レアアース危機とは何だったのか?(反日中国に対する日本産業界による強烈なブーメランの炸裂)

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     今日は、数年前に尖閣危機を発端として始まったレアアース危機について取り上げ、昭和電工(証券コード:4004)が開発したレアアースのジスプロジウムを使わないネオジム磁石の代替の磁石合金を取り上げ、その意義について意見したいと思います。

     

     

     

    1.レアアースって何?

     

     レアアース(希土類)という言葉、聞いたことありますでしょうか?元素記号ですとLa(ランタン)、Ce(セリウム)、Nd(ネオジム)、Dy(ジスプロジウム)などがあります。レアアースの名称の由来は、1792年にスウェーデンで見つかった鉱物の中に未知の元素の酸化物を含んだ土を発見したフィンランドの化学者であるヨハン・ガドリン(Johan Gadolin)が、「稀(まれ)な土」と名付けたことに由来します。その後、ヨハン・ガドリンが発見した土が複数の元素の混合物であることが判明しました。それ以来、その元素の総称を「レアアース」と呼ばれるようになったといわれています。

     

     レアアースの用途は、私たちの身近な生活に多く使われています。軽希土6種と、重希土10種で、16種類ありますが、主なものと用途は下記の通りです。

     

     ●軽希土●

     ランタン(La):光学レンズ、セラミックコンデンサー

     セリウム(Ce):ガラス研磨剤、自動車用助触媒、UVカットガラス、ガラス消色剤

     ネオジム(Nd):Nd磁石(焼結・ボンド)、セラミックコンデンサー

     

     ●重希土●

     ガドリニウム(Gd):光学ガラス、原子炉の中性子遮断材

     ジスプロジウム(Dy):Nd焼結磁石、超磁歪材

     ホルミウム(Ho):レーザー関係、磁性超伝導体

     エルビウム(Er):クリスタルガラス着色剤

     

     

     

    2.ネオジム磁石について

     

     ネオジム磁石というのは、1983年に住友特殊金属(現在の日立金属)によって開発された世界で最も磁力が強い実用永久磁石で、鉄(69%)に対して2種類のレアアース(ネオジム25%とジスプロジウム4%)が含まれた磁石となっています。

     このネオジム磁石は、小型で強力な磁力を発するため、自動車のハイブリッド車や電気自動車の駆動モーターや風力発電の小型発電機など、さまざまな種類の高性能モーターに多く利用されています。

     こうした用途で使うネオジム磁石は、モーター駆動時に発熱します。発熱の結果発火したり損壊したりすることを回避するため、その発熱を抑えるために耐熱性を求められます。そのため、ネオジム磁石に成分の4%強を占める耐熱性を持つレアアースであるジスプロジウム(重希土)を添加します。

     ネオジム磁石の成分は下記のグラフの通りです。

    (出典:マテリアルインテグレーション)

     

     このネオジム磁石の用途は、各種高性能モーター、磁気軸受(ベアリング)、医療機器(MRI=レントゲンでは写らない神経の状態がわかる機器)、電子部品などです。

     まさに、日本が得意とする資本財全般で使われており、消費財でいえば、自動車やら産業機械やらTV・携帯電話・スマートフォーン・パソコンなど、ハイテク技術のあらゆるところに使われます。

     

     ネオジム磁石の使用量例は下記の通りです。

     EPS(電動パワステ):数グラム〜50グラム/1台

     EV(電気自動車):0.6キログラム〜0.7キログラム/1台

     風力発電:数百キログラム〜数トン/1基

     

     

     

    3.中国に偏在するジスプロジウムと中国共産党政府の供給制限による価格のつり上げ

     

     これだけの用途と需要量があるネオジム・ジスプロジウムは、日本企業の最先端技術産業の戦略素材なのですが、多くは中国に偏在します。ところが、尖閣事件以降、中国がレアアースの日本への輸出を止めるため、供給を規制し始めたのです。中国以外では、米国やオーストラリアなどの鉱山開発も行われましたが、これらの鉱山ではセリウム、ランタンなどの軽希土中心の鉱山であるため、重希土のジスプロジウムの供給増にならなかったのです。

     中国は、レアアースの最大の生産国で、世界で生産のほとんどを占めますが、同時にレアアース最大の消費国でもあります。

     

     

    <レアアース(ネオジム・ジスプロジウム)の価格推移(2007年1月〜2012年7月)>

    (出典:みずほコーポレート銀行の産業調査部作成レポートより)

     

     2010年7月 レアアース輸出枠 大幅削減

     2010年9月 尖閣諸島沖 中国漁船衝突事件

     2011年5月 レアアース鉄合金が輸出管理枠に追加

     

     このように、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件をきっかけに、中国は供給を制限し、日本への輸出を制限した結果、ジスプロジウムの価格は30倍〜40倍にまで高騰しました。そうやって日本を困らせる(日本からボったくる)嫌がらせに近いことをやってきたのです。

     

     

     

    4.日本政府の対応(WTOへの提訴)と昭和電工の磁石合金の開発

     

     中国共産党政府のレアアース輸出規制政策を受けて、2012年3月13日に日米欧各国政府は、WTOへの提訴に踏み切りました。とはいえ、訴訟で勝訴する見込みがあるとしても、最終判断は1年以上かかります。

     

     ここでWTOについて触れます。WTOとは、World Trade Organization の略で、貿易に関する国際協定の一つです。端的に言えば、各国の主権である関税自主権を認めたうえで、貿易の自由を謳ってます。貿易の自由の対象外となる事象として、安全保障にかかわる場合、自国の安全が脅かされる場合などは、貿易の自由を制限してもよいことになっています。

     

     中国のレアアース輸出制限についていえば、中国サイドから見て、日本は軍事攻撃をしているわけではありませんので、ジスプロジウムの供給を制限して価格を釣り上げることは、WTOに違反すると日本は主張できます。

     

     少し話変わりますが、韓国は竹島を占領しています。韓国は資本財(セラミック・コンデンサー・セミコンダクター・シリコンウエハー・レアーガスなどの電子部品や工業製品)のほとんどを、日本からの輸入に頼っています。サムスン電子にしろ、現代自動車にしろ、日本からの資本財の輸出が止まれば、どちらの会社も工場の稼働が止まります。

     とはいえ、韓国が竹島を占領している状態は、日本にとって安全保障を脅かしている状態であり、本来ならば外交でもっと強く資本財の輸出停止をチラつかせて、竹島の占領を止めるよう申し入れしても、WTO違反にならず、何ら問題がありません。

     中国のレアアース輸出制限は、そうした日韓の話とは全く異なり、不当な輸出制限であって許せざる行為です。

     

     中国が不当な輸出制限をした結果、レアアースの価格は高騰し、ジスプロジウムの場合は30倍〜40倍にまで価格上昇しました。その後の価格上昇も見込んで、精製工場を製造したり、コンドミニアムを作ったりと、レアアースの価格高騰を謳歌しようとしていました。

     

     ところが、日本の産業界はすごい。昭和電工(証券コード:4004)という企業が、ジスプロジウムを使わない磁石合金を開発しました。結果、ジスプロジウムの需要は激減し、先述のグラフの通り、価格が下落しました。

     昭和電工のジスプロジウムを使わない磁石合金の開発だけでなく、リサイクル技術も開発。またジスプロジウム・ネオジムの調達先も他国に拡大することで、レアアースの対中国依存度を急速に引き下げることに成功したのです。

     中国はレアアースの価格を30倍〜40倍にまで高騰させて日本に嫌がらせをしたわけですが、そのレアアースは半年で3分の1程度にまで下落しました。レアアースの価格高騰を見込んで、いろんなものを作りましたが、すべてゴミ同然となってしまいました。

     

     日本に嫌がらせをしようとした結果、日本が企業努力によって克服して価格下落となったというこのプロセス、これは中国が放った強烈なブーメランで中国自身がダメージを受けたといえるでしょう。まさに反日中国へのブーメランが炸裂したわけなのです。

     

     

     というわけで、今日は日中で起きたレアアース危機を取り上げ、日本がどうやって乗り切ったか?昭和電工の磁石合金の開発と合わせて取り上げさせていただきました。

     この問題をマクロ経済的に取り上げるとすれば、中国が価格を釣り上げ、名目の需要を増大させて、高いインフレギャップ(需要>供給)を引き起こした結果、昭和電工が新素材を作るという技術革新のための投資を行い、成果が花開いたとみることもできます。

     日本国内経済においても、無駄削減や競争による価格引き下げを政府主導で行っているようでは、デフレギャップ(需要<供給)となって、技術革新が起きません。何しろ、需要がないわけですから設備投資ができる環境ではありません。

     そういう意味で、レアアース危機によってもたらされた高いインフレギャップ環境によって、昭和電工の新素材開発に資金を投資することができ、ジスプロジウムを使わない磁石合金の開発に成功できたともいえます。

     結果、ジスプロジウムを輸入するというGDPマイナスが無くなり、昭和電工の磁石合金を日本の電子部品産業が買うことで、GDP増加(=経済成長)に貢献しているともいえるわけです。

     国力の有無とは、自力ですべて賄えるか否か?です。資源がない日本ではありますが、基礎化学から開発費に資金を投じ、新しい技術開発ができるということは、それだけ日本の国力が強いことの証左でもあるのです。


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