2020年度補正予算に不足しているものとは?
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今日は「2020年度補正予算に不足しているものとは?」と題して、先月4/30に可決成立した2020年度補正予算案について論じたいと思います。
下記はブルームバーグの記事です。
『ブルームバーグ 2020/04/30 19:13 新型コロナ対策、過去最大25.7兆円の補正予算成立−一律10万円給付
参院本会議で30日、2020年度補正予算が賛成多数で可決・成立した。新型コロナウイルス感染拡大に伴う事業規模117.1兆円の緊急経済対策の実現に向け、予算規模は過去最大の25.7兆円となった。
同補正予算には国民1人当たり一律10万円の現金給付や上限200万円の中小小規模事業者への現金給付を含む雇用維持・事業継続に19.5兆円、感染症拡大防止に1.8兆円を計上。補正予算の財源はすべて国債の追加発行で賄う。
政府はいったん過去最大となる108.2兆円の緊急経済対策を閣議決定したが、緊急事態対象地域の全国拡大に伴い、現金給付を生活困窮世帯への30万円から一律10万円に急きょ方針転換。経済対策と同時に閣議決定された当初補正予算案も修正を余儀なくされ、8.9兆円の歳出の上振れとなった。
今回の補正予算では、休業を余儀なくされる事業者の固定費支払いを支援するため、休業手当への助成を拡充したほか、上限200万円の事業者給付を盛り込んだ。給付額は全国平均の半年分の地代を根拠としており、自粛期間が長引けば家賃の高い首都圏や業種によっては不足する可能性がある。
3月末に成立した20年度予算に今回の補正予算を上乗せすると、一般会計の歳出総額は128.3兆円、新規国債発行額は58.2兆円とそれぞれ過去最高、公債依存度は45.4%に悪化する見通し。財政出動に合わせて日銀は27日、国債を買い入れ上限を撤廃する追加金融緩和策を公表した。』
上記の記事の通り、そして皆さんもご承知の通り、現金一律10万円給付などの緊急経済対策を盛り込んだ2020年度補正予算案が、衆議院本会議で採決され、参院本会議でも可決されて成立しました。
規模でこそ117兆と華々しく報じていますが、国債増刷額は25兆7000億円です。経済対策の中身を見るポイントとして、事業規模は意味がありません。例えば「他の予算からの付け替え」や「財政投融資などの政府による貸付金」や「社会保障費・税金の徴収の猶予」といった政策は、GDPの落ち込みを直接防ぐことに影響しないからです。
私は基本的に支持政党がありませんが、国民民主党の玉木代表が、家賃支援など予算委員会で質問したが、政府に危機感とスピード感がないことが分かったと述べられていまして、玉木代表が仰ることは全くその通りといえます。
まず危機感に関していえば、大学生の2割が退学するかもしれないという状況が既に報じられ、中小企業は5月末まで自粛したら4割が倒産するかもしれず、6月末までとなれば6割が倒産するかもしれないという状況です。
この状況でスピード感もなく財政支出を躊躇した場合、自殺者は増えるでしょうし、犯罪者も増えるでしょう。そうした犯罪を犯した人は捕まえて裁かなければなりませんが、その状況を作り出した政府にも責任があると私は思います。
なぜならば、以前から予想していた話であるからです。
スピード感でいえば、米国は2兆円の経済対策を早々に決め、欧州では3/21に財政規律を解除し、英国では給料補償を開始して、米国でもCARES法(CARES-Act)を通して、中小企業に対して3,000億円強の資金支援を3月、4月に決め、総額6,000億円強もの対策を既に決めています。
日本ではようやく5月から一律一人当たり10万円の給付が開始ということで、どれだけ遅いのか?スピード感が全くないという玉木代表の表現は、まさにその通りといえるでしょう。
結局安倍政権には危機感がない。危機感がなければスピード感もない。対策するための支出額も財政規律を守るから少ない。
今回可決成立した2020年度補正予算の対策規模は117兆円ですが、その前の108兆円という規模でゴールドマンサックスが日本経済についてどれだけダメージを受けるか?試算し、GDPが▲25%となると発表しています。
GDP25%減少というのは、日本国民の年収が25%減るということを意味するのですが、日本政府としては本当にそれでよいのでしょうか?
