米韓FTAの悲惨な実態を報道しない日本経済新聞

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    JUGEMテーマ:TPP

     

    実は、4/29〜5/1の日程で、愛媛県伊方原子力発電所を訪問することになっていまして、今日は高知県からホテルでPCを借りて、記事を作成しています。

     

      さて、今日のテーマですが、私は「日本経済新聞を読むとバカになる!」と、よく知人に話します。

      その典型例として、2012年に締結された米韓FTAについての記事について取り上げ、FTA(二国間貿易協定)の問題点について、意見を述べさせていただきます。

     

      FTAやTPPはマスコミが報道しているような農業の問題ではありません。関税という主権を行使させず、自由貿易を推進するための貿易・投資のルール作りが真髄です。ですが、今日は農業を中心に取り上げ、米韓FTAで韓国農業が強くなったのか?日本経済新聞の主張どおりになったのか?検証したいと思います。

     

      まずは古いですが、日本経済新聞の次の記事です。

    『2012/03/16 日本経済新聞「米韓FTAに学び農業を強くする道を」

    米国と韓国の自由貿易協定(FTA)が発効した。世界で最も大きい米国市場で韓国製品の関税が撤廃され、関税が課され続ける日本製品はライバルの韓国製に比べて大幅に不利になる。

    韓国は欧州連合(EU)ともFTAを結び、既に昨年7月に発効済みだ。通商政策の遅れで、日本経済の要である輸出産業の競争力が制約されている。この状況を打開するには、まず米国を含む環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を急ぐ必要がある。

    米韓交渉が妥結した要因の一つは、韓国の国内農業への対策だ。日本と同様に韓国でも農家は自由化に激しく反対した。同国の経験から日本が学ぶべき教訓がある。

    第一は農業の構造改革である。韓国政府は2008年から10年間で21兆1000億ウォン(約1兆5000億円)を投入する手厚い農業対策を打ち出した。このうち約9割は品目別の農業の競争力強化、農家年齢の若返り、専業農家への集中に割り当てた。

    市場開放に備え、自由化に耐えられるように農家の経営体質を強化する政策だ。こうした政策の後押しで競争力をつけ、香辛料原料のパプリカなどで対日輸出を伸ばす農家も一部に現れ始めた。

    零細を含めた全農家を支援対象とする日本の所得補償政策には、農業の生産性を高める力はない。自由化と農業強化は表裏一体であるはずだ。TPPに早急に参加すべきだが、そのために必要な農業改革のシナリオができていない。

    第二の教訓は、米韓交渉で韓国内に残った政治的なしこりだ。韓国政府は「自由化を望む多数派の意見に従うのが民主主義の原則」(外交通商省)と主張するが、一部の農家や議会内には「農業切り捨て」との不満が残り、李明博政権の基盤を揺るがしている。

    構造改革には一時的な痛みが伴う。政策の丁寧な説明と、急激な変化を緩和する手立てが欠かせない。米韓FTAで韓国内の世論は二分し、その後の構造改革の実行が難しくなっている。日本は同じ道をたどってはならない。

    製造業と農業の二項対立は分かりやすいが、変化を嫌い既得権を守りたい勢力が政治的に利用しやすい構図でもある。貿易自由化には、輸出入の拡大と同時に、製造業、農業を含めて国内経済の生産性を底上げする効果がある。長期的な視野に立ち、建設的な議論を導くのが政治指導者の責務だ。

     

     

     

    ◆「強い農業」の定義

     

     日本経済新聞の上記の記事の主張は、「所得補償政策では生産性が高まらない」は正しいです。

     マクロ経済的にいえば、生産性の向上は「設備投資」「人材投資」「公共投資」「技術開発投資」以外に起こりえず、ただ農家にお金を配る所得補償政策では生産性向上しないからです。

     

     とはいえ、自由貿易のTPPに加盟すべきで、そのために農業を改革すべきであるとしています。この手の「改革」という言葉、本テーマの農業に限らず、欺瞞であるといわざるを得ません。何をどう改革すべきなのでしょうか?抽象的な言い方しかしないので、問題です。

     強い農業とは「付加価値の高い農産物を輸出する」という意味ではありません。国民の生命を繋ぐ「必需品」を自国で自給でき、「余った分」を輸出することこそが、強い農業なのです。自国の穀物需要を満たしたうえで、余った穀物を輸出に回すのが強い農業です。穀物を輸入に依存し、利益率の高いパプリカやコーヒーの輸出が増えたとして、GDPは増えるかもしれませんが、それは「強い農業」とは言えません。穀物はパプリカやコーヒーと比べて利益が少ないかもしれませんが、必需品です。必需品を輸入に頼ることがあれば、これは食糧安全保障の崩壊につながり、日米FTAで言えば政治的に米国の言いなりにならざるを得なくなります。

     

     近年、気候変動による干ばつや洪水、水不足が懸念。世界不況で各国が金融緩和をすることで、余剰資金が商品市場にまで投機資金が入り込み、食糧価格を押し上げています。食糧価格の上昇は、消費者にとって負担増ですが、農家の収入は増えます。

     とはいえ、自由貿易による国際的な分業で食糧を生産国と消費国に分けてしまうと、食料品価格の上昇は貿易を通じて、消費国の富を生産国に移転させます。その結果、食糧輸出国は富が増え、インフレになる場合すらありますが、食糧輸入国は家計が苦しくなるだけです。結果、家計が苦しくなって物を買えなくなってデフレが進行するのに、食料品価格は上昇して不況になるというスタグフレーションに陥ります。

