震災時の談合は犯罪になるのか?

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     昨年の2016年1月20日、大手道路舗装会社4社が被災した高速道路の復旧工事を巡って調整役となって談合したということで、東京地検特捜部と公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いで強制捜査に乗り出したというニュースがありました。震災時に談合することが悪なのか?意見を述べたいと思います。

     

     2011年3月11日の東日本大震災で、太平洋側の高速道路は津波で分断されてしまいました。東京方面から東北へ救援部隊を派遣しようにも道路が通れない事態でした。特に沿岸を走る国道45号線が通行不能で、大量輸送が極めて困難な状況となったのです。

     

     国交省は被災地の各県や自衛隊、土木建設業者と協力して、緊急輸送道路を「くしの歯型」切り開くことを決定し、最も被害を受けた海岸沿いの国道45号線の復旧は後回しにして、東北自動車道と国道4号線を優先的に通行可能にし、沿岸被災地に「くしの歯」として横に道路を伸ばして救援活動の物流ルートを確保することになったのです。

     

     こうして土木建設業者らの不眠不休の努力により、3月18日までに国道45号線の97%が通行可能という世界が驚くほどの早さで被災地への物流ルートが確保され、救援活動が本格的に始まりました。その後も道路復旧作業は続きましたが、それが「談合である」と公正取引委員会が問題視して強制捜査が行われたのです。

     

     非常時に呑気に「一般入札」などやっていていいのでしょうか?とにかく早急に復旧工事を開始して道路を通行可能にし、物流ルートを確保しなければ被災地の復興は遅れるどころか、餓死者が出ることだってあり得ます。

     

     早期に道路復旧のため、特定の道路会社が「調整役」として各事業者に仕事を割り振り、速やかに道路復旧させる努力をしたとして何が悪いのでしょうか?その手の調整が行われてなかったら、早期復旧は果たせたでしょうか?

     「ゼネコンが震災で儲けるのはおかしい!」「そのような非常事態に安値発注して税金の無駄遣いを辞めるべき!」こうした論説に同調する国民が多かったのでは?と思います。とはいえ、当時は道路復旧は人命にかかわる非常事態です。被災者の命を守るために、現場が相談し、最も速やかに道路復旧が可能な形で仕事を割り振るという行為が罪になるとでもいうのでしょうか?公正取引委員会は罪になると考えているのでしょうか?「アホか!」と言いたい。

     

     「震災時の道路復旧のための仕事の割り振り」の調整が独占禁止法違反で刑事罰対象になるのでは、今後は大震災が発生しても、ゼネコンがスピーディーに動かず、早期復旧は不可能になるでしょう。何しろ、現場で仕事を調整するだけで独占禁止法違反で処罰されるということでは、大手道路舗装会社らは率先して道路復旧しようとはしなくなるでしょう。結果、道路というロジスティクスの基盤がいつまで経っても復旧せず、被災地の国民が死んでしまいます。

     

     怖いのは、日本国民に「震災発生時の談合は本当に悪いのか?」という論説が全く見られないことです。日本国民は、災害大国であるにもかかわらず、非常事態発生時においても、「市場競争」「公正な入札」といった寝言を言っていられないという常識すら理解していないほど、愚民化してしまっているのでしょうか?

     

     私は「指名競争入札」や「談合」が悪であると思っていません。災害大国だから全国各地に土木建設業者が存在している必要があるのです。3.11のときに自衛隊や東京消防署の活躍がTVで放映されましたが、津波や火災でめちゃくちゃになった状態では、グーグルの地図の写真など役に立ちません。現地の地元の土木建設業者らが、がれきを横に分け、自衛隊やら消防署員らが現場に入れるようにしていたという事実は、マスコミでほとんど報じられていないと思われます。

     

     「全国各地に土木建築業者を存続させる」「企業間競争によって業者の生産性向上を促す」を両立させるためには、「指名競争入札」と「談合」は有効であると言いたい。指名競争入札で地元の企業を優先的に公共工事を落札させる。とはいえ、指名に入ることができた業者同士が、競争が激しすぎると、結局地元から退場する土木建設業者が出てくる。そうならないために「ワークシェアリング」で仕事を分け合う。また、指名から排除されないようにするために、高品質に仕上げるための企業努力や生産性向上のための投資を続け、指名の枠に残るために努力する。こうしたことが日本の土木建設業のシステムでした。

     

     我々は、このシステムを「市場競争に反する」という単純な考え方から否定するようになり、破壊してきました。挙句の果てに大災害時に仕事の割り振りが「談合」として公正取引委員会が問題視し、その異常性を誰も疑問視しない。

     

     多くの国民が思考停止に陥り、何が正しくて何が間違っているか?判断ができなくなっているように思うのです。このままでは我々は将来世代に大変なツケを残すことでしょう。そうならないためにも、震災時の談合を問題視する姿勢が異常であることに気付かなければならないものと考えます。


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