CLOを保有するゆうちょ銀行を抱え、1万人郵便局員削減しようとする日本郵政は国有化に戻すべき!
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GW期間の2020/05/06の記事でCLOというローン担保証券が危ないことについて取り上げました。日本郵政でいえば、傘下のかんぽ生命の不適切な保険販売が騒がれましたが、意外と知られていないこと、それはゆうちょ銀行が抱えるCLO問題です。
そこで今日は「CLOを保有するゆうちょ銀行を抱え、1万人郵便局員削減しようとする日本郵政は国有化に戻すべき!」と題して論説します。
下記は日本経済新聞の記事です。
『日本経済新聞 2020/03/24 郵便局1万人削減案 金融事業低迷で労使協議 コスト抑制が急務
日本郵政グループは全国の郵便局に配置する局員数の見直しに向けて労働組合と協議に入る。全体の5%にあたる1万人の削減案などが浮上している。低金利による運用難やかんぽ生命保険の不適切販売問題で金融事業の収益力が落ち、人件費を抑える必要があるためだ。人口減少やデジタル化も踏まえ、業務の省人化を進める。
日本郵政グループ労働組合(JP労組)との春季労使交渉で、人員の配置基準に関する協議に入ることで一致した。地域ごとに必要な人数を改めて検討する。2021〜23年度を対象とする次の中期経営計画の合理化策の柱としたい考えだ。
郵政の取締役会は19年から非公式に郵便局のコスト削減の議論を開始。採用抑制や早期退職による1万人の削減案などが挙がる。グループ全体の従業員は民営化した07年度末から7%減にとどまっており、短期間で5%削減すれば大幅な加速となる。
これまで郵政グループは金融事業が収益の柱だった。全国2万4千の郵便局網もゆうちょ銀行とかんぽ生命からの年1兆円の委託手数料で維持している。
しかし金融2社はかんぽ問題や低金利による運用収入の減少で先細りが避けられない。両社とも手数料の減額を求めて日本郵便と交渉している。かんぽからの手数料は20年度、ゆうちょは21年度から大きく減る可能性がある。郵政の増田寛也社長は郵便局網を維持する方針で、人員削減によるコスト抑制が急務だ。
手紙やはがきなどの郵便物は減少が続く。デジタル化や人口減で窓口に来る顧客も減った。全体の業務量も減る傾向にあり、会社側は業務を効率化すれば人数を絞っても事業運営に支障は出ないとみている。
アルバイトなどの臨時従業員を除く日本郵便の18年度末の従業員は19万2889人。持ち株会社の郵政、ゆうちょ銀、かんぽ生命を合わせた21万5412人のグループ全体の9割を占める。現在の従業員数はほぼ配置基準通りだという。
郵政は07年に民営化し、13年に労使合意による配置基準を設けた。保険や貯金の取扱額、郵便物数といった業務量をもとに地域ごとに必要な人数をはじいたものだ。この基準に沿って採用や希望退職で人数を調整する。見直しは初めてとなる。
配置基準ができた13年度以降は1%しか減っていない。年2.6兆円の人件費が重くのしかかる。NTTグループは1985年の民営化から20年間で3分の1にあたる10万人程度を減らした。郵政グループ幹部は「民営企業らしく合理化する必要がある」と語る。
郵政は先細りの金融事業を補う新たな収益源の開拓が遅れている。15年に国際物流の強化を狙って豪物流大手のトール・ホールディングスを買収したが、4000億円の減損損失を計上する結果となった。トール社は今も業績不振にあえぐ。増田氏が育成を掲げる不動産事業もけん引役というにはまだ力不足だ。
人員配置基準に関する協議が必要とJP労組も判断したのは、このままでは郵政の全国一律サービスが立ち行かなくなるという危機感を会社側と共有しているからだ。』
この記事が出た当時3/24は、緊急事態宣言は出ていないものの、新型コロナウイルスの問題は大きく話題になっていたわけで、その状況で1万人の人員を削減するとは、私は大変ひどい話であり、日本郵政は国有化すべきであると思います。
またCLOについて2020/03/19付で全銀協会長がコメントした内容について取り上げさせていただきました。上記日本経済新聞の記事は、その1週間後に報じられたニュースです。
かんぽ生命の保険の不適切販売と、低金利による運用収入減少についての指摘はありますが、CLOについては一切触れられていません。
グループの金融事業の収益が落ち込んでいるために人件費を抑制する狙いがあるということなので、かんぽ生命問題で売上を伸ばせず、ゆうちょ銀行もデフレで資金需要がないので低金利が続くため、先細りになることを踏まえたものなのでしょう。
マスコミ各紙は、ご紹介した日本経済新聞の記事に限らず、ゆうちょ銀行が保有するCLOについて取り上げているメディアが少ないです。私が確認できたところではブルームバーグの記事しか確認できておりません。
