ベーシックインカムは人々を幸せにしない

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     今日は「ベーシックインカムは人々を幸せにしない」と題して論説します。

     

     一見、もっともらしく正しそうな解決策に聞こえる政策というのが世の中にはいろいろとあります。

     

     私はベーシックインカムも、その一つであると思っております。

     

     衆議院議員の安藤裕氏と語る会に出席した際、参加者の一人がベーシックインカムについて意見していて、日本でも導入すべきであるとポジティブな論説を述べていましたが、安藤先生は、ベーシックインカムに対しては否定的でした。

     

     当時、私はベーシックインカムについて賛成でも反対でもどちらでもなかったのですが、今は反対の立場です。

     

     ベーシックインカムの思想は、競争社会を推進するにあたって敗者に対して最低限の生活保障水準を・・・ということで考案されました。大阪維新の会(現 維新の会)の橋本徹氏が、「維新八策」の中で原案を入れたのですが、考え方のベースは、負の所得税という考え方です。

     

     所得税を納めるのは普通ですが、所得が少ない低所得者層は税金を納めず、一定の現金を受け取り、年金と生活保護と失業対策の一本化につながるというアイデアも包含されています。

     

     ベーシックインカム制度の導入を盛り込む当たって、仮に月額7万円を全国民に支給した場合、財源をどこから捻出するのか?という批判があったのですが、そもそもベーシックインカムをポジティブに考える人の頭の中には、財政には予算制約があるものと考えているはずです。

     

     なぜならば、ベーシックインカムを導入すれば、年金、生活保護、失業手当、医療負担、政府の社会保障支出をゼロにできるからです。例えば毎月7万円を配る代わりにセーフティネットを消滅させるというのが、ベーシックインカムの概要です。

     

     いわばゼロサムゲームとなっていて、本来国家の財政運営は、予算制約がないので、ベーシックインカムと引き換えに社会保障を失くすというわけですが、ゼロサムゲームの思想を取り入れる発想は、国家の財政運営に対して、ミクロ経済の予算制約を当てはめて考えていることにほかなりません。

     

     また全国民に7万円配るわけではなく、所得が少なく貧乏で生きられない人々に対してのみ、負の所得税として支払われるというのも発想の特徴といえるでしょう。

     

     この発想、もともと1976年にノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマンの小さな政府を目指すとする考え方に同調して出てきたものとも推察できるのですが、ミルトン・フリードマンの「小さな政府」の発想には、決定的な間違いがあります。

     

     僭越ですが、私はもともとミルトン・フリードマンへの評価は低いです。なぜならば彼が主張する小さな政府という考え方について、無駄削減や効率を高めるという発想が常に正しいとは限らないからです。

     

     無駄削減とやって自治体を合併させ、病院を合併させた結果、コロナ騒動で病床数が不足してしまったなど、いろんな弊害があります。

     

     公部門というのは、平時では無駄であっても、非常時ではその無駄が余裕のキャパシティということで活躍するので、無駄削減が常に正しいとは限らないのです。

     

     ミルトン・フリードマンは、政府が医療費を負担したり、年金を支払ったり、生活保護の支払いといった業務を行うのは非効率であり、民間に委ねれば効率化されて無駄が削減できるというもの。この発想こそ、橋下徹ら維新の会の発想と似ていませんでしょうか?

     

     ベーシックインカムを推進すべきという人は、社会保障費を削減するべきであるという考え方が、根幹にあります。

     

     低所得者層は受け取るベーシックインカムで日常生活のみならず、医療・介護、将来の補償を賄い、政府は一切それ以上面倒を見ることをしません。

     

     事故による負傷や、コロナウイルスで重症化したとしても、自己責任でベーシックインカムの中で対応してください!ということになります。

     

     またベーシックインカムが負の消費税と呼ばれるのは、ベーシックインカムをもらう側は、所得税を払うことなく、高額所得者からもらう形になることからそう呼ばれています。

     

     ベーシックインカムをポジティブに唱える人の中に、上述のデメリットを話す人を私は聞いたことがありません。

     

     しかもマクロ経済的に見れば、極端な話、ベーシックインカムを導入したうえで社会保障を温存するという考え方があっても、間違っていません。

     

     ただベーシックインカムは、お金をもらうだけであるため、供給力強化につながりません。もらう側は仕事をしなくてもお金がもらえるということは、財・サービスを生産しないということでもあるため、彼らにそのノウハウや技術が継承しないという意味で、国力の強化にならないのです。

     

     ジョン・メイナード・ケインズは、所得・雇用を生み出すことについて、無駄であっても、例えば道路を掘って埋めるとか、エジプトのピラミッドが何のために作られたか?英国のストーンヘンジも同様で、一見無駄と思えても、道路を掘って埋めるとなれば、雇用と所得を生み出すとし、有効需要を創出できると説いています。

     

     私はジョン・メイナード・ケインズこそ、江戸時代に新井白石と争った荻原茂秀(おぎわらしげひで)らと同様に、マクロ経済とお金の関係を理解する経済学者と認識しておりまして、道路を掘って埋める事業であれば道路の掘削、ピラミッド・ストーンヘンジ製造であれば石の加工技術といったノウハウ・技術が蓄積されるという国力の強化につながるというメリットも大きいと考えております。

     

     以上のことから、ただお金を負の所得税で払うことは国力強化(供給力強化)につながらず、ましてや社会保障の削減を目的とするならば、私はベーシックインカムに対して反対いたします。

     

     

     というわけで今日は「ベーシックインカムは人々を幸せにしない」と題して論説しました。


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