北海道電力(株)について(電気事業法第36条に基づく渇水準備引当金)

  • 2017.04.04 Tuesday
  • 00:08

JUGEMテーマ:原発

 

今日は、北海道電力(株)(証券コード:9509)が泊原発が停止していることによる経営への影響について意見したいと思います。

 

まず、北海道電力(株)の四季報を見てみましょう。

 

1.北海道電力(株)の概要(四季報)

 

 

 

 

 

 

 3.11の東日本大震災が起きる前の電力株は、ほとんどが50円配当を安定的に出していて、リスクが低い安定した株であるという評価でした。四季報が2014年以前の記載がないので、配当が記載されていませんが、私もかつて電力株の購入を検討したことがあり、1社東京電力か沖縄電力かいずれかが60円だったと記憶していますが、それ以外の電力株は全て年間50円配当であったと記憶しています。

 

 

 

.泊原発3基停止による収益悪化と、2015年3月期におけるエクイティファイナンス実施

 

さて、泊原発3基停止により、北海道電力(株)は、経営危機を迎えます。

下表は、2012年3月期から過去5か年の経営指標の推移です。

(出典:有価証券報告書)

 

2011年3月11日に東日本大震災が発生しましたが、その翌年の2012年3月期決算から、経常損失が3か年続いています。

ここで、注目いただきたい数値は、下記の通りです。

 

(1)純資産額

2012年3月期:279,741百万円

2013年3月期:155,292百万円

2014年3月期:  92,926百万円

2015年3月期:147,501百万円

2016年3月期:160,864百万円

 

(2)経常損益

2012年3月期:  ▲14,691百万円

2013年3月期:▲118,670百万円

2014年3月期:  ▲98,824百万円

2015年3月期:    ▲8,758百万円

2016年3月期:     21,238百万円

 

(3)当期純損益

2012年3月期:  ▲74,544百万円

2013年3月期:▲120,083百万円

2014年3月期:  ▲64,207百万円

2015年3月期:       4,230百万円

2016年3月期:     17,099百万円

 

(4)自己資本比率

2010年3月期:24.55%(※過去の有価証券報告書から抜粋)

2011年3月期:23.22%(※過去の有価証券報告書から抜粋)

2012年3月期:18.01%

2013年3月期:  9.66%

2014年3月期:  5.40%

2015年3月期:  8.43%

2016年3月期:  9.11%

 

 

 まず、泊原発が稼働するか否か?で、経常損益で約900億円の数字が動きます。未稼働の場合900億円収益悪化し、稼働すれば900億円収益計上されるというイメージです。

 上記の指標でいえば、純資産の額が、3.11の震災後の2012年3月期決算以降、すさまじい勢いで減少しています。これは3.11で泊原発の運転を停止し、損益が急激に悪化したことによるものです。

 

 純資産額の推移で言えば、2013年3月期からわずか3年で、279,741百万円が92,926百万円にまで減少しています。泊原発未稼働による収益悪化影響で毎年900億円の経常損失を出し、自己資本を削っていったのです。

 

 2015年3月期に、自己資本は147,501百万円に増加に転じています。この理由は、日本政策投資銀行に第三者割当増資で500億円を引き受けてもらったためです。A種優先株500株が2015年3月期決算から記載されているのは、このためです。

 

 上述を統括すると下記の通りです。

・原発停止以降、特に2013年3月期決算から、毎年約1,000億円前後の収益減少と大幅悪化した

・それに伴い、自己資本を約900億円ずつ失っていった

・2012年3月期時点の自己資本は、約2,800億円だった

・2013年3月期、2014年3月期、2015年3月期と3年間連続して900億円の経常損失を計上すれば、自己資本約2,800億円がほぼ無くなる計算であった

・万一、2015年3月期(2014年度)に日本政策投資銀行を引き受け手とする第三者割当増資によるA種優先株500億円のエクイティファイナンスを実施しない場合は、2015年3月期時点で債務超過になる可能性があった

・実際は、2015年3月期決算を迎える前に日本政策投資銀行が第三者割当増資を引き受けてくれたおかげで債務超過を回避できた

・泊原発が停止のままだが、経常損益がプラスになり、自己資本比率も上昇に転じていった

 

 上記の通り、2015年3月期決算は、薄氷を踏む決算だったことがよくわかります。日本政策投資銀行が第三者割当増資を引き受けてくれたからこそ、債務超過にならず済んだのです。北海道電力が債務超過になったら、日本経済はシャレにならないくらい大変なことになっていたと思います。

 

 例えば、電力会社の社債は、A格付けであり、証券会社のMMFやMRFといった元本割れを基本起こさないとされる公社債投信にも組み入れられていました。もし、北海道電力が債務超過になっていたら、MMFやMRFで元本割れになっていたファンドが発生したかもしれません。

 

 

 

3.渇水準備引当金の取り崩しについて

 

 上記の通り、2014年度(2014年4月〜2015年3月)に実施したエクイティファイナンス実施により、債務超過を免れましたが、泊原発は引き続き停止状態のままです。この状況で、2015年3月期の決算で、経常損益が好転しています。2013年3月期、2014年3月期と、約1,000億近い経常損失を2年連続計上していましたが、2015年3月期は約87億円経常損失と、大幅に好転しています。

 

 この理由について、北海道電力のIRの資料を調べたところ、詳細が分かりました。

主に経常損失を押し上げた効果としては下記の通りです。

・火力発電の原料である原油安によるコスト低下:211億円

・電気料金の値上げ:503億円

・人件費、修繕費、諸経費などのコスト削減:312億円

・渇水準備引当金の取り崩し:220億円

 

 こうしてみると、2015年3月期は、コスト削減もそうですが、「原油安でたまたま運がよかった」「電気料金の値上げによりカバーできた」「渇水準備引当金を取り崩した」ということが、北海道電力を救ったと言えます。

 

 この渇水準備引当金とは、電気事業法第36条に基づいて、電力会社は水力発電で得た利益の一部を引当金として費用化することを義務付けた費用の勘定科目で、目的は電力会社の経営を安定化させることです。

 

 もともと水力発電は、電力会社として供給コストが安いのですが、雨が降らなければ、ダムに水が貯まらず、稼働できません。

 雨が長期間降らないで、ダムに水が貯まらず水力発電所が稼働できない場合、火力発電やら原子力発電などの稼働率を上げます。特に火力発電は鉱物性資源を原料とするため、原油価格によってコスト変動のブレが大きく、赤字になった際に、過去水力発電で儲けた利益の一部を、その赤字に充当できるよう引き当てを義務付けているのです。

 渇水準備引当金は義務付けられているものですので、取り崩す場合は経済産業省の許可が必要です。北海道電力は債務超過を回避するため、渇水準備引当金の取り崩しまで経済産業省に申請いたしました。

 

 というわけで、今日は北海道電力について、3.11以降泊原発停止による経営悪化を、あらゆる方法を使って債務超過を回避してきたことをご紹介いたしました。とはいえ、中国バブル崩壊をきっかけとする資源バブル崩壊により、原油高トレンドから原油安トレンドに原油相場が推移し始めたことも大きく影響しています。また、北海道電力の値上げの効果も大きい。ただし電力の値上げは、企業の損益に悪影響を与え、家計を圧迫して北海道内の消費がさらに落ち込むといった事象も発生します。

 私は、原発推進ではありませんが、電力は安いに越したことはないと思っておりまして、原発再稼働には大賛成です。今後は原発問題についても取り上げていきたいと思っています。

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