公共工事B/C(ビーバイシー)基準と宮城県釜石市の「釜石・山田道路(通称:命の道)」

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    JUGEMテーマ:公共工事の経済効果

     

     

     公共投資を否定する人たちが持ち出すB/C(Benefit Per Cost 費用対効果分析)について述べます。

     

     公共工事を否定している人の中に、「ザイセーが破たんするー!」という人がいたとしたら、何にもわかっていない人です。そうした人々以外に、公共工事を否定する人の中に、

    ・マンデルフレミングモデルによるクラウディングアウト

    ・B/C(Benefit Per Cost 費用対効果分析)

    を持ち出す人がいます。

     

     マンデルフレミングモデルとは、政府が公共投資をするには、建設国債を発行しなければならず、政府が国債を発行すれば、金利が高くなるのではないか?金利が高くなれば円高になって輸出が減って需要がキャンセルされる・・・ということまで説明が続く経済理論の1つです。マンデルフレミングモデルについては、別の機会にご説明し、反論記事を掲載したいと思います。今回は、公共工事を否定する人たちが否定するもう一つB/Cについてご説明したいと思います。

     

     

     

    1.我が国におけるB/C(ビーバイシー)の問題点

     

    我が国のB/Cでは大きく2つの問題点があると考えています。

     

    【問題点1】評価基準の項目が極めて少ないこと

    【問題点2】B/C≦1の場合は当該公共工事を実施しないこと

     

     一つは、表題にある公共工事のB/C基準のB/Cですが、B/C=利益/支出という算式がありまして、分子のBには、いざという時に命が助かるといった定性的な利益は含まれていません。世界のB/C基準は我が国のB/C基準と大きく異なります。

     

     コストが100億円だとしたら、経済的にベネフィットがいくらなのか?

     B/Cを持ち出す彼らは、例えば100億円のコストに対し、経済的ベネフィットが1000億円であれば反対しません。ところがB/Cが低い。即ち100億円のコストに対して90億円しか経済的利益がないとなれば反対します。しかしながら経済的ベネフィットについて、大変な問題があります。端的に言えば、我が国の経済的ベネフィットは世界的に見て極めて狭いやり方をしており、問題があると言わざるを得ません。

     

     次の表「諸外国における事業評価手法の比較」は、Benefitについて何ぞや?ということを国別に評価手法を記載した一覧表であり、国交省の資料です。

     

     日本の場合、「走行時間短縮」「走行費用減少」「交通事故減少」これがBenefit。終わり。

     ドイツを見てみましょう。「走行時間短縮」「走行費用減少」「交通事故減少」以外に、「更新・維持管理費用」「騒音減らす」「CO2減らす」「大気汚染減らす」「雇用創出」とありまして、「雇用創出」とは道路が引かれることによって工場が建てられて雇用が増えて経済的に潤うということを意味しています。

     また、ニュージーランドであれば「集積による生産性の向上」、イギリスは「料金収入の変化」、フランスは「税収の変化」などが評価基準に含まれます。

     というわけで、海外ではこれだけたくさんの項目を換算してB/Cを計算しているのですが、我が国でB/Cを主張する人たちは、わかって主張しているのでしょうか?わからないで主張しているのでしょうか?

     

     しかも我が国の場合、B/C>1でなければ、即ち1以下の場合は作らない。1を超えないと作らないのです。イギリスやフランスなどの海外は1以下でも公共工事をやります。B/Cは本来公共工事の優先順序を検討する数値であり、安全保障をも考慮して実施するか否かの判断をすべきだと私は考えております。

     

     

     

    2.宮城県釜石市の「釜石・山田道路(通称:命の道)」について

     

     参考までにぜひ宮城県釜石市の「釜石・山田道路」というのをご参照いただきたく。この「釜石・山田道路」は、三陸縦貫自動車道という道路なのですが、3.116日前に開通した道路です。3.11のときに津波で湾岸・海岸沿いの道路が全滅したのですが、この道路が開通していたおかげで、避難民がこの道路を使って釜石市に避難することができ、釜石中学校の中学生を含めた何百人という多くの国民が東日本大震災の津波から救われました。

     この道路が開通していなかった場合、想像したくない状況になっていたことは容易にご理解できるのではないでしょうか?現地の人々はこの「釜石・山田道路」のことを「命の道」と呼んでいるそうです。そして「釜石・山田道路」は津波から住民を守っただけではなく、震災直後の物資の輸送のロジスティクスとしても活用されて、食料などの物資が届けられ、被災者を救ったのです。

     

     今では現地の人々に「命の道」と呼ばれている「釜石・山田道路」のB/Cは、いくつだったと思いますでしょうか?なんと「釜石・山田道路」のB/Cは1.01でした。1を超えるのに、わずか0.01という数値でした。読者の皆様は、この事実について如何にお考えでしょうか?

