エコノミストも、マクロ経済を理解していないのでは?

0

    JUGEMテーマ:経済成長

    JUGEMテーマ:年金/財政

     

     今日は、第一生命保険の子会社、第一生命経済研究所のエコノミスト熊野英生氏の論説について、取り上げたいと思います。

     

    下記は、2017年8月6日のロイター通信の記事で、取り上げられた主席エコノミスト熊野英生氏の論説です。

    『[東京 4日] - 今回の内閣改造は、サプライズを狙って支持率回復を目指す手もあった。だが、ふたを開けてみれば、そうした加点よりもさらなる失点をしたくないという安倍晋三首相の考え方がにじんだものになったと言えよう。

    3日発足した第3次安倍第3次改造内閣の布陣で筆者が特に注目したポイントは、厚生労働大臣に加藤勝信氏が横滑りし、経済産業大臣に世耕弘成氏が留任したことだ。アベノミクスの中核の大臣は腹心で固める。これは、今後のアベノミクスも第2次改造内閣までと同様に官邸主導で決めるという意味だろう。

    金融市場からは、色あせてしまった成長戦略を再起動して、大胆な規制緩和を望む声は根強い。しかし、第3次改造内閣は、官邸が教育無償化などの人材投資や人づくり革命をテーマに決めれば、それに従って社会政策的な財政出動を行うというような流れになりそうだ。

    安倍首相は「初心に戻って」や「経済再生」といった言葉を口にしているが、どうも指しているものが、私たちがイメージしているものと違っている感じがする。既存の規制と戦うという内閣発足時の姿勢はみられない。

     

    <年金医療改革が後回しになる恐れ>

    麻生太郎財務大臣が留任したことは、財政再建にプラスと言えるだろうか。別の新任者が任命されるよりは、重鎮の麻生大臣の方が2020年度の基礎的財政収支の黒字化のためには良いと思える。しかし、安倍首相を中心に財政拡張を繰り返してきたこれまでの流れをストップさせることまでは期待できないだろう。財政再建の行方が心配だと思うエコノミストにとっては、引き続き不安が残る。

    経済政策については、茂木敏充氏がその中心の経済再生担当大臣になる。政調会長などを歴任したベテランだが、財政再建に対してどこまで強い思い入れを持っているのかは疑問がある。成長戦略を再起動させるとしたら、経済財政諮問会議をうまく使って新しいメニューを出すことが可能だ。そこまでリーダーシップを発揮して、存在感を示せるかどうかを様子見したい。

    財政再建に関しては、社会保障分野の歳出抑制が鍵を握っている。その点では、加藤勝信氏が厚生労働大臣として歳出抑制にどこまで積極的かにかかっている。また、厚生労働大臣の所管する分野は広すぎて、優先順位をつけなければ、改革が進まないという問題点がある。例えば、年金・医療の抜本的な見直しを中心に据えないと、財政拡張のトレンドは変わらない。加藤大臣は、一億総活躍を推進してきただけに、労働の方に軸足が置かれると、年金・医療が後回しになるリスクがある。(後略)』

     

     

     私が気になったのは、赤字の部分です。

    ●既存規制の緩和を推進している

    ●プライマリーバランスの黒字化すべきであることを前提としている

    ●財政膨張のトレンドを否定している

     

     

     

    1.既存の規制緩和の推進

     

     デフレインフレは、貨幣現象ではなく、需要の過不足の減少であることを、熊野氏は理解していないのではないでしょうか?私は、イデオロギー的に規制緩和を否定はしません。ですが、デフレが需要不足である以上、需要<供給 がデフレであり、規制緩和は供給拡大につながることが多いのです。

     もちろん、電線のメンテナンスに、人がゴンドラに乗って検査するのではなく、ロボットを使って操作して点検するには、電波法の改正が必要です。また、ドローンを使っての橋脚・橋の打音検査も、電波法関連の規制緩和が必要でした。トラックの隊列走行を認めるには、道路法の改正も必要です。

     電線のメンテナンスや、打音検査や、測量検査や、運送業界などは、もともと人手不足で人手の確保が厳しい業界です。供給者が少ないということは、需要>供給 でインフレギャップの状態。

     成長戦略とは、岩盤規制を壊していくことではなく、需要>供給 インフレギャップの状態の分野こそ成長分野であり、そこに民間が資金を投じやすい環境を整備していくことが政府が実施すべき成長戦略です。

