日本の単位労働コストを2013年以降上回ってしまった中国の供給能力過剰問題

0

    JUGEMテーマ:経済全般

     

    今日は、単位労働コストが上昇し続けてきた中国、その中国の単位労働コストが日本の単位労働コストを上回ったことについて意見いたします。

     

    イギリスで産業革命が起きたのは世界史にお詳しい方ならご存知でしょう。

    資本主義国の経済を成長させるためにもっとも重要なのは「投資」です。

    ここでいう投資は、株式投資や不動産投資といったGDPが直接カウントされない投資(物・サービスがお金と対価で交換されない取引=GDPカウントされない取引)ではなく、工場の設備を更新して生産性向上に貢献するなどの投資です。機械を新しくして一人当たりの生産量を増やすというイメージのことを指します。

     

    産業革命自体、インドの綿製品に対し、イギリスが自国産の「単位労働コスト」を引き下げるために行った技術開発投資と設備投資への総称なのです。

     

     

     

    1.単位労働コストとは?

     

    単位労働コストとは、ひとつの製品を生産するために必要な労働コストを意味します。

     

    綿製品を例にとって、下記のケーススタディを考えてみましょう!

    A国:労働者一人の人件費10万円、労働者の1日生産枚数10枚

    B国:労働者一人の人件費20万円、労働者の1日生産枚数40枚

     

     一見するとA国のほうが人件費は安く見え、生産拠点を置くのであればB国よりもA国のほうが有利に見えますが実際は異なります。B国のほうが人件費は高いものの労働者一人が1日に生産する綿製品の枚数が多いです。つまり生産性が高いのはどちらか?といえば、B国のほうが生産性は高いのです。

     

    A国:10枚÷10万=1枚

    B国:40枚÷20万=2枚

    この数式で言えることは、A国は1万円当たり1枚の生産量、B国は1万円当たり2枚の生産量となり、B国のほうが生産性は2倍高いということになります。

     

    1枚あたりの綿製品の単位労働コストで見た場合、

    A国:10万÷10枚=1万円

    B国:20万÷40枚=0.5万円

    すなわち1枚の単位労働コストは、A国=1日1万円、B国=1日5000円となるのです。

     

    上述のケーススタディで言えば、B国のほうが単位労働コストは低いといえるのです。

     

    ではなぜ、B国のほうがA国と比較して1日に4倍もの綿製品の生産が可能なのでしょうか?

    これは、B国がA国よりも、「資本」「労働」「技術」への投資が蓄積されているためです。

     

    「資本」=機械や設備を購入する・更新する

    「労働」=能力開発や人材教育などに力を入れる

    「技術」=品質を維持しながらスピーディーに生産できるよう技術開発にお金をかける

     

    すなわち、上述の蓄積量について、B国>A国であるがゆえに、B国の生産性が高いのです。

    このように生産性向上のための投資を実行することで、単位労働コストを引き下げれば、「人件費」が高い国であっても、価格競争力を保つことは決して不可能ではありません。

     

     

     

    2.人件費が上昇傾向にある中国

     

    現在の中国は、中国共産党の意向もあり、人件費が上昇する局面にあります。日本の単位労働コストは、1995年時点では、中国の3倍でしたが、2013年には逆転してしまいました。すなわち、日本の単位労働コストが、中国の単位労働コストを下回ってしまったのです。

     

    下記は、単位労働コストについて中国が日本を追い抜いていった推移がわかる資料です。

    紫色が中国で緑色が日本ですが、2012年を境に日中の単位労働コストが逆転しています。

     

    (出典:経済産業省ホームページ 2016年6月事業分野別指針における概要について)

     

     

    また、「オックスフォードエコノミクス」のレポートによれば、2016年時点で中国の製造業の単位労働コストがアメリカに対して保持している優位性は、すでに4%まで縮小しているとのこと。2016年の中国の実質賃金引き上げ幅は6.3%と予測されていますので、ひょっとすると2016年の中国の単位労働コストは米国までをも上回ってしまっている可能性があるのです。

