台湾の李登輝逝去について

0

    JUGEMテーマ:安全保障

    JUGEMテーマ:台湾

    JUGEMテーマ:台湾ニュース

     

     先月7/30、台湾の李登輝元総統がお亡くなりになりました。今日はこのことを取り上げ、台湾は中国の一部ではないという史実に触れながら「台湾の李登輝逝去について」と題して論説します。

     

     李登輝とはどのような人物だったのか?をひとことで言いますと、台湾の偉大な政治家で、民主主義と自由を台湾に根付かせ、中国からの脅威を守るべく、台湾の独立に大きく貢献した人といえます。

     

     李登輝の政治思想は「民主主義と自由」であり、民主主義と自由は、社会に繁栄と進歩をもたらす基盤となるというお考えをお持ちでした。

     

     李登輝は、人類の文明にとって民主主義と自由は最も重要な価値観としながら、台湾に和平と安定、繁栄と進歩をもたらす基盤となったとし、逆に中国は富と軍事力によるかりそめの繁栄を喧伝してきただけで、中国共産党政府の目的は独裁体制の維持に過ぎないと述べられました。

     

     李登輝が登場するまでの台湾とは、いったいどのような国だったのでしょうか?

     

     台湾では1996年、初めて総統を国民が直接選ぶことができる直接選挙が行われていますが、これは米国の大統領選挙のようなものです。

     

     李登輝が総統に就任する前の台湾は、国家よりも国民党という政党が上位に位置していました。これは現在の中国に似ています。中国では中国共産党が国家の上に位置します。そのため、国家の首相である李克強首相よりも、習近平国家主席の方が、権力が上になります。

     

     李登輝は、1996年の総統選挙を行って、総統に就任以来、4年間をかけて国家が国民党の上に位置させることに成功しました。国民党に属していた軍隊も、国家に属する軍隊にすることができました。

     

     李登輝のこうした活躍は政治分野に限らず、文化でも成果に現れ、具体的には台湾語(ホーロー語)が復権。台湾語のテレビ番組やホーロー語歌謡が人気を博すようになったといわれています。

     

     1997年からは台湾で初めて台湾史の歴史教育が行われ、しかも日本の植民地時代を客観的に評価するなど、中国の反日教育とは全く異なる歴史観からの解放も見られる歴史教育が行われました。

     

     李登輝氏の民主化、平和への戦いは、総統退任後も続きます。

     

     意外なことに、独裁国家が段階的な改革を経て民主化する例は台湾以外に私は知りません。多くは革命や暴動、独立戦争によって達成されますが、李登輝のように12年の歳月をかけて独裁国家から民主国家にしたという手腕は、世界史上で見ても異例です。

     

     先述の通り、李登輝が総統になる前までは、国民党の独裁政権だったのですが、有名な事件は2.28事件と呼ばれる事件です。

     

     この事件は、第二次世界大戦で日本が1945年に敗戦した後、1947年2月28日に起きた事件です。1947年、台北市で闇たばこを売っていた台湾人女性に対して、国民党政権の役人が暴行。翌日の1947年2月28日に、それに対する抗議デモが発生します。

     

     このとき憲兵隊が抗議デモに対して発砲したため、抗争が台湾全土に広がることになりました。その抗争に参加している台湾人に対して、陳儀行政長官は、紳士的に応じるようにふるまう一方で、中国大陸の蒋介石に救援を求める電報を打ちました。

     

     蒋介石はすぐに軍隊を台湾に差し向け、1947年3月8日には、中国人が台湾人を無差別に殺人。わずか1ヶ月の間に、市民生活の場で3万人弱の台湾人が惨殺されました。

     

     その中には、将来を担うリーダーとなるべき人、医者や弁護士、教師、青年、学生らが、見せしめのために残虐な方法で殺されています。

     

     台湾の北部の基隆では、街頭で検問所を設置し、市民に対して北京語をうまく話せない台湾人を全て逮捕。逮捕された台湾人は、手のひらに針金を差し込まれて縛って束ねられ、トラックに乗せられて基隆という港にそのまま投げ込まれたそうです。

     

    <基隆港とターミナルと基隆駅>

    (出典:2015/09/21に杉っ子が撮影)

     

     多くの人が知らないこと、それは台湾が終戦後、国民党の中国人に植民地統治されたという史実です。

     

     ここで改めて史実を抑えておきたいと思います。

     