     

     もちろん貿易自由化で、安い食料品が輸入されれば消費者は恩恵を受けます。一方で安い輸入品が入ってくると競合する国産品は淘汰され、国内の雇用が失われます。例えば、国産のコメや牛肉が、安い米国産との競争で駆逐され、コメ農家や畜産農家の多くが失業します。例えば吉野家やすき家や松屋の牛丼が安くなれば、競合する他の食品産業は人件費カットで対抗し、雇用削減します。農家や食品関連産業で失業者が増えれば、ますます供給がおぼつかなくなり、輸入に頼らざるを得なくなります。

     

     「必需品を輸入に頼る!」これはもう国力低下で、発展途上国化なのです。

     

     

     

    ◆米韓FTA後の韓国畜産農家の悲惨な顛末

     

     韓国メディアで2013年2月、韓国南西部の全羅北道(チョルラプクト)で、50代の牛農家が牛を餓死させたというニュースがあり、牛農家がバッシングを受けたとの報道がありました。実際は資料を買うために水田を売り、自らの保険を解約して借金までした後の悲劇だったようです。何しろ54頭の牛を飼育するムン・トンヨンさん(当時57歳)は、飼料高騰、価格暴落に耐え切れず、経営は赤字に赤字を重ねました。牛に飼料を与えることができず、水だけを供与する羽目になった。結局、餓死した牛の悪臭・異臭で、近隣からの通報で発覚したとのことです。

     

     この事件、急速に進められた貿易自由化で生まれた”歪み”とされ、その要因が2012年3月15日に発行した米韓FTAだったとされています。

     

     米韓FTA(二国間貿易協定)によって、乗用車などの工業製品では5年以内に95%以上の品目で、果物や生肉などの農畜産品でも一定期間後にほとんどの品目で、それぞれ関税が撤廃され、投資や知的財産などの分野で残る非関税障壁(関税以外に政策や法制度で貿易を制限すること)を取り除くことも合意されました。

     

     大規模で機械化された米国の生産性の高い畜産業が、割安な牛肉を低い関税で韓国に売りまくろうとした米国の思惑が想像できます。そうなれば、「韓牛」の売れ行きが鈍るのは明らかです。

     農協新聞の2013年8月30日に、ある農家の取材に訪れた記事が掲載されていました。そこにはキム・ミョンキルさん(当時56歳)のことが掲載されています。

     キムさんは18年前に国際金融危機(アジア通貨危機)の波に晒されて会社が倒産したため、故郷に帰って両親とともに農業を始めたとのこと。資金がなく、貯金がまかなえる範囲の1頭のメス子牛からスタート。それから徐々に自家繁殖・肥育を繰り返し、ようやく肥育牛40頭、繁殖牛30頭を飼育する中小規模の畜産農家となったようです。

     ところが、急変する経済環境がキムさんを廃業に追い込みました。まず、家計の柱である牛の価格が暴落して経営を直撃。800キロの生体牛の卸売価格は、米韓FTA発行前と比べて30%ダウン。反対側で飼料価格が40%も高くなったとのこと。自家製の粗飼料などを使ってコスト削減をしたが赤字額が続き、2014年の赤字額は1億ウォン(日本円で約1000万の赤字)、借金は2億ウォンにのぼったとのこと。キムさんは、先述の餓死事件について、「自由貿易が進み、中国とFTAを結べば、私も同じ境遇になる」とコメントしています。 

     

     飼料価格高騰で安い輸入牛肉に押され、関税という盾・武器がなければ、韓国の酪農家は壊滅するしかなかったでしょう。米国産の安い肉が入ってよかったというメリット以上に、食糧安全保障について、牛肉について言えば、韓国の酪農家が牛肉を生産しなくなり、いわば供給力を既存し、米国の輸入に頼るという構図になってしまったことは、大きく韓国の国益を損ねたといえます。

     

     まずマクロ経済的に言えば、国内供給ができなくなり、輸入に頼る時点で、GDPが減ります。さらに、いざ米国国内で天候不順などが発生すれば、米国民の需要に供給力が振り向けられ、牛肉が高騰するリスクに晒される環境になってしまうこともリスクです。

      

     食糧安全保障が崩壊するといってもピンと来ないかもしれませんが、普通に飢えます。まだ日本は国力があり、供給力が温存されているので、3.11でさえもスピーディーに道路を復旧して、物資を送り届けることができました。とはいえ、自由競争を推進して供給力を毀損し続けると、将来日本では大災害が発生しても、地場のゼネコン業者が減ってスピーディーにロジスティクス復旧ができず復興がおぼつかない、ネパール地震後のカトマンズのように発展途上国化していくことになるでしょう。

     

     日本経済新聞が決して掲載しないFTAの負の側面について、農協新聞は記載しています。「業界だから当たり前だろう!」と思われる方、そうです。当たり前です。

     農協は日本の食糧安全保障を長年守り続けてきたのです。それを既得権だとか何とか批判するのはおかしい。安全保障にかかわる分野は、規制を強化して保護しなければ国家が存続できないのです。農業や医療や介護といった分野は、品質の悪い国内業者を排除するためには自由化を推進してはならず、私はむしろ規制を強化するべきであり、大切な日本の胃袋を守ってくださる農家を保護すべきであると考えます。

      

     そんなわけで、今日はマスコミが報道しないTPPやFTAの問題点を農業問題を中心に食料安全保障の観点でお伝えし、米韓FTAで韓国の酪農家の悲劇を取り上げさせていただきました。


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