     

     全農を民営化するとか、農林中金を民営化するとか、郵政の株式を追加放出するとか、これらは全て供給力を増やし、名目の需要を削減するベクトルの政策、即ちインフレ対策なのですが、日本はデフレで苦しんでいるのです。

     またデフレ環境(需要<供給)の状況で、関税を撤廃して自由競争させることは、国内産業の名目の需要を減少させる需要削減につながる可能性が高い。百歩譲ってインフレ環境(需要>供給)なら、まだ理解できます。

     

     逆に運送業界で最低運賃の値上げをする、最低賃金をUPするは、名目の需要を増やす需要創出策です。とはいえ、デフレ環境で、名目の需要・実質の需要が十分にない状況で、こうした政策を打てば、中小の運送会社は経営が苦しくなって経営が破綻します。同じことは、運送業界に限らず、最低賃金UPをしたとしても、安倍首相が経団連企業に賃上げをお願いしたとしても、仕事が十分にない場合、実質の需要も名目の需要も十分でない状況で、それらを強引に実施すれば、経営が悪化するだけです。

     そこで、政府が仕事を作ることが求められるわけです。仕事を作る=仕事の案件を作る=実質GDP増加に寄与、ですが、高く仕事を発注する=名目GDP増加に寄与 でもあります。

     だから、一般競争入札で外国企業でも何でも入札資格を与えるのではなく、国内産業保護で、国内企業に受注させるように、国が高い値段の仕事を数多く発注する必要があるのです。こうしたことこそ、名目GDP(高い値段で発注)、実質GDP(案件を数多く発注)の着実な増加につながる政策です。

     

     ところが、熊野氏は、おそらく自由競争が正しく、もっと規制を緩和すべきという考えを持っているとしか、この文章からは読み取れません。

     

     

     

    2.プライマリーバランス黒字化に固執している

     

     麻生太郎ならば、2020年までにプライマリーバランスを黒字化を目指すにふさわしいと仰っておられます。この時点で、プライマリーバランス黒字化が正しいと思っているのでしょう。

     

     実際に世界では、プライマリーバランス黒字国で財政破綻した国があることを、ご存知ないのでしょうか?アイルランド、アイスランド、キプロスといった欧州の国家で、プライマリーバランスは黒字でしたが、金融機関が外貨建て債務を抱え、自国通貨安が止められず、外貨建て債務が返済不能となって政府が救済した結果、破綻しています。(参照ブログ:憲法改正で財政規律条項を入れる動きに反対! )

     即ち、政府のプライマリーバランスをみても、国家が財政破綻するか否か?は関係ありません。民間、例えば金融機関や企業や家計といった民間分野の外貨建て債務の残高を見なければ、財政危機が訪れているのか?否か?を判断することはできないのです。

     プライマリーバランスを黒字化にすることは、むしろ緊縮財政となってGDPを縮小に向かわせ、却って政府の負債対GDP比率が拡大する可能性があるのです。

     だからデフレの時は、プライマリーバランス赤字化が正しい。にもかかわらず、プライマリーバランスという指標の見方、使い方を、熊野氏は理解していないのではないでしょうか?

     

     そもそも、日本は国家としてみた場合、2016年12月時点で320兆円の純資産大国で、これは文句なく世界一の金持ち大国です。逆に一番お金がないのは米国で、800兆円強の純負債大国。とはいえ、日本と同じ、自国通貨なのでFRBが通貨発行できるため、米国にも財政問題は存在しないのです。

     日本は、320兆円の純資産大国と書きましたが、この数字、少しずつ増えています。日本は政府の負債が増えるスピード以上に、純資産が増えていく国です。

     

     純資産の増額分=所得収支+貿易収支+サービス収支+所得移転収支

     

    上述で、所得収支が圧倒的に多く、原発を停止していることで、中東諸国から原油・天然ガスが高い値段で買うことになって貿易収支が赤字になったとしても、それ以上に所得収支が多い。もともと日本は投資して配当や利息がたくさん入ってくる世界の債権大国です。だから、政府の負債が増えるスピード以上に、国家としてみた純資産の増えるスピードの方が速い。結果、毎年純資産を積み上げているというのが日本の真の姿です。

     

     プライマリーバランスに固執している時点で、何もわかっていないということになると思います。

     

     

     

    3.財政膨張のトレンドを否定している

     

     アナリストなどの有資格者がテレビに出て、こんなフレーズ、お聞きになったことはないでしょうか?