     

     

     

    3.中国バブル崩壊の真相

     

     中国バブル崩壊について、株式市場が下落やら不動産市況の不調など論じているエコノミスト・アナリストらがいますが、中国バブル崩壊の真相は、供給能力過剰の問題です。

     

     上述で述べたとおり、中国は人件費が上昇し続けた結果、単位労働コストが上昇を続けました。国家全体のマクロ経済で見れば、生産性を向上させるには、「設備投資」「公共投資」「人材投資」「技術開発投資」という4投資を蓄積していくしかありません。

     

    税収=名目GDP×税率×税収弾性値
    DP=個人消費+政府支出+設備投資+純輸出
     純輸出=輸出−輸入

     

     「投資」はGDP統計上、「民間企業設備(設備投資)」「民間住宅(住宅投資)」「公的固定資本形成(公共投資)」の3つの需要項目として計上されます。2000年以降の中国の経済成長は、主に「投資」の拡大で達成されたものでした。

     

     中国の「民間企業設備(設備投資)」「民間住宅(住宅投資)」「公的固定資本形成(公共投資)」について2000年と2014年で数値を比較しますと、下記のとおり。

     2000年:  5000億ドル(総固定資本形成対名目GDP比率35%)

     2014年:4兆5000億ドル(総固定資本形成対名目GDP比率45%)

     

     この数字が何を意味するか?現在の中国のGDP成長は、明らかに投資依存で、行き過ぎているといえます。日本の場合、高度経済成長期でさえ総固定資本形成対名目GDP比率は35%程度、現在は20%程度です。

     

     「投資」とは、生産能力強化のために行われますが、最終需要(消費)があろうがなかろうが、投資をすればGDPは拡大し、経済成長することは可能です。

     

     中国という国は、最終需要と無関係に、ひたすら投資拡大し、GDPをかさ上げすることを続けてきたといえます。とはいえ、投資を増やせば解決されるという問題ではありません。日本は投資不足ですが、中国の過剰投資にいたっては、もはや世界経済のリスク要因になっています。

     

     中国の鉄鋼生産能力は2004年に年間4億トン弱でしたが、2015年には12億トンにまで拡大しました。ところが最終需要は12億トンに満たなく、4億トン近い過剰生産能力が発生してしまったのです。

     この結果、鉄鋼産業の稼働率は70%近くに下落し、過剰な鉄鋼の生産能力は当然、世界中に振り向けられて、ダンピング輸出が各国の鉄鋼産業(新日鉄やJFEホールディングスや神戸製鋼など)に打撃を与える深刻な事態になっているのです。

     

     

     というわけで、今日は「労働単位コスト」という概念を取り上げ、人件費が高くても、人材に投資したり、設備投資に力を入れることで、結果的に生産性向上が図られて単位当り労働コストを引き下げることができ、価格競争力を保てるというお話をさせていただきました。また、中国の単位労働コストが上昇している現状も触れました。

     

     日本の企業に今必要なのは、中国人などの人件費の安い労働者を雇用することではなく、「設備投資」「人材投資」「技術開発投資」です。とはいえ、デフレで物・サービスが値段を下げないと売れない、個数を少なく買われるデフレ環境ではリスクが高く投資しにくい環境であるため、利益追求の必要がない通貨発行券を持つ国家こそが率先して「公共投資」をすることが必要なのです。

     政府が「公共投資」を継続することで、民間企業の「設備投資」「人材投資」「技術開発投資」をしていけば、さらに単位労働コストが引き下がり、日本人の人件費が高くても日本製品の国際競争力を向上維持することを可能にするのです。

     

     


    コメント
    コメントする








       

    calendar

    S M T W T F S
         12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
    << November 2019 >>

    スポンサーリンク

    ブログ村

    ブログランキング・にほんブログ村へ
    にほんブログ村

    recent comment

    profile

    search this site.

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM