災害対策庁舎の耐震化が遅れているのは緊縮財政が原因です!
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今日は「災害対策庁舎の耐震化が遅れているのは緊縮財政が原因です!」と題して論説します。
下記は日本経済新聞の記事です。
『日本経済新聞 2019/03/17 災害対策庁舎、耐震化に遅れ 市町村の18%、財政難で
全国の約2割にあたる321市町村で災害時の司令塔となる「災害対策本部」の設置庁舎が、耐震不足であることが総務省消防庁の資料から分かった。財政難のなか、多額の費用がかかる改修や建て替えに踏み切れずにいるためで、ほかの公共施設に比べても対応の遅れが目立つ。被災時に迅速な応急措置の妨げとなる恐れがある。
災害対策本部は災害時に被害状況を把握し、応急対策を決める。通信設備や非常用電源の整った本庁舎の会議室などに設ける場合が多い。消防庁によると、2018年3月末時点で全国の1741市町村のうち18%が耐震化を完了できていなかった。
学校や診療施設、社会福祉施設などを含めた公共施設全体の耐震化率は93%だった。トップの文教施設は99%に上る。災害対策本部を設置する自治体の庁舎の耐震化率は公民館や体育館なども下回っており、調査対象のなかでも最下位となった。
都道府県別にみると、耐震化を終えていない自治体を最も多く抱えるのは北海道で71市町村に上った。道内全市町村の40%にあたる。その一つである稚内市は市役所本庁舎に設置する予定だが、老朽化により耐震強度が足りていない。担当者は「建て替えれば概算40億円以上かかる。財政への影響を抑えなければ市民や議会の理解を得られない」と話す。
本庁舎の建て替え・改修には多額の支出が伴う。人口減などで財政難にあえぐ中小の自治体では、同じように住民への説明に苦慮しているところが多い。
山口県は47%の市町村が耐震化に対応できておらず、全国で最も割合が高い。市役所本庁舎の耐震強度が足りないと診断された同県防府市では、できるだけ早く新庁舎を整備したい意向だ。ただ、市の防災担当者は「市役所を建て替える経費があるなら住民サービスを高めてほしいという声もある」と苦しい胸の内を明かす。
栃木県も全25市町のうち、40%が耐震不足となった。同県足利市は「市民生活に関わる施設の整備が優先される。ごみ処理場や斎場など4施設の建て替えを計画し、それだけで約350億円と財政負担が重い」と説明する。
自治体で災害対策本部設置庁舎の耐震化が遅れている状況に対し、消防庁は「災害より目の前の福祉という自治体もある。国としては少しでも早くとお願いするしかない」と話す。災害対策基本法が災害対応の責任は自治体にあると定めているためだ。
災害復旧に詳しい東京大学生産技術研究所の沼田宗純准教授は「災害対策本部を設ける庁舎が活用できないと情報伝達のミスが生じやすくなり、応急対応の混乱や復旧の遅延につながる」と指摘。市町村が効果的な災害対応を実施できるよう「災害対応の標準形を学べる訓練プログラムを整備していくべきだ」と訴える。』
上記の記事は、全国のおよそ2割にあたる321の市町村で、災害時の司令塔となるはずの災害対策本部、この設置庁舎が耐震不足であることが、総務省・消防庁の調べで分かったというニュースです。
これは極めて深刻な問題といわざるを得ません。災害が発生したとき、例えば熊本地震のときがそうだったのですが、災害発生時、救護救援復旧をしなければならないわけで、その司令塔になるのが自治体庁舎です。
熊本地震では自治体庁舎が被災し、別のところで救護救援復旧作業をせざるを得ず、結果的に救護救援が遅れてしまいました。これは日本が災害時における救護救援体制について、強靭性が低く脆弱な状況に置かれているということです。
政府は国土強靭化を掲げており、その中でも最も重要な対策の一つが指令本部となる自治体の庁舎の建物の強靭化です。自治体の庁舎の建物の強靭性の有無によって、復興の速度が全然変わってしまうからです。
下記は消防庁がまとめた施設別の耐震棟数と耐震未対応の棟数とその割合を示したものです。
(出典:消防庁の資料「消防の動き」2019年3月号より引用)
上記資料の通り、学校や診療施設の社会福祉施設などを含めた公共施設全体の耐震化率は93.9%となっており、文教施設に至っては98.5%に達しています。祖日報で、自治体の庁舎は84.0%と調査対象施設の中で最下位となっています。
学校は文科省の事業であり、文部科学省で予算をしっかりつければ耐震化を進めることができる一方、自治体庁舎は国の直轄ではなく、自治体の予算で対応しなければなりません。
この資料から読み取れることは、地方自治体・市町村都道府県が貧乏になっているということを反映しているといえるのではないでしょうか?
なぜ地方自治体・市町村都道府県が貧乏になるかといえば、プライマリーバランス黒字化があるからと思っております。つまり税収以下の支出しかしていないということです。
ではなぜ税収以下の支出しかしないかといえば、将来不安があるため、税金で吸い上げたものを借金返済したり、内部留保したりしていて、経済が疲弊しているということにほかならず、前向きな投資ができないのです。
学校は子供たちの将来があるため、半分は国の直轄でお金を出すことはあるものの、自治体の建物の耐震化にまでお金を回せないという状況なのでしょう。
もちろん地方自治体は、日本政府と異なり、通貨発行権を持ちません。例えばある県庁の庁舎の地下でお金を増刷していたら、普通に通貨偽造で逮捕されます。そのかわり、地方交付税交付金があるわけですが、安倍政権の緊縮財政により、1.1兆円圧縮されています。
プライマリーバランス黒字化目標という行政によって、日本政府・財務省の支出圧縮の最大のしわ寄せ・被害が、こうした問題につながっているということです。
消防庁は、自治体で災害対策本部の設置庁舎の耐震化が遅れている状況について、とにかく災害よりも目の前の福祉という自治体もあるため、国としては少しでも早くお願いするしかないとしているのですが、地方自治体にお願いするくらいならば、財務省にちゃんと予算をつけろ!という働きかけをしていただきたいものです。
というわけで今日は「災害対策庁舎の耐震化が遅れているのは緊縮財政が原因です!」と題して論説しました。
この問題は、災害が起きてからでは遅く、起きた後にいろいろ問題になって、どうせまた批判が出ることでしょう。復興が遅れるということの意味は、復興が早ければ救援救護が早ければ助かる命が山ほどあるのに、そうした人々を見殺しにする政策でもあります。いわば財務省の緊縮財政は人殺し政策であると私は思うのです。
- 2019.04.23 Tuesday
- 日本経済(経済政策)
- 04:49
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- by 杉っ子