    「バランスシートの拡大を防ぐ意味でも、金融緩和の出口戦略を・・・・・」

    なんて発言をしている人、多いと思います。

     まず、「バランスシートの拡大を防ぐ」という発想、熊野英生氏も「バランスシートの膨張」と言っておられます。彼らに聞きたいのですが、バランスシートが膨張して何か困ることってあるのでしょうか?バランスシートが拡大して何か困ることってあるのでしょうか?

     さらに言えば、「日本は人口が減少していくのだから、小さな政府を目指すべきで、バランスシートは縮小しなければならない」などと論説する人もいます。

     「小さな政府を目指すべき=政府の生産活動を削減すべき」と言っていることと同じです。政府の生産活動と言えば、公的固定資本形成(=インフラ整備等の公共工事)、政府最終消費支出(=国民の安全保障を担うための支出)です。

     公的固定資本形成も、政府最終消費支出も、GDPにカウントされます。

     

     もし、公的固定資本形成を削減すれば、ゼネコンをはじめとした業界がどんどんつぶれていくことでしょう。つぶれるとまで行かなくても、オーナー経営の中小企業は、息子に跡を継がすことはないでしょう。仕事が十分にない以上、儲からないから当たり前です。

     同じように、政府最終消費支出を削れば、各種安全保障が弱体化します。医療・介護で言えば、医師・看護師が不足する、病院施設が不足する。当たり前です。十分に所得が増えない状況で、医療・介護費削減して、自己負担額引上げをすれば、病院に行くのを我慢する人もいるでしょう。少々くらいの風邪なら、市販薬で安く済ますとか。本来は、医師の診察を受け処方箋で薬をもらう、それを自己負担額を少なくして、政府最終消費支出で税金で賄えるようにすれば、医療の需要は増えます。

     お巡りさんがたくさんいれば、凶悪犯罪から国民を守ることもできます。自衛隊員や海上保安官がたくさんいれば、領海侵犯について防衛力が強化されます。

     

     人口が減少していようが増加していようが、人口の増減に関係なく、バランスシートの膨張しようと拡大しようと、それ自体はどうでもいい話です。たとえ日銀が通貨をガンガン発行したとして、日銀のバランスシートが拡大したとしても、日銀の純資産が減るわけではありません。日銀が通貨の発行・日銀当座預金の増加(日銀の負債の増加)の反対側で、建設国債・赤字国債の発行(日銀の資産の増加)で日銀の資産が増えるから当たり前です。このことは、簿記がわかる人ならすぐ理解できることでしょう。

     借金だけが増えるということは物理的に不可能です。必ず反対側で貸した人がいるのです。

     だから、金融緩和をやって国債発行して通貨をガンガン発行したとして、日銀のバランスシートが膨張したとしても、何ら問題がないわけです。政府の資産が膨張しても、国家(政府と企業と金融機関と家計)の資産が膨張したとしても、地球が亡びるまで放っておけばいいだけの話です。出口戦略なんてそれっぽい言い方していますが、そもそもそんな必要ありません。

     

     

     というわけで、今日は生命保険会社大手の第一生命保険会社のシンクタンク部門と思われる第一生命経済研究所の主席アナリストの熊野氏の論説を取り上げてみました。

     3つを取り上げ、私なりに反論をしましたが、皆さんはどのように思われるでしょうか?経済を少しかじった”知ったかさん”ほど、こうしたアナリストの論説が正しいと思っているのでは?と、私は考えます。

     実際はアナリストといえども、マクロ経済を正しく理解している人がいないという事実を、皆さんに知っていただきたいと思うのであります。それがゆえに政府も正しい政策が打たれません。

     私たち国民が知見を高めていかない限り、デフレ脱却は遠のき、その間に虎の子の供給力が毀損して国力が低下し、日本が小国化、発展途上国化していくことは避けられないことだと思うのです。


    コメント
    コメントする








       

    calendar

    S M T W T F S
         12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
    31      
    << May 2020 >>

    スポンサーリンク

    ブログ村

    ブログランキング・にほんブログ村へ
    にほんブログ村

    recent comment

    profile

    search this site.

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM