治水事業費を削減したのは民主党政権だが、安倍政権も治水事業費を増やしていない!という事実
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今日は、相次ぐ異常気象で、国家としてはどういう対策が必要なのか?検証しながら、「治水事業費を削減したのは民主党政権だが、安倍政権も治水事業費を増やしていない!という事実」と題して論説します。
世界的な異常気象の話題が絶えない今年の夏ですが、日本では海水温の異常な上昇により、西日本豪雨に象徴されるような災害が頻するようになりました。
そこで今日は
1.災害対策費を政府は増やしているのか?
2.民主党政権が治水事業費を削減したのは事実だが、安倍政権も治水事業費は増やしていないという事実
3.今後対応すべき課題
の順に論説したいと思います。
1.災害対策費を政府は増やしているのか?
そもそも政府は災害対策費を増やしているのでしょうか?
豪雨は、30年前比で1.7倍にまで発生頻度が増えているため、普通に考えるならば単純に災害対策費も1.7倍以上に増やさなければならないでしょう。
ところが日本は災害対策費を減らしています。
それはなぜか?プライマリーバランス黒字化目標があるからです。1997年に構造改革基本法が制定されて以来、公共事業の削減を始めました。そこに竹中平蔵氏がプライマリーバランス黒字化目標というコンセプトを、国家の財政運営に持ち込み、日本はデフレ対策ができないどころか、安全保障のための十分な支出ができなくなってしまったのです。
これだけ豪雨が激甚化しても、予算は削減され続け、対策は一向に進みません。
作るべき砂防ダムは作られないため、今もなお、土砂災害で大勢の人が命を失う危険にさらされているのです。
今回の西日本豪雨もまた、作るべき砂防ダムの設置計画はあったものの、財政問題を理由に作ることを留保、または着工開始が遅れました。その結果、西日本豪雨では岡山県の小田川が決壊したり、古い砂防ダムが決壊したりするなどして、大勢の人々が亡くなりました。岡山県の小田川の堤防決壊では50人近くの人が亡くなったのが、象徴的です。
もし堤防強化などの治水事業に予算が付けられ、対策を早期に着手していれば、今回の事故で命を落とした人々が助かった可能性は濃厚です。
実は、計画された治水対策はたくさんありました。それらに予算をつけて早期着手していれば、死者は普通に半分以下になっていたことが想像できます。
2.民主党政権が治水事業費を削減したのは事実だが、安倍政権も治水事業費は増やしていないという事実
下記は、公共事業費と治水事業費の推移のグラフです。
(出典:財務省の予算資料、国交省の予算資料、内閣府のホームページなど)
上記グラフを作ってみますと、下記の通り分析ができます。
●総じて公共事業費は1998年をピークに減少傾向にある
●治水対策費も1998年をピークに減少傾向にあり、2008年に40%近く削減されて、それ以降2016年まで横ばい
●現在の治水対策費の水準はピークの約半分程度である
●金融危機が発生した1998年は小渕恵三政権が第二次補正予算で公共事業費を増額した
●小泉純一郎政権は支持率が高かったが、公共事業費を毎年削減してきた
●リーマンショックが発生した2009年に麻生太郎政権が、一時的にプライマリーバランス黒字化目標を棚上げし、公共事業費を増やした
●民主党政権になって2010年、公共事業を削減し、治水事業も削減した
●民主党政権は、2011年においても3.11の東日本大震災が発生したにもかかわらず、公共事業を削減している
※2011年度は菅直人内閣は、第4次補正予算(第1次補正予算2011/05/02成立、第2次補正予算2011/07/25成立、第3次補正予算2011/11/21、第4次補正予算2012/02/08)まで組んだが、実額にしてわずか0.3兆円と低い水準の支出に留まっている
●2012年度は補正予算が前年比2.1兆円増加の2.4兆円を組んだが、これは安倍政権が誕生して2013/02/26に成立したもの
●2013年度以降の第2次安倍政権下においても、治水事業はピークの半分程度のトレンドを踏襲している
治水事業費だけでグラフを見てみると下記のとおりです。
(出典:国交省のホームページに掲載の公表数値)
上記の通り、2009年の麻生政権で1兆3,192億円の治水事業費が、2010年の民主党政権で8,073億円にまで減少しています。確かに民主党政権で激減させたことは事実です。
