早稲田大学の10万円支援金給付決定と政府の支援だけでは学業を続けることができない事実
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今日は「早稲田大学の10万円支援金給付決定と政府の支援だけでは学業を続けることができない事実」と題して論説します。
下記は時事通信の記事を2つ紹介します。まずは大学生の2割が退学を検討しているという記事です。
『時事通信 2020/04/30 13:34 学生2割、新型コロナで中退検討 影響深刻化―団体調査
学生団体「高等教育無償化プロジェクト」は30日までに、新型コロナウイルスの影響で退学を検討している学生が20.3%に上るとするアンケート結果を発表した。同団体が22日に公表した中間報告の7.8%から大幅に増加。学生を取り巻く経済的な状況がより深刻化していることが浮き彫りとなった。
調査は全国の大学生や短大生、大学院生らが対象。インターネットを通じ、9〜27日までに1200人が回答した。
それによると、自身のアルバイトや親の収入減で退学を「大いに考える」と答えた人は4.8%、「少し考える」は15.5%だった。「辞めることにした」と回答した人も0.2%いた。
アルバイト収入が「ゼロになった」と回答した人は28.5%で、「減った」の39.8%と合わせると7割近くを占めた。親など家計を支える人の収入に何らかの影響があったと答えた人は、53.2%に達した。
オンライン授業に関しては、8.6%が「パソコンがない」と回答。無線通信Wi―Fi(ワイファイ)の環境がない人は10.5%だった。
アンケートでは、「バイトがなくなり、親がタクシー運転手でほぼ仕事がなくなった」「親の収入が減り、私も働けない。学費が払えず借金が膨らむなら退学したい」などの声が寄せられたという。』
次に各大学が独自に学生支援策を決めたとのニュースです。
『時事通信 2020/05/01 14:35 独自の学生支援策、100校超 一律給付、授業料返金―専門家「大学だけでは限界」
新型コロナウイルス感染拡大の影響で困窮する学生のため、独自の経済支援策を講じる大学が4月30日時点で100校超に上ることが1日、時事通信の集計で分かった。オンライン授業の通信環境整備費や生活費補助、学費の一部返金など多岐に及ぶが、専門家は「大学だけの財源では限界がある」と、国の支援を訴えている。
集計によると、オンライン授業に必要なパソコンやタブレット、通信環境などの整備費として全学生に一律で支援する大学が約70校に上る。金額は1万〜5万円が多いが、中には10万円を一律で配る大学もある。
独協大はオンライン授業の負担軽減策として、全学生約8600人に10万円を給付する。同大では5月から始まるオンライン授業に向けた調査で、4割の学生は通信環境が整っていないことが判明。迅速な対応が必要との判断から一律給付を決めた。
広島大では、困窮する学生に3万円を給付。4月28日までに60人程度の申請があり、「当面の食べ物を確保してもらいたい」(同大担当者)として振り込みを始めた。原資は大学の基金を活用するが、不足分を補うため寄付を呼び掛けている。
学費の一部返還を決めた大学もある。京都芸術大は、4〜5月分の施設費の約8割を返金。同大担当者は「学内で創作活動に励む学生に影響が出ており、オンライン授業にも限界がある」と芸術大ならではの苦悩を明かす。
早稲田大では、一律ではないものの生活苦の学生に10万円を給付。慶応大は通信機器を自前で準備できない学生へ1万5000円を補助する。
一方で学費の減額に応じる大学は少ない。一律6万円給付を決めた芝浦工業大の担当者は「大学ではオンライン講義の環境整備などに注力しており、学費の一部も充当されている」と説明する。
桜美林大の小林雅之教授(高等教育論)は「特に私立大の収入源で授業料は大きなパイを占めている」と指摘。「比較的余裕のある大学とそうではない大学で、支援内容に格差が生じてしまう」として、予算措置などを通して国が大学を支援する必要性を強調した。』
私は、この時事通信の記事を見て、ものすごく胸が痛みます。大学生の2割以上の人が、親の収入が減ったなどで退学を考えているとのこと。その割合は20.3%です。学生が経済的に学業を続けることが困難になっている状況が、明白になっているといえるでしょう。
親からの仕送りが減少し、飲食店などは休業で、アルバイトができない状況であり、学生の厳しい状況が定量数字として出てきたもので、私は大変ショッキングなニュースと受け止めています。
日本では高校を卒業した後、働いている人もいますが、大学を出ている人も多く、専門学校を出た人もたくさんいます。いろんな職種がある中で、特定の職種では大学の教育が有用である職種も当然のことながら存在します。
日本が先進国としていろんなものを活動していこうとしたときに、高等教育と呼ばれる大学で授業を受けることで就業ができる職種があります。
もちろんそうした業種だけで世の中が回っているわけではありませんが、その職種に就く予定の金の卵たる大学生が2割辞めるということは、場合によっては、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、いろんな人が支えて創出されている日本の国力において、その職種に就く人が2割減るというのは、とてつもない損害であると私は考えます。
基本的に学生はぜいたくしたくてもできません。安いものを着て、安いものを食べます。例えば75,000円ぐらいの仕送りがあったとして、そこにアルバイト代を足して生計を立て、インスタントラーメンを食べてもなんとかやって生きていけます。
そこまでやって生きて学業を続けることができたはずの日本が、今や2割が大学に行けないという状況に陥っているということについて、深刻に真剣に考えるべきではないでしょうか?
