血税3,500億円を突っ込んだジャパンディスプレイ社を800億円で中国企業に売ろうとしている日本の官民ファンド
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皆さんは、ジャパンディスプレイという会社をご存知でしょうか?
スマートフォンやタブレットなどのディスプレイを作る会社で日本のハイテク技術を象徴するような素晴らしい会社なのですが、この会社が中国の手に落ちるかもしれないという状況であることをご存知の方は少ないかと思います。
そこで今日は下記の順、
1.失敗IPOだったが技術力があるすごい会社
2.中台コンソーシアムへ売却の経緯と日本のハイテク技術が流出するという問題点
3.中国を通じた技術流出を阻止しようとしている米国トランプ政権
4.中台コンソーシアムへの売却を進めたのは誰か?
でご説明したく、「血税3,500億円を突っ込んだジャパンディスプレイ社を800億円で中国企業に売ろうとしている日本の官民ファンド」と題して論説します。
1.失敗IPOだったが技術力があるすごい会社
株式投資でIPOをやっておられる方でしたら、ジャパンディスプレイについて、上場失敗IPOとして記憶がある人もいるかもしれません。今から5年以上前の2014/03/19が上場日だったのですが、公募価格900円に対して、初値は769円。その後も株価は低迷し続け、一度も公募価格900円を上回ることはありませんでした。
<ジャパンディスプレイ(証券コード:6740)のチャート>
上記チャートの通り、5/17(金)の終値は57円ですが、チャートは見事に右肩下がりのチャートであり、IPOで買われた方は、ひどく損をしたということになります。
株式投資という観点からは、大変イメージが悪い会社かもしれないジャパンディスプレイですが、この会社は実はものすごい会社なのです。
何がすごいか?といえば、日本の名だたるハイテク企業のソニー、日立、東芝の液晶パネル事業を統合してできた会社なのです。しかも、その3社になる前に統合されていたのが、三洋電機、セイコー、パナソニックです。これら6社6大企業が一つの日本企業となったのがジャパンディスプレイであり、経済産業省が主導して一つにまとめました。そして、産業改革機構が、官民ファンド(以下「INCJ」)として、2,000億円の出資を受け、2012年に発足しました。
まさに日の丸企業であり、日の丸を背負って作られた企業といえます。
この液晶パネル業界というものは、日本がリードしてきた分野なのですが、その後、中国や台湾の企業が台頭し、コストが安いということでどんどんシェアが奪われていきました。そんな中で発足したのがジャパンディスプレイなのです。
2.中台コンソーシアムへ売却の経緯と日本のハイテク技術が流出するという問題点
そのジャパンディスプレイが発足した後、経営判断で誤りがあったといわれています。どういう誤りか?といえば、液晶パネル主体で行く判断をした時点で、既に世界の業界は液晶パネルではなく有機ELパネル、特にスマートフォンの画面では有機ELパネルを起用する方向に向かっていました。
にもかかわらず、ジャパンディスプレイは頑なに液晶パネルで行くと判断。その理由はジャパンディスプレイの最大顧客がアップル社であり、iPhoneのパネルを作っていたことが背景にあります。
ところがアップル社に引っ掻き回され、アップル社の要請でアップル社のためだけに大きな工場を設備投資した後に、アップルがもう時代は液晶パネルではなく有機ELパネルに転換してしまったため、ジャパンディスプレイは韓国のサムスン電子と組まざるを得なくなってしまったのです。
そうした不幸なこともあって、どうにもならなくなり、何期も赤字決算を続けて身売りすることになりました。
その身売りした先がどこなのか?というと、なんと相手は中国です。
中国は日本のディスプレイ技術を狙っていました。そのジャパンディスプレイを作らせたINCJは官民ファンドで、日本政府が95%近くを出資し、残り5%を民間企業が出資しています。そのため、官民ファンドといっても、実質的には、政府のお金がほとんどであるというのが実態です。そういう意味では事実上日本国民の税金で成り立っている投資ファンドともいえます。
政府の投資ファンドということで、政府の保証で投資ができるという利点はあるものの、その資金の出し手は日本国民の税金ということになります。
では、日本政府の投資ファンドのINCJは、ジャパンディスプレイに投資した額は、いくらになるでしょうか?