     1945年08月15日 太平洋戦争が終戦

     1947年02月27日 台北市内で闇たばこを売っていた女性に国民党政権の役人が暴行

     1947年02月28日 228事件発生

     1947年03月08日 蒋介石が援軍として派遣した第21師団、憲兵隊が台湾に到着 陳儀行政長官の部隊とともに反撃する

     1948年11月06日 淮海戦役(わいかいせんえき)発生 中国共産党と国民党との戦争が始まる

     1949年10月01日 中国共産党が国民党の軍50万人近くを殲滅し、中国共産党政府が勝利を宣言し、毛沢東が中華人民共和国建国

     1949年12月   蒋介石が台湾に逃れる

     

     蒋介石らが逃れてきたのは、1948/11/06に勃発した淮海戦役で毛沢東と戦って負けてからの話です。それまでは1945/08/10以降、日本は去り、中国の国民党が統治していたということ。その後、淮海戦役で敗走した蒋介石が台湾に来て、毛沢東は1949/10/01に中華人民共和国を建国します。2019/10/01こそが中国の建国記念日で70周年記念日になるのですが、中国共産党政府は2015/10/01に抗日戦争勝利70周年という行事・式典を習近平がやっています。

     

     これらは歴史を全く知らないか、もしくはウソの歴史を世界中に刷り込む許されない行為です。当時安倍総理は、当然ながらこの式典に参加しませんでしたが、その判断は正しいです。

     

     少し話を戻しまして、228事件が発生する前のエピソードとして面白い話があります。

     

     「犬去りて、豚来たる(狗去豬來)」という言葉です。

     

     日本人が去った後、台湾人が祖国復帰を喜び、中国大陸から来た国民党政府の官僚や軍人らを港で歓迎したものの、やがて彼らの汚職のすさまじさに驚き失望したとのこと。また国民党の軍人、官僚らは素行が悪く、強姦、強盗、殺人を犯すものも多かったとされ、しかも処罰されないケースもあったとされています。

     

     このようにして、当時の台湾人は、「犬去りて、豚来たる=イヌのあとにブタが来た」という言葉で揶揄します。イヌは日本軍で、ブタは国民党軍を指し、規律正しかった日本兵に比べて、服は汚くだらしなく、教育水準も低く暴行事件を起こすのが国民党軍というわけです。

     

     台湾人は当然反感を持ち、そのきっかけが1947/11/06に発生した高官による台湾人女性に対する暴行だったのでしょう。

     

     衝突後、鎮圧されますが、228事件の後も、蒋介石による台湾人の虐殺は続き、特に知識人やリーダー級の人らが拷問・虐殺されました。

     

     国民党軍からすれば、知識人やリーダー級の人らがいると統治しにくくなります。この知識人排除という発想は、欧米列強がアジア諸国を植民地にしたときの愚民化政策、スペイン人のアメリカ大陸でやってきた愚民化政策、1975年〜1979年にカンボジアで発生したポルポト派によるプノンペンでの虐殺行為に似ています。

     

     台湾でよくある昔話として、日本がインフラを整備したので蛇口から水が出るのですが、それを見た国民党軍の人が、水道の蛇口だけを買ってきて、壁につけたが「水が出ないぞ!」と怒ったというほど、教育水準が低かったとされています。

     

     このようにして国民党が国家の上にある体制がずっと続いてきた台湾は、国民党の独裁政権であり、自由と民主主義といった概念がそこにはありませんでしたが、1996年に初めて総統選挙を行い、総統に就任した李登輝は、自由と民主主義という政治思想を持ち込みました。

     

     さらに李登輝は複数政党による民主主義体制を敷き、一党独裁も終わらせました。

     

     このアジア発の無血での民主化の実現というのは、史実としては稀であり、これは今、香港の人らが目指しているものであるともいえます。

     

     今の台湾の体制を香港の人たちが目指しており、そしてそれを成し遂げたのは李登輝だったということ。

     

     ここまで聞くと、李登輝が総統選挙をやって簡単に民主化できたのか?といえば、そうでもありません。

     

     1995年7月〜1996年3月の8カ月にわたり、台湾海峡危機ということで、中国共産党の人民解放軍が台湾に向かってミサイルを撃ち続けています。

     

     このミサイルは台湾初の総統選挙の投票日まで続き、ミサイルは台湾南部の高雄の近海にまで撃ち込まれました。

     

     それでも李登輝はこうした中国の脅しに屈することなく、民主化のための民主化の選挙を推し進めたのです。

     

     台湾海峡危機は、中国が台湾人に恐怖を与えることが目的だったのですが、台湾人は恐怖どころかこの行為に怒り、中国共産党による脅しに屈しない李登輝総統のリーダーとしての姿、そこに台湾人の支持が集まり、台湾初の総統選挙で李登輝が過半数の票を得ることができたのです。

