイナス金利でタダ同然で借りられる状況です。国債不足に陥っている債券市場も正常化します。財政法第4条では公共事業について赤字国債は認められませんが、建設国債は普通に認められます。例えば国会で治水事業・治山事業で20兆円必要と決まれば、20兆円国債発行することは普通に可能なことです。

                       

                       中長期的な対策としては、江戸時代の徳川家康の利根川東遷は60年かかりましたが、そのくらいの中長期スパンでのスーパー堤防の建設や防波堤防潮堤の設置、火山噴火予測など、これらの先行きが長い対策については、財政出動で行うために臨時に特別措置法を制定するなどの対応も検討課題です。

                       

                       短中期の対策、中長期の対策の両方を議論し、とにかく躊躇なく国債を発行すること、これが大事です。

                       

                       今年の夏は大阪北部地震、西日本豪雨、酷暑による熱中症などで、大勢の方が亡くなっています。また次の自然災害がいつ発生するか誰にも予測できません。このような過酷な自然環境にある日本だからこそ、災害安全保障に対する需要は無限にあり、プライマリーバランスを赤字化して躊躇なく国債発行することが必要であると私は考えます。

                       

                       

                       

                       というわけで今日は「治水事業費を削減したのは民主党政権だが、安倍政権も治水事業費を増やしていない!という事実」と題して、民主党政権だけが治水事業費を削減したというのは、間違っているということと、喫緊の課題としての解決策について論説しました。

                       

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                         今日は、「小中学校のエアコン設置を国の補助でやることは、経済成長に寄与します!」と題して論説します。

                         

                         

                         下記は日本経済新聞の記事です。

                        『日本経済新聞 2018/07/25 08:33 世界の異常気象「地球温暖化と関係」 国際機関

                         【ジュネーブ=細川倫太郎】世界気象機関(WMO)は24日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で記者会見し、世界各地で記録的な猛暑が広がっていると発表した。北極圏では30度、米国では50度を超えた。今月に西日本を襲った豪雨災害も含め、WMOは一連の異常気象は「温暖化ガスの増加による長期的な地球温暖化の傾向と関係している」と分析した。

                          欧州では特に北部で高気圧が停滞し、例年より高温の日が続く。WMOによると、ノルウェー北部バルドゥフォスでは17日に33.5度を記録。スウェーデンでは今月半ばに50カ所以上で森林火災が発生。WMOはスカンディナビアとバルカンの両地域では、高温と乾燥で森林火災の危険性が高まっていると警戒を呼びかけた。ギリシャのアテネ近郊でも山火事が発生し、死傷者が出た。

                        一方、米国カリフォルニア州のデスバレー国立公園で8日、52度を観測。同公園では、1913年7月に最高気温56.7度を記録している。ロサンゼルス近郊のチノでも48.9度に達した。

                         中東ではオマーンの首都マスカット近郊で6月28日、1日を通して気温が42.6度までしか下がらず、強烈な猛暑日となった。北アフリカでも各地で熱波が襲い、アルジェリアのサハラ砂漠では5日に51.3度を記録し、モロッコでも史上最高となる43.4度を観測した。

                         WMOの記者会見では気象研究担当のパオロ・ルティ氏が説明。WMOの今後の見通しとして「極端な異常気象はしばらく続く」と予測。「人の健康や農業、生態系など様々な分野に影響が広がっている」と懸念を表明した。一部地域では雨も降らないため、水不足への懸念も強まっている。(後略)』

                         

                         

                         

                         上述の通り、異常気象は世界的に広がっております。日本でも連日危険な暑さが続いており、7/22には埼玉県熊谷市で国内観測史上最高の41.1度を記録しました。

                         

                         異常気象というのは、これまで30年の歴史で一度もないくらいの暑さ、寒さということで、記事によれば、WMOが今後もこのトレンドが続くことを予測している旨を報じています。

                         

                         日本では熱中症対策で菅官房長官が全国の小中学校のエアコン設置のための政府の補助を検討する考えを示しています。何しろ今年は、洪水・豪雨災害で500人以上の人が亡くなっており、東京都23区では7月だけで70人以上の方が亡くなっています。全国でいえば200人超の人々が猛暑で亡くなっています。

                         

                         

                         西日本豪雨級の熱中症被害が、今年の酷暑で発生していると捉えることもできるため、菅官房長官のエアコン設置のための国の補助というのは、正しい判断といえます。

                         

                         昔はエアコンを稼働させず、汗をかく方が健康であるという考え方もあったかもしれません。エアコンを設置ていても稼働させなかったりする家庭も多かったでしょう。

                         

                         今年はエアコンをつけないと熱中症で命を落とす可能性があるため、エアコンが設置されているならば稼働させ、設置されていないのであれば設置を急ぐ必要があるものと考えます。

                         

                        (出典:nippon.comが文科省の資料を基に作成したものを引用)

                         

                         

                         上記は、全国公立小・中学校の冷房設備率の2017年までの推移です。グラフの通り2017年度時点で、普通教室で約50%、特別教室で30%強となっており、普通教室と特別教室で合わせて41.7%程度に留まっています。

                         

                         昔はゼロに近かったでしょう。私の小中学校ではどうだったか?1978年〜1989年が該当しますが、記憶はありません。ですが、上記グラフからみる限り、1978年〜1989年では、おそらく設置されていなかったと思われます。

                         

                         そういう意味では「41%も設置されているんだ!」という見方もあるかもしれませんが、今後もこの酷暑がトレンドとして続くということであれば、極力100%設置を目指すべきであると考えます。

                         

                         これを国の補助でやることは、何ら問題ありません。政府最終消費支出でGDP成長に寄与します。なぜならば、政府最終消費出=生産=所得で、GDP3面等価の原則により、例外なく必ずGDPが拡大して経済成長します。そして所得が発生すれば、税収増にも寄与する。そして所得を得た人は、消費を増やすことができる。これは所得を得た人がどのくらい消費か?は不確実ですが、すべて貯金や借金返済になることはないでしょう。とはいえ、財政支出額以上に所得を創出するのは、間違いありません。

                         

                         経済効果はいうまでもありませんが、酷暑という自然災害から子供たちの命を守ることができます。何よりも学校の先生も含め、快適な環境で教育サービスが供給できることにもなるわけです。

                         

                         

                         

                         というわけで、今日は「小中学校のエアコン設置を国の補助でやることは、経済成長に寄与します!」と題し、論説しました。ぜひ、政府には躊躇なく国債を発行していただき、エアコン設置プロジェクトを実行に移していただきたいです。それ以外のプロジェクト、例えば国際リニアコライダーなどもあります。デフレですので、この際政府がそうした長期プロジェクトをすべて政府支出で実行に移せば、普通にデフレ脱却することができます。

                         日本には財政問題は存在しませんから、躊躇なく国債を発行して政府支出によって公共事業を行う、これがいま日本政府に求められているのです。

                         

                         

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                           以前、財政法第5条について取り上げたことがありますが、今日は財政法第4条という法律について取り上げ、公共事業の支出の財源として国債発行することは、何ら問題がないことをご説明したいと思います。

                           

                           読者の皆様の中には、公共事業へのアレルギー反応を持つ人がいるかもしれませんが、利益の出にくい事業や成果が出るのに時間がかかるが将来の技術革新につながるような科学技術投資など、民間企業がやるにはリスクが高いものこそ、公共事業でやるべきものであり、公共事業=悪と考えるのは全くの誤りです。

                           

                           公共事業の例でいえば、橋脚・トンネル・防波堤防潮堤・高速鉄道・高速道路・一般道路・港湾などなど、民主党的にいえば、いわゆるコンクリート分野であったり、CNT(カーボンナノチューブ)やCNF(セルロースナノファイバー)などの新素材や、IPS細胞などの医療分野や、国際リニアコライダー事業やスパコン事業など、いろいろあります。

                           

                           どれ1つとっても重要です。民主党政権のときのスローガンである「コンクリートより人へ」で公共事業を削減して人にお金を配るというのは、公共事業削減=需要削減=経済成長抑制です。お金を配ってもデフレ下では消費に使われるか否か?が不明であるため、消費伸長とならないということで経済成長効果も限定的であることから、インフレ時以外にはマクロ経済的に間違っている政策です。

                           

                           経済学的観点からみなくても、日本は自然災害オンパレード国です。今年の台風・豪雨のみならず酷暑に加え、地震・火山噴火もあれば山津波や洪水はもちろんのこと、日本の国土の50%が豪雪地帯もしくは特別豪雪地帯に該当するという、海外の国々と比較した場合、とんでもない自然災害国です。治安はいいかもしれませんが、たとえ人に殺されることはなくても、自然災害で人が殺されます。

                           

                           そのため洪水を防ぐためのスーパー堤防やダム建設は必要です。津波対策として防波堤防潮堤も必要です。山津波対策として砂防ダムも必要です。豪雪に備えて除雪車の配備は万一に備えてふんだんに配備する必要もあります。地震に備えて耐震強化も必要。火山に備えて噴火予知ができるようにする研究も必要。

                           

                           こうしたことは、マクロ経済学的には、すべて需要です。安全保障対策でみれば、自然災害対策の需要は日本では無限にあります。そこに資金を躊躇なく投ずれば経済成長ができ、自然災害から日本国民を守ることができるのです。

                           

                           需要があるならば、民間企業がやればよいのでは?と思われる方、100年に1回のために備えるという経営者は普通に存在しません。中期経営計画ですら3年〜5年程度。GMOインターネットの熊谷社長は50年スパンでインターネットビジネスを見ていると株主総会で発言されておられましたが、そうした経営者は極稀です。

                           

                           なぜならば、成果が出るのに時間がかかるというのは、利益追求組織の株式会社では難しい。株式会社組織で利益を追求しようとすれば、すぐに成果が出るものにこそ、他よりもプライオリティを高く人・物・カネを投じざるを得ません。

                           

                           しかしながら、民間の投資を促してそれらを待っていたとしても、自然災害は待ったなしです。待っている間に手をこまねいていれば、その間に自然災害が発生したら日本国民が殺されるかもしれないのです。

                           

                           であるがゆえに、成果が出るのに時間がかかるもの、利益は出ないが安全保障上必要であるもの、そうした資金の源泉は、国債で何ら問題がありません。

                           

                           よくある間違いは、プライマリーバランス黒字化目標を推進し、政府の中に内部留保のごとく税金を貯め込んでから支出するとお考えの方、いるかもしれません。これこそ、国家の財政運営を家計簿の発想、企業経営の発想で考えるという典型的な誤りです。

                           

                           国家の財政運営は、家計簿や企業経営と異なり、通貨発行権があるということ、そもそも政府の存在は「民を治め世を救う=経世済民」を目的としたNPO法人であって利益追求組織ではないことから、税金を貯め込んでから支出するなんて考える必要がないのです。

                           

                           自然災害で人が死ぬことが予測できるとするならば、それがたとえ100年に1度かもしれなかろうが、200年に1度かもしれなかろうが、甚大な被害が人々を苦しめるということが想定されるのであれば、政府は躊躇なく国債を発行して財政出動によって、その対策をするべきですし、財政法第4条という法律によって国債発行で公共事業することは、普通に認められています。

                           

                           財政法第4条には次のように書かれています。

                          財政法第4条
                           1.国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
                           2.前項但書の規定により公債を発行し又は借入金をなす場合においては、その償還の計画を国会に提出しなければならない。
                           3.第1項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。
                           
                           いかがでしょうか?国債発行したら借金が増えるからダメと思う人がおられるかもしれませんが、財政法第4条1項では、公共事業に関しては国債発行が認められることが書かれているのです。しかも国会の決議だけでできます。財務省職員からアドバイスを受けたとしても、従う必要はありません。

                           

                           というより、財務省は国債発行を抑制しようとしています。そのうえ、デフレ脱却が果たせず、資金需要が不足して国債を日銀が買い上げているという状態です。市中には国債が不足しており、そのために国債の価格が上昇して、金利は低下してマイナス金利を導入するまでに至っているのが、今の日本の実情です。

                           

                           バカげていると思いませんでしょうか?

                           

                           普通に国債を発行すれば、国債不足という状況は解決します。生命保険会社や損害保険会社といった100%安全な国債で運用しなければいけない保険会社の経営も収益が安定します。銀行にしても資金需要が高まるインフレになるまでは、国債購入によって金利収入を得ることができます。

                           

                           旧民主党時代の前原氏がかつて、アベノミクス第一の矢に対して、財政ファイナンスに該当し、財政法第5条に違反すると国会で指摘したことがありました。

                           

                           ついでなので財政法第5条も見ておきましょう。

                           

                           

                           財政法第5条

                          「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。」

                           

                           

                           

                           財政法第5条は国債発行に際して、直接日銀が引き受けることを禁ずるというものです。ところが但し書きがあり、国会の承認を得れば直接引き受けすることは可能です。

                           

                           しかしながら、黒田日銀総裁がアベノミクスでやっていることは、日銀が政府の国債を直接引き受けているわけではなく市中の国債、即ち三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行といったメガバンクや地銀、信金信組といった金融機関が保有する国債を買い取っているのであり、財政法第5条と全く関係がありません。

                           

                           

                           というわけで、今日は「財政法第4条について(公共事業の費用は国債発行して何ら問題なし!)」と題して論説しました。

                           家計簿発想で国家財政運営を考えること、企業経営の発想で国家財政運営を考えること、これらは価値観の問題とかではなく、明確に誤りなのですが、誤っていることに気付いていない日本国民が多くいるため、デフレ脱却の解決策である「国債増刷」「政府支出増」という政策に踏み切れない、もしくは政治家ですら誤解していてそもそも考えていない、というのが日本の状況です。

                           「国の借金問題」が典型的ですが、日本には財政問題は存在しません。日本国民の多くがそうした事実を知らないということが、解決を困難にしている側面もあるといえます。

                           そのためには、経済学者であろうがアナリスト・エコノミストに関係なく、一般国民が経済に対する正しい知見を持つこと、これ以外に方法がないものと、私は思っております。

                           

                           

                          〜関連記事〜

                          「日銀の円建て国債購入が財政法第5条による財政ファイナンスに該当する」との指摘に対する反論


                          記録的な猛暑による野菜価格の高騰と消費者物価指数について

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                            JUGEMテーマ:安全保障

                             

                             今年の記録的な猛暑は、もはや自然災害といっていいと思うのですが、そんな中で野菜の価格が高騰しています。

                             

                             今日は「記録的な猛暑による野菜価格の高騰と消費者物価指数について」と題して論説します。

                             

                             下記は朝日新聞の記事です。

                            『朝日新聞 2018/07/25 21:44 キャベツや大根が7割高「災害級」の猛暑で野菜高騰

                             「災害級」の暑さは、人々の暮らしに大きな影響を与えている。飲料や冷却商品などの売れ行きは伸びているが、高温で生育状況が思わしくない葉物野菜は価格が高騰。屋外で働く機会が多い建設業界では、作業員の熱中症対策を急ぐ。

                             東京都江東区のスーパー「たつみチェーン豊洲店」。入り口近くには25日午前、割高な値段をつけた野菜が並んでいた。店長の村松義康さん(59)は「キャベツは普段より100円、ホウレンソウは50円高い。いつもより売れなくなっている」と話す。

                             店では今月初旬の西日本豪雨以降、葉物野菜の価格が高止まりしていた。そこに追い打ちをかけたのが、連日続いた猛暑だ。暑さの影響が本格的に出てくるのはこれからだといい、村松さんは「さらに値上がりする可能性がある」と心配する。

                             農林水産省によると、高温と少雨で腐ったり生育の遅れが生じて出荷が少なくなったりして、群馬や長野県産を中心にキャベツ、レタス、ホウレンソウなどの葉物野菜の市場価格が平年より高騰している。

                             特に目立つのがキャベツで、東京都中央卸売市場の1キロあたりの卸値は平年比65%増の129円(23日時点)。2週間前より48円値上がりした。「JA全農ぐんま」の担当者は「暑さが一段落してほしいというのが産地の願い」と話す。

                             また、暑さで乳牛の搾乳量が減っている地域もある。同省は各地の農家に、ハウス内を生育に適した温度に保つことや、扇風機による家畜への送風といった暑さ対策を求めている。農作業中の熱中症への注意も呼びかけている。(後略)』

                             

                             

                             上記記事の通り、キャベツ、きゅうりといった夏野菜の店頭価格が軒並み高騰しているというニュースです。特にキャベツは去年に比べて2倍ほど高いお店があります。原因は、高い湿度と雨不足で出荷量が減少しているためです。

                             

                             西日本豪雨以降、まとまった雨が降っておらず、貯水量減少の影響などの懸念も出ています。

                             

                             朝日新聞の記事では、前年比で値段が高騰しているキャベツが前年比65%増と報じていますが、キャベツは2倍近くになっているところもあります。レタス、きゅうり、大根も、軒並み価格高騰しており、気象庁によれば、今後も全国的に平年より暑く8月中旬まで続く見通しとしています。

                             

                             西日本豪雨の災害をみれば、雨は降っているのでは?という印象をお持ちの読者の方がおられるかもしれませんが、最近の日本は豪雨の頻度は増えているにもかかわらず、渇水も増えているというのが現状です。

                             

                             豪雨と渇水の両方が増えているという状況。合計雨量は前年比で増えていたとしても、集中豪雨が増えているというのが実情です。

                             

                             本ブログでは、デフレ・インフレについても言葉の定義を含め、頻繁に取り上げますが、もう一つスクリューフレーションという言葉があります。これは所得中間層の貧困化とインフレーション(生活必需品の上昇)が同時に起きる現象のことをいいます。

                             

                             原油価格上昇によるエネルギー価格の上昇と同様に、猛暑による野菜価格の上昇は、可処分所得が減る方向に働くため、ある意味でデフレ圧力となります。

                             

                             毎月もらえる月給が伸び悩むもしくは増えにくいという状況で、生活必需品の価格が高騰するとなると、家計が苦しくなり、他の物が買いたくても買えなくなってしまうからです。

                             

                             物価変動を見る指標の1つに消費者物価指数というのがあります。消費者物価指数は3種類あります。具体的には、CPI、コアCPI、コアコアCPIの3つです。

                             

                             CPIは英語では「Consumer Price Index」の略称でして、コアCPIは生鮮食品の価格変動を除くCPI、コアコアCPIは生鮮食品に加えてエネルギー価格の価格変動を除くCPIです。

                             

                             アベノミクスで日銀が物価目標としている2%は、コアCPIで目標設定しています。そのため野菜価格が高騰したとしてもコアCPIが上昇することはありません。それは健全であるといえます。

                             

                             とはいえ、野菜価格と直接関係ありませんが、原油価格が高騰するとコアCPIは上昇してしまいます。本来であれば日銀の物価目標2%はコアコアCPIで目標設定すべきであるということを、私はアベノミクスが始動して以来、ずっと主張し続けています。原油価格が高騰しても、原油輸出国の中東諸国の所得が増えるだけで、むしろ輸入額が増えることでGDPはマイナスに働くからです。

                             

                             猛暑によって野菜価格が高騰した場合、農家は豊かになれるのか?といえば、そうはいきません。猛暑で供給量が減少しているだけであるため、需要>供給 となって価格が高騰しているに過ぎないからです。

                             

                             本来であれば、天候に左右されず、農家にはたくさん農作物を作っていただく。これが日本の食料安全保障の強化になります。もし豊作貧乏と言われるくらい豊作になったら、捨てることで高価格を維持するのではなく、政府が農作物を高く買い上げ、中国や韓国にダンピング輸出することで、中国と韓国の胃袋を日本が握るということもできます。これは外交のカードが1枚増えることになりますし、農家も収入が安定して豊かになれますので経済成長を支えることにもなります。

                             

                             

                             というわけで今日は「記録的な猛暑による野菜価格の高騰と消費者物価指数について」と題して論説しました。

                             

                             

                            〜関連記事〜

                            物価目標2%は、どの指数を使うべきか?消費者物価指数は3種類あります!

                             

                             

                            〜農業に関する記事〜

                            大災害で農作物不作時に自国民が飢えてまで他国に食糧を輸出する国は存在しない!

                            「農業で利益を出そう」=「植民地への道」です。

                            種子法廃止で、食料安全保障は崩壊か?

                            私たちの税金で培った種苗の知見・ノウハウは国民の財産です!

                            「全農は協同組合だからグローバルなビジネスを展開できない!」は本当か?

                            全農は世界一の商社です!

                            小学校の学校給食のメニュー

                            2017年は穀物生産が過去最高のロシア、輸出拡大を狙うもインフラ整備が足かせに!


                            蓮舫議員が批判し、事業仕分けで廃止にされたスーパー堤防について

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                              JUGEMテーマ:公共事業の経済効果

                              JUGEMテーマ:土木工作物

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                               今日は「蓮舫議員が批判し、事業仕分けで廃止にされたスーパー堤防について」と題し、治山・治水事業について論説したいと思います。

                               

                               治山・治水という言葉は、あまり聞きなれないかもしれません。治山事業とは山津波(土砂災害)に備える事業をいい、治水事業とは河川の決壊(洪水災害)に備える事業です。

                               

                               今年7月の西日本豪雨は、平成史上最悪という被害をもたらしました。そのため、国土強靭化が改めて強く求められています。豪雨に関していえば、東京都の荒川、愛知県の庄内川、大阪府の大和川・淀川という大河川があります。荒川の場合、流域平均雨量が550ミリを超えると決壊する恐れがあるといわれています。

                               

                               国交省は、荒川が決壊した場合の被害シミュレーションを試算しています。荒川周辺は、人口・資産が集積しているため、一度氾濫すると被害は甚大であるしています。

                               

                              <荒川決壊時の想定被害シミュレーションの試算>

                              ●浸水区域は約7,800ha

                              ●浸水想定区域内の人口は約116万人

                              ●被害家屋数が約47万

                              ●想定被害額が約22兆円

                               

                               上記の想定被害額22兆円という金額は、日本のGDPを500兆円とした場合の4%に相当します。また浸水想定区域内の人口116万人という規模は、地方自治法第252条19項にある政令指定都市の要件の人口基準50万人の2倍以上に相当します。

                               

                               もちろん、550ミリの降雨量をもたらす大雨は、そう頻繁に発生するものではありません。とはいえ、今回の西日本豪雨では、高知県で800ミリ台、1,000ミリ台という大雨が降ったのです。

                               だから、東京で550ミリ超の大雨が絶対に発生しないとは、必ずしも言い切れないと考えられます。西日本豪雨では、たまたま東京が被害に遭わずに済んだだけで、今度発生する大雨は、東京かもしれないのです。

                               

                               荒川の治水事業は、過去遡りますと江戸時代から行われていました。今の日本人は、現在のことだけを考えている人が多く、治水事業についての理解がほとんどないといえるでしょう。

                               

                               例えば、江戸という町、東京都という町があるのは、徳川家康が今の江戸川のところに流れていた利根川を銚子まで引っ張ったからと言ってもいいかもしれません。

                               

                              <1000年前の利根川と現在の利根川>

                              (出典:国交省関東地方整備局、江戸川河川事務所のホームページより引用)

                               

                               上図の通り、現在の江戸川は、かつて太日川(ふといがわ)と呼ばれていました。そして太日川の西側を並走する形で利根川が流れ、東京湾に水が注がれていたのです。

                               時は江戸時代で徳川家康が1594年に利根川東遷(利根川の流れを東側に移動して変えること)を命じ、60年の月日を経て大工事を完了させました。具体的には、現在の千葉県銚子市まで、川を掘って水を引いたのです。

                               そうすることで、上流から来る水の流れを、江戸の真ん中を通る川の水量を減らすことができ、そのまま太平洋にぶち抜くようにしたため、江戸では洪水がほとんどなくなったのです。

                               結果的に、江戸の町を洪水から守り、銚子から江戸までの交通路を開き、田畑を広げ、普通の都会を作ることができたのです。

                               江戸時代は車などありませんから、この川によって船で物を運ぶことができるようになり、河川輸送も盛んになって江戸時代の江戸が繁栄しました。

                               

                               もし、徳川家康が利根川東遷をやっていなければ、江戸の町は頻繁に洪水に襲われ、江戸文化の開花は無かったでしょう。とはいえ、利根川東遷には実に60年もの年月を費やしているのです。 

                               

                               中長期的に時間がかかる大事業だったことには間違いありませんが、まさに徳川家康は、洪水から守る治水事業、さらに河川輸送を発達させるためのインフラ整備を行ったということです。

