日欧EPA(経済連携協定)大枠合意について

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    JUGEMテーマ:通商政策

     

     今日は7/10に取り上げたEPAについて、「10%程度の自動車関税撤廃と引き換えにチーズ業者がつぶれて本当に良いのか?」という題で意見しましたが、今般、安倍首相がEU諸国首脳と、日欧EPA(経済連携協定)大枠を合意しましたので、改めてこの問題について、私見を述べます。

     

     

     

    1.特定の「誰か」を悪者にして、別の産業や国民が「得をしよう!」とする発想は、間違い

     

     TPPが議論されるとき、私は同じ日本国民でありながら、日本国民の誰かを悪者にするという発想が嫌いです。

     とはいえ、日本国民には、この種の「誰かを悪者にする」という発想が好きな国民が多くいると思います。

     例えば、民進党の前原氏の下記の発言です。

     

    「日本国内のGDPにおける第1次産業の割合は、1.5%だ。1.5%を守るために98.5%のかなりの部分が犠牲になっているのではないか!」

     

     どうでしょうか?1.5%という数値を使い、見事なまでに農業などの第1次産業を悪者にした発言です。

     

     私は国内の「誰か」(特定産業や企業など)を「悪者化」し、別の産業や国民が「得をしよう」などという発想について、決して健全だとは思いません。

     何しろ、国民経済はつながっているから。特定産業や企業をことさらに叩いた結果、失業者が増え、国民経済全体の景気が悪化した結果、最終的には自分たちの産業がダメージを受けるケースはよくあります。

     具体的な例を1つ書いておくと、メディア業界。日本のメディア業界は、ひたすら企業を叩き、政府を叩き、官僚を叩き、政党を叩き、業界を叩き、国内のデフレが継続する方向に、国民の危機感を煽り続けている。結果、現在は大手新聞社やテレビ局の業績が悪化し、自分たちの職や給与が危なくなってきています。

     当たり前の話を1つ書いておくと、メディア企業に勤めている人々の給料を払っているのは、会社でもなければ社長でもない。購読者やスポンサー企業などの「顧客」です。日本のデフレ深刻化を煽り、経済全体が沈滞化した結果、結局はメディア企業に勤める日本人も損をするというわけです。

     

     

     

    2.日本は国内需要国であり、輸出依存度は低い

     

     前原氏の発言はともかく「数値データ」を用いて、「TPPを推進しよう」「関税撤廃して農家がダメージを受ける可能性があったとしても、EPAを評価しよう」とするのであれば、私は、日本のEPA大枠合意により「得する」側である輸出産業とGDPの比較数値を出さないわけにはいかないと考えます。

     

     そもそも、多くの日本国民が誤解していますが、日本の輸出依存度(=財の輸出額÷名目GDP=88兆円÷537兆円:内閣府の統計数字)は約16.3%(2016年)と、決して高くありません。というよりも、むしろ低い。主要国の中で、日本よりも輸出依存度が「低い」のは、アメリカとブラジルだけです。


     GDP比輸出、ジェトロの主要国・地域別商品別輸出のデータを見れば、乗用車・バス・トラックの日本の輸出額は11兆円くらい。二輪自動車や部品を入れて、15兆円くらいです。GDP比輸出率で言えば、11兆円÷530兆円=2% もし、2016年12月以前の研究開発費を除くGDP500兆円で見ても、11兆円÷500兆円=2.2%です。乗用車に限ってみた場合で、実額は10兆円前後です。

     さらに、日本の輸出の主力は「資本財」であり、多くの日本国民が「主力輸出品」と思い込んでいる自動車や家電製品といった耐久消費財ではありません。日本の輸出の半分以上(51.81%)は消費財ではなく、企業が購入する資本財です。

     

     ついでに言えば、日本からの工業用原料の輸出も、輸出全体の25.5%を占めています。一般人が工業用原料を購入するケースはないでしょうから、日本の輸出の77%以上は、消費者ではなく「企業」が購入する資本財です。

     バス・トラックを除いた自動車という耐久消費財が、日本の「輸出全体」に占める割合は、わずかに11,36%です。(10兆÷88兆円)。
    そもそも日本の輸出依存度が約16.3%(88兆円÷537兆円)に過ぎないため、「耐久消費財の輸出対GDP比率」は、1.851%ということになります。(数値はいずれも2016年)。

     日本のGDPにおける第1次産業の割合1.5%を、消費財の自動車の輸出が1.851%と、第1次産業より上回っている。その差は、対GDP比で0.351%もあるんだから、EUとの経済連携は評価すべきである、という話は、明らかに変じゃないでしょうか?

     

     たったの”0.351%”上回っているから、関税撤廃で農家が大打撃を受けても問題がないという考えは、私は賛同できません。

     

     

     

    3.食料安全保障を考えればEPA大枠合意は全く評価できず!

     国力というものは、自分の国ですべて賄えるという状態こそが、「国力が強い」という状態です。

     安全保障の考え方も同じ。安全保障も、食料安全保障・防衛安全保障・災害安全保障・エネルギー安全保障など、全て自国で賄えることこそが国力が強く、先進国であるといえます。

     

     したがって、食料安全保障を考えた場合、食料自給力を高めることこそが国力強化になります。農家なんて無くなってもイイという発想は、食料安全保障の弱体化につながるため、食料安全保障を理解すれば、そうした発想にならないはずです。

     自動車産業が輸出を伸ばすためには、普通にデフレ脱却すればOK。デフレで日本国内は過当競争になっているので、海外に目を向けるという話になるのは仕方がありません。

     

     デフレ脱却が果たせれば、適切なデフレ対策を打って物価上昇が果たせれば、日本の実質金利(=名目金利−インフレ率)が低くなり、円が選好されにくくなって、円安が進みます。デフレ脱却していれば、国内需要も増え、さらに円安で輸出も伸ばせます。

     

     

     というわけで、今日はEPA大枠合意について、私見を述べさせていただきました。輸出産業が輸出を伸ばすためには、貿易自由協定を締結するという発想、TPPやFTAやEPAの推進よりも、自国のデフレ脱却です。

     100歩譲ってTPPやFTAやEPAを締結するとすれば、国益を考えれば日本国内の関税撤廃は譲歩してはいけませんでした。日本国内の関税撤廃は明らかに撤廃する産業は大打撃となります。

     とはいえ、貿易協定を推進する通商政策を取らずとも、日本がデフレ脱却すれば、日本国内の過当競争を終焉に向かわせ、国内事業でも利益が出る環境に生まれ変わるだけではなく、通貨安で輸出も増やしやすくなる環境になります。

     デフレ脱却こそ、日本国民すべてがWIN-WINになれる最善の解決策だと私は思うのです。


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