トランプ大統領が指示するレアアースの米国国内での生産体制
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今日は「トランプ大統領が指示するレアアースの米国国内での生産体制」と題して、国防政策とリンクさせた財政出動をやろうとしているトランプ大統領について論説します。
ロイター通信の記事をご紹介します。
『ロイター通信 2019/07/13 06:30 米国防総省、国内レアアース生産能力を調査 安定供給に向け
[12日 ロイター] - 米国防総省がレアアース(希土類)の安定供給確保に向け、国内のレアアース生産能力を調査している。ロイターが政府文書を入手した。
レアアースを巡っては、貿易問題で米国と対立する中国が交渉カードに使うのではないかとの思惑が広がっている。
6月27日付けの文書によると、国防総省は鉱山業者に対し、レアアース鉱山や処理施設の開発計画について説明するよう要請。製造業者に対してはレアアース需要を問い合わせている。回答期限は7月31日。』
米中貿易戦争で、世界的にスロートレード(貿易量の減少)が問題になっており、外需に頼る輸出国にとっては厳しい経済状況が続くことになるでしょう。
そうした中、トランプ政権は、国防関連に関わる法律に基づき、レアアースの国内での生産体制を作るよう指示を出しています。
上記記事は、それを裏付けるべく、鉱山業者に対してレアアース鉱山や処理施設の開発計画について説明するよう要請したというニュースです。
米国は、レアアースを国防のために必須の戦略素材と位置づけ、輸入に頼るのではなく、自国で生産できる体制を作ろうとしています。
レアアースは、名前が”レア”とついているだけあって、希少価値があるといわれていますが、実際には多く存在します。ところが採掘するのに多大な投資が必要となるため、採掘できたレアアースは確かに”レア”です。
レアアースが何に使われているか?主な用途は下記のとおりです。
●軽希土●
ランタン(La):光学レンズ、セラミックコンデンサー
セリウム(Ce):ガラス研磨剤、自動車用助触媒、UVカットガラス、ガラス消色剤
ネオジム(Nd):Nd磁石(焼結・ボンド)、セラミックコンデンサー
●重希土●
ガドリニウム(Gd):光学ガラス、原子炉の中性子遮断材
ジスプロジウム(Dy):Nd焼結磁石、超磁歪材
ホルミウム(Ho):レーザー関係、磁性超伝導体
エルビウム(Er):クリスタルガラス着色剤
上記素材はPCのハードウェアから、軍隊の戦闘機のエンジンに至るまで、実に広範囲で使われています。
実際に使われる要は少ないものの、最重要部分に使われるため、最重要部分の最も戦略的な素材としてレアアースは使われます。
その非常に重要な品目であるレアアースは、過去数十年間、中国のほぼ独占市場になっており、世界の供給の8割が中国です。
米国のある軍事産業では、中国からの輸入に完全に依存しており、米国の兵器の重要部分に使われるレアアースを、敵国からの輸入に頼っているのが現状です。
中国の習近平政権は、レアアースの米国への輸出を削減し、米国に圧力をかけようとしてます。
そこでトランプ大統領は、こうした習近平政権の動きに対抗しようとして、レアアースの米国国内での生産体制を作り、米国の国防総省が軍備のためにレアアースを必要としているのを、中国からの輸入ではなく、米国国内産業からレアアースを買うという形を作ろうとしているのです。
米国では4月〜6月のGDPが2.1%増でしたが、個人消費こそ4.3%増と伸びているものの、輸出と設備投資が減少となりました。そのような状況で、2019/07/13に国内レアアースの生産体制の強化を打ち出すとなれば、鉱工業などの企業の設備投資を促すきっかけになります。
個人消費が良くて、国内の設備投資がずっと悪いという状況であるため、低迷している企業への設備投資を刺激しようとしており、国防政策と経済政策の両方を備えた財政政策で素晴らしいといえます。米国は放っておけばだんだん不況に入っていく。トランプ大統領は、それを「黙って見てはいないぞ!」という姿勢を示しているのでしょう。
それに比べて日本はどうか?輸入が大幅減少でGDPがプラスになったことを喜んでいる。まさに頭の中お花畑としかいいようがありません。
日本の政治家に対して、少しはトランプ大統領の爪の垢でも煎じて飲んでいただきたいと思うのは私だけでしょうか?
というわけで今日は「トランプ大統領が指示するレアアースの米国国内での生産体制」と題して論説しました。
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- 2019.08.21 Wednesday
- 世界経済(米国)
- 01:32
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- by 杉っ子