ケチケチ緊縮のドイツを含めた他国19か国は付加価値税の減税へ!
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今日は「ケチケチ緊縮のドイツを含めた他国19か国は付加価値税の減税へ!」と題して論説します。
日本経済新聞の記事をご紹介します。
『日本経済新聞 2020/07/09 00:21 英、飲食業などで消費減税 財政影響にも目配り
【ロンドン=中島裕介】英政府は8日、追加の経済対策として飲食、宿泊、娯楽の業界を対象に、日本の消費税にあたる「付加価値税」の税率を現行の20%から5%へ引き下げると発表した。新型コロナウイルスの打撃が大きい業界を支える。休業者の給与補助は予定通り10月に終了し、膨らむ財政負担にも目配りする。
付加価値税の引き下げはレストランやパブ、ホテル、劇場などが対象となる。15日に開始し、2021年1月12日までの時限措置とする。41億ポンド(約5500億円)の減税規模となる見込みだ。英国が新型コロナの感染拡大以降で付加価値税を引き下げるのは初めて。
飲食店への支援策では8月の月、火、水曜日に限り、外食時の料金を最大半額とするユニークな助成制度も設ける。
追加経済対策は全体で300億ポンドに及ぶ。都市封鎖により発生した休業者を職場に戻し、英経済を自律的な成長路線に戻すのが狙いだ。
英国家統計局によると、都市封鎖の影響で飲食・宿泊業の4月の生産高はコロナ前から92%減少。娯楽業でも47%減るなど甚大な影響が出た。
こうした業種では休業者も多い。今回減税対象となる職場では累計で170万人もの労働者が一時帰休を余儀なくされた。個人消費を重点的に喚起することで雇用維持につなげる。
社会保障の安全網も充実させる。生活保護にあたる「ユニバーサルクレジット」を受給する16〜24歳の若者を雇った企業には6カ月間、最低賃金分の給与を政府が肩代わりする。立場が不安定な若年層に対象を絞りつつ、失業の長期化を防ぐ狙いだ。
一方、スナク財務相は8日、政府が3月から続けてきた全業種の休業者の給与の8割を肩代わりする対策を期限通り10月末に終わらせる方針も示した。10月末の失業急増を防ぐため、休業者を解雇せずに21年1月まで雇い続ける企業には1人あたり1000ポンドを支払う激変緩和措置も設けた。
失業者の給与肩代わりは、労働環境の悪化食い止めに一役買い、足元の失業率は3.9%にとどまっている。だが、財政への負担は大きいためスナク財務相は「こうした対策は永遠に続けることはできない」とし「中期的には持続可能な財政の軌道に戻す必要がある」と強調した。
20年度の英財政はコロナ対策による歳出の膨張と税収減で赤字が3000億ポンド(約40兆円)に達するとの試算もある。累積債務の国内総生産(GDP)比も1960年代初頭以来、初めて100%を超えるのが確実だ。
英政府はメリハリを付けた今回の追加経済対策がどの程度失業を抑えるか見極めたうえで、さらなる対策が必要か検討する方針だ。
付加価値税を巡っては、他の欧州諸国でも引き下げる動きが相次ぐ。
ドイツは1日から半年間限定で税率を3ポイント引き下げ16%とした。食料品向けの軽減税率も7%から5%に改めた。ノルウェーは公共交通機関の運賃や宿泊料金などに限り、税率を引き下げている。各国とも財政とのバランスを図りながら消費喚起策を打ち出している。』
上記記事は、先月報じられたものですが、英国が2020/07/08、追加の経済対策として、日本の消費税に相当する付加価値税を20%→5%に引き下げることを決めたとされる記事です。
特に飲食業や観光業など、コロナ禍の影響を大きく受けた業種を対象に実施します。
日本経済新聞の記事では、英国の累積債務のGDP比率が1960年代以降、100%を超えるのは確実であると報じ、あたかも財政危機に陥るリスクがあるかのような報じ方をしています。
この時点で、この日本経済新聞の記者は何もわかっていない、いわば白痴です。日本経済新聞という”経済”の看板を下ろした方がいい、私はそう思います。
英国はそもそもユーロに加盟していません。通貨発行権はECB(欧州中央銀行)ではなく、イングランド中央銀行ですので、英国の意思で英国ポンドを発行できます。
<イングランド中央銀行>
(出典:杉っ子が2019/05/01に英国のロンドン市内で撮影)
英国のイングランド中央銀行は、人類で初めて創設された中央銀行で、1694年に設立されました。
日本でいえば日本銀行であり、米国でいえばFRBです。イングランド中央銀行が設立されたのは、1689年から始まった第2次100年戦争で、ウイリアム3世がルイ14世に戦いを挑み、1815年のワーテルローの戦いでナポレオンを亡ぼすまで戦ったフランスとの戦争で、戦費の調達を有利に進めるために作られた銀行です。
