”戦後レジームからの脱却”を真剣に考えていない安倍首相
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安倍首相は、口では「戦後レジームからの脱却」などと、自分こそが保守の主流派であるような主張し、多くの日本国民もまた安倍首相のそうした発言に対して、賛同される人は多いと思います。
しかしながら安倍首相が主張する「戦後レジームからの脱却」は、少なくても安倍首相の発言と行動を見る限りにおいては矛盾があります。その矛盾についてTPPと自衛隊の2つを取り上げ、「”戦後レジームからの脱却”を真剣に考えていない安倍首相」と題して、
1.TPPについて
2.平和安全法制と憲法9条2項を残しての加憲論が絶対的に認められない理由
3.憲法9条2項を残せば誤射・誤爆した自衛隊員は軍法ではなく一般法の刑法で裁かれてしまう
4.軍法ではなく一般法で裁かれた実例(イージス艦”あたご”の漁船衝突事件)
上記の順で論説します。
1.TPPについて
自民党はTPPに反対してきたのですが、第2次安倍政権発足後、2013年3月に安倍総理は、TPPの交渉参加を表明し、2017年に米国が離脱後もTPP協定の参加を続けました。
私はTPPには反対の立場で過去に記事も書いてきていますが、理由は憲法の上に国際法であるTPPが上に来るため、国家主権が制限されるというのがその理由です。
英国がなぜEUを離脱したのか?といえば、英国という国家主権の上にEUが存在し、自国の運営を自分でドライブできなくなることに、英国国民が気付いたからです。
同じようにTPPも国家主権を譲るため、日本国家が日本の国民経済をドライブできなくしてしまいます。戦後レジームからの脱却が主権を取り戻すということが目的にあるとするならば、TPPに加盟するのは矛盾しています。
また食料安全保障強化すべき日本が、日米FTAでトランプ政権に言われるがままに農産物の関税を引き下げてしまうことは、米国への従属そのものであり、戦後レジームからの脱却と大きく矛盾すると私は思います。
2.平和安全法制と憲法9条2項を残しての加憲論が絶対的に認められない理由
平和安全法制とは、2016年3月29日に施工されたもので、集団的自衛権のことです。
集団的自衛権という言葉は、皆さんもどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?
これはもともと米国側から日本に対して求めてきたもので、具体的には米国と日本の自衛隊が共同で動いていて、もし米軍が攻撃されたら、集団的自衛権によって、日本の自衛隊が攻撃できるというものです。
この集団的自衛権に対して安倍首相は、解釈改憲という考えを示し、米国が求める集団的自衛権について応諾しました。しかしながら、解釈改憲というやり方ですと、何でもありということになって、いろんなことが”なし崩し”になってしまうものと私は危惧します。
本来であれば解釈改憲ではなく、集団的自衛権もできない憲法だったら、その憲法自体を変えるべきと主張するべきだったのではないでしょうか?
解釈改憲でよいということになれば、「今の憲法で、○○解釈すればいいじゃん!何でもいいじゃん!」という話になってしまうわけで、実際にそうした空気が蔓延しました。
そして「何でもいいじゃん!」という話を助長するかのように、2017/05/03に安倍首相は加憲論という方法を提起してきたのです。
安倍首相の加憲論では、9条2項を残しつつ国際法上で認められている自衛力として3項を加えて自衛力を認めるため、2項が残ることで限定的になるものの、集団的自衛権行使は一応可能となり、自衛隊違憲論はなくなります。
通常、国際ルールとして国連憲章などで表向きは、他国を侵略する軍隊は無いことになっていますが、自衛力は認められています。
ところが加憲論で改正した場合、9条2項で自衛力がないと言っておきながら、9条3項で自衛力があるという話になり、国際的に意味不明な憲法になってしまうのです。
安倍首相とは対照的に自民党の石破茂氏は、9条2項を削除して国防軍を創設するという案を出しました。石破氏の案の場合、集団的自衛権行使は憲法上制約がなくなり、普通の軍隊になります。
私は、石破氏の案こそ、本来の姿であると思います。
3.憲法9条2項を残せば誤射・誤爆した自衛隊員は軍法ではなく一般法の刑法で裁かれてしまう
憲法9条2項が存続する場合、自衛隊は自衛軍ではなく、日本は他国と戦うことができません。他国と戦うことができないということは、米国にすり寄り、頼るしかなくなります。
この場合、経済的にも国力的にも米国と対等に戦うことができず、日本は対米国との比較で落ちぶれていくことは必須です。
なぜならば交渉ができなくなるからです。
事実、日米FTAでは何もできず、通商政策で食糧安全保障弱体化が進み、農家に大きな打撃を与えました。
このように交渉ができずどうしようもないから9条2項を削除するという話であるにもかかわらず、その9条2項を残すのは最悪としか言いようがありません。
なぜならば自衛隊は軍ではないため、軍法によって支えられていません。軍法とは軍事オペレーション時の適法解放か?を決める法律になります。
そして憲法第76条2項では特別裁判所の設置を禁止しています。特別裁判所というのは軍法裁判所を指すのですが、仮に交戦があった場合、それが本当に正しい交戦だったのか?虐殺だったのか?を決めるための軍法というのがあり、軍事裁判所(=軍法会議)でその行為を裁きます。
ところが日本には軍法裁判所がないため、帝国で民間人を誤射・誤爆してしまった場合、責任は指揮系統の上官ではなく、それを撃ってしまった個々の自衛官が責任を負うことになります。
その状況で果たして個人が交戦すること、具体的には銃を撃つことが可能でしょうか?
