乗数効果について

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     今日は「乗数効果について」について論じたいと思います。

     

     私は、よくマクロ経済でいう「GDP3面等価の原則」について、例外なく一致するとしてブログでもよく取り上げさせていただいております。

     

     GDP3面等価の原則とは、生産面のGDP=支出面のGDP=分配面のGDPです。この数式からいえることは、消費を増やせばGDPが増えるということ。そしてその消費とは、個人でも政府でも企業でもよいのですが、ここでは個人消費に限定したいと思います。

     

     今みなさんが、今月から毎月の月給が10万増えるとしたら、どのようにされるでしょうか?

     

     10万のうち5万は使って5万は貯金する、あるいは8万を使って2万を貯金する、あるいは2万を使って8万を貯金するなどなど、バリエーションは無限にあるわけですが、仮に8万を使って2万を貯金するといった場合、限界消費性向=8/10と表すことができます。

     

     限界消費性向という言葉は、なかなか聞き慣れないでしょうし、聞いたことがあるという人であってもとっつきにくい概念です。一応、言葉の定義としては所得が1増加した場合に消費に回る割合のことを指します。

    端的にいえば所得が10万円増加した場合の消費の増加分を限界消費性向といいます。いわば「もっと消費したい(=お金を使いたい)」という気持ちがどのくらいあるか?という数値です。

     

     逆に10万円増加した場合に2万円を貯蓄するという状況は、限界貯蓄性向=2/10と表すことができます。限界消費性向と限界貯蓄性向の合計は必ず1となります。

     

     では標題の乗数効果とは、どういうものでしょうか?経済成長のGDPとの関係では、下記式となります。

     GDPの増分=乗数(※)×投資の増分

     ※乗数=1÷(1−限界消費性向)

     

     この数式は、例えば限界消費性向が0.8だった場合、乗数=1÷(1−0.8)=1÷0.2=1÷(2/10)=10/2=5と使います。この5という数字の意味は、1投資をした場合、5GDPが増えるということです。即ち限界消費性向が0.8であれば、投資1の増分に対して5経済成長できるということになりますが、これが乗数効果です。限界消費性向が0.8ならば、1万円が1万円の所得ではなく、1万円が5万円もの所得になるのです。

     

     それでは限界消費性向を0.95にした場合はどうでしょうか?

     

     乗数=1÷(1−0.95)≒1÷0.05=1÷(5/100)=100/5=20となります。先ほどと同様に20という数字の意味は、1投資した場合、20経済成長できるということになります。乗数効果は20倍ということになり、1万円が20万円の所得を生み出すということになります。

     

     したがって消費性向が0.80→0.95に高まれば、乗数は高くなるということがいえます。

     

     ここでもう一つ貯蓄=投資となることをご説明申し上げます。家計分野においては、消費と貯蓄という概念がありますが、企業の場合は消費ではなく投資になります。機械設備を買う場合は投資というのがイメージしやすいと思います。企業が原材料を購入する場合においても消費ではなく投資といいます。実際に内閣府のホームページのGDPの公表値は、在庫投資という表記でカテゴライズされています。

     

     所得=消費+貯蓄が家計分野だとすれば、企業分野は所得=貯蓄となります。

     

     パンが1個100円だったとして仕入原価20円とし、1個パンが売れた場合のケーススタディで考えてみましょう。

     

     企業所得=売上100円−仕入原価20円=80円

     企業投資=仕入原価▲20円(在庫が1個減るため)

     企業消費=0円

     企業貯蓄=企業所得=80円

     

     個人所得=0円

     個人投資=0円

     個人消費=100円

     個人貯蓄▲100円=個人所得0円−個人消費100円

     

     

     企業所得と個人所得を合わせると下記の通りとなります。

     

        企業所得   消費者

     所得=  80円 +  0円 = 80円

     投資= ▲20円 +  0円 =▲20円

     消費=    0円 +  100円 = 100円

     貯蓄=  80円 +▲100円 =▲20円

     

     これは個人が20消費すると、社会全体の所得が20となることを意味します。貯蓄▲20円=投資▲20円となっていることがご理解できるかと思います。

     

     貯蓄=投資となることをご理解いただいた前提で、次の図をご紹介します。

     

    <図1:貯蓄=投資で一定として、社会全体の貯蓄とGDPと限界貯蓄性向の関係を表したグラフ>

     

     上図1は、社会全体の貯蓄とGDPと限界貯蓄性向の関係を表したグラフです。貯蓄=投資という関係については先述させていただいた通りです。投資曲線が一定であれば貯蓄も一定となります。

     ところが、限界貯蓄性向を高めるとどうなるか?将来不安などでもっと貯金をしたいとする人が増えた場合、限界貯蓄性向は左へシフトします。

     

    <図2:限界貯蓄性向を左シフトした場合>

     

     上図2の通り、限界貯蓄性向を左へシフトするとGDPは減少します。即ちGDPは減少します。

     逆に貯蓄せずに、もっと消費したいという消費者が増えた場合はどうでしょうか?即ち限界貯蓄性向が右シフトした場合はどうなるでしょうか?

     

    <図3:限界貯蓄性向を右シフトした場合>

     

     

     上図3の通り、GDPは増加します。

     

     私たちは、つい倹約に努めようとします。あるサイトでオールアバウトが運営する”あるじゃん マネープランニング”見ていますと、ファイナンシャルプランナーの方が、しきりにどう貯蓄を増やしていくか?的なことを、相談者に対して指導しています。

     

     ところが消費者個人が倹約にどれだけ励んだとしても、企業が倹約して内部留保をしたとしても、社会経済全体には何の意味も持ちません。むしろ限界消費性向が高まれば投資した場合の乗数も大きい。この場合の投資は企業の投資でなくても政府支出による投資(インフラ整備、科学技術投資、災害防災投資など)でも同様です。

     

     こうしてグラフを理解し、乗数効果の意味を理解できれば、消費者個人が貯蓄に励み、企業が内部留保を積み増すということが、不況に拍車をかけることは明白に理解ができるのではないでしょうか?

     

     逆にみんながお金を使えば、限界貯蓄性向を右シフトすることとなり、貯蓄は減らず増えもしませんが、所得は増えることになります。

     

     個々一人一人、一企業一企業ではデフレ環境ということもあり、貯蓄や内部留保をすることは正しいのですが、政府までもが投資せず、消費を削減するという緊縮財政をしてしまえば、GDPは全く増えません。このように個々について正しいことを、すべての人が行うことでカタストロフィを引き起こすことを「合成の誤謬(ごびゅう)」といいます。

     

     デフレが続けば社会の限界貯蓄性向は高まります。デフレ脱却し、多くの人々が「貯蓄しなくて消費して問題ない!」とお金を使い始めれば、たとえ限界貯蓄性向が低くても、どんどんお金を使ってGDPを高まるため、結果的に自分の所得が増えて貯蓄増加につながるのです。

     

     というわけで今日は乗数効果についてご説明し、限界消費性向、限界貯蓄性向との関係について論説しました。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              

     

     

    〜関連記事〜

    借入金の否定=資本主義の否定(信用創造機能とは何か?)

    「合成の誤謬(ごびゅう)」を打破するのは政府しかない!

     

     

     


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