最高益となった41社が巣ごもり需要を取り込んだとするどうでもいい報道と粗利益補償の必要性
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今日は「最高益となった41社が巣ごもり需要を取り込んだとするどうでもいい報道と粗利益補償の必要性」と題して論説します。
コロナウイルス感染者の増加率が少し落ち着いてきたでしょうか?とはいえ、感染者数の報道そのものは継続的に報じられているものの、死亡者数はそれほど拡大していません。
夜の街はウイルスの巣窟のような印象を持たれて壊滅的な状況といえるでしょう。私がよく行く居酒屋のチェーン店も、夜21:00以降で稼働率は30%〜40%程度といった感じです。
飲食店は営業再開していても、宴会や大人数での飲食は自粛が要請されているため、従来期待されていた売上高にまで上げることができていないのです。
こうした苦境はいつまで続くのでしょうか?
苦境に陥っていない業種はそもそもあるのか?というと、皆さん新聞社とかマスメディアなど、月給は下がらなくてもボーナスが下がっています。
今後こうしたことがいろんな業種で影響が出てくると思われます。
飲食業、交通産業、観光業などは直接影響が出ているのでわかりやすいですが、新聞社などは広告収入が激減していて人件費に影響が出ていると考えられます。
経済はあらゆるところで連鎖しているため、どこかの流れが止まってしまうと、その流れを受けている業種に流れがいかず、その業種が枯渇します。
そのため、今回のコロナショックでは、業種や金額の多寡を問わず、すべての業種を完全に補償することが必要です。
日本は長期間にわたるデフレで最も財政出動ができる余力を持っているため、日本政府の実力でいえば、100兆円〜200兆円の財政赤字を拡大して国債や財務省証券を発行して経済対策で日本国民を経済的困窮から救済することが可能です。
むしろここで救済しないと企業の廃業や倒産が続出し、日本経済全体が持っている財・サービスの生産能力(=国力)が失われることになります。
「企業が倒産する=企業が無くなる=生産能力を失う」と同じであり、生産能力=国力であるため、生産能力を失うことは、それだけ発展途上国化していくことを意味するのです。
今回のコロナショックで、世界各国の経済が大きなダメージを受けました。
そんな中で、各国政府が何を最大に注力すべきか?といえば、コロナウイルス蔓延防止が最大の目的であることは言うまでもありませんが、それと同時に生産能力をできるだけ維持することが求められています。
生産能力さえ温存していれば、コロナウイルスが収束したあと、すぐに生産活動が再開することが可能となり、財政出動で民需拡大をさせれば、GDPも「リベンジ生産回復=リベンジ消費回復=リベンジ所得回復」となってV字回復が期待できます。
ところが生産能力が維持できない場合、財政出動しても、「リベンジ生産が十分にできない=リベンジ消費が十分にできない=リベンジ所得回復が十分にできない」となってしまい、L字低迷もしくはよくてもJ字回復、U字回復で、回復に時間がかかることになります。回復に時間がかかることで貧困に耐えられなくなった人に対して、政府が支援しなければ自殺が増えていくことになるでしょう。
一度失われた生産能力を回復するには時間がかかります。そのため、粗利益補償を速やかに行うべきであるというのが私の立場です。
ところがマスコミの報道はそうではありません。日本経済新聞の記事を紹介します。
『日本経済新聞 2020/08/06 巣ごもり需要 41社最高益 4〜6月、パソコンや食品など 全体の4%どまり
新型コロナウイルスによる生活様式の変化を捉えた企業が利益を伸ばしている。2020年4〜6月期の純利益が過去最高となったのは、5日時点で41社となった。テレワークの普及や在宅時間の増加によって、パソコンや食品などは需要が増えている。全体では3社に1社が赤字という逆風下で、最高益はわずか約4%にとどまる。
5日に4〜6月期決算を発表したMCJの純利益は前年同期に比べ2倍の42億円となった。国内で開発し、受注生産したパソコンを販売する。在宅勤務用に注文が増え、ゲームの利用に特化した高性能パソコンも販売が好調だった。
20年6月末時点で上場しており、6四半期以上続けて比較できる3月期決算企業のうち、5日午後4時までに4〜6月期決算を発表した1064社を集計した。
在宅勤務の普及によって、セキュリティーの必要性も高まっている。
企業のシステム構築をするテクマトリックスは、在宅勤務用にセキュリティー強化や個人認証システムの受注が増加した。4〜6月期の純利益は前年同期比77%増の6億5400万円となり、株価の上昇率も昨年末比で8割を超えている。
自宅で過ごす時間が増えていることで、消費者は買い物に通販を活用し、家で娯楽を楽しむようにもなっている。
ゲーム会社のコーエーテクモホールディングスやドリコムも最高益となった。コーエーテクモは、アリババ集団系と組んで中国で配信した三国志のスマートフォンゲームが人気で、関連した知的財産収入が増加した。国内では通勤が減って余暇時間が増えたことで、スマホやダウンロードのゲーム販売が伸びている。
スクロールは自社の会員向けカタログ通販も伸びているが、実店舗の営業自粛などでインターネット通販を強化した他社向けに、ネット通販の物流や決済を代行するサービスが拡大している。
人混みを避けるため、家具もネット経由で購入する消費者が増加、ベガコーポレーションの税引き利益は77倍となった。株価も昨年末比で6倍に上昇した。
家庭で食事する機会も増えている。エスビー食品はオイスターソースやトウバンジャンといった基礎調味料のほか、香辛料やスパイスが好調だった。外出自粛が長期化し、調理が簡単にすむレトルト食品やスパゲティソースだけでなく「普段なかなかチャレンジできない料理をやってみようという人が増えた」という。
食品スーパーのヤマナカや関西スーパーマーケットも最高益となった。家庭菜園やDIY関連の製品を販売するホームセンターでもコメリなどが最高益だった。
最高益となった企業は全体の3.9%にすぎない。新型コロナの影響が出始めた1〜3月期の5.9%から減少している。さらに41社のうち、時価総額が1兆円を超える企業は小野薬品工業などにとどまり、日本企業全体への影響は限定的だ。
日本では新型コロナの感染者数が再び増えており、世界でも感染拡大は収まっていない。長期化が避けられない中、株式市場はコロナ耐性が一過性かどうかを見極める動きも強まる。多くの企業で業績の底が4〜6月期になるとみられる中、最高益企業が今後も利益拡大を続けられるかに注目が集まる。』
この報道は、「努力すれば・・・」「このような状況下でも需要をうまく取り込んで・・・」など、私から言わせれば、たまたま直接的な被害を受けなかった業種に過ぎないと思うわけで、あたかも最高益41社を取り上げて、政府の支援は最小限にすべきと言わんばかりに受け止めてしまうのは私だけでしょうか?
最高益企業が何社出てきたとしても、生産能力を維持すること、それこそが次の時代の経済的覇権を握ると言っても過言ではありません。
その生産力を維持するために必要なことは、粗利益補償です。
<粗利益補償のイメージ図>
上図の★の太枠線で囲った部分が粗利益です。
この粗利益には純利益も含まれますので、銀行の借入金の返済も可能です。販管費で家賃も給料も払えますので、粗利益補償であれば、金融機関サイドから見ても、貸し倒れが無くなるので歓迎される政策といえるでしょう。
具体的には、昨年実績の粗利と今年の粗利を比較してもらい、その差額を政府が補償すればOK。そうすれば昨年と同じ規模の社員を抱えたまま、コロナウイルス危機を乗り切ることができます。
一人も解雇させない、一社も倒産させない、これが正しい政策です。
日本経済新聞の記事は、そうした提言もなく、「この苦境の中で最高益を打ち出して頑張っている企業が41社ある」と報じることに何の意味があるのか?私には理解ができません。読む価値がある新聞なのか?とさえ言いたくなります。
日本は政府が小さくなりすぎており、この経済的危機に対して対策が講じられないと国民の所得は間違いなく下がります。
コロナで真っ先に被害を受けたのは、飲食業、交通産業、観光業であっても、国民経済が繋がっている以上、日本国民のほとんどがその影響を受けます。
飲食店で考えた場合、コロナ自粛で飲食店で宴会が無くなれば、宴会で使われていた食材が売れなくなります。宴会がなかったとしても、スーパーで家で食事するなど、そうしたスーパーでは食材がよく売れるようになって売上高・利益は伸びるでしょう。
しかしながら料理屋で使われる高級食材は売れなくなり、高級食材を作っていた生産者は当てが外れで在庫を抱え、途方に暮れることになります。
そこで出てきたのは「お肉券」ですが、「お肉券」を配って高級なお肉を消費してもらおうという意図であり、これはこれで理解できなくもありません。
とはいえ、困っているのは高級和牛の生産者だけではなく、ありとあらゆる業種を救済しなければならず、「お魚券」「お米券」・・・などと収拾がつかなくなり、「商品券⇒現金」に落ち着きました。
このように所得が減って真っ先に切られるのは高級品であり、良いものを使うのをやめ始めてしまうのです。
高級食材が売れなくなって日常家庭で使う食材しか売らなければ、高級品を作る生産者は、居なくなってしまいます。世界一おいしい食材を生産する技術を持っていた日本の生産者がいなくなることを意味します。
そのような生産者が一度廃業してしまえば、それを再生するには相当の時間がかかります。技術や伝統を再生するのは非常に困難を伴い、食事は文化そのものでもあるので、文化や芸術も失ってしまうことになるでしょう。
もし日本政府が、一人も解雇せず、一社も廃業させないとして、粗利益補償を行えば、少なくても経済的理由で廃業を考える必要はなくなります。
再び、宴会需要、接待需要が戻ってきたときに、従来のおいしい食材が従前通り供給され、飲食店も従前の営業をすぐに再開できるので、V字回復することができるのです。
仮にも高級食材を生産する生産者が居なくなってしまえば、飲食店は従前のメニューを提供しようにも、材料がないために提供できなくなります。
これではV字回復できず、L字回復低迷となってしまいます。
単価を上げることができないため、低い売り上げのまま推移するので回復ができないのです。
東京都の小池知事、大阪府の吉村知事は、緊急事態宣言をやりたがっていますが、そうではなく、政府に対して粗利益補償をせよ!と声を上げることがまず優先されるべきではないでしょうか?
自粛警察に頼って自粛を要請するなどというバカバカしい政策は、何の解決策にもなっていないということに気付くべきだと私は思います。
というわけで今日は「最高益となった41社が巣ごもり需要を取り込んだとするどうでもいい報道と粗利益補償の必要性」と題して論説しました。
ごく一部の企業が儲けを拡大しているとはいえ、日本政策投資銀行による2020年度の大企業の設備投資計画に関する調査結果では、製造業で▲5.1%、非製造業で▲6.2%のマイナスであり、投資を見送る企業が増えていることを表しています。
一部の企業が最高益を出していたとしても、トータルでは需要が縮小し、投資を控えているというのが問題です。
なぜならば投資を控えるということは、現時点の経済指標が下落することを意味し、日本の産業生産力、産業の生産品質が低下することを意味するからです。
この先、非常に深刻な悪影響を長期的に及ぼすことになるということこそが、経済問題の本質といえるのでは?と私は思うのです。
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- 2020.08.21 Friday
- 日本経済(経済政策)
- 00:34
- comments(1)
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- by 杉っ子
いつまでこの茶番劇が繰り返されるのか…どうしちゃったんでしょうね日本国民は。(まともな人も大勢いますが、言い方は悪いですが思った以上にバカが多くて声が届かない)
それと、当たり前の話ですが、経済は本当に大事ですね。ただの夏風邪(コロナ)で勝手に自滅してゆく日本は滑稽としか言いようがありません。一刻も早く通常の生活に戻さないと危険です。
それと、こういう記事がありました。
「世界177ヶ国の平均寿命が一人当たりGDPの対数に比例」
2013年01月24日
http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52098653.html
「横綱大鵬時代の高度経済成長時に、寿命も長くなったーーー命を支えるのは経済」
2013年01月22日
http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52098432.html