医療介護問題は、お金の問題ではなく、供給能力の問題です!

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     今日は「医療介護問題は、お金の問題ではなく、供給能力の問題です!」と題して論説します。

     

     私は過去4回の入院経験があります。

     

     1回目は2002年2月に腸閉塞にり患し、2週間ほど東京都内の病院で入院しました。2回目は2019年6月に頸椎部神経根症という神経疼痛で3週間ほど福島県内の病院で入院。退院直後、会社の健康診断で、神経痛の薬が原因と思われる十二指腸潰瘍で、2019年7月に2週間ほど福島県内の別の病院で入院しました。その後、2013年5月に、ミャンマーのヤンゴン視察で、最終日に対象を崩し、急性胃腸炎でタイのバンコク市内の病院に4日間入院しました。

     

     日本にいるときは健康保険が使えますが、タイで入院したときは海外旅行保険を使いました。

     

     日本で治療を受けた場合、健康保険に加入しているので月額で最高8万円までの負担となりますが、海外ではそうした制度はありません。例えばフィリピンでも健康保険制度はあるものの、約5%しか健康保険で補填されず、9割以上は自己負担となります。そのため、安心して病院に行くことができないそうです。

     

     そういう意味で、日本の健康保険は、本当にありがたい制度であり、病気になったり、ケガをしたりすると、そのありがたさが実感できます。

     

     仮にも、この制度を変えようとしている勢力があるとするならば、私は異を唱えます。

     

     例えば米国では、民間の医療保険会社が、我が物顔でビジネスをしています。その米国の民間の医療保険会社が日本に参入したいと思っても、日本では国民皆保険があるので、参入することはできません。

     

     ところが緊縮財政で、医療保険の自己負担を引き上げたり、新しい治療や医薬品が開発されても、財政破綻するからという理由で保険適用しないということをやっています。

     

     財務省の緊縮財政によって、すべての国民に便益がある治療方法や素晴らしい効能がある医薬品が開発されたとしても、保険適用をしないようにすれば、財務省の大好きなカネカネカネの出費が止まる代わりに、多くの国民が損をします。

     

     その考えに、米国の民間の保険会社が乗っかってくることもあり得るでしょう。

     

     もし緊縮財政が大好きな財務省が、新しい治療、医薬品について、一切保険適用しないとなれば、次の新しい治療、医薬品が出てきても、自由診療となります。そうなれば、いくら治療費がかかるかわからないため、「それならば当社の医療保険に加入してはいかがでしょうか?」となります。

     

     医療保険に加入できる人は、それでもかまわないかもしれませんが、医療保険に加入できない人は、治療が受けられないということになります。

     

     この医療費の問題について、MMT理論でいえば、日本、米国、カナダ、英国、オーストラリア、中国といった自国通貨建ての国債を発行できる国は、予算制約がありません。お金など、印刷すればいくらでも発行できます。

     

     ただし別の制約は存在します。

     

     MMT理論を米国議会で知らしめたオカシオ・コルテス氏、あるいはバーニー・サンダース氏ら、米国でも日本のように国民皆保険を導入すべきであるとしています。なぜならば金持ちしか歯医者や医者にかかれないというのは、先進国ではないということだからです。

     

     先進国とは、国民の需要に対して、国家が供給を満たしているものが、発展途上国と比べて割合が高いからこそ、先進国なのです。

     

     だから金持ちしか医者の治療を受けられないというのは、先進国じゃないでしょ?という話です。

     

     ということで、国民皆保険を米国で導入したとして、MMT理論で財源問題は解決するでしょう。

     

     しかしながら、重要な話はお金の問題ではないことに気付きませんでしょうか?

     

     確かにMMT理論があれば、財源は国債発行すればいいのは事実です。

     

     そのため、米国政府が国債を発行したとして、国民皆保険を導入し、金持ち以外の米国の国民も、みんな安心して病院に行けるようになったとしましょう。

     

     果たしてそのとき、病院の医者の数、ベッド数、看護師の数や病院そのものの数は、ちゃんと足りているのでしょうか?

     

     米国政府が国債を発行して財源を確保して、国内で国民皆保険を導入したとして、医療サービスの需要が一気に拡大したときに、果たしてその需要を満たしうるだけの供給力は足りているのでしょうか?

     

     つまりこれが制約です。

     

     私が日本国内で過去3回入院して病気を治すことができたのは、供給力が足りていたからであって、そもそも近くに病院がないとか、病院のベッド数が不足して満員で入院ができないとなれば、どれだけ私がお金を持っていようとも、医療保険に加入していたとしても、入院して治療を受けることができません。

     

     ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授によれば、日本も米国も社会保障の問題はお金の問題ではなく、供給力の問題であるとしています。

     

     具体的には病院が確保できるのか?ベッドが確保できるのか?医師や看護師は自国で供給できるのか?ということで、東日本大震災の時、コンビニでアルバイトしていた韓国人、中国人などの外国人が、一斉に日本から逃げていきましたが、医師や看護師を外国人で雇っていると、いざという時に逃げられる可能性があります。

     

     ところが今、厚労省はインセンティブを付けて、病院を統合してベッド数を減らそうとしています。

     

     下記は日本経済新聞の記事です。

    『日本経済新聞 2019/10/27 11:00 厚労省の公立病院再編リスト 地域の理解進まず

     厚生労働省が9月に公表した「再編統合が必要な公立・公的病院」リストが、全国に波紋を広げている。同省は多くの公立病院の「診療実績が少なく医療財政を圧迫している」と問題視するが、自治体などは「地域の実情を考慮していない」と反発している。人口減少時代に適応した地域医療体制が求められる中、両者の隔たりは大きい。

     「本当だったらリストを返上してもらいたい」。10月4日、厚労省が公表したリストについて国と地方が協議した会合で、鳥取県の平井伸治知事は国の姿勢を批判した。同省は17日から各地で関係者向けの説明会を開き、理解を求めている。

     厚労省が「再編統合について特に議論が必要」として、9月に公表した公立病院と日本赤十字などの公的病院の数は424。各地で協議したうえ、2020年9月末までに統合や縮小などの方針を決めるよう求めている。

     高齢人口の増大に伴い、同省は手厚い医療体制で診療報酬が高い急性期病床を減らし、リハビリテーション向けの回復期や長期入院の慢性期病棟主体に移行させる方針だ。急性期の病床に回復期の患者を受け入れるなど、非効率な運営を是正する狙いがある。今回のリストはこうした改革を進めるために公表された。

     だが、公立病院を経営する自治体の多くは反発を強めている。県内の5病院がリストに挙げられた富山県の石井隆一知事は10月1日の記者会見で「(事前の情報提供もなく)乱暴なやり方。形式的な物差しに当てはめるのはいかがなものか」と語気を強めた。

     和歌山県の仁坂吉伸知事も同日の記者会見で「厚労省はやり過ぎだ。余計なお世話だと思う」と発言。佐賀県の山口祥義知事は「数合わせのような感じで上から数字的にやっていく進め方はどうか」と疑問を投げかけた。

     リストに挙がった公立病院がある鳥取県の岩美、南部、日南の3町長は1日、県に要望書を提出し、強制的な調整を行わないよう国に働きかけることを求めた。要望書では「拙速で安易な再編・統合は、今日まで積み上げてきた地域医療の崩壊につながる恐れがある」と強い調子で国を批判した。

     岩美町の西垣英彦町長は取材に対し「なぜ公立病院だけなのか。地域の実情を踏まえた地域医療構想を進めてほしい」と話した。

     名前が挙がった病院関係者は戸惑いを隠せない。東京都奥多摩町の国民健康保険・奥多摩病院では「確かにがんなどの高度な手術はしていないが、手術の際は他の病院を紹介し、一定程度回復したら当院に入院してもらっている。一番近い病院は車で30〜40分かかる。再編・統合しろと言われても現実的ではなく、困惑している」と話す。

     急性期病棟の稼働率が低いとされた北海道滝上町の国民健康保険病院は、18年度の赤字額が2億円と町財政を圧迫している。同町は経営のあり方をめぐり検討委員会を設置している。ただ、人口2500人の同町で唯一の病院で、隣の紋別市の医療機関までは35キロ離れている。病院関係者は「町民にとってなくてはならない存在」と強調する。

     名前が挙がった病院の中には、すでに自治体が経営改革に乗り出しているところも含まれる。山形県の天童市民病院は18年11月、全床を回復期病棟に転換し、リハビリなどに特化する体制を作ったばかりだ。天童市の山本信治市長は「再編自体は必要」としながらも「県の医療構想に基づき、役割分担を着々と進めている。最新のデータで公表してもらえばよかったが…」と納得がいかない様子だ。

     新潟県では県央地域の三条総合病院(三条市)や県立吉田病院(燕市)などがリストに挙がったが、県はすでに三条総合病院を含めた基幹病院の設立を計画している。燕市の鈴木力市長は取材に対し、厚労省のリスト公表について「『上から目線』で地域の実情を理解していない。(病院再編は)地域住民の命を守るという視点で議論を進めたい」と力を込めた。

     厚労省はリスト作成にあたり、診療実績に加え類似した機能を持つ病院との距離なども基準にした。福祉行政に詳しい城西大学の伊関友伸教授は「日本は世界的にも病床数が多く削減の必要はあるが、慎重に議論を進めるべきだ。名指しされた病院は北海道や新潟県などが多いが、例えば降雪を考えても全国の他の地域と一律の基準で測るのは無理がある」と指摘している。(後略)』

     

     厚労省は、財務省に言われてなのか?はたまた厚労省の職員どもも、MMT理論を理解していないのか?理解していても、財務省の緊縮せよ!というバイアスがかかっているのか?結局はそういうことなのでしょうが、地方の病院を中心に、財政が圧迫するからという理由で、どんどん病院を統合させています。

     

     これが問題なのは、統合して減らすことは容易いのですが、後から「増やして!」と言われても、簡単に増やすことはできないということです。

     

     病院を統合させて片方の病院をつぶすのは簡単ですが、後から病院を作ることはどれだけ大変なことか?わかっているのでしょうか?

     

     

     というわけで今日は「医療介護問題は、お金の問題ではなく、供給能力の問題です!」と題して論説しました。

    相変わらず、日本ではカネカネカネが優先され、肝心な供給力強化については、何にも考えていないとしか言いようがありません。このままでは普通に格差が拡大し、貧困層は病院にも行けないという悲惨な状況になっていくことでしょう。

     それでも日本は先進国といえるのか?あるいは国民皆保険というものを導入してくれた先人の人らに示しがつくのでしょうか?

     医療介護問題について、費用の拡大ばかりを報じるマスコミ報道の姿勢にも不満がありますが、そうしたマスコミ報道に騙されることなく、社会保障制度の問題は、お金の問題ではなく供給力の問題であることを、多くの日本人に知っていただきたいと私は思います。

     

     

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