     

     この「釜石・山田道路」は、B/Cは1.01ですが、もし1.00未満だったら、例えば0.98だったとしたら、作るべきでなかったということになるのでしょうか?私は国交省の基準のB/Cが1以下であっても、震災の時に命が救われる可能性があるのであれば、利益が出なくてもやるべき公共工事と考えます。もちろん高い数値のものから優先度をあげて実施すべきですが、その際、分子の利益に「いざという時に命が守られる」という定性項目も考慮されるべきと考えます。

     仮に安全保障を最優先に対応しても、普通に利益を多く出せる案件であれば、三菱商事や三井物産など商社ら民間企業に任せればよい。利益が出なくても災害から守るのに必要なこと、それは50年に1回、100年に一回、来ないかもしれない、無駄かもしれない。そうであっても、そのエリアが災害から着実に守られて安全となることで、企業が投資し続けやすい、住民が住み続けやすい、農家が安心して作物を作り続けることができやすい、ということであれば必要な公共工事であると考えます。

     

     もし「いやいや釜石市・山田町に住むのは津波のリスクが高いから、他の仙台などの都会に出て快適な生活を送ればよく、そんなところに住む方が悪い、そんな人口減少するところに高速道路を作るのは乗数効果が低いし、富を生み出す効果が小さく、費用対効果がないからから無駄だ。」という意見があったとしたら、私は断固として反論いたします。なぜならば人が住むこと自体が国家の安全保障につながるからです。我が国は災害大国であって大都市一極集中よりも人々が分散して暮らすことが災害安全対策につながるのです。

     たとえ普段はシカやクマしか通らない「富を生み出さない」道路であったとしても、いざという時に津波から逃れる道路、罹災後に物資を届ける道路になるかもしれない。であればそうした道路でさえ、無駄ではないと私は思うのであります。

     

     

     

    3.公共工事を含めた政府支出は、需要でありデフレ脱却のための手段である!

     

     災害大国の我が国は、安全から守るという防災・減災という利益が出ない需要が大変多い国であり、「需要」とは「個人が買い物をする、サービスを買う」だけではありません。

     

    ・津波から守るための防波堤、防潮堤

    ・地震や噴火予知やゲリラ豪雨や竜巻を予測するためのスパコンへの開発投資

    ・国防安全保障のためのイージス艦建造と、イージス艦やF35戦闘機の随時メンテナンス維持投資

    ・三菱重工の10式戦車の増配備のための製造

    ・大陸弾道弾や巡航ミサイルから日本列島を守るためのミサイル開発や訓練の継続

    ・インフラ格差を是正し、将来の生産性向上につながる物流インフラの拡充

    ・人口減少を克服するために一人当たり生産性向上につながるインフラの拡充

     

     上記はすべて需要であり、政府支出で対応すれば、GDP=個人消費+政府支出+設備投資+純輸出ですので、GDP成長即ち経済成長することとなり、デフレ脱却につながります。

     ですが、これらは利益がすぐに出ない、もしくは全く出ないものもあります。(例えば防波堤・防潮堤・熊鹿しか通らないような道路など)こうした案件は、利益追求の必要がない政府が行うべきです。もちろん利益が出る案件であっても、保守点検・維持投資をしなければ利益が出ない橋や道路や港湾のような案件も、安全保障上政府が行うべきであります。我が国は災害大国であり、仮想敵国の中国が領海・領空侵犯を繰り返す以上、上述の”いざ!という時に備える”需要が無尽蔵に多い国なのです。

     もし無駄削減を続けて建設業者や運送業者らを痛め続け、医療費・介護費削減によって業者が破たんし、いざサービスを受けたいと思っても、虎の子の供給力が棄損されていては、サービスが受けられません。またその結果、災害が起きても直接被害が発生、復旧が遅れて間接被害が発生で命を失う。このような日本にしてしまうことこそ、将来世代へツケを残すということになると考えますが、皆様はどのようにお考えでしょうか?

     今回は公共工事のB/Cを用いて公共工事が無駄であると主張する人たちに、反論させていただきました。

     

     

     

     

     


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