     

     李登輝が血を流さず、民主化を実現できた理由は、政治思想の「民主主義と自由」にあったと先述しましたが、その政治思想はミサイルの脅威に打ち勝ったとするならば、これはノーベル平和賞受賞にも相当すべき偉業だったといえるでしょう。

     

     今の台湾に李登輝の政治思想は受け継がれているか?といえば、蔡英文総統は、李登輝の弟子です。

     

     蔡英文総統は、中国の覇権主義を最小限にするため、台湾人は共に「民主主義と自由」の価値を再確認しなければならないと述べ、抽象的な論理で述べているのではなく、「民主主義と自由」という価値観、重要さを強く思想として持つこと自体が、中国共産党の覇権主義や暴力に対して打ち勝てるというのが李登輝の精神であり、蔡英文総統はそれを受け継いでいると言えるでしょう。

     

     

     

     というわけで今日は「台湾の李登輝逝去について」と題して論説しました。

     李登輝の精神の原点にあるもの、それは日本の精神であると李登輝自身が述べています。李登輝は京都大学を卒業し、親日であるということは言うまでもありませんが、尖閣諸島問題についても、尖閣諸島は日本のモノであるとも主張しておられました。

     李登輝が無血で独裁政権から民主化できたという偉業は、お亡くなりになられた後も引き継がれるべきお話です。そのような素晴らしい偉業を成し遂げられた李登輝氏につきまして、僭越ながら改めて哀悼の意を表明したいと私は思います。

     

     

    〜関連記事(台湾関連)〜

    米国務省による台湾への大量の武器売却について

    台湾の地政学上の重要性を理解している米国と、カネ儲け優先で理解しない愚かな日本

    台湾を国家承認する運動が起きているドイツを、日本も学ぶべきでは?

    台湾を排除するWHOに対して166億円の緊急支出をした安倍政権

    中国の習近平ではなく台湾の蔡英文総統を国賓として招聘すべきでは?

    中国は反日で、台湾が親日である理由とは?

    血税3,500億円を突っ込んだジャパンディスプレイ社を800億円で中国企業に売ろうとしている日本の官民ファンド

    同化政策(大日本帝国・ローマ帝国)と植民地(欧米列強国)の違い

     

    〜関連記事(中国が民主化できない理由)〜

    ”タタールのくびき”と”従軍慰安婦””南京大虐殺”の虐殺性について

    中国はどれだけ経済発展したとしても民主化することは絶対にありません!

    権力のためなら平気で他人を裏切る人間が頻出するのが中国の歴史です!

    「中国は経済成長すれば、やがて中国人民が豊かになって民主化する」という言説と「沖縄はもともと中国の領土だ」という言説の真偽

    世界で最古の国が”日本”である事実を否定する歴史学者たち

    青森県の大平山元遺跡(おおだいやまもといせき)と司馬遼太郎の功罪

    なぜ日本国の先人らは男系の皇統を守り続けたのか?

    皇室は、日本のナショナリズムの中核です!


    コメント
    コメントする








       

    calendar

    S M T W T F S
        123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    25262728293031
    << October 2020 >>

    スポンサーリンク

    ブログ村

    ブログランキング・にほんブログ村へ
    にほんブログ村

    selected entries

    recent comment

    • ”平時のムダ=非常時の安全”を理解せず、ひたすら無駄削減に邁進する大阪維新の会こそ無駄な政治政党です!
      Ode (10/21)
    • 大阪都構想とは大阪市役所を廃止するのではなく大阪市という政令市を廃止することです!
      Ode (09/19)
    • 政治主導よりも官僚主導・族議員の昭和時代に戻ることが日本を強くする
      Ode (09/15)
    • 京都大学の上久保靖彦教授による新型コロナウイルスの日本人集団免疫獲得説について
      Ode (08/25)
    • 最高益となった41社が巣ごもり需要を取り込んだとするどうでもいい報道と粗利益補償の必要性
      Ode (08/21)
    • よくぞ言った!経団連の山内副会長”熊本豪雨災害は一種の人災”発言の真意について!
      Ode (08/04)
    • 日本国民の人命よりも”オリンピック開催”と”財政再建”を優先する安倍政権
      棚木随心 (03/16)
    • 地獄と化した武漢の真実が日本に伝わらない理由(日中記者交換協定について)
      アホでもわかるから書く必要はない (02/04)
    • レバノンのベイルートとビブロス遺跡
      棚木随心 (01/22)
    • 四国新幹線の署名活動について
      ・・・ (12/14)

    profile

    search this site.

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM