赤字国債を発行して地方交付税を交付しないので浅ましく頑張らざるを得ない地方自治体のふるさと納税
JUGEMテーマ:年金/財政
JUGEMテーマ:行政
JUGEMテーマ:ふるさと納税
今日は「赤字国債を発行して地方交付税を交付しないので浅ましく頑張らざるを得ない地方自治体のふるさと納税」と題して論説します。
下記は日本経済新聞の記事です。
『日本経済新聞 2019/10/24 朝刊 ふるさと納税使い切れず 除外4市町、基金急増
泉佐野市、18年度残高2.7倍 制度改革も課題残る
ふるさと納税で多額の寄付を集めた自治体で、貯金にあたる基金が増えている。過度な返礼品を理由に制度から除外された4市町は特に顕著で、大阪府泉佐野市の2018年度末の残高は1年前の2.7倍の287億円に急増した。財政規模に照らして巨額の寄付を使い切れていない現状が浮き彫りになった。
静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町を合わせた4市町は過度な返礼品で18年度に著しく多額の寄付を集め、6月に始まったふるさと納税の新制度の対象外となった。18年度の寄付額で全国1〜4位を占め、合計額は1112億円と全国の2割強にあたる。
18年度末の基金の残高は小山町が4.4倍の106億円、高野町は4.6倍の85億円、みやき町は3割増の139億円となった。4市町がそれぞれ9月の議会で18年度決算の状況を説明した。
各自治体は用途別に基金を作っている。泉佐野市で特に大きく増えた「公共施設整備基金」は4倍の163億円に膨らんだ。同市の条例によると「公共施設の整備」を目的に設置した基金だが、担当者は「実際はほかの用途にも充てている。予想以上の寄付をいただき、ひとまず既存の基金に積み立てることにした」と説明する。
4市町は寄付の増加で財政規模も1年間で急拡大した。18年度の歳入は泉佐野市が8割増の1330億円、小山町が2.7倍の366億円、高野町は5.9倍の232億円、みやき町は6割増の439億円となった。
過去の公共事業による債務が大きかった泉佐野市は12年度まで地方財政健全化法に基づき「破綻懸念」の自治体に分類されていた。18年度はふるさと納税の収入もあって平均的な市町村とさほど変わらない程度まで財政指標が改善している。
基金の急増や財政規模の膨張は4市町に限らない。総務省が5月に4市町の除外を決めた際に「適切な方法で最も多くの寄付を集めた」と太鼓判を押した北海道根室市。18年度末の基金残高は60億円と3割増えた。担当者は「使い切れない金額が集まった」と認める。(後略)』
上記日本経済新聞の記事は、4つの市と町で、ふるさと納税の寄付が集まりすぎて基金が増えてしまったという記事です。
地方自治体で基金が増えすぎるということはどういうことか?といえば、地方自治体で内部留保が増えているということです。
政府は通貨発行権がありますが、地方自治体は、都道府県はもちろんですが、市町村または特別区もまた通貨発行権を持ちません。
具体的にいえば、日本政府は国債を発行していくらでも予算を配分することが可能ですが、地方自治体にはそれができないということです。
京都大学の客員教授で元内閣官房参与の藤井聡氏によれば、日本の財務省は基金化することを極端に嫌うそうです。理由は歳出として財布から出したものは、年度内中に使って貯金してはいけない!という発想であるとのこと。そもそも基金がダメで、貯金するくらいならおカネは出さないそうです。
かつては基金は普通でした。
例えば補正予算をドーンっと出して、基本的に全部使おうとするのですが、うまく使えず、不合理な使い方になるとすれば、基金にしておいて次の年に考えて使おうという柔軟性がありました。
基金があるということ自体、別に悪いことではありません。しかもふるさと納税で集まった寄付は、予算請求したものではなく、もらったものであるため、それを合理的に基金として積み上げるのは、ある意味合理的であるといえます。
だいたい日本政府の対応の方がオカシイです。
普通に地方交付税交付金を配布し、その財源として赤字国債を発行すればいいだけの話なのに、赤字国債がイヤだから、寄付金を募らせて国債発行額を減らそうというセコさが丸見えです。
地方創生と称して、限られたパイの奪い合いを地方自治体にやらせる。となれば、通貨発行権を持たない地方自治体は、破綻懸念自治体にならないよう生き残りのため、過度の返戻品を使うなど浅ましく寄付金を募ろうと頑張るに決まっています。
しかしながらこれは、財務省が緊縮財政をやっているから、地方自治体は浅ましく頑張らざるを得ないことになっているだけです。
総務省は、4つの自治体に対して、ふるさと納税から除外したりもしていますが、そもそも財務省の緊縮財政の姿勢こそ、批判されるべきではないでしょうか?
というわけで今日は「赤字国債を発行して地方交付税を交付しないので浅ましく頑張らざるを得ない地方自治体のふるさと納税」と題して論説しました。
MMT理論でいえば、日本政府は通貨発行権を持ちますので、例えば国債を10兆円発行して政府支出を行い、地方自治体に10兆円分配したとして、地方自治体が8兆円使って、2兆円を基金に積み立てたとして、税の徴収を一切しないとなれば、政府は10兆円赤字となり、民間は8兆円の黒字になります。いま日本はデフレですから、赤字国債を発行して地方交付税交付金を配布して、地方自治体がお金を使えば、少なくても赤字国債発行分から徴税しなかった分だけ、政府は赤字となり、国民は黒字になって潤うことになります。
地方創生といいながら地方自治体同士で競争して競わせ、負けたら自己責任などというのは、EUに似ています。地方でそもそもインフラ格差が拡大しているのに、インフラ格差がついたまま競争させれば、財政が苦しい自治体はより疲弊することになるでしょう。だからといって過度な返品で浅ましく寄付金を募るという状況自体、アホらしい限りであると私は思うのです。
- 2019.11.08 Friday
- 日本経済(地方創生)
- 00:09
- comments(0)
- -
- by 杉っ子