とはいえ、2002年〜2009年にかけて、少しずつ右肩下がりで治水事業費が削減されており、2013年度以降においても低水準の8,000億円前後で安倍政権も治水事業を増やしていません。
もし、安倍政権が治水事業を1兆5,000億円〜2兆円程度の予算をつけているならば、批判を免れると考えてもいいと思いますが、安倍政権ですら8,000億円前後で治水事業を増やしていないのです。
3.今後対応すべき課題
異常気象に対して、どういう対策をとればいいか?といえば、治水事業を徹底的に実施するしかありません。多くの人々が、次の台風で洪水などで命を落とすかもしれないからです。そしてその台風は、来週来るかもしれないですし、来月来るかもしれない、何しろ日本は、海外の他国と比べて、屈指の自然災害のオンパレード国であり、災害安全保障のための需要は無限です。
2年前の2016年、台風がこないとされていた北海道でさえ、4つの台風(7号、11号、9号、10号)が来ました。特に2016年8月29日〜8月31日北海道に接近した台風10号では、上陸こそしなかったものの、爆風と爆雨をもたらし、南富良野町で空知川の堤防が決壊、帯広市でも札内川の堤防が決壊、そして芽室町でも芽室川が氾濫して道路や住宅が浸水、JR線や道路も壊滅状態になっただけでなく、道東の十勝総合振興局で新得町と大樹町で二人が死亡、清水町でも行方不明者が出ました。
この2016年8月の北海道で大被害をもたらした台風10号は、複雑な動きをした台風ということで1951年(昭和26年)に気象庁が統計を取り始めて以来、初めて東北地方の太平洋側に上陸した珍しい進路ということで取り上げられました。
この夏の酷暑に限らず、”気象庁が統計を取り始めて以来”が増えつつあり、過去のトレンドとは異なるトレンドになっている点で注意が必要です。何しろ北海道でも台風が4つも襲来して、人が亡くなってしまうということが起きる時代です。
異常気象の緊急対応をすべきということが、誰が見ても明らかです。
では具体的には何をすべきでしょうか?
短期的な視点と、長期的な視点での対策の両方が必要と考えます。
短期的な対策でいえば、今年から2年くらいのスパンでみて、小田川の堤防のような治水事業は、可及的に速やかにすべて着手・実行に移すべきです。合わせて砂防ダムの治山事業も同様に行うことが必要です。
その際、国債が発行できないから予備費の範囲内とか、余っている財源を充当するとか、そういう家計簿発想、企業経営の発想ではなく、必要なお金はいくらなのか?必要額を開示させ、不足する財源は、躊躇なく国債発行する、これが最大のポイントであり、最適の解決策です。
国債を発行したら借金が増えると思われる方、おられるかもしれませんが、円建て国債でマイナス金利でタダ同然で借りられる状況です。国債不足に陥っている債券市場も正常化します。財政法第4条では公共事業について赤字国債は認められませんが、建設国債は普通に認められます。例えば国会で治水事業・治山事業で20兆円必要と決まれば、20兆円国債発行することは普通に可能なことです。
中長期的な対策としては、江戸時代の徳川家康の利根川東遷は60年かかりましたが、そのくらいの中長期スパンでのスーパー堤防の建設や防波堤防潮堤の設置、火山噴火予測など、これらの先行きが長い対策については、財政出動で行うために臨時に特別措置法を制定するなどの対応も検討課題です。
短中期の対策、中長期の対策の両方を議論し、とにかく躊躇なく国債を発行すること、これが大事です。
今年の夏は大阪北部地震、西日本豪雨、酷暑による熱中症などで、大勢の方が亡くなっています。また次の自然災害がいつ発生するか誰にも予測できません。このような過酷な自然環境にある日本だからこそ、災害安全保障に対する需要は無限にあり、プライマリーバランスを赤字化して躊躇なく国債発行することが必要であると私は考えます。
というわけで今日は「治水事業費を削減したのは民主党政権だが、安倍政権も治水事業費を増やしていない!という事実」と題して、民主党政権だけが治水事業費を削減したというのは、間違っているということと、喫緊の課題としての解決策について論説しました。
〜関連記事〜
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- 2018.08.16 Thursday
- 日本経済(公共事業)
- 03:28
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- by 杉っ子