当初2,000億円から始まり、その後追加投資で2度の750億円の追加出資を合わせますと、合計で3,500億円も出資しています。その多くは日本国民の税金なのですが、今年4月、そのジャパンディスプレイを中国・台湾のコンソーシアムに、たったの800億円で売却することが決定しました。
3,500億円もつぎ込んで、挙句の果てに中国・台湾企業にわずか800億円で売却するということについて、皆さんはどのようにお感じになるでしょうか?
確かにジャパンディスプレイの経営は大変厳しい状況で運転資金がない状況で、中台コンソーシアムから総額800億円の金融支援を受けると2019/04/12に発表がありました。
これだけ日本国民の税金が投入されたジャパンディスプレイですが、中台コンソーシアムから金融支援を受けるということは、非常に問題があるといえます。
お金が無駄になるということもさることながら、一番の問題は仮想敵国の中国に最先端技術を取られるということです。
ジャパンディスプレイの技術は大変すばらしく、特に液晶パネル分野では、フレキシブル液晶パネルという柔らかい素材のフレックスというのがあり、そうした技術を子会社が持っています。
そのような高い技術を持つ子会社を傘下に抱えているにもかかわらず、経営が悪いというだけで中台コンソーシアム傘下に入ってしまうのが大変な問題で、技術が奪われてしまうのです。
そして買収する中国と一緒に組んでいる台湾の会社ですが、台湾は来年総裁選挙があります。
その台湾の総裁選挙に早くも立候補している人で、シャープを買収した台湾のホンハイの郭台銘(テリー・ゴウ)CEOが立候補を表明しています。台湾ホンハイは純粋な台湾企業ではなく、中国系台湾企業といわれており、郭台銘が来年2020年1月に総統になってしまった場合、台湾のハイテク業界は、親中国になるどころか、台湾全土が親中国になっていく可能性があります。
3.中国を通じた技術流出を阻止しようとしている米国トランプ政権
ここで問題は今、米国のトランプ政権、そして米国議会は中国に対して関税引き上げで貿易戦争を仕掛けています。その戦略の先には、台湾を中国から守ろうともしているのです。
米国は1979年に中華人民共和国と国交を開始して以降、台湾との外交は自粛し、非公式な関係を保ってきました。
米国ではトランプ大統領が就任して以降、この非公式な関係を見直して、2018/03/16には、台湾旅行法(Taiwan Travel Act)という法律を制定しました。この法律により、実質的に米国は台湾と友好関係を公式に結んだこととなる一方、一つの中国を訴える中国が反発したのです。
1年前の少し古い記事ですが、ロイター通信の記事を紹介します。
『ロイター通信 2018/03/02 14:33 トランプが「台湾旅行法」に署名すれば戦争に発展=中国国営英字紙
中国国営英字紙チャイナ・デイリーは2日、米国で台湾との関係強化を目指す「台湾旅行法」が成立した場合、台湾を巡る戦争に発展する可能性があると警告した。
同法の内容は、全レベルの米政府職員に台湾への渡航と当局者との面会を許可し、同時に台湾当局者に対し「敬意のこもった条件で」訪米し米政府当局者と会うことを許可するもの。トランプ米大統領の署名を待つばかりとなっている。
チャイナ・デイリーは論説記事で、法案が成立すれば台湾の蔡英文総統は台湾の主権をいっそう強く主張することになるだけだ、と強いトーンで主張。「蔡総統が主権を主張すれば、中国では台湾の離脱を阻止するための『反国家分裂法』発動が避けられなくなるだろう」と述べた。
さらに「その場合、米国は国内法に基いて台湾のために行動を起こさざるを得ず、地獄に転落するのは簡単だという見解に実態を与えるだけだ」と警告した。
中国は蔡総統が正式な独立を志向しているとみているが、総統自身は現状を維持したいとしている。
一方、台湾側は「台湾旅行法」を歓迎した。』
上記の通り、トランプ大統領が「台湾旅行法」に署名すれば戦争に発展すると中国国営紙が報じたとする記事です。
なぜトランプ大統領、そして米国議会は台湾を中国から守ろうとしているのでしょうか?
