サムスン電子について
JUGEMテーマ:海外投資
今日は韓国の企業であるサムスン電子について取り上げます。
サムスン電子と言えば、世界を代表するグローバル企業で、日本企業もサムスン電子を見習え!という論説が流行ったときがありました。サムスン電子は、確かに半導体のWindowsパソコンで使われるDRAM(記憶保持動作が随時必要な読み出し書き込みメモリー)やスマートフォンで使われるNAND(電気的一括消去が可能なメモリー)で世界一のシェアを誇ります。
しかしながら、DRAMを作るために必要な、高純度のレアーガスや、セラミックチップ、コンデンサー、シリコンウエハー、セミコンダクターといった電子部品といった資本財については、京セラ(証券コード:6971)や村田製作所(証券コード:6981)などから輸入に頼っているのです。
確かに消費財ではシャープや東芝やパナソニックと競合します。とはいえ資本財は日本からの輸入に頼っているのです。
マクロ経済全体から見れば、サムスン電子が潤えば潤うほど、資本財を生産輸出する日本のGDPが増えるという構図になります。また、サムスンが破たんしたとしても、京セラと村田製作所は、シャープやパナソニックに販売先を変えるだけですので、影響はほとんどないと考えられます。
またサムスン電子は、外国人投資家が多くを占め、配当要求が高いために、サムスン電子が儲かっても従業員への分配よりも、株主への分配の割合が多い。即ち配当性向が高い会社であるとも言えます。
そうした点を踏まえ、サムスン電子という会社がどんな会社なのか?について知っていただこうと思います。
以下はサムスン電子のホームページのIR(投資家情報)から、私が和訳したものです。
<2016年6月末時点 サムスン電子の株式構成:普通株と優先株の比率>
サムスン電子株の発行済株式数内訳
優先配当株:12.7%
普通配当株:87.3%
<2016年6月末時点での普通株と優先株の合計で見た株式所有シェア>
〜発行済み株式の内訳〜
外国人株主 :54%
大株主関係株主 :16%
韓国国内機関投資家:15%
韓国国内法人 : 2%
自社株 :13%
<2016年12月末時点での普通株の株式所有シェア>
〜発行済み株式の内訳〜
外国人株主 :51%
大株主関係株主 :18%
韓国国内機関投資家:16%
自社株 :13%
韓国国内法人 : 2%
<2016年12月末時点での優先株の株式所有シェア>
〜発行済み株式の内訳〜
外国人株主 :77%
自社株 :16%
韓国国内機関投資家: 5%
韓国国内法人 : 2%
大株主関係株主 : 0.3%
以上はサムスン電子のホームページ(http://www.samsung.com/global/ir/stock-info/ownership-structure/)から抜粋いたしました。
この情報から読み取れることは、サムスン電子の株式の54%が外国人が所有しているということです。つまり株主の50%以上が外国人投資家によって占められています。これには歴史的経緯がありまして、1997年の通貨危機の時に、韓国はIMFから融資を受けて国家の破たんを免れました。その際、通貨危機で暴落したウォンの株価を、安値で徹底的に拾い上げたのが外国人投資家だったのです。ウォンの通貨危機で韓国株は大バーゲンセールだった時に、多くの株式を外国人投資家に握られてしまったのです。
この結果、サムスン電子が儲かっても、従業員の給料が上がらず、外国人投資家の株式配当で資金が流出するという構図が出来上がってしまいました。
日本でも外国人投資家が多くの所有シェアを占められれば、利益が薄利であっても株式配当を要求されるということがあり得えます。外国人投資家は基本的に日本人の生活が豊かになろうが貧乏になろうが知ったことではありません。配当がもらえればそれでいい。多くの配当をよりもらえればそれでよし!それが外国人投資家なのです。
私自身も外国株と日本株をやっていますが、日本株は配当を増やさなくてよいと思う時がよくあります。自分は日本で生まれ、日本で育っています。日本企業が未来永劫健全な発展を願うのであれば、配当性向が高い会社は先々投資の制約を受けて成長が伸び悩む可能性があると思うからです。たこ足配当なんてとんでもないですし、配当性向は30%以下であることが銘柄選択の指標にしています。理由は利益を従業員への配分と将来への設備投資をやっていただきたいという思いがあるからです。
話題をサムスン電子に戻しまして、こうしてみますと韓国一の企業であるサムスン電子は外国人投資家が50%を占める会社であることを説明しました。トヨタ自動車(証券コード:7203)でさえ、外国人投資家比率は24.5%です。れっきとした日本を代表する日本企業です。サムスン電子は韓国企業と言えるのでしょうか?甚だ疑問を持ちます。
また資料はありませんが、サムスン電子は売上高の75%が海外販売、25%が国内販売という売上構成です。売上高営業利益率で言えば、海外が1.5%、国内は50%の水準です。売上高営業利益率1.5%といえば、製造原価+販管費=10000円の携帯電話を10150円で売っているということになります。国内の売上高営業利益率50%といえば、製造原価+販管費=10000円の携帯電話を20000円で売っている計算になります。
要するに韓国国内では国内競争がないため、韓国国民は値段が高い携帯電話をサムスン電子に買わされている一方で、海外にはウォン安誘導の金融政策の後押しもあって、ダンピングで海外市場にめちゃくちゃ安く携帯電話を売っているのです。結果、海外事業での売上高営業利益率は1.5%と超薄利多売である一方、国内は50%の売上高営業利益率となるのです。
日本で売上高営業利益率50%の製造業といえば、キーエンス(証券コード:6861)くらいしか思い当たりません。家電業界も自動車業界も日本の場合は、まず国内競争が厳しい。家電でいえば、ソニー、シャープ、東芝、NEC、富士通、日立などなどがありますし、自動車業界でいえば、トヨタ自動車だけでなく日産自動車、本田技研、富士重工、スズキなどがあるわけです。
韓国は家電でいえばサムスン電子、自動車でいえば現代自動車だけで、韓国国内での競争がないため、韓国国民は高いお金を払ってそれらを買うしかありません。
私は海外に行ったとき、ウズベキスタン、ミャンマー、カンボジアといった国々では、一人当たりGDPが1000ドル台でして、いわば年収10万円の人が日本のスマートフォーンを買えるはずがなく、サムスンの安いスマートフォンを買うしかないのだと思った時があります。
というわけで、サムスン電子が本当にすごい会社なのか?と言えば、私は薄利多売の安売りの組立しかできない会社と断定します。これは中国のシャオミーも同様です。サムスン電子は韓国企業ではなく外国企業であると言えますし、技術力では日本の家電メーカーに叶わないのです。
日本の家電メーカーがなぜ苦戦しているか?と言えば、単にデフレで国内で価格引き下げ競争を強いられ、技術開発に投資が増やせず、投資しても儲かりにくい環境を日本政府が20年続けてきたためです。サムスン電子の技術力が優れているというわけではないのです。
今日はサムスン電子について取り上げ、改めて技術力では日本の家電業界が圧倒的に高いことをお伝えしたいと思い、論説しました。
- 2017.04.19 Wednesday
- 世界経済(中国・韓国など東アジア)
- 01:49
- comments(2)
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- by 杉っ子
他にも、日産自動車 63%、シャープ 70%、ファナック55%、オリックス 55%など、日本にも沢山ある。
これらは、日本企業ではないのかな。
https://shikiho.jp/tk/ranking/toy/gaikoku/all
それから、利益(の大半?)が海外の株主に配当金として流出と書いてあるが、サムスンの配当性向を知らないようだね。この記事が書かれたのが2017年4月だから、当時の直近の2016年決算で見ると、配当性向は僅か17.8%しかない。つまり、利益の17.8%が株主へ配当、外国人株主に限れば、更に小さくなる。
https://www.samsung.com/global/ir/stock-information/shareholder-return/
それなのに「外国人投資家の株式配当で資金が流出する」と書くのはミスリードだろ。
実際は、配当金以外にも、自社株買で還元してるけど、この記事には配当しか触れてないので、配当に限定してレスしてみた。