                               

                               大阪にしても江戸と同じです。安治川などの河川を作って関を作り、何十年・何百年をかけて大阪という町が守られるようになりました。本来治水事業というのは、そのくらいの期間単位で行うべきものであるということが、歴史を遡れば理解できるかと思います。

                               

                               これは、スーパー堤防を批判した蓮舫だけでなく、公共事業を無駄だと思っている自民党議員や財務省職員にも知っていただきたいことです。

                               

                               そして、治水事業には時間だけでなくお金もかかります。街づくりそのものともいえます。荒川の堤防決壊が想定されるのであれば、すぐにでも堤防建設をやるべきです。もちろん財源は、建設国債の増刷で構いません。デフレでマイナス金利でタダ同然で借りられるお金です。デフレ脱却に寄与することは、間違いないのです。

                               

                               

                               かつて旧民主党の蓮舫が、スーパー堤防に関して事業仕分けで、大洪水の被害想定額以上の建設コストがかかるので「廃止」にしてしまいました。当時はマスコミをはじめ、多くの国民が「無駄削減ができた!さすがは民主党!」と胸がスーッとしたかもしれません。

                               

                              <事業仕分けを推進してスーパー堤防を廃止にした蓮舫をはじめとする民主党議員ら>

                               

                               

                                私は、事業仕分け自体反対でしたので、逆に「なんてことするんだ!」と思っていました。

                               上記写真で出ている民主党議員は、現在の西日本豪雨災害などをみて、かつての事業仕分けが誤りだったことを認めるメッセージを発した人っているのでしょうか?多くの人が死んでいるのに、あたかも何もなかったように装い、口を噤む。これが日本をダメにしている主因であると思うのです。

                               

                               そもそも公共事業について、経済学的に正しい知見を持つ人が少なすぎます。

                               

                               公共事業でコストがかかるという言葉を聞けば、当時のマスコミや多くの国民が、「無駄なお金!もったいない!」と思ったに違いありません。しかしながらマクロ経済的にいえば、コストがかかる=高いお金がかかる=高い名目需要がある=高い経済成長ができるチャンスがある です。

                               

                               日本には財政問題がありませんから、多くの人々が正しい知見を持っていれば、本来ならば躊躇なく「国債増刷」「政府支出増」によって、スーパー堤防建設が着手されていたことでしょう。

                               

                               財政問題について正しい知見を持たない日本国民が多いことは、あらゆる問題の解決策を困難にしている根本理由といえるのです。財政問題について正しい知見を持てさえすれば、公共事業でかかるコストを、家計簿や企業経営のように「もったいないから削減すべき!」とはならず、「躊躇なくやりましょう!」という発想を持つことができます。

                               

                               

                               

                               というわけで、今日は「蓮舫議員が批判し、事業仕分けで廃止にされたスーパー堤防について」と題して論説しました。

                               第二次安倍政権誕生後のアベノミクスでも第二の矢で国土強靭化をあげていました。ところが、いつしか国土強靭化の旗が下りてしまいました。プライマリーバランス黒字化目標があるために、思い切った財政出動ができないのです。

                               2013年こそ財政出動によって名目GDPで△1.9%上昇し、税収も△6.9%増えて、デフレ脱却機運が高まったのですが、プライマリーバランス黒字化目標を重視し始めて、2014年8%への消費増税を皮切りに、補正予算の減額もはじめました。

                               皆様の中には、豪雨災害の被害拡大について民主堂が治水対策費などの公共事業を減らしたためだと思われている方、いないでしょうか?

                               確かに民主党は「コンクリートから人へ!」スローガンで、公共事業を削減しました。とはいえ、安倍政権ですら、2013年度こそ公共事業を増やしましたが、以降は補正予算を減額して公共事業を削減しています。支持率の高かった小泉純一郎政権でさえ、毎年7000億円ずつ公共事業を削減していました。

                               こうした無駄削減にまい進してきた人々は、西日本豪雨などの自然災害でお亡くなりになった被害者の加害者と言っても過言ではないと私は思うのです。

                               

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                                 今日は東南アジアの国の一つ、ラオスという国で起きているダム決壊事故について論説します。

                                 

                                 下記はブルームバーグの記事です。

                                『ブルームバーグ 2018/07/25 11:25 ラオスで建設中の水力発電用ダム決壊−数百人が行方不明

                                 ラオス南部で建設中の水力発電用ダムが決壊し、数人の死者が出たほか、数百人が行方不明となっている。国営パテト・ラオ通信(KPL)が報じた。

                                 KPLによると、ダムは現地時間23日夜に決壊し、50億立方メートルの水が流出。近隣の6つの村が水浸しとなり、6600人余りの住民が家を失った。

                                 10億ドル(約1100億円)規模の水力発電所建設プロジェクトを手掛けていたセピエン・セナムノイ(PNPC)はラオス政府と、タイのラチャブリ・エレクトリシティー・ジェネレーティング・ホールディング、韓国のSKエンジニアリング・アンド・コンストラクション、韓国西部発電の合弁。2019年までに商業運転を開始する予定だった。ラチャブリによると、プロジェクト全体の約90%が完成していた。』

                                 

                                 

                                 上記の通り、ラオスでダムが決壊し、6つの村が水浸しとなり、6600人余りの住民が家を失ったというニュースです。施工したのは、セピエン・セナムノイ(PNPC)という特別目的会社で、そこに出資していたのが、出資比率順に韓国SK建設(26%)、西武発電(25%)、タイ電力会社(25%)、ラオス政府(24%)です。

                                 

                                 SK建設はダムの設計・建設をやっていたのですが、このダムがダムとしての機能を有さず、今回の事故は人災ではないかと言われています。各紙が報道する事故現場の写真などをみると、構造物はダムとなっているが、ほとんど盛土で堰き止めていたのでは?本当にダムとしての機能を有していたのか?と思えるくらいの現場の写真でした。

                                 

                                 このダムは東南アジアの電源として、ラオスにとっては水力発電所を稼働させてベトナムやカンボジアなどから収益を得る国家を上げた大変重要なプロジェクトでしたが、大惨事となってしまいました。

                                 

                                 

                                 本件で、朝鮮日報の記事もご紹介します。

                                『朝鮮日報 2018/08/02 21:12 ラオス政府「ダム事故は人災」、SK建設に補償要求か

                                 韓国のSK建設が参画してラオス南東部で建設中だった水力発電用ダムが決壊した事故をめぐり、ラオス政府が「自然災害ではなく人災」との立場を表明したと現地の国営メディアが2日、報じた。

                                 ラオス国営メディア、ビエンチャン・タイムズによると、ラオスのシーパンドン副首相は先ごろ、事故処理のための特別委員会会議で「洪水はダムにできた亀裂が原因で発生したもので、被害者への補償も一般的な自然災害とは違う形になるべき」と言及した。つまり「特別補償」が必要というわけだ。エネルギー鉱業省のポンケオ局長も「われわれには被災者に対する補償規定があるが、この規定は今回の事故には適用されないだろう。今回の事故が自然災害ではないからだ」と述べた。

                                 ラオス当局が発表した現時点での人命被害は死者13人、行方不明者118人。周辺の村や田畑の浸水に伴う物的被害の規模はまだ具体的に明らかにされていない。

                                 SK建設、韓国西部発電、タイのラチャブリ電力、ラオスのLHSE社による合弁会社、PMPC側は、6億8000万ドル(約700億円)規模の建設工事保険に加入している。工事保険は、工事の目的物であるダム自体の損害などを補償するもので、一般住民の被害については特約事項となっている。

                                 SK建設は「工事に関連して事故が発生した場合、第三者に対する被害まで補償する保険にも入っている」と説明した。しかし、事故原因が施工上の問題と判明し、民間人の被害金額が保険で設定された金額を上回る場合、SK建設が大規模な被害補償を行わなければならなくなるというのが業界の分析だ。』

                                 

                                 

                                 上記の通り、ラオス政府はSK建設に責任があるという立場を明確にしています。安値落札した韓国のSK建設ではダム建設の技術力が本当にあったのか?疑義があります。

                                 

                                <日本のゼネコンが作るダムと、韓国のゼネコンが作るダムの違いのイメージ図>

                                 

                                 

                                 上図の通りですが、写真をみる限り、表面はアスファルトで覆われていますが、中身が盛土になっているとしか思えません。これでは当然水圧に耐え切れず、決壊するのは当たり前です。

                                 

                                 実は同じような話が、同じアジアの国のパラオでもありました。パラオで橋を建設する際、日本と韓国で競争入札となり、韓国が安値落札しました。結果は、橋が崩落して死者が出てしまったとのこと。

                                 

                                 そのあと、日本のゼネコン大手の1つの鹿島と、日本政府が無償ODAで資金援助して、友好橋というものを架けました。当然、橋は崩落することなく今でも使われています。

                                 

                                 私はパラオに行ったことはありませんが、カンボジアで日本が作った友好橋というのを見たことがあります。

                                 

                                <カンボジアのプノンペン市内の日本との友好橋>

                                 

                                (出典:2013年9月17日に杉っ子が撮影)

                                 

                                 

                                 このように、日本のインフラは作れば長く使われ、すぐ壊れるようなことはありません。ところが、お金をケチって安い方を選ぶと、大体において中国や韓国の企業が多いのですが、後で失うものは大きい。

                                 

                                 インドネシアの新幹線建設における中国の受注もそうですし、インドネシアのジャカルタのモノレール建設も韓国企業がトンズラしたと現地のガイドから聞いています。

                                 

                                 また2013年9月にカンボジアのプノンペンに行ったときに、日本が作る道路は長く使えるが、中国が作る道路は、すぐにベコベコになってしまうというのを現地のガイドに言われたこともあります。東南アジア諸国の人々は、日本が作るものに絶大な信頼を寄せているということを実感しました。

                                 

                                 今回のラオスのダムでいえば表面的にはわかりません。当たり前です。表面的な部分まで明らかにみすぼらしければ、すぐに手抜きがバレてしまいます。表面的にはコンクリートで覆われて、その中身がどうであるか?耐震性は?耐久性は?わかりません。

                                 

                                 とはいえ、安値落札するということは、そうした技術力が伴っているのか?安全・安心は大丈夫なのか?貧すれば鈍するということにならないのか?ということを、本来は気にするべきです。ところが、発展途上国は外貨が不足しているため、品質よりも値段を優先し、つい安値を出す中国・韓国企業を採用してしまうのです。

                                 

                                 因みに偏向報道のレッテルを貼られている番組で、関口宏のサンデーモーニングという番組があります。この中で、司会者の関口宏と、コメンテーターの安田菜津紀のやり取りがあり、韓国企業(SK建設)の技術力の拙劣には一切触れず、ラオス政府が電力ビジネスを急いだことが悪いかのようなコメントをしていました。即ちラオス政府が拙速だったのでは?とコメントし、あたかも完成を急いだラオス政府が悪いかの如く、印象操作されていました。

                                 

                                 もちろん、報道の自由、言論の自由があるとはいえ、肝心な韓国企業の技術力や、危機発生前とその後の対応に問題があった点については一切触れていません。これではTBSのサンデーモーニングが、偏向報道のレッテルを貼られても仕方がないものと思います。

                                 

                                 

                                 

                                 というわけで今日はラオスで起きたダム決壊事故について論説しました。「安物買いの銭失い」「貧すれば鈍する」という言葉は、あらゆる場面で共通するのでは?と思います。

                                 航空業界でいえば、本当はLCCも危ないのでは?と思うことがあります。日本でもあまりにも価格競争が続くようだと資金が不足してきて安全の品質へのコストが削減される可能性が普通にあり得ます。

                                 私はJALの株式を300株保有しますが、本当はLCC事業には手を出して欲しくない。ライバル社のANAにしてもピーチなんてやめて欲しいと思っています。海外のLCCなんて無視すればいいだけ。

                                 安全面を考えれば、日本ではLCCは飛んで欲しくないですし、LCCがあることでJALもANAも運賃を値下げ追随せざるを得なくなり、十分な利益の確保がしにくくなると思うのです。

                                 安心や安全はお金では買えないと思い、高い値段でもJALやANAに乗る、医薬品はジェネリックは使わない、どれだけ安くても仮想敵国中国の製品、不良品質の韓国製品は買わない。こうした取り組みを多くの国民ができるように、政府にはデフレ脱却のため「躊躇なき国債増刷」「躊躇なき政府支出増」の実施を急いでいただきたいと改めて思うのです。


                                リビアで韓国人4人拉致に対抗し、文在寅大統領が軍艦派遣を決断!

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                                   今日は「リビアで韓国人4人拉致に対抗し、文在寅大統領が軍艦派遣を決断!」と題して論説します。

                                   

                                  下記はAFP通信の記事です。

                                  『AFP通信 2018年8月2日 16:44 発信地:ソウル/韓国 リビアで韓国人ら4人拉致、韓国が軍艦「文武大王」を派遣

                                  【8月2日 AFP】韓国政府は2日、北アフリカのリビアに軍艦を派遣したことを明らかにした。リビアで武装集団に拉致された韓国人ら4人が助けを求める動画が今週公開されたことから、身柄解放を目指した示威行為とみられる。

                                   当局筋によると、派遣されたのはソマリア沖アデン湾(Gulf of Aden)で海賊の警戒に当たっている駆逐艦「文武大王(Munmu the Great)」。韓国国防省の報道官は「文武大王」について、「商船の護衛任務を遂行するとともに、軍事支援の必要性を含むあらゆる事態に備えている」とAFPに説明したが、詳細は明らかにしなかった。

                                   韓国人1人とフィリピン人技師3人は、リビア西部の水利事業の現場で先月6日に拉致された。韓国・フィリピン両政府は、今週ソーシャルメディアに公開された動画に映っているのがこの4人だと確認した。

                                   米テロ組織監視団体SITEインテリジェンス・グループ(SITE Intelligence Group)も同じ動画を公開した。

                                   動画の中で4人はカメラに向かって英語で呼び掛けている。背後には武装した見張りの男が砂地にしゃがんでいるのが映っている。撮影日は不明。4人を拉致したグループは特定できておらず、犯行声明も出ていない。

                                   韓国大統領府(青瓦台、Blue House)の金宜謙(キム・ウィギョム、Kim Eui-kyeom)報道官は、「わが国の持てる資源全てを使って全力を尽くしている」との声明を発表。拉致された韓国人について「韓国と韓国大統領は、一瞬たりとも彼を忘れていない」と述べた。

                                   また、韓国政府が事件発生直後からリビアに加えフィリピン、米国など同盟諸国と緊密に連携し、被害者の安全と解放のため尽力していることを強調した。

                                   リビアでは、独裁体制を長年敷いてきたムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐が2011年に失脚し殺害された後、イスラム国(IS)をはじめとするイスラム過激派組織や民兵組織が外国人労働者や外交官を狙う事件が相次いでいる。(c)AFP』

                                   

                                   

                                   

                                   上記AFP通信の通り、リビアで韓国人4人が拉致されたというニュースです。

                                   

                                   リビアといえば、今年のGWで私はリビアの西の隣国のチュニジアを往訪しています。チュニジアは北部のチェニスなどは治安がいいですが、南部のサハラ砂漠の近辺は、アルカイダなどの武装集団がいて危ないと言われています。リビアはカダフィー大佐が殺害されて以降、無政府状態となっていまして、大変危険な状況です。

                                   

                                   私は嫌中・嫌韓であること公言しておりますが、中国にせよ韓国にせよ、日本が政策的に見習うべき部分もあると思うことがあります。

                                   

                                   韓国と韓国大統領は、「一瞬たりとも拉致された彼らを忘れていない」という声明を出しています。ISに殺害された日本人の後藤健二さん、湯川遥菜さんの拘束時や、今アルカイダに拘束されている安田純平さんのように、日本政府もいろんな策を講じました。とはいえ、決定的に違うのは自衛隊を派遣しないことです。なぜならば、憲法9条で交戦権を否定しているため、自衛隊を派遣することができないのです。

                                   

                                   ウソが多い韓国ですから、また敵前逃亡もする韓国ですから、救援活動がどこまで現実的であるか?は別にしても、自国民が拉致されたならば、軍艦を派遣するということは、国民を守ることの意思表示であり、日本も見習うべきであると思うのです。

                                   

                                   私は「憲法9条が日本を守っている」と思っている人々、一般人であってもですが、怒りを感じることがあります。憲法9条の存在のために、韓国に竹島を奪われ、北朝鮮による拉致被害者を奪還できず、東京都の小笠原の赤サンゴは壊滅状態となり、沖縄県の尖閣諸島では漁業関係者が漁をできないでいます。「憲法9条が日本を守っている」は一種の思考停止と言えるでしょう。

                                   

                                   結果、一般国民も含め、無知と現実の逃避によって、頭の中がお花畑いっぱいとなり、日本を亡国の危機に晒しているのが、今の日本ではないかと危惧しています。だから、後藤健二さん、湯川遥菜さん、安田純平さんがISやアルカイダに拉致されても”自己責任”と切り捨てることができるのです。

                                   

                                   北朝鮮に拉致された後藤めぐみさんについて”自己責任”と思う人は、さすがにいないでしょう。とはいえ、どこかで同情を装っているだけで自分には関係がないと思っている人がほとんどであるように思えます。

                                   

                                   もし、憲法9条の交戦権否定の縛りがなければ、堂々と自衛隊を派遣して救援することができたかもしれません。殺されずに救出できて日本に帰国したら改めて「バカヤロー!人騒がせ!」などの罵声を浴びせればいいだけの話。仮に殺されたとしても、日本国籍である以上、日本政府は日本人の生命を守るというメッセージが全ての日本国民に伝わるはずです。

                                   

                                   因みに自衛隊派遣のためにかかる費用は、政府最終消費支出でGDP拡大に寄与します。具体的にいえば危険手当などの支払いで、自衛隊員の給料が増えますので、個人消費が増える乗数効果も期待できます。

                                   

                                   経済効果はさておき、憲法9条があることで、人々の頭の中はお花畑となり、”自己責任”、”自分とは無関係”、で終わってしまっているのが今の日本です。

                                   

                                   それに比べれば、中国と同様に、ウソで塗り固められた国家と揶揄される韓国ですが、自国民を守ろうと軍艦を派遣するというのは、国民を守るということを明確にメッセージとして発信することになるわけで、日本も見習うべきことだと思います。

                                   

                                   韓国は経済でも見習うべき政策があります。例えば、2017/05/12に文在寅大統領は、政府や公共機関で働く非正規職をゼロにするための工程表づくりを各機関に指示し、非正規社員ゼロ、雇用81万人創出を掲げました。

                                   

                                   韓国嫌いの人からすれば、韓国のやっていることすべて否定しがちになるかもしれませんが、冷静に客観的に起きている事象を見なければ、単にレッテル貼りで思考停止しているのと同じです。

                                   

                                   韓国は日本よりも国力が弱い発展途上国です。非正規職ゼロで公務員を増やす政策は、内需主導にシフトすることを意味します。韓国は輸出がGDPの50%以上を占める典型的な外需国です。そのため世界経済の変動をまともに受ける脆弱な経済体質となっています。

                                   

                                   加えて、1990年代後半のアジア通貨危機でIMFからの支援を受け、通貨暴落時に欧米の資本が入り込みました。特に、財閥企業(サムスン電子、現代自動車、新韓銀行など)は、株式が暴落した際に欧米資本が入り込んだことから、外国人投資比率が50%を超えるという事態になってしまったのです。外国人投資比率で50%超ということは、財閥企業のサムスン電子にしろ、現代自動車にしろ韓国企業とはいえません。変な意味でグローバル企業になってしまっているのです。

                                   

                                   グローバル企業というと、聞こえがいいかもしませんが、実情はひどい。利益を配当で持っていかれるため、従業員への分配原資は限られます。また将来の生産性向上のための設備投資も制約を受けます。韓国人のために会社が存在しているのではなく、韓国外の資本投資家に配当を払うために存在している会社に落ちぶれているのです。

                                   

                                   

                                   

                                   というわけで今日は「リビアで韓国人4人拉致に対抗し、文在寅大統領が軍艦派遣を決断!」と題して論説しました。経済では通貨危機を経験してボロボロな韓国ですが、自国民ファーストという点からは、韓国がやっていることは部分的に正しいと思います。日本も韓国や中国を好む好まないにかかわらず、見習うべきことがあれば見習ってもいいのでは?と私は思うのです。

                                   

                                   

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                                     今日は「憲法21条の言論の自由、表現の自由、報道の自由について」と題し、論説します。

                                     私は、レッテル貼りをする日本のマスコミをほとんど信用していません。かつての私は、朝日新聞だけが左翼と思っていて、同じ系列のテレビ朝日も論外ですが、TBSしかり、NHKにしろ、日本経済新聞にしろ、真実でないことを報道しているとは思っていませんでした。

                                     

                                     そもそも私は、左翼・右翼という言葉が嫌いです。なぜならばレッテル貼りは、思考停止させるからです。左翼・右翼に関係なく、また学歴や資格の有無に関係なく、真実を語っているのであれば称賛します。それが例え左翼とレッテル貼りをされた人の発言内容であっても正しいものは正しい。逆に右翼とレッテル貼りされた人の発言内容であっても間違っているものは間違っている、と。

                                     

                                     ウソ・デタラメのテレビ番組が多い中で、その中の一つにTBSで日曜日に報道される「サンデー・モーニング」という番組があります。私が嫌っている理由は、左翼・右翼とかそういうものではなく、司会者の関口宏氏にしろ、その他のコメンテーター、有識者らが、歴史背景の真実を知らず、もしくは少し聞きかじった”しったか”程度の知識で論説し、しかも事実を隠蔽し、何ら恥じることなく事実を捻じ曲げて報道して、あたかも自分たちは先進的であるかの如く振舞うからです。そしてその発信した内容がどれだけ日本の国益を貶め、後になって誤りだったことが判明したとしても、彼らは何ら責任を取ることがありません。厚顔無恥の象徴といえます。

                                     

                                     日本の憲法では、憲法21条において表現の自由、言論の自由、報道の自由というのがあります。私は個人的にはこの自由に制限を加えてもいいのではないか?と思っています。なぜならば、特に肩書で情報発信をする人の中には、日本の国益を貶める重大な不実を発信する人がいるのに、そうした人たちが自由に論説し、それを生業としていることを考えた場合、その人が生み出す所得と、日本の国益を損ねることで失う所得とでは、明らかに後者のほうが尊重されるべきであると思うからです。

                                     

                                     なんら国益を生み出さず、むしろ国益を貶める言論人とは、どれだけ所得を稼いでいたとしても存在価値はなく、むしろ有害といえます。むろん、そうした言論人が過去の言論を修正し、誤りを認めるならば別です。一般の人が、言論修正を認め、謝罪を受け入れるかどうかは別にして、言論を修正して間違いを認めるのであれば、私は普通に称賛したいと思います。(日本が中国の属国になってしまったり、遺伝子組み換え作物が入ってきて日本の在来種が全滅して復活できないなど、取り返しがつかないくらい国益を損ねてしまった場合は、私でも許せないかもしれませんが・・・・。)

                                     

                                     かつてエール大学の浜田教授が、第二次安倍政権誕生時に、金融緩和をやればデフレ脱却ができると主張していましたが、金融緩和政策だけでは限界があるとし、言論を修正しました。

                                     

                                     私はもともと「金融緩和」と「財政出動」の両方が必要という立場であったため、金融緩和で量的緩和をやれば、財政出動をしなくてもデフレ脱却できるとする考え方、いわゆるデフレが貨幣現象であるとする考え方には否定的な立場です。

                                     

                                     1976年にノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマン氏は、1929年〜1933年の米国大恐慌において、FRBが十分にマネタリーベースを拡大しなかったことを指摘し、FRBが十分な通貨供給をすれば、大恐慌は防げたはずと主張しました。

                                     

                                     マネタリーベースを拡大すれば、マネーストックが増えるという考え方が誕生したのは、ミルトン・フリードマン氏が起源かもしれません。

                                     

                                     もちろんこれは誤りです。ノーベル経済学賞を受賞した学者が主張したとしても、間違いは間違い。大恐慌から這い上がるためには、需要創出が必要ですし、それに伴って政府支出増で仕事が増えて資金需要増大によって金利上昇が予期されるのであれば、マネタリーベース拡大も必要です。何が言いたいかと言えば、「財政出動」と「金融緩和」の2つを同時に行わなければデフレ脱却はできないということです。

                                     

                                     実際に日本ではアベノミクスで金融緩和を行い、マネタリーベースは2倍にまで増えましたが、物価はどうなったか?コアコアCPIでプラスマイナスゼロで、GDPデフレーターはマイナス基調です。

                                     

                                     これ、2015年1月15日にスイスで発生したスイスフランショックの前のスイス政府の金融緩和政策も同じです。スイスはマネタリーベースを5倍に増やしましたが、物価上昇率はプラスマイナスゼロでした。

                                     

                                     なぜ、市場に通貨供給しても物価上昇しないか?おわかりでしょうか?

                                     

                                     通貨を発行しただけでは、物・サービスが買われるわけではありません。国債が買われたとしても、それは物・サービスを買うのではありませんから、物価変動には全く影響しないのです。

                                     

                                     例えばこの瞬間、日本政府が100兆円のお金を発行したとして、そのお金を私が焼き芋を焼くために、100兆円のお金を燃したとして、芋や焼き芋が価格変動しないということは、誰でも想像できるのではないでしょうか?

                                     

                                     先述のエール大学の浜田教授は、私が尊敬する藤井聡氏と同じ、内閣官房参与の一人でもあります。その浜田氏が過去の言論を修正して過ちを認めたのですから、私は普通に称賛したいと思うのです。

                                     

                                     一方で、過去の発言に口を噤む経済学者もいます。その象徴が東京大学名誉教授の吉川洋氏です。吉川洋氏は、2018/7/11発売の雑誌「中央公論(2018年8月号)」において、『時評●「国難」としての自然災害と日本経済』という表題で論説しています。

                                     

                                     その論説の内容は、公共事業費拡大を否定する内容です。具体的には、現在の国費ベースである年間6兆円で公共事業費の拡大を続けた場合、日本は自然災害をきっかけに「亡国」の財政破綻に陥ると主張しているのです。

                                     

                                     この主張は、南海トラフ地震や首都直下型地震対策としての防波堤・防潮堤、耐震補強や、豪雨災害対策のための治山・治水事業や、暑さ対策のためのエアコン設置などに対して国費を投じ続ければ、日本は財政破綻して亡びるという主張です。

                                     

                                     端的に言えば、この東京大学名誉教授の吉川洋氏は、災害対策せず財政再建に取り組むことこそが急がれると主張しているのに等しいのです。

                                     

                                     この論説は2018/7/11発売の雑誌ですから、記事は6月中には書いていたことだと想定されます。6月に記事を書いている吉川洋氏が、その後の7月に入って西日本豪雨が発生するとは、よもや予想していなかったことでしょう。もちろん政治的な判断・考え方として、「財政再建を急ぐため、自然災害で大勢の日本人の死者が出たとしても、やむなし」という判断はゼロではないかもしれません。ですが、私はとても賛同できません。吉川洋氏の亡国の定義がいかなるものか?不明ですが、亡国の内容によっては、さらに多くの人々の死者が出ることもあり得るからです。

                                     

                                     吉川洋氏は、財政を優先するために治山・治水事業の着手が遅れたことで、今回に西日本豪雨で小田川の堤防が決壊して多くの人々が亡くなったことについて、どう思っているのか?ぜひ感想を述べていただきたいと、皮肉を込めて言いたいです。

                                     

                                     

                                     というわけで、今日は「憲法21条の言論の自由、表現の自由、報道の自由について」と題して論説しました。過去の主張の誤りに口を噤む経済学者、アナリスト、エコノミスト、政治家、マスコミら。彼らは、言論の自由で保護されているとばかりに、過去に発言したことに口を噤みます。

                                     吉川洋氏は、いうまでもなく日本経済学会の会長まで上りつめた有識者です。一般人ならまだしも、吉川洋氏のような肩書のある人が、軽いノリで言論しているのか?平気でウソ・デタラメをばら撒いて日本を貶めてきたとするならば、その言論活動は、憲法21条の言論の自由という範疇や価値観ではなく、万死に値するものであると私は思うのです。

                                     

                                     

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                                       今日は「西日本豪雨で1か所、砂防ダムが決壊してしまったその理由とは?」と題し、国が行う治山事業・治水事業について論説したいと思います。

                                       

                                       ロイター通信の記事をご紹介します。

                                      『ロイター通信 2018/07/25 18:10 7月の土砂災害1350件

                                       西日本豪雨を含む7月の大雨により全国で発生した土砂災害が25日時点で1350件に達したことが国土交通省の集計で分かった。最近10年間の年間平均約1100件を1カ月で上回り、短期間に災害が集中した実態が鮮明になった。被害は31道府県に及び、土砂災害による犠牲者は100人に達した。国交省の担当者は「土砂災害としては平成最大の広域災害」としている。

                                       西日本豪雨の被害の全貌は把握できておらず、件数はさらに上積みされる見通しだ。今後の台風襲来などによる二次被害も懸念され、国交省は危険箇所に安易に近づかないよう注意を呼び掛けている。』

                                       

                                       上記の記事の通り、土砂災害が1350件にも達したということで、最近10年間の年平均1,100件を1か月足らずで上回ったというニュースです。

                                       

                                       7月時点での1350件という件数は、とんでもない状況です。何しろ、まだ8月・9月・10月と台風シーズンが訪れます。

                                       

                                       通常は、そのシーズンに台風被害が増えるのですが、梅雨の時期だけでこの状況とは、今年は異常と言わざるを得ないでしょう。

                                       

                                       多くの人々に知られていないことなのですが、東日本災害のような超激甚災害を除き、自然災害で最も人が亡くなるのは何でしょうか?毎年毎年コンスタントに人命が奪われる自然災害は、実は土砂災害です。

                                       

                                       よく皆さんがニュースで見聞きする大雨の被害では、裏山が崩壊して生き埋めになるというニュースをお聞きなることがあるでしょう。水の場合は助かる確率はそれなりに高いのですが、土砂の場合は助かる確率は低いです。端的にいえば、山津波は水津波よりも助かる確率は低いのです。

                                       

                                       そのため、昔から治山治水といっていますが、治水治山とはいいません。治山=山津波対策=土砂災害対策です。これがきちんとできていない領主は、そこに住む民が安定的な暮らしができず、政治が乱れるということになります。

                                       

                                       今年の西日本豪雨をみると治山もダメですが、岡山県の小田川の被害など、治水もダメであることが明白です。治山も治水も両方できていないという状況は、普通に政治がダメということです。

                                       

                                       そもそも土砂災害を防ぐためには、どうすればいいのか?それは砂防ダム・砂防堤防の建設で、これが一番効果があります。

                                       

                                       なぜならば治水を考えた場合、洪水の場合は川がどこで決壊するか?予測がつきにくい点がある一方、山津波=土石流というのは、発生する場所は決まっています。

                                       

                                       小学生のころ、皆さんは社会科で地理を習ったと思いますが、山には谷筋と尾根筋があります。土石流は山に必ずある谷筋で発生します。そのため、谷筋に砂防ダムを作って起きさえすれば、ほぼ100%土石流を防ぐことができるのです。しかしながら砂防ダムがないところでは、多くの人が命を落としています。

                                       

                                       2014年8月に発生した広島県の土砂災害では、砂防ダムの建設予定があったのですが、財政に余裕がないという理由で、そのままになっていました。本来は財政に余裕がないという理由はあり得ず、マイナス金利でタダも同然の金利で政府が建設国債を発行するなどして、政府が主導して予算をつぎ込めば砂防ダムを作ることは可能だったでしょう。

                                       

                                       財政的にも技術的にも可能であるにもかかわらず、プライマリーバランス黒字化すべきという間違った家計簿発想を持つ政治家や財務省職員らのせいで、作らなかった。

                                       

                                       結果、砂防ダムがあった場所は、砂防ダムが土砂を受け止めて人々が救われたのですが、砂防ダム建設が留保された場所は、土砂がなだれ込んできて多くの人々が命を落としました。

                                       

                                       ぜひ一度皆さんには、広島県内の地図を見ていただきたいのですが、下記は安佐南区というエリアの周辺地図です。

                                       

                                      <広島県広島市安佐南区の周辺地図>

                                      (出典:広島市都市整備局の「八木・緑井地区の概要」資料から引用)

                                       

                                       

                                       水色の部分が土砂流出範囲となっています。この安佐南区だけでなく、広島県には谷筋がたくさんあり、そこは土砂災害で人が命を落とすのです。

                                       

                                       ただそこに砂防ダムさえ作ればいいので、広島県内は砂防ダムが多くありますが、ありもし得ない財政難を理由に完成されていない砂防ダムもたくさんあります。

                                       

                                       広島県坂町で1か所、今年になって砂防ダムが決壊したというニュースがあり、毎日新聞などのマスコミの報道は「コンクリートの砂防ダムを作っても意味がない」というトーンで報道していました。この坂町の砂防ダム決壊は、古い石積みの砂防ダムであったため、早く建築し直す必要があったのですが、財政難で放置していたというのが真実です。

                                       

                                       ちゃんとした砂防ダムを造れば、土砂災害は100%防げるのに、日本では存在しえない財政難を理由に放置するというのは、これはもう国家による殺人と言ってもいいのではないでしょうか?

                                       

                                       

                                       

                                       というわけで「西日本豪雨で1か所、砂防ダムが決壊してしまったその理由とは?」と題し、砂防ダムについて論説しました。自然災害大国であるがゆえに、日本は人口減少に関係なく、災害対策の需要は旺盛です。

                                       にもかかわらず、家計簿発想のプライマリーバランス黒字化のために、需要に応じずにいるのです。マイナス金利でデフレなのですから、躊躇なく普通に「建設国債」を発行して、政府支出によって砂防ダム建設を各地でやれば、そのこと自体が経済成長し、GDP増加に貢献するだけでなく、人々の安全保障強化に寄与します。結果的に多くの日本人が恩恵を受けるわけです。

                                       ところが、お金に対する間違った考え方、人口が減少するから無駄だと、公共事業を否定する輩は多い。こういう人々が真実を理解しない限り、日本は亡国へと突き進んでいくことになるでしょう。

                                       そのうち、土砂災害や道路崩落や上下水道菅破裂事故など各地で発生する件数が多すぎて、ニュースにもならなくなるような日が来るような気がします。

                                       そうならないためには、私たち国民が正しい知見を持ち、政治家を動かすことが必要と思うのです。


                                      JR北海道がレール計測データを改ざんした真の理由とは?

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                                         今日は、国交省がJR北海道に対して監督命令を出した真の理由について論説します。

                                         

                                         下記はNHKニュースウェブの記事です。

                                        『NHK 2018/07/26 13:21 国交省 JR北海道に監督命令へ 収益力改善求める

                                         国土交通省は、厳しい経営が続くJR北海道に対し、27日にも収益力の改善に努めるよう求める監督命令を出す方針を固めました。国が来年度以降、新たに財政的な支援を行うことに伴う措置です。

                                         JR北海道は、人口減少に伴う利用者の落ち込みなどから、グループ全体の経常損益が2期連続で100億円を超える赤字となるなど厳しい経営が続いていて、国や道などに支援を求めています。
                                         国は、来年度と再来年度の2年間、合わせて400億円程度の財政的な支援に応じる方針ですが、これに合わせて国土交通省はJR会社法に基づく監督命令を出す方針を固めました。
                                         この中では、不動産事業など鉄道以外の事業にも積極的に取り組むとともに、経営コストの削減を進めるなどして、会社の収益力の改善に努めるよう求めることにしています。
                                         JR北海道に監督命令が出されるのは、4年前、レールの検査データの改ざんが発覚した際に続いて、2度目となります。
                                         国土交通省では、27日にも財政的な支援を正式に表明するとともに、JR北海道の社長を呼んで監督命令を出すことにしています。』

                                         

                                         上記記事の通り、厳しい経営が続くJR北海道に対して監督命令を出して、400億円を財政支援するという内容です。

                                         

                                         今回のJR北海道の監督命令について、普通の常識で考えれば、「400億円も支援するわけだから経営基盤をしっかりさせろ!」ということになるでしょう。

                                         

                                         しかしこれは完全に間違っている発想です。

                                         

                                         例えば、IMFが財政に苦しむ国家に対してお金を貸すかわりに、「プライマリーバランスを黒字しなさい!」と言っているに等しいです。

                                         

                                         

                                        <IMF(ワシントン)>

                                         

                                        (2014/12/31 杉っ子がワシントンで撮影)

                                         

                                         

                                         ギリシャの場合、ユーロに参加して共通通貨建て国債しか発行できず、その発行の権限はECB(欧州中央銀行)にあり、ギリシャ政府には通貨発行権がありません。ドイツからの輸入攻勢に苦しむ一方、ユーロに参加しているために関税もかけられず。ただ財政赤字を積み上げていきました。

                                         

                                         本来、ギリシャはユーロ離脱して、新通貨で「新ドラクマ」を発行するなどして財政出動し、ドイツの輸入に対しては関税をかけることで自国産業を育成するという方法がとれたのですが、ユーロを離脱せず、IMFからお金を借り入れました。

                                         

                                         IMFは「プライマリーバランス黒字化して増税して返済するように財政基盤をしっかりしろ!」とやった結果、余計に景気が悪くなって経済成長できず、結果ギリシャは財政破綻しました。

                                         

                                         今回のJR北海道についても、IMFのように財政支援したからといって、JR北海道をギリギリ締め上げたら、JR北海道の経営はさらに苦しくなるでしょう。

                                         

                                         そもそも、なぜJR北海道がデータ改ざんをしたのか?

                                         

                                         理由は、儲からないからです。

                                         

                                         もちろんJR北海道が組織として経営として悪いということもあるかもしれません。とはいえ、儲からない・貧乏・収入が少ないという環境が主な原因であるといえるでしょう。

                                         

                                         したがって解決策は、JR北海道の収入基盤を強化してあげることが最適な解決策です。

                                         

                                         同じJRでありながら、なぜJR東海は儲かるのでしょうか?

                                         

                                         それは新幹線があるからです。

                                         

                                         もちろんJR東海の組織が立派ということもあるかもしれませんが、それ以前に新幹線という儲かる基盤があるからこそ、組織も立派になると言える側面があると思うのです。

                                         

                                         JR東日本も同様に、インフラ整備が整って国の中枢機関である霞が関があり、結果として本社機能も東京に置く企業が多いこともあって、人口がたくさん集まります。

                                         その人口がたくさん集まる東京23区内をぐるぐる回る環状線の山手線があるのですから、何してもお金が儲かります。

                                         

                                         JR北海道と比べて、JR東海、JR東日本は財政基盤が強いのです。

                                         

                                         JR九州も九州新幹線ができてから、経営基盤が良くなっています。

                                         

                                         にもかかわらず、記事では不動産事業などの鉄道事業以外の収益源を強化させて、コスト削減して会社の収益力を改善するよう指導すると言っており、これは完全に間違っていると言わざるを得ません。

                                         

                                         JR北海道の経営基盤が強化される最善策は、一刻も早く、早期の新幹線整備に着手し、新幹線を完成させることに他なりません。だから、JR北海道に対しては新幹線整備をいち早く完了してあげるというのが国交省の本当の仕事ではないでしょうか?

                                         

                                         なのに今755億円しかお金がないから、ゆっくり新幹線整備するとなると、十数年かかります。新幹線整備には費用もかかり、札幌まで新幹線がつながるのは、全然先の話です。

                                         

                                         それを急いでやる。特に函館北斗→札幌→旭川を急いで完成させること。そうすれば、ほっておいてもJR北海道は儲かります。

                                         

                                         

                                         というわけで、今日は「JR北海道がレール計測データを改ざんした真の理由とは?」と題し、JR北海道の経営基盤について論説しました。

                                         私は北海道新幹線は、函館北斗〜札幌間は言うまでもなく、旭川まで延伸し、そこから北方は旭川→稚内、南東へは旭川→富良野→帯広→釧路→根室まで、延伸すべきであり、急げば急ぐほど日本経済に好影響を及ぼすと考えています。

                                         また経済だけでなく、日本人同士が地政学的に高速鉄道で結ばれるということで、国民の結束力も高まります。新幹線整備という内需拡大策は、こうした国民の結束力強化と、デフレ脱却につながるだけでなく、生産性向上にも寄与します。

                                         このような一石が二鳥三鳥にもなる内需拡大政策を、躊躇なく国債増刷によって早く着手していただきたい、私はそう願っております。

                                         

                                         

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