よくよく考えていただきたいのですが、他国、例えば中国軍を想定した場合、迷彩服を着ていれば明らかに軍人と分かります。
しかしながら民間服を着た中国人がいる可能性も十分に想定できます。
例えば私こと杉っ子が自衛隊員だったとして、民間服を着た中国人を軍人だと思って撃った瞬間、その結果責任は私が負うことになります。
その責任をどうやってとるか?と言いますと、軍事裁判所がない日本では、一般法で裁かれます。
その結果、間違って誤射と判定されれば殺人罪になってしまうのです。
4.軍法ではなく一般法で裁かれた実例(イージス艦”あたご”の漁船衝突事件)
今から12年ほど前の2008/02/19、海上自衛隊のイージス艦”あたご”が、千葉県南房総市の野島崎沖の太平洋で、清徳丸という漁船と衝突したという事件がありました。
この事件で横浜地方検察庁は、水雷長と航海長の2人を業務上過失致死罪で横浜地方裁判所に起訴し、2人はその後、起訴休職扱いとなりました。
結果は1審は無罪となったものの、横浜地検が控訴して高裁までもつれ込みました。
東京高裁でも検察側の控訴は棄却され、2人は無罪となって復職することができましたが、この事故ではっきりとわかるのは、水雷長や航海長といった現場で判断した人が訴えられ、2人の上官は全く罪に問われなかったのです。
これは事故当時の当事者の過失云々や上官がどう関わったか?に関係なく、軍法裁判所がないために、軍法で裁かれず一般法で裁かれるため、そのような結果になるのです。
仮にイラクで何か誤射・誤爆があった場合、当事者は日本に戻って裁判を受けることになり、一般法で殺人罪や業務上過失致傷・過失致死などで訴えられることになるでしょう。
憲法9条2項が問題なのは、まさにそこです。
自衛隊員が手足を縛られて海外に出なければいけないという無茶苦茶な状況であるから、9条2項を削除しなければならないのですが、それを残したまま3項を加憲するというのは、全く容認できない話です。
というわけで今日は「”戦後レジームからの脱却”を真剣に考えていない安倍首相」と題して論説しました。
安倍首相が主張する”戦後レジームからの脱却”とは、いったい何からの脱却なのでしょうか?加憲論を出してくること自体、あまりにも問題の本質を知らなすぎとしか言いようがありません。
戦後レジームからの脱却が、米国に影響されずに日本国民の判断で日本国民が国家を運営することができるようになることを指しているとするならば、9条2項を残すことは絶対にあり得ないはずです。
仮にも米軍に譲ることがあって、国家が主体的に譲ることはあり得ても、自衛力を持たない今の日本は主体性が全くありません。安倍首相は口ではカッコいいことを勇ましく言いながら、実際は中身が空っぽというのが、経済政策でも多いですが、安全保障政策においても、安倍首相が主張する”戦後レジームからの脱却”というのは、私には欺瞞以外の何物でもないと思うのです。
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- 2020.03.01 Sunday
- 日本経済(防衛安全保障)
- 10:19
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- by 杉っ子