利根川・荒川を守った防災インフラを東北地方にもやるべきです!
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東日本と東北に甚大な被害をもたらした台風19号は、その後も大雨が降るなどで各地で洪水、土砂崩れ、堤防決壊となりました。その一方で東京都内は多摩川は決壊しましたが、利根川と荒川は堤防決壊寸前までのところ、ぎりぎり決壊せず、大惨事を免れました。そこで今日は「利根川・荒川を守った防災インフラを東北地方にもやるべきです!」と題し、下記の順で論説します。
1.台風19号による日本列島の治水能力のストレスチェック?
2.荒川区の広域避難計画は”絵に描いた餅”だった?
3.防災インフラにお金を使えば使うほど治水できる
1.台風19号による日本列島の治水能力のストレスチェック?
下記は日本経済新聞社の記事を引用したものですが、台風19号で決壊した河川と、その決壊地点をマーキングしたものです。
<東北地方における台風19号による決壊箇所>
(出典:日本経済新聞)
上記の地図を見てみますと、どこが決壊したか?東北は決壊地点だらけとなる一方、南関東の都心部はゼロで全く決壊していません。
しかも雨が降った量は都心部の方が相当降っています。日本列島を北上するにしたがって、普通は東北に行くと台風の勢いは弱まるのでは?と思いきや、東北地方の各地で堤防決壊してしまいました。
まるで台風19号がリアルな治水能力のストレスチェックを行っているかのようで、都心部でなぜ被害が少なかったのか?治水事業の効果が絶大であったことを、日本のマスコミは大きく報じるべきです。
2.荒川区の広域避難計画は”絵に描いた餅”だった?
にもかかわらず、「ハードでは限界がある!」などと眠い話をする有識者とかなんとかやら!そいつらはアホとしか言いようがありません。
「ハードでは限界」というのは防波堤・防潮堤、堤防設置では限界があると言いたいのでしょうけど、どこの何が限界なのでしょうか?日本には財政問題が存在しませんので、普通に4条公債(建設国債)を発行して、治水事業への投資額を増やせばいいだけの話です。治水事業の投資拡大の制約でお金は問題になりません。何しろ通貨発行権を持つ政府が建設国債を発行すればいいだけの話。何ら限界でも何でもありません。
ハードでは限界と考える人の浅はかな発想だと思うのですが、台風19号が接近したとき、東京都の5区(墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区)で、2019年8月に広域避難計画を発表し、初めてその計画された避難の検討作業に入っていたことが分かりました。
ただ鉄道各社の計画運休を受けて実施は見送ったとのこと。広域避難計画では中心気圧が930ヘクトパスカル以下の台風直撃、荒川流域の3日間の雨量が400ミリを超える恐れがあるときなど、水没が予想されるエリア5区で共同避難を呼びかけることが検討されていました。
今回の台風19号では、東京に来たときの中心気圧は950ヘクトパスカル、雨量も3日間で400ミリまで行かなかったものの、ギリギリでした。
広域避難計画を立てて、最大250万人の近隣県へ避難を促していくというのは現実的にはどうでしょうか?そもそも大きな台風が来る場合、JRや私鉄各社は運転を間引いたり、運休したりします。そんな状況でどうやって逃げるのでしょうか?
鉄道が止まれば、自家用車となるかもしれませんが、車ですと橋を渡るときに大渋滞となることが予想され、大渋滞のまま橋が流されるという最悪のケースを迎える可能性もあったため、広域避難の呼びかけをしなかったともいわれています。
要するに広域避難計画を策定してみたものの、事前のイメージが十分にできていなかったということに他なりません。
結局のところ、今回400ミリを超える可能性はあったかもしれないですし、930ミリヘクトパスカルで直撃する可能性もあったわけですが、実際に検討をし始めたら、鉄道各社が運転間引き・運休することになったために実施できず、”絵に描いた餅”だったというわけです。
3.防災インフラにお金を使えば使うほど治水できる
ハードの対照的な語彙として、”絵に描いた餅”の対策もどきをソフト対策とするならば、ハード対策は圧倒的に効果があったと言えます。
例えば東京都心は八ッ場ダムが作られ、荒川も調整池がありました。土木学会の試算によれば、ハード対策とされる治水事業の主な防災インフラの効果は下記の通り。
利根川の貯水
・八ッ場ダム(10月1日に運用開始)に7500万立米
・渡良瀬川遊水地で1.6億立米等
⇒費用は約0.6兆円だが、決壊していれば、数兆円の大被害
荒川の貯水
・荒川第一調節池で3500万立米
⇒費用は約0.13兆円だが、決壊していれば、62兆円規模の大被害
上記の治水事業により、実際に水を貯めていたからこそ、下流側に水が流れず決壊を防ぐことができました。
実際にその水を貯めていたとはいえ、利根川も荒川も危険水域を超えていた地点は何か所かありました。ということは7500万立米、1.6億立米、3500万立米の水がそのまま下流側に流れていたら、水位が高くなって大なる可能性で決壊を起こしていた可能性が高かったでしょう。
そのような事例は、例えば南関東で狩野川台風というのがあります。伊豆半島に狩野川という川が清水市、沼津市を通っていますが、2019/11/01付記事「役に立った公共事業がニュースに報じられることは、ほとんどありません」でも取り上げた通り、狩野川は、樋管改築工事や護岸整備工事で放水路を作ったことで、水を上流で抜くようにしました。
その結果、狩野川台風のときよりも今回の台風19号の方が降雨量が多かったにもかかわらず、全く決壊しませんでした。
結局、治水事業はお金をかければかけるほど、治水ができるということであり、「ハード対策には限界ガー・・・!」とか言っているヤツは、”何も知らないアホ”か、カネカネカネの財政危機を煽る”知ったかさん”か、そのいずれかだろうと私は思います。
60年前の1958年9月27日に発生した狩野川台風では大惨事となりましたが、今回の台風19号では治水事業にお金をかけたからこそ、大丈夫だったと言えると思うのです。
というわけで今日は「利根川・荒川を守った防災インフラを東北地方にもやるべきです!」と題して論説しました。
日本の治水事業への投資は、小泉政権の時に財務省の査定方針が変わり、とにかく前年比で数パーセント削減するという方針になりました。査定もせず、何も考えず削減するとなったのは、小泉政権の時からです。
何しろ小泉政権は7000億円ずつ公共事業を削減しました。この7000億円ずつというのは、子ども手当の財源のために民主党政権がやった事業仕分けとほぼ同じ額です。
民主党政権のときは「コンクリートから人へ!」で、削減したお金を子ども手当でお金での分配をしました。治水事業をやらずお金をもらっても、千曲川で治水をやらず、吉田川でも治水をやらず、人が死んでしまうこうした状況を見てもまだ「コンクリートから人へ!」は間違っていた!と謝罪しない国会議員らと同様に、小泉政権もまたダメダメな政権であったと私は思うのです。
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- 2019.11.07 Thursday
- 日本経済(公共事業)
- 02:59
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- by 杉っ子