それは台湾を通じて技術を奪われないようにしたいからに他なりません。
これからの世界の覇権は、ビックデータの時代であり、5Gを始めとするハイテク技術をどこが握るか?で、まさに世界の覇権が決まるといわれています。
中国は軍事力も伸ばしていますが、技術力でも世界覇権を握ろうとしており、そのために重要な位置が台湾であるからこそ、トランプ政権は、米国が守らなければならないと思っているわけなのです。
現時点でも台湾は中国から武力的圧力に晒され、蔡英文政権は米国のトランプ政権に兵器を売って欲しいと要望し、実際にトランプ政権は兵器を台湾に売る方向ですすめています。
それでも米国のトランプ政権は、最新鋭のジェット機や、潜水艦などは売ることはありません。なぜならば台湾の軍隊を通じて中国に技術が行ってしまうことを恐れているからです。
そのくらいトランプ政権は台湾を心配し、1日も早く台湾を中国から切り離さなければならないと考えているのでしょう。
4.中台コンソーシアムへの売却を進めたのは誰か?
そんな状況下でありながら、日本のジャパンディスプレイが中台コンソーシアムに売却するということで、それをすすめたのはいったい誰なのか?というと、なんとINCJ、即ち日本政府の官民ファンドです。
日本政府は、追加金融支援で出ていくお金が惜しいということなのでしょうか?
これも「カネカネカネ」で技術やノウハウよりもお金という発想でものを考えているとしか私には思えません。
この土曜日5/18に、中台コンソーシアムは、別の出資者の資金調達も要求するというニュースが朝日新聞で報じられています。
『朝日新聞 2019/05/18 JDIに別の出資者の資金調達も要求 中台連合が新条件
経営再建中の液晶パネル大手ジャパンディスプレイ(JDI)が、出資の受け入れ交渉をしている中国・台湾の企業連合から、出資条件の見直しを要求されていることが分かった。JDIは4月、中台連合に最大800億円の資金を出してもらうと発表したが、中台連合は金融支援の条件として、新たな出資者を加えて資金調達をするよう求めている。JDIは債務超過寸前で、綱渡りの資金繰りが続いている。新たな出資者が見つからなければ、再建は暗礁に乗り上げる。
複数の関係者によると、中台連合がJDIの資産を査定したところ、想定以上に経営状況が悪く、追加の出資者を金融支援の条件につけたという。最大800億円の金融支援のうち数百億円を別の出資者から調達するよう求めており、この条件を満たさなければ交渉は進まないという。
JDIは海外の投資ファンドなどに出資を打診しているが、今のところ新たな出資者は見つかっていない。大株主である官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)もJDIへのさらなる支援には慎重という。JDIは4月、INCJからつなぎ融資200億円を受けたが、中台連合との交渉がまとまらなければ、今後1〜2カ月で資金繰りが行き詰まる可能性がある。』
上記の通り、中台コンソーシアムが追加資金を募るよう要求したというのがこの記事です。
中台コンソーシアムへの売却を中止すべくINCJが追加支援をするべき!と思うのは、私だけでしょうか?
というわけで今日は「血税3,500億円を突っ込んだジャパンディスプレイ社を800億円で中国企業に売ろうとしている日本の官民ファンド」と題して論説しました。
米国はかつてリーマンショックのとき、リーマンブラザーズ証券は破綻してしまいましたが、AIGやシティーグループに税金を投じて救済しました。また、GMやクライスラーなどの自動車産業に対しても、税金を投じて救済しています。
リーマンブラザーズ証券は、証券業務であって製造する技術は何もありません。それでもその後の金融不安を引き起こさないために、保険会社のAIGやシティーグループを救済しています。いうまでもなく自動車産業は技術の塊であるため、普通に政府が救済しました。
なぜ日本政府は、ジャパンディスプレイへの追加支援をしないのか?これまでにもシャープや半導体のエルピーダメモリも然りですが、経営は自己責任ということがあったとしても、デフレ放置という日本政府の政策責任という情状酌量の余地があるのではないでしょうか?
さらにいえば、安全保障上もシャープやエルピーダメモリの技術が他国に奪われるということが問題がなかったのか?「カネカネカネ」とお金がもったいないとしてお金に固執し、技術はどうでもいいような日本の今の風潮に、私は絶望的に思います。
これを解決するためには、まず国力とは何なのか?お金の価値とはどういうものなのか?MMT理論を正しく理解するなどの知見を通じて、事実・真実を日本国民が知るようにならなければ、やがて日本という国は発展途上国に落ちぶれていくどころか、中国の属国になってしまうでしょう。
技術力か?お金か?といえば、技術力を選択する、そのように考える国民が増えていくよう正しい事実・真実を広めていきたいと改めて思うのです。
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- 2019.05.19 Sunday
- 日本経済(科学技術)
- 04:12
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- by 杉っ子