緊縮財政ではなく積極財政の方向に進む米国とカナダ

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     今日は「緊縮財政ではなく積極財政の方向に進む米国とカナダ」と題して論説します。

     

     米国の中間選挙が終わり、上院は与党共和党が多数議席となり、下院は野党民主党が多数議席となりました。これでいわゆる”ねじれ状態”になったことになります。

     

     トランプ大統領は今後、議会を通さない通商政策を中心に先鋭化した対応をすることが予想されますが、そもそもトランプ大統領は、保守本流の共和党から大統領選挙に立候補した人物です。

     

     共和党は伝統的に緊縮財政なのですが、それに背を向け、財政赤字にこだわらないインフラ投資による財政支出拡大を目指していく一方、安倍政権は財務省の影響力が根強く、緊縮財政路線を廃棄できないでいます。

     

     米国であの共和党が、反緊縮に転換して1兆ドル(当時の為替換算で100兆円)のインフラ投資をやるとし、積極財政をやるだけでなく、減税もやるという方向に舵を切りました。

     

     EUでも反緊縮路線が広がってきています。

     

     1980年代からネオリベラリズム(=新自由主義)という潮流が始まりました。経済学者のミルトン・フリードマンが1976年にノーベル経済学賞を受賞します。私は個人的にミルトン・フリードマンを評価しません。なぜならば、彼は小さな政府を推奨したり、公的部門の民間開放を推奨したり、マネタリズムと呼ばれるマネーストックを操作するのにはマネタリーベースを増やすべきという考えを持ち込んだ人だからです。

     

     小さな政府、公的部門の民間開放といった政策は、米国レーガン大統領のレーガノミクス、英国サッチャー大統領のサッチャーリズム、行政改革を目的とするデビット・ロンギ政権のロジャーノミクスなど、1980年代に推奨・実行されてきた経済政策の一つです。いずれも公的部門の需要削減するという点が共通しています。公的部門でやっていたことを民間開放し、市場原理に委ねてインフレ率を抑制することが目的です。

     

     1976年にノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマンは、1973年にオイルショックが発生し、インフレ率上昇と失業率上昇が同時進行した時期に活動されていた人でした。インフレ率の指標と失業率の指標をマッピングすると、普通はインフレ率が高いと失業率は低下し、インフレ率が低いと失業率は上昇します。

     ところが1973年のオイルショック時は、インフレ率と失業率の両方が上昇するという事象が発生したため、インフレ率を抑えるという意味で消費削減となる小さな政府を目指すという考えが支持され、各国首脳は小さな政府を目指すべくレーガノミクス、サッチャーリズム、ロージャーノミクスを始めたのです。

     

     そういう意味では、20年くらい遅れて米国・英国の流行が日本に本格上陸します。例えば”小さな政府”の推進は、日本では2000年代に竹中平蔵・小泉純一路線で始まりました。それが今もなお継続しています。

     

     今は、米国も英国も明確に反緊縮であり、積極財政をやることが必要であると主張しています。

     

     下記は少し古い記事ですが、カナダのトルドー首相は今から2年以上前に、トランプ大統領が誕生する前から、既に積極財政を表明していました。

    『ロイター通信 2016/05/20 10:43 財政赤字目標にこだわらず、経済成長を重視=カナダ首相

     [オタワ 19日 ロイター] - カナダのトルドー首相は19日、予算で300億カナダドルの財政赤字を想定していることについて、この数字が上限というわけではないと説明、政府は経済成長の促進をより重視すべきとの認識を明らかにした。 』

     

     上記の通りカナダのトルドー大統領は財政赤字路線で、面白いことに300億カナダドルの財政赤字を想定しているものの、その数字は上限でないとしています。

     

     一方、EUはマーストリヒト条約で「財政赤字対GDP比3%以下」もしくは「政府対GDP比率60%以下」を満たさない場合、報告書を作成して是正するというルールがあります。ここで出てくる”3%以下”や”60%以下”という数値目標に学術的な根拠はありません。デフレ脱却で需要が不足するならば、3%以上となっても仕方ありませんし、60%以下にならなくても仕方がありません。

     

     そもそも政府が赤字を拡大するということは、民間が黒字になるということを意味します。例えば米国政府が100兆円のインフラ投資をやれば、100兆円の財政赤字が拡大する一方、民間の黒字が100兆円拡大することになります。だから需要が不足して景気が良くなるために、需要の不足額以上に政府が支出をするというのが支出額を決める根拠であって、学術的根拠のない入ってくる税収の103%いないでなければいけないなどというのは、全く不毛なのです。

     

     不景気は民間が儲からない以上、儲からなければ所得も投資も減ってますます儲からなくなるため、この不景気から脱却するためには、民間全体のお金の巡りをよくする必要があるため、政府支出の拡大や減税を通じて、政府の財政赤字を拡大させる必要があるわけです。

     そうしたことを踏まえますと、カナダのトルドー大統領は、300億カナダドルを上限とは考えていないという点で、素晴らしいです。マクロ経済を理解している大統領の一人といえます。

     

     

     というわけで今日は「緊縮財政ではなく積極財政の方向に進む米国とカナダ」と題して論説しました。

     積極財政についても、その潮流は20年後に日本に来るかもしれません。とはいえ、20年以上もデフレが続くのは日本だけであり、バブル崩壊後に緊縮財政をやった国、それを体験した国は、日本だけです。

     その日本が経済を痛めつけられ、合併などで供給数が減るという意味で供給力を毀損し、20年間このまま供給力、国力を保持できるのか?心配です。供給力の毀損を続ければ、発展途上国化し、国際的地位も低下して2流、3流の小国に落ちぶれるでしょう。

     逆にプライマリーバランス黒字化目標を破棄して、速やかに反緊縮トレンドが日本国民の風潮となるよう醸成し、カナダのトルドー大統領のように、プライマリーバランス赤字化を目指す。さらには財務省の人事制度を増税できた人・緊縮財政ができた人を評価するのではなく、名目GDPを増やせた人を評価するというように変えるところまで持っていければ、日本は世界の覇権国になることも十分に可能であると私は思うのです。

     

     

    〜関連記事〜

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