GDPデフレータと実質GDPに騙される政治家

0

    JUGEMテーマ:日本のGDP

     

     今日は、GDPデフレータという経済指標について述べます。内閣府のホームページで2017/05/17に2017年度第1四半期(1月〜3月期)のGDPの指標が発表されました。

     

     そこで、名目GDP、実質GDP、GDPデフレータを折れ線グラフにしてみました。

     下記は、内閣府のホームページからCSVファイルを取り出して作成したグラフです。

     

     

     

    1.GDPデフレータの算出方法と見方

     

     GDPには、名目GDPと実質GDPがあるわけですが、GDPデフレータは、下記の式で算出されます。

     

     実質GDP=名目GDP÷GDPデフレータ

     

     名目GDPは計測可能です。名目GDP=個人消費+設備投資+公共投資+純輸出(※)

     ※純輸出=輸出−輸入

     

     GDPデフレータも計測可能です。そこで、実質GDP=名目GDP÷GDPデフレータで、実質GDPを計測することが可能になるのです。

     

     上記の式は、GDPデフレータ=名目GDP÷実質GDP と項を移行して置き換えられます。

     

     GDPデフレータは、プラスになればデフレ脱却と言われます。

     

     では、GDPデフレータがプラスになるときは、どういうときか?

     「名目GDPの上昇幅>実質GDPの上昇幅」の場合、GDPデフレータは前期比でプラスになります。名目GDPの上昇幅が実質GDPの上昇幅を上回るということは、物価上昇の結果、物・サービスの値段が上昇したと言えるからです。

     

     ところが、GDPデフレータは、「名目GDPの下落幅<実質GDPの下落幅(名目GDPの下落幅の絶対値>実質GDPの下落幅の絶対値)」の場合も前期比でプラスになります。

     数字的なイメージで言えば、名目GDPの下落幅はさほどではないが、それ以上に実質GDPが下落したというイメージです。結果的に分子の下落幅が少なく、分母の下落幅が大きくなれば、前期比でプラスになります。

     

     

    分数の式で数学的なイメージで言えば、こんなイメージです。

     

    ◆◆ケーススタディ、、

    前期50÷100=50/100=0.5000

    当期52÷101=55/101≒0.5148

    増減幅の割合:(52-50)÷(101-100)=2÷1=+2

    ⇒実質GDPが1%増加し、名目GDPは4%増加し、GDPデフレータは2%上昇した

     

     

    ◆◆ケーススタディ□、

    前期50÷100=50/100=0.5000

    当期48÷90=48/90≒0.53333

    増減幅の割合:(48-50)÷(90-100)=(-2)÷(-10)=+0.2

    ⇒名目GDPが4%下落したが、それ以上に実質GDPが10%下落し、GDPデフレータは0.2%上昇した

     

     

    ◆◆ケーススタディ◆◆

    前期50÷100=50/100=0.5000

    当期48÷101=48/101≒0.4752

    増減幅の割合:(48-50)÷(101-100)=(-2)÷1=−2

    ⇒名目GDPが4%下落したが、実質GDPは1%増加し、GDPデフレータは2%下落した

     

    ケーススタディ,健全なインフレの状態。

    ケーススタディ△錬韮庁丱妊侫譟璽燭里世泙靴離廛薀垢両態。

    ケーススタディは名目GDPが下がって値段が下がっている状況なのでデフレの状態。

    上記の通りです。

     

     名目GDPの減少幅(=GDPデフレータの分子)より、実質GDPの減少幅(=GDPデフレータの分母)が大きい場合とは、物価下落により物・サービスの値段が下落したが、それを上回って実質GDPが落ち込んだということを意味するのです。

     

     

     

    2.GDPデフレータのプラスに騙されてはいけない!

     

     GDPデフレーターについて、2008年からグラフにしていますが、下記の4つのGDPデフレータについて解説いたします。

    ●1997年2Q(04月〜06月) 名目GDP 0.0% 実質GDP▲1.1% GDPデフレータ△1.10(グラフに記載ありません。)

    ●2008年4Q(10月〜12月) 名目GDP▲1.0% 実質GDP▲2.1% GDPデフレータ△1.20(グラフで黒丸下部分です。)

    ●2014年2Q(04月〜06月) 名目GDP△0.1% 実質GDP▲1.9% GDPデフレータ△2.00(グラフで黒丸下部分です。)

    ●2017年1Q(01月〜03月) 名目GDP 0.0% 実質GDP△0.5% GDPデフレータ▲0.60(グラフで黒丸下部分です。)

     

     1996年以降で、GDPデフレータがプラス1.0以上だった四半期は、上記の3期です。

     

     正しい「デフレ脱却」とは、GDPデフレータで見た場合、「実質GDPがプラス化して、それ以上のペースで名目GDPが拡大した」状況が最低二年継続することです。ケーススタディ,2年継続すれば、デフレ脱却となります。

     

     ところが、上記3期のケーススタディ△里世泙靴両態です。この3期、特別なイベントが発生しています。

     

     1997年04月〜06月の△1.10は、消費増税(3%→5%)後の指標になります。

     2008年10月〜12月の△1.20は、リーマンショックが発生した後の指標になります。

     2014年04月〜06月の△2.00は、消費増税(5%→8%)後の指標になります。

     

