自民党の税制調査会長の野田毅最高顧問の「消費税は20%が上限」という発言について
JUGEMテーマ:経済成長
JUGEMテーマ:デフレ・インフレ
JUGEMテーマ:経済全般
JUGEMテーマ:消費税増税
JUGEMテーマ:消費税
消費増税については、既成事実化させる報道が相次いでいますが、あくまで予定であり、決定されたものではありません。そんな中、2018/11/19の産経新聞で、自民党の税制調査会長の野田毅最高顧問が「消費税は20%が上限」と日本記者クラブで講演しましたと報じられています。今日はこの記事を取り上げ、論説したいと思います。
下記は産経新聞の記事です。
『産経新聞 2018/11/19 19:50 「消費税率は20%が上限」自民税調の野田最高顧問
自民党税制調査会の野田毅最高顧問は19日、日本記者クラブで講演し、財政健全化に向けた中長期的な消費税率の水準について「20%が上限だと思う。今のままなら3割(30%)だという話もあるが、いくら何でもどうかと思う」との考えを示した。
来年10月の消費税率10%引き上げに伴い、飲食料品など生活必需品の税率を8%に据え置く軽減税率の導入については、「今は法律で決まっており、あえて持論を強く主張して変えろというつもりはない」とし、予定通りの導入を求めた。』
上述の通り、野田氏は講演の中で財政健全化に向けた中長期的な消費税率の水準について「20%が上限」と持論を語られました。2014年4月の消費増税3%引き上げでも大変だったわけですが、2%引き上げるだけでも日本経済をどれだけ破壊するか?大変な話であるにもかかわらず「上限20%」という数字を口にされました。
消費税率が何%が適切か?ということでいえば、30%でも50%でもあり得るのかもしれません。問題は、消費増税することで日本経済が安定的に成長することが可能か否か?と問うべきです。
欧州のEUにおけるマーストリヒト条約で定める財政赤字対GDP比率を3%にしなければならないとするルールの「3%」という数字でいえば、EUに加盟している国が不況になって苦しんでいる状況であっても「3%」が適切か否か?という話と同じです。
だいたいマーストリヒト条約の財政規律ルールの「3%」という数値に、学術的な根拠はありません。EU諸国に所属するある国家、例えばギリシャが不況に苦しんでいる、イタリアが不況に苦しんでいる、ということになれば、財政赤字額は好況になるまで、安定した経済成長が可能になるまで、赤字額に上限を定める必要はありません。
同様に消費税の税率についても、日本経済が安定して成長できるか否か?だけを考えれば、10%でも30%でも50%でもいいですし、5%や3%に減税したり、0%で廃止してもいいのです。
産経新聞の記事にある野田氏の発言において、20%が大丈夫というのは何をもって大丈夫なのか?が一切語られていません。「いくら何でもどうか?」の基準は、一体何なのでしょうか?
本来ならば、日本国民の経済がどうなるか否か?経済に対する影響、所得に対する影響、消費水準、企業のビジネスに対する影響がどうなるか?ということが基準にされて発言されるべきです。
「20%だったらOK!」で、「30%というのはちょっとどうかな?」というのは、あまりにも日本国民を愚弄した発言です。
<図1:各国の直間比率の比較>
(出典:財務省のホームページ)
<図2:各国の消費税の標準税率の比較>
(出典:国税庁のホームページ)
消費税導入時、あるいは引き上げの際、直接税と間接税の比率を間接税にシフトしていくとする直間比率是正を大義名分とする言説があります。とはいえ総税収に対する消費税収の割合でいえば、<図1>の通り日本の直間比率は既に欧州諸国よりも高い水準です。<図2>では確かに日本の消費税率は8%と欧州諸国との比較では低いのですが、そもそも国際比較では税率が重要なのではなく、総税収に対する消費税収の割合こそが問題であり、日本では十分に高くなっています。
そのため、海外の平均が20%、高福祉のスウェーデンが25%、だから日本も20%くらいが上限なのでは?する発言は、学術的な根拠がない適当な発言としか言いようがありません。
野田氏は与党の税制の最高顧問という立場の方が、こうした適当な発言をすることについて、日本国民はもっと怒らなければならないと思います。
というわけで今日は野田氏の消費税率「20%が上限」という発言について問題ありとする旨を述べさせていただきました。
〜関連記事〜
◆”「所得税を減税しないと富裕層が逃げていく!」は本当か?”
◆「法人税」と「所得税の累進課税」が高く、「消費税」と「社会保険料負担」が低い国家とは?
- 2018.12.07 Friday
- 日本経済(税制問題)
- 08:14
- comments(0)
- -
- by 杉っ子