デフレ脱却のために私たち国民が理解すべきこと
JUGEMテーマ:株式投資、FX
政治家は国民の知見の鏡ともいえます。私たちが正しい知見を持たない限り、正しい政策は打たれない。その意味で、今日はデフレ脱却のために、私たちが理解しなければならない下記の3つを触れ、考察したいと思います。
➊プライマリーバランスは黒字でなければならないとする硬直した目標を捨て去る
❷日本には財政問題が存在しない
❸財政健全化の定義は、グローバルに「政府の負債対GDP比率の低下」である
第3次安倍政権が発足し、安倍首相は「消費税増税は予定通り2019年10月に実施する」と述べました。
こうした発言が出る安倍政権に期待が持てるのか?と言われると、残念ながら、プライマリーバランス黒字化目標に固執する以上、期待しても無駄であると考えます。
株式市場でいえば、ダウ平均が22000ドルを超えたのに対し、日経平均は2万円台を挟んでの攻防が続いています。米国はインフラ投資1兆ドル(≒110兆円)といったGDPを増やす(経済成長する)政策を打ち出して、実際に実行しているから、米国内で企業の設備投資が増え、雇用も増えるという好循環になろうとしています。
一方で、日本はプライマリーバランスの黒字化に固執し、政府支出を増やすどころか減らしてしまう事態。国家の財政を家計簿の発想で考える限り、企業ごとの優勝劣敗で株価の上がる下がるはあっても、日経平均やTOPIXで、全体で株価が上昇していくということは難しいでしょう。仮に2万円を超えたとして、持続的に株価上昇が続くか?と言われれば、私は懐疑的であると思っております。
米国の著名投資家で、ウォーレンバフェットが、バフェット指数なるものを考案し、「時価総額<GDP」⇔割安、「時価総額>GDP」⇔割高、という使い方まで披露しています。
仮にGDPを増やす政策をしても、反対側でGDPを減らす政策をしてしまっていては、GDPが増えるわけがなく、結果税収も増えず、株価も目立った上昇はしないというのが私の見立てです。
そもそもデフレが続く日本において、プライマリーバランスは赤字であることが正しい。プライマリーバランスを常に黒字にしなければならないと考えている以上、デフレ脱却は難しい。
私は、国会議員のみならず、国家の中枢の人々が下記の3つを理解する必要があります。
➊プライマリーバランスは黒字でなければならないとする硬直した目標を捨て去る
→デフレの時は、プライマリーバランスは赤字にしなければならない。
❷日本には財政問題が存在しない
→100%円建ての政府の負債で、日銀が買い取ることも可能であり、財政問題は存在しない。
❸財政健全化の定義は、グローバルに「政府の負債対GDP比率の低下」である
→政府の負債が増えていても、GDPが増えていれば問題ない。簿記が理解できる人であれば、負債が増えれば反対側で資産が増えることは理解できるかと。資産は国民だったり企業だったりが保有します。借金増=悪という発想は、デフレ環境における家計や企業では「好きにやってください!」ですが、政府は自国通貨建ての負債が増えて何ら問題ありません。大体、借金を増やしてはいけないとする発想は、信用創造の否定=資本主義の否定です。
災害大国の日本において、公共事業は増やすべきなのに、その財源は建設国債の発行で何ら問題がないのに、プライマリーバランス黒字化すべきという発想のもとでは、政府支出を増やすという発想にはならない。だから、残念ながら期待しても、正しい政策は打たれないでしょう。
どんなに日本国民が自然災害で悲惨な目に遭ったとしても、堤防建設や防波堤防潮堤の建設を計画するという発想がない。計画したとしても、社会保障が伸び続けるから、政府支出は増やせないというノリで政策が打たれる。
100歩譲って既存インフラの強化、新規インフラの整備をやろうとすると、「別な項目(例えば医療費・介護費)を削減しましょう!」となる。とはいえ、医療・介護費(=政府最終消費支出)も需要です。
税収=名目GDP×税率
名目GDP=個人消費+設備投資+政府支出+純輸出
安倍政権は「消費増税は予定通り実施する!」という発言していますが、2017年の財政の骨太方針において、プライマリーバランス黒字化目標を撤去しなかったから。
とはいえ、内閣府官房参与の藤井聡氏が、「政府の負債対GDP比率の低下」を骨太方針に入れることができたのは我が国にとって救いです。来年度2018年の骨太方針で、プライマリーバランス黒字化目標は撤去されるかもしれないからです。
GDPデフレーターの推移、実質賃金の下落率を見る限り、本来ならば、消費税増税は凍結、むしろ消費税減税(8%→5%)が議論されなければならない状況です。
ところが、プライマリーバランスは黒字でなければならないと考えている国民は多い。学歴・職歴・国家資格の有無に関係なく、国会議員で言えば当選回数が多かろうが少なかろうが関係なく、家計簿的な発想で国家の財政を考えている人が多い。このことがデフレ脱却という問題の解決を遠ざけています。
1998年の橋本政権から緊縮財政が始まり、日本は本格的なデフレに突入しました。バブル崩壊で企業は設備投資を控え、個人は住宅ローン返済や貯金を増やすなどして個人消費が減る中で、消費増税3%→5%を実施したため、消費が増えるわけもなく、デフレに突入することは当たり前です。設備投資は需要ですし、それが控えられる。個人で言えば、住宅ローン返済や貯金を増やすことは、消費ではありません。デフレインフレは貨幣現象ではなく、需要の過不足現象で、デフレは需要の不足です。
名目GDPと実質GDPの両方を増やす政策がとられない限り、税率をどれだけ上げても税収は増えません。
というわけで、私たちがマスコミや識者と呼ばれる人々が発信する“それっぽい”論説に騙されないよう知見を高める必要があります。
➊プライマリーバランスは黒字でなければならないとする硬直した目標を捨て去る
(デフレの時は、プライマリーバランスは赤字を目標にしなければならない。)
❷日本には財政問題が存在しないことを理解する
(100%円建ての政府の負債で、日銀が買い取ることも可能であり、財政問題は存在しない。)
❸財政健全化の定義は、グローバルに「政府の負債対GDP比率の低下」であることを理解する
多くの国民が財政運営について家計簿の発想が間違っていることに気づき、上記の3つを理解した日本国民が大勢を占めたとき、初めて正しい政策が打てるのではないかと思うのです。
- 2017.08.08 Tuesday
- 日本経済(経済政策)
- 07:41
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- by 杉っ子