     2008年のリーマンショックでは、世界的に不景気になって輸入物価が激減し、交易条件が改善されてしまったことがGDPデフレーターがプラスになった原因です。というわけで、輸入物価の大幅な下落は、GDPデフレータを押し上げる効果があるのです。

     また、1997年と2014年の消費増税の場合は、「名目GDPが縮小したが、その減少幅以上に実質GDPが激減した」結果、GDPデフレータがプラスになったに過ぎません。GDPデフレータがプラスだからといって、すぐにデフレ脱却にならないのです。

     

     一方で、2017/5/17に発表になった2017年1Qでは、マイナス0.60%と大幅なマイナスになりました。このマイナス幅は、2012年4月〜6月期以来のマイナス幅であり、物価はアベノミクス開始以前に戻ってしまったということになります。

     

     

     

    3.甘利元経済再生担当大臣もGDPデフレータについて理解していない?

     

     甘利元経済再生担当大臣と言えば、自民党の重鎮で当選回数が多い国会議員。政策通と思われている方も多いことでしょう。とはいえ、現実的には、2014年8月15日に、2014年04月〜06月のGDPデフレータがプラス2となったことについて、NHKが次のように報じています。

     

    『NHKニュース 2014年8月15日

    甘利経済再生担当大臣は閣議のあとの記者会見で、デフレからの脱却について、ことし4月から6月までの物価動向を総合的に示す指標が4年9か月ぶりにプラスになったことは大きいとしながらも、さらに経済の足腰の強さの確認が必要だなどとして、「デフレ脱却を宣言するには時期尚早だ」と述べました。
     政府は消費者物価指数などの指標でデフレからの脱却を判断することにしていますが、こうした指標の1つで物価動向を総合的に示す、4月から6月期の「GDPデフレーター」が4年9か月ぶりにプラスになりました
     これについて、甘利経済再生担当大臣は閣議のあとの記者会見で、「GDPデフレーターがプラスになったことは極めて大きな要因であることは確かだ」と述べました。
     そのうえで、甘利大臣は「消費増税の影響をどう順調に乗り切るのかなど、まだ見通さなければならない要素がある。この時点にデフレ脱却を宣言するのは時期尚早だと思う」と述べました。
     さらに甘利大臣は、デフレ脱却の判断について「再びデフレの状態に戻ることがないような経済の足腰の強さが確認されることを意味する」と述べて、経済の動向を引き続き慎重に見極めていく考えを示しました。』

     

     この記事は重要なことが欠落しています。それは、GDPデフレータがプラス化した理由が書かれていないことです。GDPデフレータがプラス化した理由は、消費税増税(5%→8%)です。

     GDPデフレータ=名目GDP÷実質GDP ですので、消費増税によって強制的な物価上昇で名目GDPが拡大し、消費増税の結果、個数を少なく買う(今まで10個買っていたものを9個にする)、サービス回数を少なくする(床屋に行って散髪サービスを受ける回数を減らす)ということで、実質的な生産活動が鈍れば、プラス化するのです。

     

     統計的に数学的に必ずそうなります。何しろ分子の減少額以上に分母の減少額が大きい以上、数学的にはプラスになるわけです。

     

     GDPデフレータについて正しい理解をせず、NHKの記事を読めば、あたかもデフレ脱却したかのように誤解を与えます。現実に起きていることは、猛烈なペースの国民経済の縮小と、国民の貧困化です。

     

     にもかかわらず、重鎮な自民党の政治家が「GDPデフレータがプラスになったことは極めて大きな要因であることは確かだ!」と発言していたのが現実です。このような見当違いなコメントを言ってのけるほど、政治家が経済に対して無理解だから、日本のデフレ脱却がいつまで経っても果たせないということなのです。

     

     

     というわけで、GDPデフレータについて取り上げました。GDPデフレータが2年連続して初めてデフレ脱却と言えますが、例外的にワンショットでGDPデフレータがプラスになることが起こり得ることを説明しました。それが消費増税です。とはいえ、それはダマしのプラスで、統計上、数学的にはプラスになってしまうのです。

     実際は、状況が違うわけであり、経済指標の見方について、政治家が無知である以上、我々国民が知識を身に着ける以外に、方法が無いと思うのであります。


    コメント
    コメントする








       

    calendar

    S M T W T F S
          1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    3031     
    << December 2018 >>

    スポンサーリンク

    ブログ村

    ブログランキング・にほんブログ村へ
    にほんブログ村

    recent comment

    • 英語教育について(トランプ大統領の演説を誤訳したNHK)
      永井津記夫 (12/07)
    • ハロウィーンは日本のお祭りとは違います!
      ユーロン (11/12)
    • オプジーボが医療財政の大きな負担であるため保険の適用外にしたいと思っている財務省
      SSST. (10/13)
    • サムスン電子について
      故人凍死家 (09/26)
    • 財務省の役人は、なぜ緊縮財政なのか?
      吉住公洋 (09/26)
    • 生乳流通改革という欺瞞と、イギリスのミルク・マーケティング・ボード
      富山の大学生 (06/05)
    • オランダ人の物理学者、ヘイケ・カメルリング・オネス
      師子乃 (10/02)
    • オランダ人の物理学者、ヘイケ・カメルリング・オネス
      mikky (12/01)

    profile

    search this site.

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM