デフレの時は「プライマリーバランス赤字目標」が正しい!

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     今日は、「杉っ子の独り言」でよく取り上げる借金問題の次に出てくるキーワード「プライマリーバランス」について意見します。

     

     2017年度の財政政策の骨太方針に「プライマリーバランス黒字化目標」が入ってしまいました。正確にいいますと、”入ってしまった”というより、゛残ってしまった゛という方が正しいかもしれません。

     プライマリーバランス黒字化目標という概念は、小泉政権時、2001年に竹中平蔵氏が持ち込んできたものです。

     

     本当は公共投資を減らす理由なんてないのに、このプライマリーバランス黒字化目標があるために、公共投資を減らしています。

     これは、どういうことか?

     

     高齢化社会で社会保障支出は伸び続けます。そのため、まずは社会保障の伸びを可能な限り抑制して、その他の支出は削減する。

     常に削減して増税して財政均衡を達成させるという緊縮財政至上主義に基づいた間違った発想、その発想で財政が運営されているのが日本なのです。

     

     結果、どんなに国民が自然災害で悲惨な目に遭ったとしても、社会保障が伸びるんだから、増やすことはできないんです!というノリで、公共投資を増やすことはありません。

     公共投資=需要ですので、デフレで需要が不足しているのに、民間だけでは需要創出ができないのに、そういう状況においては政府部門が需要を作るしかないのに、しかも財源なんて通貨発行権でどうにもなるのに、だから政府しか支出増やせないのに、財務省は需要を削減しています。

     

     公共投資に限らず、社会保障支出(介護・医療費)、科学技術予算、教育支出、防衛費、これらは全て需要なのですが、その需要を削減しています。これで、デフレを脱却できるはずがないのです。

     

     あと間違っているのは、公共投資でインフラ整備をすれば、インフラは必ず残ります。当たり前ですけど、道路を作れば、道路が残ります。この場合、公的固定資本形成という科目で計上されますが、公的資本形成について、プライマリーバランス目標黒字化の費用に入れるというのは、実に変な話です。

     

     例えば赤字国債(特例公債)で、年金財源として支出しましたということであれば、政府には純負債しか残りません。したがって赤字国債をプライマリーバランス黒字化目標に入れるというのであれば、まだ理解しますが、なんでインフラという資産が残る建設国債の公共投資までプライマリーバランス黒字化の対象に含めるのでしょうか?

     

     皆さんの家計で言えば、住宅ローンを組んで家を建てました。当然、家が残ります。ところが、住宅ローンの支払いの分が「赤字だー!」とやっていることと同じです。住宅ローンは支払債務ですが、家という資産は残りますし、それを長期にわたって償却するのは当たり前でしょ?という話ですが、財務省の役人には、そういう感覚すらないのでしょうか?

     

     国債には建設国債と赤字国債(特例国債)があります。赤字国債は、税収の不足を補うために発行されます。例えば社会保障支出が大きくなって税収が不足しているから、「じゃぁ赤字国債発行しますね!」って感じです。

     

     一方建設国債は、公共投資のためにやります。よくある誤解なのですが、増税して公共投資をやるという人がいますけど、建設国債でしか公共投資はできません。

     建設国債はインフラが残ります。日本で増えているのは建設国債ではありません。建設国債は増えておらず、ずっと横ばいです。

     

     

     上記のグラフを見れば、建設国債が横ばいで、特例国債が増加していることは、誰でも理解できるかと思います。

     建設国債が横ばいなのは、ある意味で当たり前です。公共投資を増やしていないのですから。

     

     ここで問題なのは、赤字国債は増え続けます。高齢化社会で、医療・介護費は増大するからです。ところが、「さぁ大変だ!公共投資を削らなければ!」とやってきたのが、財務省の役人です。

     

     

     ここで不毛なデフレスパイラルループ状態となります。

     

    Aさん:建設国債は政府の負債増大と関係ありません。赤字国債は関係あります。

    Bさん:では、なんで赤字国債が増えているのでしょうか?

    Aさん:それは税収が不足しているからですね。

    Bさん:じゃあ、なんで税収が不足しているんですか?

    Aさん:それはデフレだからですね。デフレから脱却するためには政府が支出を増やさなければならないのですが、それができないんですよ。それができないということはGDPが増えないから税収が不足します。

    Bさん:なるほど、じゃぁ赤字国債の発行ですね。

    Aさん:そうです。

    Bさん:うゎ!赤字国債が増えたから大変だ!建設国債を削減して公共投資を削減だ!

     

     この繰り返しをずっとやってきました。悪循環を20年間ずっとやってきました。

     

     なぜならば、経済について、日本国民も官僚も政治家も理解をしていないからです。例えば、政府が支出を増やした場合、当たり前なんですが、国民の所得は増えます。

     

     もし今、「日本政府がデフレ脱却のために財政拡大する!」「プライマリーバランス黒字化を破棄する!」なんて言ったとしても、ほとんどの国民が「政府は無駄遣いするな!」と声を上げるのではないでしょうか?

     このように、家計と国家の財政運営を同じに考えている風潮が、問題解決をしにくくしている理由の一つでもあります。国民が経済を理解して意識を変えなければなりません。

     

     そもそもプライマリーバランス黒字化の定義って何でしょう?今の政府の定義では、国債発行関連費用を除いた歳入と歳出の一致です。しかしながら、本来はインフラとして残る建設国債は除くべきです。

     

     ただ、本題に掲げている通り、「プライマリーバランスの黒字化」という目標は間違っています。

     プライマリーバランスを見るのは良しとして、例えば景気が悪化しているということであれば、プライマリーバランスは赤字を目指さなければなりません。赤字にするのが正しいのです。

     逆に、景気がすごく加熱していて、バブルの時みたいになっている状態であれば、プライマリーバランスは黒字化を目指すのが正しいです。需要が多すぎて過熱している状態であれば、むしろ政府部門は無駄を削減しなければなりません。放置すれば、需要>供給の増大が続き、高インフレになるからです。

     

     本来、プライマリーバランスというのは、このように弾力的に目標設定がされるべきですが、我が国の場合は「常に黒字化」なのです。この硬直的な目標が、日本国民をどんどん貧乏にして、発展途上国化させていくのです。

     

     景気が冷え込んだら、政府部門がお金を使えるようにするため、プライマリーバランスは赤字を目指すのが正しい。それでデフレスパイラルループから脱却して、景気が良くなる。にもかかわらず、「常に黒字」を目標としている。

     

     景気がどうなっているかを見るために、プライマリーバランスを見るという方法もありますが、これを「常に黒字」を目標にしていることで、日本が発展土壌国化しているということを改めて知っていただきたく思うのです。

     

     

     というわけで、今日はプライマリーバランスについて触れました。景気が悪い場合は、プライマリーバランスは赤字を目指さなければならないのです。家計簿と同じ発想で、国家の財政運営を考えるところから改めなければ、いつまで経ってもデフレ脱却は果たせず、インフラに支出できず、既存インフラはボロボロになり、生産性向上が果たせず、他国との競争も弱い日本になっていく。そんな日本国家を将来世代に引き継ぐことこそ、ツケを残すことにならないでしょうか?

     改めて「プライマリーバランス目標黒字化」は破棄すべきだと思うのであります。


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