記事では獨協大学、広島大学、京都芸術大学、早稲田大学、慶応大学の資金支援について報じられています。
特に早稲田大学では一律ではないものの生活苦の学生に対して、使途を問わず10万円給付するという支援金給付を決定しました。
早稲田大学によれば、アルバイト収入や保護者からの支援がなくなるなど、経済的な影響を受けている学生に対して、1人当たり10万円を緊急支援金として支給するということで、5月初旬に給付して総額5億円を支出するということ。
この結果、生活苦の早稲田大学生は、国の支給10万円に加え、独自に10万円の給付を受けることになります。
このニュースについて、政府関係者は、この早稲田大学の決定を重く受け止めるべきではないでしょうか?
即ち、今目の前で起きていること、それは政府の支援だけでは学業を続けることができないという事実です。
早稲田大学は私学であって国公立大学ではないため、いわばプライベートカンパニーであって、その早稲田大学が民間組織として、5億円払ってでも大学生に辞めて欲しくないという意思表示の表れでもあります。
ここで学生が辞めてしまえば、早稲田大学の社会貢献が2割かどうかわかりませんが、社会貢献ができなくなるのは確実であると考え、5億円払ってでも苦学生を救済することを決めたということです。
自粛要請は5月末まで続くことになり、東京都は国とは別に1ヶ月延長する予定ですが、一方で共同通信の調査によれば、4割の中小企業が持たないと言われ、日本政府が緊急事態宣言だけ出しておきながら粗利益補償をしないとなれば、4割の中小企業が単純計算で消えてなくなってしまうことになります。
今回の早稲田大学の5億円は、中小企業に払われるわけではありません。日本政府は4割の中小企業がなくなることを惜しいと思わないのでしょうか?日本中の大学生が2割辞めざるを得ない状況について、仕方がないと思っているのでしょうか?
そのくせして中国寄りのWHOには166億円も払っているわけで、仮にも166億円をWHOに払ったとしても、教育国債などで超長期債を発行して政府の負債を増やし、それを財源に苦学生に給付する、あるいは大学生、専門学校生に一律給付する、あるいは企業の粗利益補償をする。これらのやるべき政策をやっていれば、まだ166億円が無駄金になったことは許せます。
早稲田大学は学生が2割辞めることを惜しいと思っていますが、日本政府にとっては4割の中小企業がなくなることの方が、ダメージが大きいのは明白ではないでしょうか?
日本政府は政府の負債を増やしてお金を配る必要があります。早稲田大学に限らず、学生はそんなに大金を配布しなくても生きていける階層ですが、それでも10万円では不足するので早稲田大学は独自に10万円給付を決めました。
中小企業に勤める大人は、家族を抱え、家賃も払ってと考えれば、もっと不足するに決まっているわけで、政府の判断、即ちプライマリーバランス規律を守るという判断によって、「国債増刷」と「政府支出」をチマチマと逐次投入する方法は、早稲田大学の判断よりも間違っているといえるでしょう。中小企業がつぶれてもいいという考え方そのものが間違っていると言えるでしょう。
スピードも遅ければ、政府の負債の増やす真水の経済対策も少なく、それでいて経済規模だけは114兆円でGDPの20%などと、昨日報道されたNHKの日曜討論で、稲田朋美衆議院議員が発言してましたが、これでは全く危機感がないと言われても仕方がないものと思います。
というわけで今日は「早稲田大学の10万円支援金給付決定と政府の支援だけでは学業を続けることができない事実」と題して論説しました。
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- 2020.05.04 Monday
- 日本経済(経済政策)
- 01:27
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- by 杉っ子