危機感・スピード感もなく、政府支出拡大をケチっている状況では、大学生がたくさん辞め、中小企業も倒産し、自殺者・犯罪者が増えていくことになるでしょう。
そのシナリオを回避するためには、追加で100兆円の対策を打ち、かつ消費税をゼロにするなどの組み合わせが必要であると私は思います。
しかしながら、それをいつやるのか?といえば、秋の補正予算です。第2次補正予算が夏やれば、秋にお金が出ます。
秋の補正予算までは「1人当たり10万円払うので、あとは自己責任でよろしく!」ということであり、コロナで死ぬよりも政府の無策・失策で殺される日本国民の方がはるかに多くなるでしょう。
とにかく2020年度の補正予算で不足しているのは、スピード感、金額、この2点が圧倒的に不足しているものと私は思います。
その思想の根底にあるものは、財政規律を守る、プライマリーバランスを黒字化しなければならないという発想が大元にあるからです。
MMT理論でいえば、財政規律を守ろうというプライマリーバランス黒字化が間違っていること、政府が黒字だと民間は赤字になります。
そのため、この状況で財政規律を守るというのは、却って国民を貧困地獄に叩き落すことになります。ところが相変わらずマスコミは財政破綻を煽る報道ばかりです。
下記は日本経済新聞の記事です。
『日本経済新聞 2020/05/08 20:49 国の借金1114兆円 19年度末、過去最大を更新
財務省は8日、国債と借入金、政府短期証券を合計した国の借金が2019年度末時点で1114兆5400億円となり、過去最大を更新したと発表した。20年4月1日時点の総人口1億2596万人(総務省推計)で割ると、国民1人当たり約885万円の借金を抱えている計算になる。
18年度末と比べて11兆1856億円増えた。社会保障費などの財源を赤字国債で賄っていることが要因で、超低金利を背景に償還までの期間が10年以上の長期国債の発行が特に増えた。
内訳は、国債が10兆7852億円増の987兆5886億円だった。金融機関などからの借入金は、6693億円減の52兆5325億円。一時的な資金不足を穴埋めするために発行する政府短期証券は、1兆698億円増の74兆4188億円だった。
4月末に成立した20年度補正予算では、新型コロナウイルスの緊急経済対策を実施するため、23兆円の赤字国債を発行することになった。追加の対策を求める声も強まっており、国の借金増大は加速する見込みだ。』
借金=悪というのは、不況期では企業経営や家計においては正しい。しかしながら政府は経世済民のためのNPO法人であるため、自国通貨建てである限り、借金がどれだけ増えようとも何ら問題はありません。
上記日本経済新聞の記事で言えば、1114兆5400億円という数字に意味があるかといえば、過去に発行した国債の残高の累計であり、反対側で国民の預金が1114兆5400億円存在するというだけの話です。
国の借金増大と報じていますが、国の借金とは、政府の負債であり、企業の負債であり、家計の負債であり、金融機関の負債の合計となりますが、反対側で政府には資産もあり、企業も家計も金融機関も資産があって、日本は純資産残高が300兆円を超える世界一の金持ち大国です。
今回、2020年度補正予算で23兆円の赤字国債を発行したことで、私たち国民に一律10万円給付されて預金が増えることになります。
その財源を外貨で借りる場合、例えばドルやユーロで借りて日本国民に配るとなれば、これは将来世代にツケを残しますが、自国通貨建ての負債は全く問題がありません。
また借金だけ増えるということは物理的にありません。必ず反対側で預金が増えます。その預金は私たち国民の預金であるため、一人当たり885万円の借金を背負うという表現も間違っていて、正しくは一人当たり885万円の資産という表現が正しいです。
というわけで今日は「2020年度補正予算に不足しているものとは?」と題して論説しました。
大企業・中小企業への粗利益補償、教育費負担のための大学生への金銭給付、コロナ対応病床増床のための医療機関への給付、地方交付税交付金の直接の増額、もしくは地方債の購入でも何でもいいのですが、政府が負債を増やしてこれらの政策にお金を投ずれば、民間の預金が増えます。
スピード感が遅いのは、財政規律を守ろうとするあまりなるべく支出したくないというバイアスがあるからであり、金額が少ないのも、財政規律を守ろうという考えがあるからです。
このように財政規律などというものは国民を幸せにするのに何の役に立たないため、プライマリーバランス黒字化そのものを早々に破棄するべきであると私は思います。
- 2020.05.11 Monday
- 日本経済(経済政策)
- 00:31
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- by 杉っ子