そのCLOについて、3/19に全銀協の高島会長が会見で、新型コロナウイルス感染拡大で経済指標の悪化が続くとの見通しを示す一方で、日本の金融機関が保有するローン担保証券(CLO)への影響は軽微との見方を示しました。
その当時からみると、明らかに状況は深刻に悪化しています。
私がこのCLOの報道について注目しているのは、リーマン・ショックが発生する前に、サブプライムローン問題が発生し、当時の状況と非常に酷似していると思うからです。
<CLOの仕組み>
となります。
同じ融資で負債勘定のものであっても、貸付金・借入金の借用証書ではなく、社債を集めて束ねたものを証券化したものは、CBOといい、BはBond(債券)の頭文字をとったものです。
そしてCLOとCBOを総称してCDO(Collateralized Debt Obligation)といいます。
これらの商品の特徴は、CLOでいえば、たくさんの銀行融資を集めて輪切りにしたものが小口証券として投資家が保有するため、投資家からみた場合、1社や2社借り入れが返済できなくなったところで、影響は小さいという理屈になっています。
投資信託などの理屈と同じ、ポートフォリオ理論が根源にありますが、リーマンブラザーズ破綻の時も同じ理屈でした。
リーマンブラザーズが破綻する直前に、サブプライムローンが紙くずになりました。
サブプライムローンは大量の住宅ローン債権を集めて証券化した商品で、CLOと違うのは企業の事業資金の貸付金か、住宅購入の貸付金かの違いだけです。
CLOと同じ理屈で、住宅ローンを1人や2人返せない人が出ても、全体かすれば微々たるものなので、リスクが分散化されているということで高い格付けが付与され、売りまくっていたのです。
CLOは企業の事業資金の貸付金ですが、サブプライムローンと全く同じことをやっています。
平時の時は何ら問題がなく、上述の理屈は当たっているかもしれません。
しかしながら今回の新型コロナウイルスのパンデミックは想定外です。
結果的に企業が銀行への返済が滞ったり、返済ができなくなることが続出するとなれば、小口にリスク分散もクソもありません。証券化商品自体そのものが消滅する大打撃を受けることになるでしょう。
リーマンショック時の前にサブプライムローン問題があったとなれば、CLOを起点としてそれらを保有する日本の金融機関の経営にも多大なる影響が出るものと私は危惧します。
そのCLOを保有する金融機関の上位3つの中に、ゆうちょ銀行が入っています。
最終的に私は、かんぽ生命、ゆうちょ銀行、郵便事業、そして親会社の日本郵政のすべてを国有化すべきであると考えます。
この状況で1万人のリストラなど、あり得る話ではないですし、そもそも1万人も削減して地方でかんぽ生命、ゆうちょ銀行、郵便事業が成り立つのか?都会に住む人には理解できないかもしれませんが、離島や山奥では郵便局が生活の基点の一つになっており、私はリストラするくらいならば国有に戻すべきであると思うのです。
赤字の郵便事業が赤字のままとならざるを得ないのは、離島や過疎地に郵便局を抱えるからであって、黒字にしようと思うならば、はがきは例えば500円とか、封筒の切手は1000円とか、大幅値上げをしない限り黒字にすることは無理でしょう。
というよりも江戸時代からの飛脚を、明治時代に前島密(まえじま ひそか)が整備した郵便事業は、私たちの先代が津々浦々、郵便が届くようにと日本の近代化のために始まった事業であり、利益を追求しようとして始まった事業ではありません。
<日本郵政の経営>
日本の郵便事業は、上図の通り、赤字の郵便事業を、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の黒字で埋め合わせをしていましたが、デフレで金利が右肩下がりのために安定した安全な運用収入(日本国債の金利など)が見込まれず、格付けが高いとしてCLOの保有をすすめ、ゆうちょ銀行は危ない状況といえます。加えてかんぽ生命は民営化によって無理な営業をせざるを得なくなり、不適切な保険販売で批判を受けました。
政府という組織が利益追求の企業ではない経世済民(世を経め、民を済う=よをおさめ、たみをすくう)のNPO法人組織であることを考えれば、そもそも郵便事業で稼いで黒字にする必要はなく、ゆうちょ銀行もかんぽ生命も赤字に転落したとしても、離島などの過疎地も含めて津々浦々全国均一のサービスを提供するという目的のため、政府事業で国有に戻すという発想があっても、何ら問題がないことだと私は思います。
というわけで今日は「CLOを保有するゆうちょ銀行を抱え、1万人郵便局員削減しようとする日本郵政は国有化に戻すべき!」と題して論説しました。
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- 2020.05.08 Friday
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- by 杉っ子