金地金などが裏付けになっているのではなく、万年筆マネーといって、ただ紙に書けばお金になるというもの。現在も管理通貨制度で金本位制ではありませんので、各国がインフレ率を見ながら、自由に自国の主権において通貨発行できます。
もし英国がEUに加盟したままだったら、マーストリヒト条約に縛られて付加価値減税はできなかったかもしれません。その証拠に、フランス、イタリア、オランダ、スペインなどのEUの中でもGDPが大きい国は、財政赤字なのか?付加価値税減税をやっておりませんが、財政黒字のドイツは、コロナ禍の経済悪化を受けて、2020/07/01から今年年度末まで付加価値税を引き下げました。(下表を参照)
<付加価値税を減税した19か国の状況>
(出典:赤旗新聞から引用)
英国はEUを離脱しましたので、EUのマーストリヒト条約(財政赤字対GDP比率3%以下、政府債務残高GDP比60%未満)に縛られることなく、財政赤字を拡大させることができます。
MMT理論でいえば、財政赤字とは、「英国政府の赤字=英国国民の黒字」です。
こうしたことを知らないのか?御用学者の土居丈朗氏は、東洋経済の記事で次のように述べています。
『東洋経済ONLINE 2020/06/08 08:02 ドイツはなぜ消費減税できるのか
6月3日、ドイツのメルケル政権、日本の消費税に相当する付加価値税を2020年7月1日からで12月31日まで税率を引き下げること発表した。これは、2020年と2021年に実施する新たな景気対策(総額1300億ユーロ(約16兆円))の一環である。
この消費減税は、標準税率を19%から16%に引き下げ、軽減税率を7%から5%に引き下げるものである。
2005年に発足したメルケル政権は、2007年に、当時17%だった付加価値税率を19%に引き上げた。
その後、リーマンショックに端を発した世界金融危機が起きて、景気が後退した。2009年には実質経済成長率がマイナス5.6%を記録した。
それでも、メルケル政権は消費減税をしなかった。
そのメルケル政権が、今半年間の消費減税をしようとしている。それはなぜか。
その後、ドイツは2012年から8年連続で財政収支が黒字になった。そして、その黒字の7割を使って政府債務残高を減らしてしてきた。
政府債務残高の減少は、将来の増税を避ける形で将来に恩恵が及ぶ。
では、財政黒字の現世代への還元はどうするか。それが、以前から政権内で議論されていたことだった。』
このように土居丈朗氏は、ドイツが付加価値税減税に踏み切ったのは、財政均衡を達成していたため、今このタイミングで、ドイツ国民に財政黒字の還元として付加価値減税ができたと主張しています。
ところがその後、2020/07/09の英国をはじめ、他国が次々と付加価値税減税を決めていきました。
今のところ、土居丈朗氏はダンマリです。なぜならばドイツ以外の国々の多くは、土居氏が主張するような財政均衡を達成していないからです。
ユーロ加盟国のような自国の主権で財政赤字を拡大できない国ならともかく、それ以外の国は自国の通貨を発行することは普通に可能です。もちろん日本においても、プライマリーバランス規律を堅持しようとする財務省の意向に関係なく、減税することは可能ですし、国債を発行して、2回目の一律10万円給付を刷ることも普通に可能です。
ただしインフレの国、もしくは自国民の需要を自国の供給力で賄えず輸入に頼りがちな国については、仮に通貨発行ができるとしてもインフレ率が制約になります。
そう考えますと、英国は発展途上国ではありません。立派な先進国です。そのため、インフレ率の制約など考えなくても、コロナ禍で困窮する英国民のために普通に財政赤字を拡大できるのです。
というわけで今日は「ケチケチ緊縮のドイツを含めた他国19か国は付加価値税の減税へ!」と題して論説しました。
1929年の世界大恐慌後に昭和不況に突入した理由は、濱口雄幸内閣、井上準之助蔵相らが、緊縮財政をやったからであり、ウォール街株式暴落による悪影響だけが原因ではありません。
その後、高橋是清が金本位制を破棄し、国債を発行して財政出動したことで、世界大恐慌からいち早く日本は経済を回復できました。
国会議員や財務省職員はそうした歴史を学ぶべきで、今この状況下でプライマリーバランス黒字化とか、総裁選に出馬予定の稲田朋美のように理念なきバラマキに反対と主張することなど、政府支出についてブレーキをかけるような発言をする人は、与野党問わず人間のクズであると私は思うのです。
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- by 杉っ子