センメルヴェイス・イグナーツ反射現象

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     今日は「センメルヴェイス・イグナーツ反射現象」と題して論説します。

     

     表題の”センメルヴェイス”という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

     

     センメルヴェイスというのは、ハンガリー人の人物の名前で、ドイツのウィーン総合病院で従事していた1818年生まれの研修医です。この方は、世界で初めて手洗いの重要性を説いた人なのですが、当時の医学界の医師らが受け入れず、精神病を罹患し、精神病棟に入れられて衛兵に暴行を受けた時に負った傷がもとで亡くなりました。細菌という概念が人類に初めて登場したのは、フランス人の化学者・細菌学者のパス・ツールが細菌論を確立してからです。

     

     コロナウイルス騒動に限らず、インフルエンザやノロウイルスなど、各種で手洗いの重要性を多くの人々が認識していますが、当時は細菌という発想がなかったため、世界で手洗いの重要性を認識していた人は誰もいませんでした。

     

     なぜ手洗いの重要性が広まったか?といえば、ウィーン総合病院での出来事がきっかけです。

     

     19世紀中ごろ、ウィーン総合病院の産婦人科で産褥熱(さんじょくねつ)という病気が多く発生しました。産褥熱という病気は、女性が分娩の際に生じた傷から、ブドウ球菌、大腸菌などの細菌感染が原因で発生します。

     

     ウィーン総合病院の第一産科という診療科は、医師だけでは人手が足らず、第二産科という診療科で助産師も分娩を行っていました。

     

     センメルヴェイスは、助産師が分娩するよりも、医師が分娩した方が母親の産褥熱の死亡率が圧倒的に高く、助産師が分娩した方が産褥熱の死亡率が低いという状況に気付き、調査を行いました。

     

     当時は細菌という概念がなかったため、医師の手から何か悪いものが出ていて、それが産褥熱を引き起こすと考えられていたのです。

     

     あるとき産褥熱で亡くなった妊婦患者を解剖した医師が突然体調を崩して死亡するという事件が発生。死んだ医師の症状が産褥熱と似ていたため、センメルヴェイスは、妊婦患者の遺体に付着していた”粒子”が医師の手に付着し、傷口から侵入したのでは?と仮説を立てました。

     

     そこでセンメルヴェイスは、他の医師に対して、出産の際には塩素水で手を洗うよう勧告し、産褥熱の院内感染率が18.3%→1.3%へと激減しました。

     

     手洗いが感染症の予防になることを確信したセンメルヴェイスは、ウィーンの学会で自説を発表し、センメルヴェイスの下にいた生徒らもまた欧州各地でその説を広めて講義をしました。

     

     ところが当時の医師から、「医師たちの汚れた手こそが病気を広めているのだ!」という学説は、当時の医学界から強い反発を招いてしまったのです。

     

     なぜ当時の医学界は、センメルヴェイス氏の説に猛反発したか?といえば、センメルヴェイス氏の主張を認めた場合、自分たちが原因で産褥熱を発生せしめ、妊婦を殺していたことを認めてしまうからです。

     

     当時の医学界は手洗いの重要性について「医学的な裏付けがない」として、センメルヴェイスの功績を無視したのみならず、彼に対する当たりが次第に激しくなり、センメルヴェイス自身が何を話しても産褥熱の話しかしないほど精神的におかしくなってしまったのです。

     

     その後、先述のフランス人化学者・細菌学者のパス・ツールが細菌論を発表して、センメルヴェイスの主張が正しかったことが証明され、遅ればせながら手洗いを徹底することになった病院では、産褥熱の院内感染の患者が激減。センメルヴェイスの死後、「母親の救世主」と呼ばれたのです。

     

     日本では言論の自由が保障されています。憲法第21条において、表現の自由・言論の自由・報道の自由を認めています。

     

     それはたとえその言説が、いかに日本を貶めようとも、ウソつきの言説であったとしても、善人を傷つける言説であったとしても、理論的に間違っていた言説であったとしても、日本国民を分断する言説であったとしても、認められています。

     

     北朝鮮では、金体制に都合の悪い言説・論説を発する人がいれば、間違いなく強制収容所に入れられて拷問を受けたり、死刑になるでしょう。

     

     中国では、中国共産党政権に都合の悪い言説・論説を発する人がいれば、まず言論統制でインターネットで人目に触れなくさせ、情報を発している人を捜索して逮捕すれば、北朝鮮と同じように強制収容所に入れられてひどい拷問を受けるなどして、最悪は死に至ってしまうことでしょう。

     

     日本では、「国の借金で日本は財政破綻する(実際は日本が財政破綻することはない)」とか、「2重行政で無駄を削減する(実際は2重行政と関係ないか、もしくは必要あって2重行政もしくは余裕を持たせている)」といった、一見当たっていそうな言論がまかり通り、正しい政策が打たれずにデフレを促進させて日本を破壊し続けてきました。

     

     こうした言説を賞賛する人らに共通するのは、まさにセンメルヴェイスの手洗いの重要性を理解できなかった医師と共通するのではないでしょうか?

     

     即ち、自分が今まで信じていた言説、正しいと思っていた言説、それらの言説が間違っていたということを認めたくないというセンメルヴェイスに反論した医師らと私は同じであると思います。

     

     実際に経済学者、国会議員、アナリストらが、「財政出動=借金が増える=財政破綻する」という図式で財政破綻を煽り、20年以上経済成長できずに年を重ねました。

     

     「消費増税は絶対に必要だ!」と考える人も、スペンディング・ファーストやMMT理論を認めたがらないのも同じです。

     

     かつて天動説、地動説を巡り、天動説を主張したガリレオが迫害を受けたという歴史もあります。

     

     人々は正しい理論で人々を幸せにする理論が存在していたとしても、あるいは急に目の前に出てきたとしても、従前からの持論と真な言説は、なかなか受け入れがたいものです。

     

     コロナウイルス騒動の最中、吉村大阪府知事がマスコミによく登場し、ソファで愛犬と戯れる安倍首相と比べて、作業服姿で連日頑張っている様子が報じられていて、安倍首相をネガティブ、吉村大阪府知事をポジティブに比較して報じています。

     

     しかしながら吉村大阪府地位は「維新の会」出身であり、大阪市民の生命や健康を支える保健所職員数で、大阪が全国ワースト1位になった事実をマスメディアは報じません。

     

     

     

     大阪府職員労働組合は、国民の生命を守るためには、公衆衛生や医療の最前線で戦う専門的知識・経験を持った職員が大切であるとの声明を出しましたが、実際は大阪府は「構造改革」の名の下、身を切る改革のもと、病床数、保健師数を削減しまくってきたわけですが、その主体は何を隠そう「維新の会(大阪維新の会)」がやってきたことです。

     

     それでも橋下徹氏や吉村府知事の発言をポジティブに取られ、救世主のような報じ方をするのは、私にはものすごい違和感があります。

     

     そして、こうした維新の会をポジティブに受け止める人々もまた、センメルヴェイスに反論した医学会の医師と同じ思考回路なのでは?と私は思います。

     

     

     というわけで今日は「センメルヴェイス・イグナーツ反射現象」と題して論説しました。

     

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