米国の経済悪化で、日本の銀行が保有するCLO(ローン担保証券)はどうなる?

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     今日は「米国の経済悪化で、日本の銀行が保有するCLO(ローン担保証券)はどうなる?」と題して論説します。

     

     下記はブルームバーグの記事を2つご紹介します。

     

    『ブルームバーグ 2020/03/19 全銀協会長:邦銀保有CLOへの影響、現状では軽微−新型コロナ

     全国銀行協会の高島誠会長(三井住友銀行頭取)は19日の会見で、新型コロナウイルス感染拡大により経済指標の悪化が続くとの見通しを示す一方、邦銀保有のローン担保証券(CLO)への影響は現時点では軽微との認識を示した。

     高島会長は、「経済指標の悪化がかなりの期間続くことを想定しないといけない」と指摘。原油価格の下落については、「この水準が続くとなると、エネルギーセクターで一定程度の与信費用を見込む必要がある」との見方を示した。

     一方、新型コロナ対策で各国の中央銀行がドル資金を供給していることについて、「資金繰りの観点から効果は大きい」と述べた。

     また、地方銀行への影響については、「自己資本は相応にある。与信コストが増えてもすぐに金融仲介機能は阻害されない」と説明。格付けの低い企業への融資を束ねて証券化した商品であるCLOに関しては、その中でも邦銀が保有しているのはほとんどが最上位格付けであり、「現状、影響は軽微」との認識を示した。

     足元の株価下落については、「月末までに改善しないと、一般論として一定程度の保有株式の減損損失が生じるのは避けられない」と指摘した。』

     

    『ブルームバーグ 2020/05/01 10:59 投資適格級CLOで元利支払い中断のリスク、数十億ドル相当−関係者

     格付けがジャンク級(投機的水準)の企業への融資であっても、ローン担保証券(CLO)として比較的安全な債券に組成することがウォール街の金融工学に託されてきた。

     しかし、新型コロナウイルス感染拡大の経済的影響が深刻化する状況にあって、投資家の一部はそうした安全性がもろいものであることを認識しつつある。

     事情に詳しい複数の関係者によれば、計数十億ドルに相当する12前後の異なる取引で、投資適格級のCLOの元利支払いが中断されるリスクがある。こうしたリスクに見舞われている債券の格付けは最高「A」クラスと高格付けの領域にあり、マラソン・アセット・マネジメントやプレティアム・パートナーズといった名の通ったマネーマネジャーが販売を手掛けたものだという。

     4−6月(第2四半期)の米失業率が30%に達する可能性が一部で懸念されるなど、新型コロナ感染症(COVID19)は、多くのCLOが設計上で耐えることができるよりもずっと深刻な景気悪化をもたらしている。担保資産のローンは格下げされて価値が低下し、CLO債券のうち最も安全な「AAA」のトランシュを守る仕組みが発動されている状態だ。

     シニア超過担保テストとして知られるこうしたセーフガードがこれほど広範囲に発動されるのは2008年の金融危機以来だ。同様の事態に陥る取引は今後さらに増える可能性がある。ジャンク級からAAAに至るさまざまなリスクやリターンのCLOの市場規模は7000億ドル(約75兆1000億円)に上るが、おおむねは米連邦準備制度の景気刺激プログラムの対象外となっている。

     業界団体であるストラクチャード・ファイナンス・アソシエーションの調査責任者、エレン・キャラハン氏は「CLOや他の仕組み商品を組成した人物で、米失業率が3%程度から、今後の数週間でわれわれが目にするかもしれない水準にまで悪化することを想定した者は皆無だろう」と語った。

     

     前段の記事はCLOを保有する邦銀の経営に与えるインパクトについて、全国銀行協会の会長がコメントしたもので、3/19時点では軽微な者との認識を示していました。

     

     その後、1ヶ月半ほどが経過して、事態は悪化。後段の記事では、格付け「A」となっているものですら、元利支払いが滞るリスクがあると報じられています。

     

     そもそもCLOとは何なのか?ですが、CLO=Collateralized Loan Obligation の略称で、ローンを束ねたものを証券化して小口に投資家に販売しているもので、ローン担保証券などという言い方をします。

     

     リーマンショックの直前に、サブプライムローン問題というのがありましたが、サブプライムローンのときは、住宅ローン債権を束ねて証券化して投資家に販売していました。

     

     CLOは住宅ローンで束ねたのではなく、金融機関の企業への貸付金を束ねたものになります。Loanを束ねたものは”CLO”ですが、社債を束ねたものは、社債=Bond なので”CBO”といい、Loan,Bondは債務ということで、CLO,CBOを総称してCDO(Collateralized Debt Obligation)と呼ぶこともあります。

     

     CLOの仕組みを図解しますと下記の通りです。

     

     <CLOの仕組み>

      

     

     上記の図では具体的な国内の金融機関の名前として、農林中央金庫、ゆうちょ銀行、三菱UFJ銀行の名前を出させていただきました。

     

     主に米国の大手銀行が、信用の低い企業A、企業B、企業Cに対して貸付を行い、その貸付金を束ねたものを小口に証券化して、それを日本の金融機関が購入していたのです。

     

     名前を出した金融機関は、デフレで資金需要がない状況でマイナス金利という環境の中、貸出を増やせないため、CLOの保有を急増してきた経緯がありました。

     

     そうした経緯を踏まえ、日銀は昨年2019年10月に報告書(金融システムリポート)を出して、2008年のリーマン・ショックを引き起こしたサブプライムローンと商品・リスクが類似するため、米国の景気次第でCLOも影響を受けるのでリスクへの留意することを促していました。

     

     その報告書によれば、日本の金融機関が保有するCLO保有額は、2018年度末で約12兆7,000億円とされ、2015年と比べて2.5倍以上となり、2019年9月末時点で特に突出しているのが、農林中央金庫が7兆9,000億円、三菱UFJフィナンシャル・グループが2兆4,733億円、ゆうちょ銀行が1兆5,241億円と大半を占めているのです。

     

     2019年11月の時点で、リーマン・ショック級の経済危機が起きると、米国企業の破綻などで2割〜3割価格が下落する可能性があり、日本の金融機関も大規模な損失を被りかねないと日銀が指摘しています。

     

     そのような爆弾爆発を予告していた状況で、新型コロナウイルス感染拡大問題が発生。世界恐慌なみの経済ショックとなろうとする今、CLOが無傷で済むとは到底思えず、3/19にコメントした三井住友銀行頭取の高島全銀協会長の認識は甘すぎるとしか言いようがありません。

     

      

     

     というわけで今日は「米国の経済悪化で、日本の銀行が保有するCLO(ローン担保証券)はどうなる?」と題して論説しました。

     よく投資信託の発想で、たくさんの卵を一つのかごに入れるのではなく、複数のかごに入れればリスクが減るなどと、ポートフォリオ理論というものがあります。私がサブプライムローンで感じたこと、それは卵を複数のかごに入れても、全部の卵が腐ってしまうことがあり得るということ。まさにCLOについてもリスク分散を図っているので貸出先の企業が1社や2社程度返済に窮しても、全体のパイからみれば相対的に割合が小さくCLOの価格は軽微ということなのでしょうが、残念ながら新型コロナウイルス感染拡大で、米国の企業の多くが返済に窮してしまう可能性が出てきました。

     CARES法を制定して中小企業に資金繰り支援を2回に分けて6000億超もの対策を講じているトランプ政権ですが、米国企業への利益補償をどこまでやるか?CLOの影響が日本の金融機関への影響を与えるため、今後も米国のマクロ経済の追加対策に注目したいと思っております。

     

    〜関連記事(コロナ騒動と各種金融商品)〜

    WHOのパンデミック宣言が1ヶ月以上も遅れた真の理由(パンデミック債について)

    CoCo債(偶発転換社債)という資金調達手法

     


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